制度会計対応現場のオナヤミ

会社側目線で見た、金商法、会社法、税法、内部統制、IFRSなど、制度会計の現場を書いていきます。 ネタがなくなると、読んだ本の感想でしのぎます。 原則火曜日更新です。

身長130センチだけど、26インチ(タイヤ直径66センチ)の自転車に乗りたいな。
でも、普通の自転車は足が地面に届かないよ。
だったらサドルを下げればいいじゃない、タイヤよりサドルが低い自転車あるよ。
これなら長く乗れるから、親御さんも一安心。
何か別のリスクを抱えたような気もするけども、課題を一つずつクリアする道を探します。

もうしばらく、原則週イチ(火曜日)更新でがんばります。

題記の通り、しばらく更新を休止します。


「年度末で忙しい」というよりも、「働き方改革」のため、繁閑に関係なく時短せざるをえなくなり、目先のこなすべき業務のその先を考える余裕を失いつつあります。

しばらくすれば、体勢を立て直して、ブログに書くようなことも考えられるようになるとは思うのですが…

ローカルファイルの項も昨年から中途半端に終わっていて、その後、当局より訪問助言をいただいたこととか、ネタはありのに書けていません。

折を見ながら、また少しずつ書いていきます。

北朝鮮情勢といい、国内政治といい、何だか予想外な展開が続きます。

期末であるところの3月末にはどうなってしまうのでしょう…

さて前回、過去データを新しいシステムに移すのは大変だ、というお話を書きました。

今回は、で、それを使うのか、という件です。

いろんな手間暇かけて移行させた過去データですが、実際のところ使い途がそう多いわけではありません。

大きく分けて、次の二つです。

・業務上、過去の数値、処理方法に当たりたい

この保険料あのときどう処理したか、とか、前々期の交通費の実績みたい、というニーズがあります。

問題はこういったニーズと、移行にかけるコストの評価です。

システム業者さんの話を聞く限り、それなりに大きい過去データの移行はユーザー側だけでできるものではありません。

少なくとも新システムに過去データを入れるところまでは、お金を払って移してもらうことになります。

ここから先の検証をどこまでやってもらうかが、さらなる追加コストの多寡の分かれ道です。

そしてこの検証仕事を外注した場合のつらいところは、検証結果の検証をどこまでするか、という循環参照のようなオナヤミに行き着くところです。

世の中、外部業者さんに丸投げでいい場合と悪い場合がありますが、過去データの移行業務はどこまで投げていいのか…

だいたいのところで内容が分かればいいよ、というのであれば、お任せでもいいような気がしますがそれでいいのか?

ここまで悩んで支払ったコストと、過去資料参照で得られるベネフィットを比較した場合に、それに求められる精度はどこで釣り合うのか悩ましい。

それに加えて、次の課題が出てきます。

・「過年度遡及修正」をすることになったら

「過年度遡及修正」なんて概念が日本基準になかったときは、後日明らかになったものはドカンと当期決算書に反映させれば良かったので悩みはありませんでした。

ところが、「過年度遡及修正」をせざるを得ないとなると、あまりいい加減な過去データしかないと困ったことになると思うのです。

(注:私、過年度遡及の実際処理をしたことがないので、この項は、いざという時を想像して書いていることにご留意ください)

「過年度遡及修正」をする対象が最初から分かっていれば苦労しませんが、通常はどこで問題が分からないので、想定上はすべて、と思わざるをえません。

となれば、過去のデータはやはり完全でなければならないのか。

ついでに私の疑問点を書いてみると、そもそものところ、過年度遡及修正することになったとして、その修正処理はいちいち会計システムに仕訳データを突っ込んで決算書を作り直すのでしょうか?

修正対象の決算書に、修正項目を勘定科目ごとに足したり引いたりするだけで修正後の決算書が出来てしまうのであれば、やはりあえて完全な過去データを持っていなくてもなんとかなりそうな気がします。

まあこれも修正の範囲次第ですが。

最も多い場合で5年分(四半期開示を考えると20セット)の決算書を修正する場合に、その修正がすべてハンドとなるとそのしんどさはけっこうなものになるはずです。

とはいえ、過去データに仕訳を投入して月次繰越、年度繰越をやり直して、という実務も想像しにくい部分があります。

会計システムを作っている人たちは、この件についていかがお考えなのでしょう。

ただ、「過年度遡及修正」自体がそもそものところイレギュラーな事案であり、最初からそれに備えて入口を準備しておくものではないので、「当システムは過年度遡及に簡単に対応できます」は会計システムのセールスポイントにはならないのでしょう

