制度会計対応現場のオナヤミ

会社側目線で見た、金商法、会社法、税法、内部統制、IFRSなど、制度会計の現場を書いていきます。 ネタがなくなると、読んだ本の感想でしのぎます。 原則火曜日更新です。

昔、ある人が新入生への訓示で言った。

「何になるかは分からないけども、何かにはなる私たちです。がんばりましょう。」

同じ苗から成ったイチゴでも、その味も形も一つ一つはまったく違う。

何かになろうと決めないうちに、自分は何者かになってしまうのだろうか…

もうしばらく、原則週イチ(火曜日)更新でがんばります。

前回の記事に、予想外に様々な反応をいただいて、少し気をよくしているB型が苦手です。

さて、領収書や請求書をPDFファイルなどに電子化して保存することを認めてくれる、というあれ(以下「スキャナ保存」という)には世の関心の高さを感じます。

先日、TKCさんのスキャナ保存をテーマとしたセミナーに出席したのですが、なかなかの盛況でした。

この制度は、うまく活用できれば様々な問題をクリアできる可能性があると思います。

今回は、スキャナ保存に取り組むにあたって考えた、「現実」への問題意識と、近づきたい「理想」について書いてみます。

私の問題意識は、次の二つでした。

(1) 保存場所

私の勤務先では、書類を段ボールに詰めて年間単位で保存しているのですが、箱数は明らかに増えています。

世の中にパソコンとプリンターが普及し、コピーのコストも昔よりはるかに安くなったこともあり、会計伝票とそれに付随する証憑のボリュームが、20年前よりもはるかに増えたのです。

それに加えて、税法の書類保管期限が伸びたこともあり、保管しなければならない箱は増える一方で、もう保管スペースに余裕がありません。

スキャナ保存は、この書類の増加を食い止められる、救世主に思えたのです。

(2) なんでも「紙」で仕事する文化を改めたい

そもそものところで、紙に印字されているということは、誰かがパソコンか何かでデータを入力して、それを出力しているということです。

せっかく誰かが入力しているのに、「紙」という汲み取りようがない形式で次工程に渡すことから、次工程の人も再び入力しなければならないという事態になっているのです。

この状況は、次工程の人はもちろん、前工程の人にとっても望んでいるものではないでしょう。

それでも紙を介して情報の受け渡しが行われる強力な要因は、税務上の根拠資料は絶対に「紙」で残さなければならない、という制約があったからだと思います。

ところが、様々な条件はあるものの、税務側が「紙」を絶対の条件としないところへ降りてきてくれるのであれば、発想が自由になる部分が出てきます。

「それ、税務署も電子ファイルで認めてくれるよ」となれば、なんでも体裁を整えた書類を作るのではない、新しい業務のやり方をひらめくかもしれません。

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上記の問題意識に加えて、会計士のN先生(取組み中のプロジェクトがこちらの都合で座礁するリスクがあるので、今は名前を伏せる)から教えてもらったキーワードが「効率化」でした。

(3) 探す時間を減らせ

事務員の勤務時間中の行動について、とある調査の結果分かったことは、事務員は勤務時間のうちけっこうな割合で「捜し物をしている」ということだったそうです。

この「探し物をする時間」を減らす方法の一つが、書類を電子保存することで、効率的に捜し物をできるようにするということなのです。

・紙の束の山の中から、1枚を探し出さなければならない

・その紙がどこにあるのか、特定の人しか分からない

こういった状況を改めるために、書類を電子化し、検索できるように必要なキーワードを付し、例えばサーバ内の特定の場所に保存するようにするのです。

こうすれば、紙の束を一枚ずつめくる作業はなくなるし、そもそも部外者はどこにあるのかすら分からない、という状況がなくなります。

営業さんから経理への「あのときのあれなんだったっけ?」というお問い合わせに対し、「データ保管場所へのアクセス権を渡すから自分で探せ」と答えるようになれるかもしれません。

