heat shock protein

近年、「セルベックス」や「ムコスタ」などの胃薬アルツハイマー病やパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症の発症原因である細胞内で発生する不良品タンパク質(ミスフォールディングタンパク質:タンパク質が何らかの原因で誤った立体構造になったもの)の細胞内蓄積を抑制する効果があることが示されている。ミスフォールディング抑制の機序は「Hsp70」という熱ショックタンパク質(heat shock proteins:Hsps)の産生を介したものであると言われている。

熱ショックタンパク質は、熱ショック(急激な体温や気温上昇から一般的な入浴なども含む)やその他の様々な生体へのストレス(感染症、炎症、急性運動、酵素ストレス、紫外線、活性酸素、化学物質への曝露、虚血など)が加わると誘導合成されるタンパク質であり、機能としては、それらのストレス傷害から細胞を保護修復する(タンパク質凝集を抑制しリフォールディング(再折りたたみ)を介助する)というアポトーシス抵抗性を示す因子として働く。(修復不可能であるほどに壊れたタンパク質はユビキチンという目印タンパク質がつけられ、これをプロテアソームというタンパク質分解装置が認識して分解を行う)。

またその他にも炎症性サイトカインを抑制するなどの保護作用があることが知られている。その機序は主に次によるのものと考えられている。
  • LPS刺激に加えて、転写因子HSF1がHsp70などの熱ショックタンパクを誘導することで、IL-12(Th1型サイトカイン)やIL-6(Th2型サイトカイン)の抑制性の転写因子ATF3を誘導する
  • またHsp70はPDLIM2(核内ユビキチンリガーゼ)およびBAG-1(プロテアソーム関連タンパク質)と結合し、NF-κBとPDLIM2の複合体をプロテアソーム輸送促進することによって、NF-κBの構成成分であるp65の分解を促進する
(炎症反応誘導に必須な分子の活性化を抑制する仕組みの一端を解明)
(熱ストレス応答による炎症の抑制機構)
http://ds22.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~seika2/22th/Review.pdf#search=%27Hsp70+%E7%82%8E%E7%97%87%E6%8A%91%E5%88%B6%27

このHspによる炎症抑制の効果は、先の論文では「LPS刺激によって3倍以上に発現が上昇した100の炎症性遺伝子のうち、86%の遺伝子が熱(ショック)によって発現が半分以下に低下した」と記述されている。熱ショックによる炎症抑制経路はそれほど強力であるということがわかる。

ただ、Hsp70は産生が過剰になるとTh1型の自己免疫疾患やTh2型の中でも全身性エリテマトーデス(SLE)を悪化させるという論文もある。その機序は以下のようなものである。

  • Hsp70はToll様受容体(TLR:細胞膜表面にある病原体由来ペプチドを認識する受容体タンパク)活性により、MHCIおよびMHCII(T細胞膜表面に存在する抗原ペプチドを提示する部位)依存的に抗原性を高めるTLR7/TLR9はSLEにおいて、自己抗体と自己のDNA/RNAが形成する複合体によって活性化される)。
  • サイトカインとしてはIL-12やIFN-α/βなどが産生され、IL-12からはIFN-γが産生されるため、Th1細胞への分化が促進される
(トキソプラズマ Hsp70による樹状細胞成熟分化と防御免疫誘導)
(温熱療法によって賦活される免疫活性)
http://www.isc.chubu.ac.jp/istr/pdf/vol23/23-07.pdf#search=%27MHC+Hsp70%27

その他にも、T細胞サブセットへのHsp70刺激の影響を研究した論文では、「ヘルパーT細胞ではHsp70+IL-2による二重刺激は有意に高い増殖率(36%)をもたらした。また白血病細胞の存在下でIL-7/IL-12/IL-15に併せてHsp70を添加したところ、グランザイムB(穴の開いた細胞膜から内部に送り込まれるタンパク質分解酵素でアポトーシスを誘導する)の35倍のアップレギュレーションが観察された」としている。

cell proliferation
(図:Hsp70や各サイトカイン(IL-2/IL-7/IL-12/IL-15)で刺激した際のヘルパーT細胞増殖率)
(Hsp70は、Tヘルパー細胞の細胞毒性を誘導する)

MSの動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)では、このグランザイムBを放出して神経細胞にアポトーシスを誘導するEomes陽性ヘルパーT細胞が増加傾向にあると報告されていることから、Hsp70とIL-2による刺激は病態悪化に繋がる可能性があると考えられる。