とはいえ、なんの備えもありません、というのもなんですので、なんか策は準備してあるものと思うのですが、いかがなものなのでしょう。

いずれにせよ繰り返しになりますが、過年度遡及なんかなくて何でも当期の特別損益で処理ができたころは良かったなあ、と思うばかりです。

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最後にもう一つ、過去データは移行させず、旧システムを維持して残し続けるという選択肢もあります。

普段は参照用、過年度遡及修正の有事のみ入力可能、としておくのです。

ウィンドウズなどのOS更新に対応できないとか、ウィルス問題があるので外部ネットワークには原則つなげないなどの課題は生じますが、ある面では楽な方法です。

いろいろ考えた結果、この方法を選ぶ方が多いと思うのですが、いかがなものでしょう。

春めいてきた中で、目には見えませんが花粉が飛んでいるように感じます。

インフルエンザから花粉と、季節は変われど憂鬱な材料には事欠かないものです。

さて、会計システムを更新するときに、悩むのが過去データの取り扱いです。

システムの素人意見では「移せる限り全部持っていってください」となりますが、現実はこれまた厳しい。

・仕訳データを入れたらいいだけ?

今どきのことですから、会計システムにはCSV型式などの外部データを取り込む仕組みが標準で準備されています。

だから、ここに旧システムから仕訳データを抜いてきたものを突っ込めばいいんだろ、と単純に考えます。

ところがです。

他メーカー製へ乗り換える場合はもちろん、同一メーカー品のバージョンアップであったとしても、そのまま単純に突っ込めるものではないのです。

システムが違えば持っておくべき情報が違うわけで、旧システムが持っていなかったデータを新システムが持っている場合には、旧システムから取り出した仕訳データを加工しなければなりません。

たいていの場合、新システムの方が複雑なセグメント計算や部門集計に対応しているため、旧システムにはなかった集計用コードを旧システムのデータに追加する作業が普通に発生します。

システム側が、使わないなら空欄でいいよ、と言ってくれればたいした手間ではありませんが、何もしなくて良いというケースは稀です。

一番困るのは、新システムの勘定集計コードや部門集計コードが、旧システムの体系と違いすぎて、どうしたものやらという場合でしょうか。

「コード体系」の違いは、導入システム決定後に発覚しがちです。

会計システムの営業さんは「移行、簡単にできますできます」と言いますが、実際のところまで深く考えていないように見えるし…

もっと下世話なケースでは、利用会社が独自に使用している案件管理コードの桁数や「摘要欄」の文字数制限が、新システムの方が少ない場合には、中途半端に切れると具合が悪いので人力による編集作業が必要になります。

単純に「置換」で済むような課題ばかりであればよいのですが、そうは行かないことの方が多いでしょう。

過去のデータを移行させるには、その前段階で意外に手間がかかるのです。

・検証がこれまた面倒

過去のデータをなんとか新システムへ移行させたとして、その移行が正しく実施されたか、という検証はとてもつらい仕事です。

単純に会社全体の損益計算書と貸借対照表を照合して、旧システムの出力と一致していればOK!、で許してくれるのであれば楽ちんです。

でも、部門別集計は正しい?、月次ベースでも各出力は一致している?、摘要欄が変なところで切れてない?、文字化けしてない?ということ等まで検証するとなれば、その手間は膨大になります。

これを移してきたデータの年数分繰り返すとなれば、たくさんの年数分を移すのは気が引けてくるはずです。

今どきのことだからそれくらい一致しているだろう、と思ってしまうとモチベーションはちっとも上がらないし、またエラーが見つかったら見つかったでその後は気が重い修正作業が待っています。