こうなれば、経理が各部からのご希望に答えるために倉庫へ行って、請求書をひっぱりだしてくる、という状況を解消できるのです。

また上記の状況になれば、TKCさんのセミナーで講演されていた方によれば、税務調査対応も大きく変わったそうです。

調査官にデータの保存場所へのアクセス権を付与することで、調査官が自ら検索し、自ら印刷するようになります。

調査官から17時に至って大量の付せんが貼ってある案件ファイルを渡されて、「明日コピーをください」というあれがなくなったそうです。

こういう形で作業時間が減るのであれば、まさに生産性の向上につながるはず。

これは魅力的です。

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とはいえ、ここまでさんざん書いてきた「理想」ですが、とはいえねえという「現実」があるのも事実。

メリットがあればデメリットもあるものです。

次回ではないものの近いうちに、私が思うデメリット、というかオナヤミ、心配事を書いてみます。

2016年度が始まって第1四半期決算も担当パートはほぼ収束。

会計も税務も本年度は今のところ目新しい論点がなく、B型会計士も淡々と監査している模様。

少し緊張したのは、税金計算の税率を置き換え作業したところでしょうか。

『税務通信』 NO.3413の「全国都市法人住民税率・事業税率一覧」を重宝しました。

税金計算ソフトを使えば悩まないで済むですが、各種項目をきっちり登録しないとグダグダになってしまうのがソフトの扱いの難しいところ。

ということで一発目の数字を作るときは、エクセルで手計算することにしています。

だから税率改正時は、いつもよりも気を遣う、というお話でした。

さて、前置きが長くなりました、本題は以下ですがあくまでも予告編とご理解ください。

「国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存」を導入すべく、年初より取り組んでいます。

領収書や請求書をPDFファイルなどに電子化して保存することを認めてくれる、というあれ(以下「スキャナ保存」という)です。

動機としては、証憑の保管場所が逼迫していることから、これを導入することで、保管書類を削減しようということです。

ただ過去にさかのぼって「スキャナ保存」することは認められませんので、まずは出血を止めて、保管年限の到達したものから順次捨てていくという流れです。

これからの導入なので、捨てられるものを捨てきるまでには10年くらいかかる、気の長い話になります。

しかも、とにかく早く導入して成果(先月もらった領収証の現物をシュレッダーする姿を見せること)を周知したいことから、まずは規模の小さい子会社で取り組むことにしました。

予算措置もなんとかクリアできたので、ハード面で必要なシステム環境作りもメドがついたはず。

あとはこれから約2ヶ月のうちに、諸々の規程といったソフト面を整備して届出書を税務署に提出すれば、2017年から本番適用開始できるかな、と目論んでいます。

こういった流れの中で、以下のような項目についてこれから書いていきたいと考えています。

・必要な機器(ハード環境)

・スキャナ保存に係る社内規程(ソフト環境)と税務署への届出書

・理想と現実

・「理想」への疑問

・周囲への波及効果

現在進行形のお話なので、「連載」という形にはなりませんし、途中で軌道修正する可能性もあります。

でも、もし同じ試みを検討している方の参考になれば、あるいはこれから取り組まれる方にとっての「しくじり先生」になれば、と思います。

気の長い話になりそうですが、お付き合いください。

本業がハイシーズンにつき、休業いたします。

四月から続いてきたこの繁忙も、今月さえ乗り切れば・・・と思います。

今さらではありますが、先ごろ各所で話題になっていたこちら↓を読みました。

『内部告発の時代』 深町隆・山口正義 平凡社新書

本書の意義や、「内部告発」についての考えはともかくとして、いつものごとく本書を彩る興味深い部分をご紹介します。

・オリンパスが倒産するほど追い詰める必要はない

オリンパスさんのとばし事件に付随して、そのほかの不祥事記事を書いていた記者さんが以下の引用文の通り述べられます。

P.63 数多くいたオリンパス社内の情報提供者

ただ、この件で二度ほど記事を書いたところでそれ以上の追及は止め、矛を収めることにした。オリンパスが倒産するほど追い詰める必要はないし、やり過ぎると改竄に関わった社員に責任を押し付けてクビを切ってしまう恐れもあったからだ。