Eomes+Th cells
(神経難病「多発性硬化症」の慢性炎症に関わる新しいリンパ球を発見)

これらのことは、つまりHsp70が先ほどとは真逆でアジュバント(抗原抗体反応を活性化させる免疫賦活物質)としても働く物質であるということが言える。

またその一方で、Hsp70はいくつかの胃薬(セルベックス/プロマック/ムコスタなど)によっても誘導されることが近年明らかになっている。ただ、薬剤による誘導は熱ショックなどのストレスによる誘導とは異なり、酸化ストレスによって生じるiNOS(一酸化窒素合成酵素)や、そのストレス傷害によって生じる8-OHdG(8-ヒドロキシ-デオキシグアノシン:活性酸素によるDNA損傷で生じる)を産生しないといわれている。そのため生理的なHsp70誘導とは少し異なるものとして考えなければならないのかもしれない。

以下では、Th1/Th2型自己免疫疾患におけるHsp70遺伝子多型が熱ショックタンパク質産生においてどのような影響を受けるのか、また胃薬などHsp70誘導性の薬剤においてどのような種類の炎症性サイトカインが産生されるかということについて見ていきたい。

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Th1型におけるHsp70遺伝子多型の影響

Hsp70はTh1型自己免疫疾患の中でも特に、多発性硬化症(MS)や慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)など神経鞘のミエリンが抗原となっている場合に免疫増強が起こる可能性が高いと考えられている。その理由として、Hsp70はミエリン塩基性タンパク質(MBP)と特異的に会合することが観察されているためである。論文では「Hsp70と複合体を形成したMBPは、抗原提示細胞によってMBP単独よりも有意に高い速度で取り込まれ、MBP特異的免疫応答が増強された」と報告されている。
(多発性硬化症:病変およびミエリンにおける70および27kDa 熱ショック タンパク質の発現の変化)
(Hsp70は、多発性硬化症の脳におけるミエリン塩基性タンパク質およびプロテオリピッドタンパク質と会合している)

以下の論文では、多発性硬化症のモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスでは、Hsp70遺伝子の欠損によって、抗原に対するT細胞増殖およびIFN-γ産生の喪失と相関したと報告されている。
(Hsp70は、ミエリン抗原に対する免疫応答の生成に関与している)

また、Hsp70遺伝子多型頻度に関しては、MS患者と健常人との間に有意差は認められず疾患の重症度とも関係しないとされている。
(日本人多発性硬化症患者における熱ショックタンパク質70遺伝子多型)

同じTh1型自己免疫疾患である関節リウマチにおいても、遺伝子に関しては同様の結果であるようだ。
(慢性関節リウマチにおける熱ショックタンパク質70遺伝子多型)

ただ以下の一例、多発性硬化症患者50人を対象とした論文では、健常人(40人)やリウマチ患者(13人)と比較し、Hsp70が有意に増加傾向にあり、ストレス存在下やLPS刺激によって有意に増加したと述べられている。このHsp70の転写因子HSF1は、プロテインキナーゼCアイソザイムA群によって活性化されるため、その阻害はHsp70を有意に減少させるとも述べられている。
(多発性硬化症における免疫細胞における過剰なストレス誘発性Hsp70の発現)

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Th2型におけるHsp70遺伝子多型の影響

またTh2型の全身性自己免疫疾患に関してもHsp70遺伝子多型は病因として関連があるという報告がある。

以下の論文では、31人の特発性炎症性筋疾患(IIM)、31人の全身性エリテマトーデス(SLE)、32人の全身性硬化症(SSc)、および37人の健常人のHsp70遺伝子(HspA1AおよびHspA1B)のmRNA発現レベルを測定したところ、健常人と比較しこれらの疾患で有意にアップレギュレートが観察されたと述べられている。特にSLEとIIMでは、HspA1A遺伝子発現調節と、特異的自己抗体のレベルに関係性が見られ、一方SScとIIMでは細胞外Hsp70タンパク質レベルが増加傾向にあったとされている(細胞内Hsp70のレベルは増加しなかった)。
(全身性自己免疫疾患の分子マーカー:Hsp70遺伝子の発現は、自己免疫発症と有意に関連している)

