mecobalamin

末梢神経の脱髄疾患へメチルビタミンB12(メチルコバラミン / メコバラミン)が有効に働くことはすでに知られていますが、中枢神経の脱髄にも有効に働く可能性があるようです。脱髄が疑われる疾患には、糖尿病による末梢神経障害、多発性硬化症や慢性脱髄性多発神経炎などの自己免疫性神経障害、双極性障害や統合失調症などの精神疾患などが挙げられます。

医薬品のメコバラミン製剤は末梢神経障害の治療補助薬として処方されており、また昨年エーザイ株式会社が筋萎縮性側索硬化症(ALS)への高用量メコバラミン製剤の販売承認申請を有効性が確認できないという理由で取り下げましたが、病態がより軽度な場合においては有効になる可能性が高いと考えられています。製薬会社のMSD株式会社ウェブサイトによれば、ビタミンB12の機能は「核酸代謝・メチル転移・ミエリン合成および修復に関与している」と記載されています。

PubMedでメチルビタミンB12の脱髄修復の作用機序を検索してみたところ、次のような文献が見つかりました。

■要約

マウスに坐骨神経挫滅傷害を行い、続いてメコバラミン(65μg/ kgまたは130μg/ kg)を毎日腹腔内投与した。
・メコバラミンは著しい坐骨神経の機能回復機能を示した(ミエリン鞘の有髄神経線維、および標的筋細胞の断面積を増加させた)。
・具体的には、神経組織における成長関連タンパク質や神経栄養因子の発現をアップレギュレーションさせた。


多発性硬化症への治療効果

また、多発性硬化症では、ビタミンB12の結合能や輸送能に障害があるケースもあるという報告があります。ただ、メチル化したビタミンB12を使用することで、いくらか脱髄修復が行われる可能性があるようです。以下の九州大学医学部附属脳神経病研究施設の論文では、メチルビタミンB12の投与で、視覚・聴覚神経部位の電位障害(脳幹部位の反応障害)が改善されたと報告されています。

Abstract:
血清ビタミンB12濃度と不飽和ビタミンB12結合能をMS患者24例,他の神経疾患患者73例,健常者21例について測定した。MS患者ではビタミンB12濃度は減少していないが,不飽和ビタミンB12結合能は有意に減少していた。慢性進行性MS患者6例にメチルビタミンB12を60mg/日,6ヵ月間投与した。運動障害は臨床的に改善しなかったが,視覚・聴覚脳幹誘発電位の異常は,治療前の期間に比べ治療中により頻回改善を示した。


統合失調症への治療効果

統合失調症への脱髄修復効果をはっきりと示した論文は見つかりませんでしたが、ビタミンB12と葉酸の併用で、陰性症状が改善したとする論文が以下にあります。

統合失調症患者140名に対し、2mgの葉酸と400μgのビタミンB12を16週間プラセボ対照二重盲検で投与比較を行った結果です。治療効果は葉酸吸収の遺伝的変異の影響を受けるものの、統合失調症の陰性症状を有意に改善することができたと述べられています。
またこちらは別の機序(生体に有害となるホモシステインを減少させる)によるものですが統合失調症の慢性疲労を改善させるかもしれないという結果が示されています。

各10名程度の自閉症・統合失調症患者の死後脳を対象とした小規模研究で、両被験者群においてメチルビタミンB12(活性型)と不活性シアノコバラミンの濃度が通常より3倍以上低く、さらに自閉症では葉酸依存性酵素の活性低下によるホモシステイン濃度が上昇していたとされています。
さらに統合失調症患者の血漿中ビタミンB12と葉酸濃度が有意に健常群より低く、ホモシステインとコルチゾール濃度と平行関係が見られるという記述があります。

ホモシステインは血栓や動脈硬化の原因になるだけでなく、血漿脂質ヒドロペルオキシドの濃度を増加させ、中枢神経障害から慢性疲労の原因にもなりえると考えられています。


服用量についてですが、医薬品のメチコバール(メチルビタミンB12を1,500μg含有)添付文書によれば約1%程度の消化器系の副作用(悪心など)があるように書かれています。先のMSDウェブサイトにおいても「大量でなければ毒性はないと思われる」と記されており、腎疾患などが無い場合水溶性ビタミンであるということからも蓄積されていくことはないと思われますが、毒性が出る服用量はやはり調べるべきですね。これについてはまた後日アップしたいと思います。
 

■筆者がメチルビタミンB12を使用した効果の記録(自己免疫性末梢神経障害に対して)
(体験に基づいての感想や推測)
 
・メチルビタミンB12(1,000mcg)服用で、末梢神経の脱髄は自然修復の速度よりも数倍早い修復効果が得られているように感じる。 
・就寝時刻が遅れた場合(免疫が増強する、薬の効果が切れてくる)でも、夕食後メチルビタミンB12 1,000mcg/日を服用しておくと、他の部分の修復が早まるためか軽症で済む。
・軽症ですむというのは、物を上手く掴めない・自己体重を支えきれない等の全身脱力症状や、自己の体の感覚がない・物との距離感覚が分からない等の感覚消失が比較的軽度になるというもの。