追及する側が適当なところで「矛を収める」ことに、意外性を感じます。

「倒産するほど追い詰める必要はない」というのは、実力なのか、はたまた強がりなのか…

記者さんの胸先三寸次第、ということは、キミ分かっているよね、ということなのかもしれません。

・経理、人事、総務などの本社管理部門の人材レベルは低い

こちらは内部告発をされていた方が書かれた部分からご紹介。

同業者ゆえに気になった一文です。

P.155 オリンパスという会社

技術オリエンテッドの会社だけに、開発・製造には優秀な人材を擁し、年間の研究開発費も連結売上高の7%前後、金額にして700億円程度に達するなど、会社の規模の割には潤沢だ。東京・八王子にある技術開発センターや福島県会津若松市や白河市、青森県黒石市の内視鏡関連工場は活況を呈している。
一方で、西新宿の本社ビル内の14階、15階にある経理、人事、総務などの本社管理部門の人材レベルは低い。
このアンバランスがオリンパスの大きな謎の一つである。

まあ、オリンパスさんの件は会計上の事件という括りになってしまったので、開示させてしまった経理の責任、という理解があることは分かります。

そのため、どうしてもオリンパスさんの経理さんが、「ゴールを決められたゴール・キーパー」、「サヨナラヒットを打たれたストッパー」的な目で見られるところがあるのでしょう。

リアルのお知り合いは一人もいないので実際のところはさっぱり分かりませんが、自分も勤務先で同じようなことが起きてしまったら、引用文のように書かれてしまうことを想像すると、惧れを感じます。

・社員の秘密を暴き、弱みを握る

これはすごい、と感じたのがこちら↓

P.215 内部監査部門の切り離し

また、これまで、社長直轄だった監査室が、菊川会長の直轄となった。監査室は経営者の指示を受け、内部監査を行う部署である。この組織は、山田氏の手先となって社員の秘密を暴き、弱みを握るので「ゲシュタポ」と恐れられていた。菊川氏直轄となったのは新社長ウッドフォード氏に、粉飾決算に関わる情報が漏れるのを警戒したための措置と私は考えている。

内部監査で「社員の秘密を暴き、弱みを握る」ことができるとのこと。

会社メールを閲覧していれば、小は「飲み会の連絡してた」から、中は「お仕事週報ブログを書いている」、大は「社内恋愛」「取引先との貸し借りを精算するすこし不合理なお取引」まで、様々なことは分かるでしょうが、それでみんなが言うことを聞くようになるものなのか…
でもそれができたから様々な不都合をクリアできたのでしょう。

ここまでくると、内部監査部門もやりがいを感じられるのかもしれません。

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冒頭にも書きましたが、本書の意義は今回ご紹介した部分ではありません。

ご紹介部分はあくまでも本題を彩る多彩なエピソードのごく一部。

今後は内部告発が増えるだろう、という予測はこちらにもある通り。

東洋経済オンライン:アベノミクス終焉で日本はかなり厳しくなる


今の日本企業には、理不尽な、ときに順法精神に背くような要求をさせられ、「自分たちは虐げられている被害者だ」と思っている従業員が多くいます。従業員の不満が溜まっている中にコーポレートガバナンスや内部告発制度が出てきたので、隠れていた不正が表に出るようになってきました。

立場はともかく、本書を読むことで来るかもしれない危機への心を準備を進めておくべきなのでしょう。

いろいろあって、採用面接をする側に回ることになりました。

そもそも今まで自分が面接を受ける側になることはあっても、合否を判定する立場になったことはありません。

あと気になっているのは、会社として何らかの面接者教育をする様子がない。

ということでなんとなく問題意識を感じて買ってきたのがこちら↓

『採用・面接で「採ってはいけない人」の見きわめ方』 松下直子 同文館出版

いったいどんな人が面接に来るのか分かりませんが、明らかにダメな人くらいはその判断をできるようになっておかないと、後工程の人たちに迷惑をかけてしまう、と考えた次第です。