SLEにおいてHsp70がどのような機序で病因に関わっているかについては以下の論文が参考になる。
20人のSLE患者から採取した皮膚生検査から免疫蛍光法によってHsp70の存在を調べたところ、「紅斑性狼瘡の原因となる皮膚-表皮接合部の免疫複合体沈着はHsp70によってシャトルされていることが示唆される」と述べられている。
(SLEにおける皮膚-表皮接合部への自己抗原シャトルでのHsp70の可能な役割)

また、炎症性腸疾患においても、Hsp70タンパク質は疾患の活動期に有意に結腸直腸上皮において増加していることが示されているが、その詳細はやはりTh2型の潰瘍性大腸炎とTh1型のクローン病では異なる遺伝子多型が関連しているようである。

以下の論文は韓国人の潰瘍性大腸炎患者144人およびクローン病患者101人を対象にHsp70-2遺伝子多型と疾患の重症度に関する解析が行われたものである。結果として、クローン病では、Hsp70-2多型AA遺伝子型が非穿孔性疾患および男性性別と関連しており、 BB遺伝子型は重度と関連していた。対照的に、潰瘍性大腸炎は、AA遺伝子型が重度と関連していることが示されている。
(熱ショックタンパク質遺伝子70-2の多型は、潰瘍性大腸炎およびクローン病の臨床表現型とは異なって関連している)
https://www.saishunkan.co.jp/domo/kaihatsu/gakkai/Hsps.html

ただ、潰瘍性大腸炎においてはHsp70は炎症を抑制し治療に有効となる可能性があるという論文もある。抑制の機序は、恐らくTh2型からTh1型へのシフトと、NF-κBの阻害作用によるものと思われる。

以下の論文では、Hsp70の発現はTh1型のサイトカイン(IL-2など)を誘導することで大腸粘膜の炎症進行を防止する可能性があり、新たな療法の一要素になりうると述べている。
(炎症性腸疾患の病因と治療におけるHsp70熱ショックタンパク質の役割)

また実験的潰瘍性大腸炎(UC)マウスにおけるゲラニルゲラニルアセトン(GGA)の投与は、Hsp70の発現を増強し、病変のない結腸における酸化的損傷を抑制し、用量依存的に腫瘍発生を有意に抑制したとする論文もある。
(ゲラニルゲラニルアセトンは大腸炎関連のマウス結腸発癌を抑制する)

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Hsp70を産生増加させる薬剤や物質

上記のような内容から、少なくともTh1型自己免疫疾患やTh2型の中でもSLEなどの全身性自己免疫疾患を罹患している場合は、Hsp70を産生増加させる胃薬(セルベックス、プロマック、ムコスタ)、その他漢方薬の甘草、芍薬を含む薬の使用は出来る限り控えたほうが良いのかもしれない。潰瘍性大腸炎やその他Th2型自己免疫疾患に関しては抗炎症やTh1型へのシフト、細胞保護作用を示して有効となるケースがあるのかもしれないが、冒頭でもあった「ヘルパーT細胞の増殖促進作用」を考慮すると、長期間連用するのは少しリスクがあるような気がする(ただ、この増殖率はIL-2に依存性があるとされているので、ステロイド剤などでIL-2が低下している場合はそれほど問題にならないのかもしれない)。

■テプレノン(商品名セルベックス)
テプレノンはプロスタグランジンの生合成を促進することで、胃粘膜を保護する薬である。主成分はゲラニルゲラニルアセトン(GGA、またはテプレノン)であるが、Hsp70誘導の機序は、GGAがHsp70のC末端と結合することでシャペロン活性を不活性化し、その結果熱ショック転写因子(HSF1)を活性化させることによる(その他Hsp60/Hsp90も誘導)とされている。テプレノンが含まれる市販薬としては、「セルベール」があるが、その含有量はセルベックスより少ない。
  • セルベックス(テプレノン50mg含有)
  • セルベール(テプレノン37.5mg含有)

以下は、マウスにGGA(400-600mg/kg)を2ヶ月間投与または非投与の条件下で、ノイズ曝露(4kHz、130dBの強烈な音圧レベルを3時間)させ蝸牛において産生した炎症性サイトカインの濃度を測定したものである。IL-6(Th2とTh17分化に関与)およびIL-1β(Th1の活性化に関与)の発現は、正常飼料のみを与えられた場合ノイズ暴露によって有意に増加し、これらのアップレギュレーションは、GGA投与によって有意に抑制されたとしている。

