前回のブログで載せきれなかった、PPARγ活性によるマクロファージへの付随的抑制作用について書かれた論文がいくつかあるので、見ていきたい。

β-カリオフィレンなどがリガンドとなる核内受容体PPARγの活性は、TGF-βやIL-10のような抑制性メディエーターの産生に加え、単球からマクロファージに分化する際にM2型という抗炎症型マクロファージへ分化させる作用もあると言われている。

macrophage M2

https://www.researchgate.net/figure/Complement-regulates-macrophage-polarization-In-culture-M1-macrophages-inflammatory_fig2_265393767

ただこの発現や分化には時間がかかるような記述があったため、今回のカリオフィレンによる炎症抑制効果とは関係が薄いのかもしれないが、長期的には何らかの効果が現れるかもしれない。

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■PPARγ活性を介したIL-10によるマクロファージの炎症抑制

PPARγはTGF-βやIL-10のような抑制性メディエーターの産生を導くとされている。しかし一方でその産生は、例えば肺胞マクロファージに急性炎症を引き起こすブレオマイシンで処置を行い、2日後にPPARγ活性を誘導するアポトーシス細胞を滴下し肺組織中のIL-10のレベルを測定した研究では、以下のグラフのような結果となっている。気管支肺胞洗浄液(BALF )中のTGF-βとIL-10のレベルは処置の3日後に有意に増加し、7日目にピークに達したとされている。

TGF
IL-10

またIL-10はM1型マクロファージにおけるMHCクラスII分子の発現を劇的に抑制し不活性化したという記述もある。

アポトーシス細胞の取り込みによる、またはIL-10またはグルココルチコイドによる刺激によるマクロファージの生得的または後天的な不活性化は、抗原を提示し、炎症誘発性バーストを搭載する能力を強力に抑制する。古典的で代替的な活性化とは異なり、失活はMHCクラスII分子の発現を劇的に抑制する。

(PPARによるマクロファージの活性化と機能の制御)
(アポトーシス細胞滴下後のPPARγ活性化は、エフェロサイトーシスおよび分裂促進性サイトカインの調節を介して肺炎症および線維症の解消を促進する)
以下は、M1/M2型マクロファージの解説である。

マクロファージはその役割によってM1型とM2型に大別される.一般的に,M1マクロファージは炎症性単球がTNF-αやIFN-γなどを受けて分化し,病原体や寄生虫感染防御に働く一方,M2マクロファージは組織常在性単球がIL-4やIL-13などTh2型サイトカインを受けて分化し,組織修復などにかかわるといわれている

Classification of macrophage
生体内でのIL-10発現速度を知るにはもう少し調べなければいけないが、IL-10は酪酸菌でも豊富に産生されているという報告があるものの、夜間に急激に増悪する免疫応答はほとんど抑えられていなかったので、この機序による炎症抑制効果はそれほど高くないのかもしれない。

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■PPARγ活性は、マクロファージを抗炎症M2表現型に偏らる

PPARγ活性によるマクロファージへの特異な作用として、マクロファージを活性促進させる一方でマクロファージを炎症抑制型のM2型に分化するというものが報告されている。

(アレルギー性炎症の部位に浸潤した炎症性単球は好塩基球の産生するインターロイキン4によりM2型マクロファージへと分化し炎症の抑制にはたらく)
(「アレルギーの火付け役細胞が火消し役細胞に変わるしくみ」を発見)
(炎症と不整脈:オーバービュー)
3.3. ApiはPPARγを介したM1 / M2分極を調節する

多くの研究が、マクロファージM2の分極(代替活性化)の制御におけるPPARγの重要な役割を確立している(Odegaardら、2007、Bouhlelら、2007)。 Api自体がPPARγのリガンドであることが示唆されている(Liangら、2001)。本発明者らはさらに、ApiがPPARγを介してマクロファージ分極を調節するかどうかを調べた。 LPSで刺激すると、MHCII陽性細胞の割合は18.92%から55.03%に増加したが、同時にApiで処理した場合には35.40%に減少した。しかしながら、PPARγの転写活性化を阻害することができる特定のPPARγアンタゴニスト、GW9662への曝露は、ApiによるMHCII陽性細胞の還元を逆転させた。同様に、GW9662処理は、M1分極モデルにおけるCD80の発現およびCCR2、TNF-α、CCL4およびIL-1βのmRNAレベルのApi誘発性の減少をも阻害した。さらに、IL-4誘発M2偏光モデルにおいて、MGL1 / 2、CD206、Arg1、Ym1およびIL-1rを含むM2マーカーのApi増加発現または転写の予想される効果は、PPARγアンタゴニストであるGW9662によってブロックされた。これらの結果は、PPARγの活性がGW9662によって阻害される場合、M1 / M2分極に対するApiの効果が対応して抑制されることを示唆する。