本を読んだだけでできるようになるか分かりません

成果の報告は後日(真の結果が分かるのは何年も先かもしれません)として、読んだ本は弊ブログと畑違いですがとても面白かったので、興味深いところをご紹介してみます。

・採用ミスは、職場メンバーの時間を食い潰す

本書では冒頭に、採用ミスを犯すとどんなことが起きるか解説します。

例を挙げると、こんな感じです。

P.20  3 採用ミスは、職場メンバーの時間を食い潰す

会議という時間の使い方ひとつ取っても、その本質を見れば一様ではないのです。
みなさんの会社では、社員の方々はいったい何にエネルギーを使っているでしょうか。また逆に、もっと何にエネルギーを使うべきだと思っているでしょうか。
採用ミスは、この時間の使い方の中で職場の「心理ゲーム」を増やすことにつながりかねません。ミスマッチの当事者が、心理ゲーム戦を周囲の方々に持ちかけるからです。
もちろん、本人にはそのような意識はありません。また周囲だって、そんなゲームを持ちかけられたという認識はないでしょう。
だからこそ、ゲームは何度も繰り返され、職場メンバーの「時間泥棒」になるのです。

ちなみに、「心理ゲーム」については次のように解説されています。

※ゲーム
相手を、自分の思い通りにコントロールしようとして行われる非生産的なコミュニケーション。好意を持つ相手に、わざと嫌がらせや挑発をしたり、会話の取っかかりとして皮肉めいた批判や意地悪な発言をするような時間の使い方

いますよね、表現は違うけどいろんな「駆け引き」を仕掛けてくる人。



狙いはなんであれ、自分が周囲よりわずかでも優位に立とうとしたり、自分をおとしめるようなことを言いながら、かえって同僚を非難したりしてきたりと、いろいろなパターンがあります。

非生産的な作業を好まれる方は、できるだけ招き入れたくないものです。

・やはり同様に上司と後輩しか現れてきません

画像の引用をしないので、言葉だけで簡潔に以下の内容を伝えようとしますが、うまくいくかどうか。

その人となりを知るツールとして、こういう↓ものを使うそうです。

・タテヨコの直線で十文字に区切り(四象限のマスをイメージください)、タテ軸を年上(年上)/目下(年下)、ヨコ軸を社内/社外の軸とする。

・中心点を自分として、中心から近い人たちの名前を書き出していく。

P.146

坂本先生(引用者注:このツールの開発者)のひとつの結論はこうです。ローパフォーマーといわれる方にこのシートを書いていただくと、上司や後輩といった人間関係しか出てきません。
(中略)
同様に、40代になってもうだつが上がらないといわれている方にこのシートを書いていただくと、やはり同様に上司と後輩しか現れてきません。

引用部分を読む前に試しにやってみたところ、上司と後輩しか名前が出てこない…

ツールから判定すれば、「ローパフォーマー」にして、「うだつの上がらない」に該当しています。

他社の入社試験を受けに行ってこれが出てきたら、合格する気がしません。

いまの職場にしがみつくしかないようです。

ちなみに、本書にはこういう記述がありました。

P.149 コラム

その応募者の、高校や大学の先生に対する印象は、ぜひ確認してみてください。
学校の先生に対する受け止め方は、その方が組織に入ってから、上司に対する受け止め方に転嫁しやすいといわれています。学校の先生に対して「つまらない先生ばかりだった」としかいえない方は、組織に入ってからも、「うちの会社は、魅力のない上司ばかりだ」といいかねないからです。
もちろん人間ですから相性もありますが、これまで生きてきた人生の中で、人を尊敬するという感覚を持つことができない方は、組織に入ってから、よほどの出会いがない限り、その感覚がわからないのです。

これは勉強に対しても同様とのこと。

こういう質問は投げかけてみる価値がありそうです。

最後にこちら。

・「仕事」を探すのではなく、「組織」を探せばいいのだ

P.205 2 採用担当者も、応募者から「見られている」

応募者たちも、騙し合い、化かし合い、負かし合いのような就職活動からそろそろ抜け出したいのでしょう。「仕事」を探すのではなく、「組織」を探せばいいのだということを、就職活動の応募者も理解しはじめています。