GGA supresses noise induced cytokines

(図:A(ノイズ無し、GGA無し)、B(ノイズ有り、GGA無し)、C(ノイズ無し、GGA有り)、D(ノイズ有り、GGA有り))
(ゲラニルゲラニルアセトンは、蝸牛におけるノイズ誘発性の炎症誘発性サイトカインの発現を抑制する)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0385814611001726

以下の論文では、腎虚血再灌流障害モデルラットへのGGA投与(400mg/kg)は、腎上皮細胞の損傷やマクロファージ浸潤を有意に減弱させたと述べられている。ラットの体重は300g程度とされているので、GGAは120mg投与されたことになるが、これを体重50kgのヒト成人に換算すると(ラットの1/5の代謝速度とすると)、4g程度で類似の効果が出るのではないかと単純計算できる。
(ゲラニルゲラニルアセトンは、Hsp70の誘導による虚血性急性腎不全を改善する)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0085253815507102

density of hsp70
(図:GGA(400mg/kg)単回および2回経口投与における、コントロールとのHsp70発現レベルの比較)

injury score
(図:管系組織損傷、上皮損傷、マクロファージ浸潤に関するGGA、GGA+ケルセチン、コントロールの保護作用の比較)

TUNEL-positive cells

(図:過酸化水素(0.5mmol/L)で処理した管系上皮細胞におけるアポトーシスの発生頻度の比較(TUNEL陽性細胞数の比較)。C/FはGGAで前処理した細胞とコントロールの比較)

一般的なヒト成人におけるGGAの服用量は添付文書において「150mgを1日3回に分けて服用」とされているので、4gというのは現実的な用量ではないようである。ただ、エーザイ株式会社の特許出願文書においては抗ウイルス剤としてのGGAの用量は「好ましくは250mgから1.5g」とされている。また実験的自己免疫性ブドウ膜炎マウスにGGA(500mg/kg)を投与した実験では、眼以外の炎症には触れられていないが、「安全マージンが広く、副作用のないGGAは免疫再活性化の予防または抑制において自己免疫疾患に適用可能であることを示唆している」と述べている。
(ウイルス感染予防・治療剤/エーザイ株式会社)
http://biosciencedbc.jp/dbsearch/Patent/ipdl.php?year=2005a&file=5WMtT8AJX/6rsn2AIexJ1w==

■ポラプレジンク(商品名:プロマック)
ポラプレジンクは、粘膜抵抗強化薬といわれる胃薬の一種で、Hsp70誘導の機序は主成分である亜鉛とL-カルノシン(ポラプレジンクはこれらの錯化合物である)によるものであるとされる。
(ポラプレジンクによる亜鉛補給は、Hsp70の誘導を介して、アセトアミノフェン誘発毒性に対するマウス肝細胞を保護する)
(亜鉛L-カルノシンは、Hsp72の誘導およびNF-κB活性化の抑制を介して、結腸粘膜損傷を保護する)

■レバミピド(商品名:ムコスタ)
レバミピドは胃粘膜防御因子を増強する胃炎や胃潰瘍の治療剤であり、RGM-1細胞(ラット胃粘膜細胞)においてHsp70 を誘導し、活性酵素や軽度の熱ショックに よる細胞死を抑制するとされている。

■カルベノキソロン(Carbenoxolone:CBx)
カルベノキソロンは生薬である甘草成分中のグリチルリチンの加水分解物であるグリチルレチン酸の誘導体のことである。機序は調べられていないが、HeLa細胞においてHsp70が誘導されたという報告がある(Hsp90/Hsp40は誘導されない)。

■ペオニフロリン(Paeoniflorin:PF)
ペオニフロリンは生薬である芍薬の主成分のひとつで、HeLa細胞においてHsp70/Hsp40/Hsp27を誘導したという報告がある。またマウスに対しては6.7mg/kg経口投与で胃にHsp70が誘導されたとしている。
http://stu.isc.chubu.ac.jp/bio/public/ann_rep_res_inst_biol_funct/annual-report_v7_2007/pdf/109.pdf#search=%27%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9+%E3%82%B2%E3%83%A9%E3%83%8B%E3%83%AB%E3%82%B2%E3%83%A9%E3%83%8B%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%88%E3%83%B3%27