Api誘導M1/M2移行におけるPPARγの役割をさらに確認するために、Raw264.7マクロファージにおけるPPARγの発現を特定のshRNAによってノックダウンした。最初に、ウェスタンブロットおよびqRT-PCRによってPPARγshRNAの有効性を確認した。 PPARγの発現がPPARγshRNAによって阻害された場合、M1(NOS2、TNF-α、CCL3、CCL4)およびM2(Ym1、CD163、CD206、Arg1)マーカーの両方の転写レベルに対するApiの効果は廃止された。さらに、PPARγはまた、PPARγプラスミドを構築およびトランスフェクトすることによってマクロファージにおいて過剰発現された。結果は、PPARγの過剰発現が、LPSまたはIL-4刺激マクロファージにおけるM2マーカーの発現を促しながら、M1マーカーの発現を阻害する上でのApiの効果をさらに増強することを示した。まとめると、これらの結果は全て、ApiによるマクロファージM1/M2分極の調節がPPARγに依存することを示唆している。

(天然フラボノイドモジュレーターによるPPARγの活性化、アピゲニンはマクロファージ極性化の制御を介して肥満関連炎症を改善し、炎症の抑制をもたらす抗炎症M2表現型をもたらす)
Macrophage Polarization

上記の論文では、アピゲニン(Apigenin)という植物由来のフラボノイドをリガンドとしてPPARγ活性させると、マクロファージがM2型に分極したとされている。

実験の詳細としては、LPSでマクロファージを刺激したところ約19%から55%の割合に増殖し、これをアピゲニンで処理すると約35%に減少したが、一方でGW9662というアンタゴニストへ曝露させるとアピゲニンの効果が失われたとしている。またPPARγアンタゴニストはアピゲニン処理によって減少した、CD80(M1分極型マクロファージのマーカー)、CCR2(ケモカイン受容体2:炎症性単球は炎症部位に浸潤する際にCCR2を介する)の発現や、その他炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-1βのmRNAレベルの減少をも阻害したと書かれている。

さらに、PPARγの発現をshRNA(短ヘアピンRNA)によってノックダウンした場合、アピゲニン処理によって減少したM1型のマーカーの転写レベルと、増加したM2型のマーカーのレベルが失われたとも書かれている。

マーカーの詳細についてはこちらにいくつかの解説がある。

phenotype
(Phenotype識別のためのマーカー選択)

詳細な各mRNA量については以下の図にある。

Api Regulates M1,M2 Polarization via PPARγ

上のグラフのa, bでは、青と青枠2本のグラフにおいてマクロファージへLPS刺激とアピゲニン処理を施し、加えてshRNAを施しPPARγ発現を調整した結果が示されている(青がLPS+アピゲニン、青枠がshRNA+LPS+アビゲニン)。

M1型マクロファージにおいて、アピゲニン処理でPPARγ活性が保たれている場合とノックダウンした場合の比較では、CCR3の発現は3:5程度の差が出ている。対して、M2型マクロファージに分化させる因子であるIL-4+アビゲニンとshRNA+IL-4+アビゲニンを比較した場合、M2型のマーカーであるCD163は15:2という明らかな差が出ている。

(実験方法の詳細:(a)はPPARγ発現プラスミドをマウス単球に遺伝子導入し、500 ng/mLのLPSまたは500 ng/mLのLPS+7.5 μMのアピゲニンで24時間処理しリアルタイムPCRで定量を行った結果である。(b)は、(a)の細胞を10ng/mLのIL-4または10ng/mLのIL-4 +7.5μMのアピゲニンで24時間処理しリアルタイムPCRで定量を行ったものである)

つまり、IL-4が存在する状態でPPARγを活性させるリガンドでマクロファージを処理すると、マクロファージは炎症を抑制するM2型へと分化し、そのレベルはこの例だとリガンドを滴下しない場合と比べて、7倍程度のM2型の増殖が認められるようだということを示している。

(そのため、マクロファージが炎症の主因である疾患では、IL-4は阻害してはいけないのかもしれない。またTh2型の自己免疫疾患ではPPARγ活性がどう働くのかについても、別途調べなければいけない)