いっとき、「就社」ではなく「就職」だ、という文言が流行ったことを覚えています。

また、「正社員」を「社畜」と罵っていた風潮があったことも知っています。

世の流行り廃り、というものなのでしょう。

私のところへ面接に来る人は「経理職」を求めてやってくるのか、はたまた、「社風」に惹かれてやってくるのか。

外からリサーチして、どれだけ正確に「社風」や「風土」を知ることができるのか分かりませんが、それでも「入ってみたいな」と思ってもらえる「組織」は作っていきたいものです。

先般、急に子会社を作ることになりまして。

新会社の銀行口座の開設は、登記が完了していないとできないので、会社を作るときは口座開設に必要な日数も含めて登記申請の日を逆算する必要があります。

まあ、普通は営業上で諸々の段取りがあるので、登記申請は余裕をもって早めにしておくものだと思います。

ところが何があったか、結果として特急案件になってしまい、登記手続きはともかく、銀行口座の開設が開業の日に間に合いませんでした。

私個人の感覚では、会社の開業というか、1行目の仕訳は「○月×日 資本金を元入れして事業を開始した」とあるべきであって、資本金の入金もなしに事業を開始しちゃいかんだろう、と思います。

資本金の入金仕訳の前に、商品を掛けで仕入れてきたり、事務消耗品を未払金勘定で購入する取引が起きることに、違和感ないですか?

資本金もなしで商売を始めた場合、そもそも、その掛け取引の与信はどこから湧いてきたんだ?と疑問に思うのです。

その、「いかんだろう」や違和感が現実になってしまったのです。

「あるべき」の観念に囚われていた私には、この現実はけっこうな衝撃でした。

想像力が足りてない orz

もっとも、親会社には資本金相当の預金があったわけですから、どうしてもというのであれば資本金を現金で入金させるという方法はありましたが、こんなの紛失・盗難リスクばかりで現実味はありません。

あるいは開業日の一発目の仕訳として、「未収入金/資本金」も考えられますが、これはこれで目的を見失っている…

その後、銀行側担当者さんのご尽力もあり、開業後数日内に口座は開設されて、その口座開設の日にその会社1行目の会計仕訳として、資本金の入金を記帳しました。

その開設までの数日間にあった取引は、取引日を繰り延べて記帳したのですが、同月内の話なのでまあ愛嬌のうちでしょう。

とはいえ、こんな融通を利かせるのもやり過ぎると粉飾の素地になりかねないことも懸念します。

こんなことになってしまったのは、つまるところ会社設立・運営について抱いているイメージに新会社関係者間の乖離が大きいから。

この乖離は、想像がつかないくらい大きいようです。

先般行ってきた「TKC税務セミナー」の後半です。

後半のタイトルはこちら↓でした。

・三菱商事株式会社ご担当者が語る 「三菱商事グループにおける税務コンプライアンス向上に向けた取組み」

ご講演から、印象に残った部分をご紹介します。

・税務コーポレートガバナンスのため、「税務基本規程」を制定

前半の講演テーマである「税務コーポレート・ガバナンス」に対応して、「税務基本規程」を制定したとのこと。

この「税務基本規程」は、経理規程等の規程類と同格であり、「税務基本規程」に反する行為は社規違反の扱いになるのだとか。

「税務コーポレート・ガバナンス」の実践を外部から見ても分かるようにする、一つの方法だと思いました。

「ヘンなことするな」と、自発的に自制を効かせやすくする面でも良策です。

ただ、この方法を選択するには、それなりの風土がないと難しいだろうなあ、とも思います。

・人事ローテーション

お話を聞いた限りでは、経理部門内とはいえ、3~5年で人事異動してしまうそうです。

説明してくださった方の経歴も実際にそうなっていました。

組織内の専門知識蓄積において、この頻度でローテーションしてしまって大丈夫なのかなあ?とも思います。

しかし、固い決意でローテーションを必ず実施するのであれば、各人の仕事ぶりもそれに対応するものとなるので、仕事が属人化せず業務のマニュアル化が推進されるのかもしれません。