■HDAC阻害剤(トリコスタチンA、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、酪酸ナトリウム、バルプロ酸)
HDAC阻害剤はマウスES細胞において早期分化を誘発し、Hsp70の誘導を誘発したとある。
(熱ショックにおけるヒストンデアセチラーゼ阻害剤のサブセットによって誘導されたHsp7)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21429295

酪酸ナトリウムに関しては、酪酸菌によっても腸内で産生されるが、筆者自身も服用しており気になったためHsp70誘導の詳細を調べて見ることにした。

以下は、コイの成魚を対象としてコントロール又は酸化大豆油(SBO:過酸化水素600mg/kgなどが含有、腸の炎症を誘発する)に徐放性マイクロカプセル入り酪酸ナトリウム(MSB:1.5時間または3.0時間徐放剤)300mg/kgを与え、腸の各部位(前腸:FG、中腸:MG、遠位腸:DG)におけるHsp70および各種サイトカイン(IL-1β、 TGF-β、TNF-α)の発現濃度を測定した実験であるが、その結果は次のように示されている。

  • 酸化大豆油(SBO)非投与群では、徐放性マイクロカプセル入り酪酸ナトリウム(MSB)3.0時間徐放剤の投与はHsp70産生に比例して、IL-1β/TGF-β/TNF-α産生が増加した(但し遠位腸(DG)では減少傾向にある)。
  • SBO投与群では、MSB3.0時間徐放剤の投与は、Hsp70産生に比例して前腸(FG)におけるIL-1β/TGF-β濃度が増加し、TNF-α濃度が低下した。

論文の最後のDiscussionにおいては、これらの炎症性サイトカイン増加は「恐らくコーティングされた材料、放出時間に起因する可能性がある」「我々の知る限りでは、養殖研究において酪酸ナトリウムが腸内のサイトカイン遺伝子における免疫応答を刺激するという報告はない」と締め括られていることから、恐らく酪酸ナトリウムそのものによる炎症性サイトカイン放出作用ではないのではないかと考えられる(ただやはりHsp70の作用によるTh1へのシフトは予想されるので、Th1型患者はHsp70合成を抑制する物質、又はTh1シフトを予防するような対策を取る必要があると思われる合成抑制作用のある物質としてはタマネギなどに含まれる「ケルセチン」がある。Th1シフトを予防する物質としては「ビタミンD3やβ-カリオフィレン」などがある)。

(酸化油の有無にかかわらずコイの成長、腸粘膜形態、免疫応答および接着細菌に及ぼすマイクロカプセル化酪酸ナトリウムの影響)
(ヒト赤白血球細胞におけるケルセチンによる熱ショックタンパク質合成の制御)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1138143/

■その他(ポリアミン、ナリンゲニン、L-スレオニン、(レスベラトロール)など)
ポリアミン(プトレシン、スペルミジン、スペルミン)およびそれらの前駆体オルニチンは豆や貝類、チーズなどに多く含まれる成長因子である。ナリンゲニンはグレープフルーツやオレンジに含まれるフラバノンで抗酸化物質である。L-スレオニンは必須アミノ酸の一種で外部からの摂取が必須である。レスベラトロールはHsp70を低下させたという論文と増加させたという論文の2種類がある。

(ポリアミンは、腸上皮熱ショック応答のグルタミン依存誘導を媒介する)
(ナリンゲニンは、クローディン4の発現によってHsp70を誘導する)
(L-スレオニンは熱ショックタンパク質の発現を誘導し、熱感受性の腸上皮細胞においてアポトーシスを減少させる)
(レスベラトロールは、熱ストレスによるHSP70/90、NF-κBおよびEGFの発現を調節する)
(レスベラトロールは熱ショックタンパク質を上方制御し、G93A-SOD1マウスの生存を延長した)

これらの薬剤や物質は、Hsp70を誘導するようであるがその産生量は各物質によって異なるため、一概にその物質を摂取したからといってTh1免疫が急激に増強されるという訳ではないと考えられる。しかし、これらの物質の高用量やいくつか併用して長期間服用していると(その他熱ショックタンパク質を増加させる生活習慣も含めて:高い温度での入浴、急激な運動、喫煙、長時間の日光暴露、強い精神的ストレスなど)、いつの間にか増強してしまっているという事はあるかもしれない。自己免疫疾患を防御する上で、まず何が悪化の原因になっているかを知って選ぶことが非常に重要になるのではないかと思う。