このローテーションを実施できるだけの構成員数と、ローテーションの実施による効率ダウンを吸収できるだけの企業体力があることが、このルールを実施するための条件なので誰にでもできる方策ではないようです。

・「連結納税」導入が子法人とのコミュニケーション拡充につながる

「コンプライアンスができないと、コーポレート・ガバナンスはできない」という趣旨のお話を、説明者は繰り返されていたように感じました。

普通であれば異論が存在しない「コンプライアンス」を推し進めれば、「コーポレート・ガバナンス」も自然と充実する、という考え方だと思います。

味気のない話に聞こえますが、「税務」コーポレート・ガバナンスである以上、そういう思考になっていきます。

(目的を見失ってはいけない)

この流れである以上、納税も連結にすると、税務関連処理も親法人が一定の管理をしなければならないため、コミュニケーションが増えていきます。

連結納税をきっかけとしてコミュニケーションが増える、そして「コーポレート・ガバナンス」が良くなっていく、こういう良いスパイラルが生まれるのならすばらしい。

某弊社には遠い世界の取り組みのように感じられましたが、より良い世界へ少しずつ近づいていきたいものです。

先週、更新お休みのお知らせをしたところですが、セミナーネタができたので古くならないうちにアップすることにします。

TKCさんの税務セミナーに行ってきました。

個別のタイトルが長すぎて、記事タイトルに書くこともできず、難儀しているのですが、そのまま書き出すと下記の通りです。

・国税庁調査査察部ご担当者が語る 「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組に関する最新情報」

・三菱商事株式会社ご担当者が語る 「三菱商事グループにおける税務コンプライアンス向上に向けた取組み」


前半の国税庁からの件は、今のところは国税局特別国税調査官所掌法人(資本金40億円以上等の大きな会社のこと)だけが対象ですが、いずれは裾野を広げて来るであろうということで聞いてきました。

ご説明いただいた方は、説明内容が当局の見解から絶対に逸脱しないようにという配慮からか、ほぼ資料読み上げ方式。

内容的には、公表済み資料の説明がほとんどでしたが、今すぐ我が身に降りかかっている課題でないことから、閉じこめられて読み聞かされないと勉強する気分にならないタイプの課題でしたので、私にとっては役に立つセミナーでした。

税務調査の際に確認されるとしている「税務に関するコーポレートガバナンス確認票」は、意外に回答しにくいなあ、というのが担当者としての実感ですが、提出された会社さんはどのように書かれたのか興味があるところです。

そう言いながら過去記事を探ってみたところ、本件について私、4年くらい前にも同様の記事を書いていた模様。

【税務】 「税務に関するコーポレートガバナンス確認票」?

世の状況はあまり変わっていないようで、相変わらず「確認票」そのものは国税庁HPでも公表されていない様子。

セミナーに行けば配布しているので、秘密にしているわけではなさそうですが、あえて公にすることもないだろう、ということなんですかね。

他に講演では、「申告書の自主点検と税務上の自主監査」という説明があり、「申告確認表」や「大規模法人における税務上の要注意項目確認表」についてお知らせがありました。

確認表の対象は、「調査課所管法人の皆様へ」なっていますが、小さい会社さんでも有為と思われます。

様式はこちら↓にあるので、興味のある方は是非どうぞ。

「申告書の自主点検と税務上の自主監査」に関する情報(調査課所管法人の皆様へ)


なお、この確認表を使ったかどうかは国税庁も気になっているようで、申告書に添付する「会社事業概況書」の一番下に、「申告書確認表等の活用状況」という欄が作られています。

ご説明いただいた方は、「使用の有無で、税務調査に決して影響はありません。」とおっしゃっていましたが、実際のところ使用していなかった場合に税務調査で誤りの指摘を受けた場合、チクチク言われることは予想されます。

また、確認票を使ったよ、と言ったものの、調査で記入内容と違う事象が見つかってしまった場合にも、これまたチクチク言われそう…

どっちを選んでも明るい未来を想像できないところが、私の人間性なのでしょうね。

あと国税庁の方は、「ぜひ確認表を活用いただきたいが、申告書には添付しないでください」ともおっしゃっていました。

以上三点、ご留意ください。

セミナー後半の三菱商事さんの件は、また後日に。

題記の通り、しばらく更新をお休みします。

法人税の申告時期に、新規の業務が重なって、けっこう負担を感じています。

今さら負荷がかかるということは、今までが緩かったのかもしれない…

形成を立て直せたら、また更新します。

話は「連結エクセル化」からどんどん転進し、これからしばらく、「会社側経理実務担当者の育成」というテーマでオナヤミを書いていきます。

実は私、以前からずっと気に病んでいることがありまして。

とある本で読んだ、「大企業の経理出身者は自分で決算一つ締められない」、が、ずっと気になっています。

私が勤務しているのは「大企業」とは言い難いのですが、それでも「自分で決算一つ締められ」るかと言われると、まったくもってムリです。

販管費以下はなんとかなりそうですが、製造費用と在庫のところがさっぱり分かりません。

製造業の場合、加工途上の仕掛品評価なんて、請求書などの外部証憑があるわけもなく、最後は自身で決心するしかない。

そして決心するためには、原材料や加工・組立などの製造過程への知識が必要で、その知識の核心は本では得られません。

そして私にはその知識の核心がない…

とはいえ、製造費用は特殊だから横に置いてよし、と言ってもらえるかもしれない。

そこで製造費用は保留したとしても、実際のところ、仮に転職したとして、全く知らない会社で前提知識白紙の状態から「決算しろ」と言われたとして、全てこなせる人なんているのでしょうか?

例えばあえて細かいところをいくつか書き出して見ますが、下記を全て独力でこなせるなら「即戦力」の可能性は極めて高いと思います。

・固定資産の取得と売廃却から、固定資産の棚卸までできる。
・未収未払といった決算調整の勘定も漏れなく処理できる。
・各種引当金他決算調整項目の会計と税務の調整もできる。
・事業所税、固定資産税といったマイナーな税目の申告納付もできる。

(↑今、業務上これらで悩んでいます…)

「あえて細かい」の例挙が上記なので、メインの「売上」「仕入」に関係するところや会計基準の新設、改正対応や開示関連業務はできて当然。

また、ここまでやったからには、当然に監査法人対応と税務調査対応もできないとダメと言われそうだと思います。

ここでいう「対応」とは、先方が要求した資料を持っていきました、レベルではなくて、双方の見解が一致しないグレー案件において、どちらも妥協できる着地点(相手の言い分のまま、ではない)まで自力で交渉をまとめられる、というレベル感でお願いします。

さらには当然に連結(決算だけではなく、「納税まで」だ)でも対応できないと、許してもらえないと心配です。

あと、金融機関との借入金や預金の金利交渉は外せない能力でしょうし、たとえ借入金がなかったとしても資金繰りなどの財務知識も必須。

んー、こんなスーパー超人いるのか???

いないよね。(あくまでも、入社2ヶ月でできる、が条件です)

とはいえ自分はともかく、後輩が「大企業の経理出身者は自分で決算一つ締められない」と言われてしまうのは指導係としてやるせない。

とりあえず、小さい子会社の経理業務全般を任せることで、その会社の経理関連項目全般へ関心を向けさせる指導をしていますが、これで例えば他社へ転職しても通用する経理パーソンになるのだろうか?という心配は残ります。

まあ答え合わせをする方法もないのですが…


上記の見解から都合の良い考え方を抽出すると、「幅広い経験を積んでおくことだ」という見方もあるかと思います。

結局のところ、人間が一定の日数のうちに経験できることには限りがあります。

浅い経験でも間口を広く取るか、深い経験を求めて間口を狭くするか。

「大企業の経理出身者は自分で決算一つ締められない」に対応するためにはどちらが良いのか?

私が後輩に実践している現在進行形の方針は、できるだけ多様な種類の取引に触れる経験を積むことで、未知の取引でも類似の取引などから自力で会計処理の理屈を構築できる人材になってもらいたい、ですが、うまくいくのかどうかはさっぱり分かりません。
正解の見えないオナヤミは続きます・

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