これで全部か?と疑い出したらきりがないことを考えると、見なかったことにしようという気持ちになるのです。

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この項、あと一回続きます。

監査部会やディスクロージャーワーキング・グループから議事録が公表されていて、ご紹介したいところですが業務に追われてまとめきれず…

会議内容がシンクロする部分があったりして、興味深い展開となっています。

ただ、どう見ても会社側が楽になることは考えていないようなので、単純に「世の中が良くなる」と気楽にはなれません。

さて、個別会計システムの更新の件です。

・見積書を作ってもらうに至るまでがすでにしんどい

会計の基幹システムではありますが、更新するとなればやはり従来品のバージョンアップで良いのか?という疑問がついて回ります。

これ他のに変えると大変だからこのままいきましょう、と担当者が訴えたとしても、経営者は「ゼロベースで最適を模索すべきだ」と言わざるをえません。

そこで他システムの営業さんにも、見積作成依頼の声をかけることになります。

彼らにしてみれば10年に一度の機会ゆえ、いいご提案をしたいとヒアリングにお越しくださいます。

前々回にも書いた通り、個別会計システムは周辺システムがたくさんくっついていることが多いので、どこまでを対象に見積もりを作ればいいのか確認せざるを得ないのです。

グループ会社もネットワークでつなげて使うことを考えれば、会社数やユーザ数、同時アクセス数、仕訳の行数などなどの諸元を知りたい気持ちも分かります。

かくして口頭のヒアリングに対応するだけで3時間くらい費やしてしまいます。

場合によっては「ヒアリングシート」といってアンケートで済ませてくれるベンダーさんもありますが、私個人の経験では一人寂しくアンケートを埋める方がストレスが溜まります。

アンケートシートに文字にしようとすると、曖昧な部分の書き方に窮することも多いので、たとえ1時間くらい多くかかっても面談の方がまだマシだというのが実感です。

そんなこんなをして消耗していると、当初の「合い見積もり目標○件」という元気はどんどんしぼみます。

事前確認のヒアリングで疲れ、その後実機デモを実施いただくのですが、これも見ているだけなのに意外と疲れます。

今どきの名が知れた会計システムは、どれもこれも便利です。

ましてやアドオンにお金を惜しまなければ、どんどん素晴らしいシステムになっていきます。

こんどはその素晴らしいシステムをいかにして一つに絞り、残りの方に「ごめんなさい」をいかに伝えるかで悩むことになります。

かくして、新システム選定に至るまでにも、けっこうお疲れです…

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しんどい、とはいえです。

会社側実務家がセミナーなどのデモではなくて、自社導入を念頭に世の会計システムを検討できる機会はなかなかありません。

実際のところ、ものがものなのでそう簡単に利用実績のないシステムへ移行することは難しいです。

とはいえ、こういった機会に他社の哲学や便利な機能を勉強しておくことが、さらにその次の更新時に効いてきます。

自分たちで考えて選び抜いたシステムのはずなのに、使っていると不満は次々出てくるものです。

「あっちにしておけば、こんなこともできたのに…」と思うことは日常茶飯事です(あっちを使っていたら起きていた事故は知りようがないので考慮できない)。

落選してしまうベンダーさんには申し訳ないところも多々ありますが、将来のための種まき要素も含めてご協力方お願い申しあげることになります。

諸々あって、定期更新が遅れました。

人間、年を取るとなんらかの形で影響を受けざるを得ない関係者が増えていて、若かった時には考えもしなかったような事態が次々と起きて巻き込まれます。

これが人生さ、と割り切れれば良いのですが、そこに消化不良のものが出てきたときに悪性のストレスとして蓄積されていくのでしょう。

さて、個別会計システムに係るオナヤミの2回目は「マスタ」の件です。

通常、何かお買い物をする場合には、「相見積もりを取ってください」と言っている手前、個別の会計システムでも同様に実施せざるを得ません。

そこで、従来使用品以外の他社製品にも声をかけるのですが、他社製品に乗り換えようとしたときに制約となるのが「マスタ」です。

・「マスタ」の仕様はシステムの哲学?

「会社」「部門」「勘定科目」「補助科目」から始まって、現代の会計システムはたくさんの種類の「マスタ」を保持しています。

この「マスタ」の仕様が会計システムによって微妙に違うことから、他社製品へ乗り換える際には大きな障壁になります。

その一方で、世の技術の進歩によって、たとえば「部門」の階層数が障害になることはなくなりました。

こんなのはシステム側のパワーアップによってクリアされてしまったのです。

ところが「プロジェクトコード」や「製造番号」といった、各社各様の成果物管理番号とでもいうべきものの場合には、桁数が長大に及ぶものがあります。

この桁数に対応できないことから、選別から漏れるシステムが出てきます。

この「桁数が足りない」は、システム設計にさかのぼる問題なので、あとから導入検討者がどうこう言っても、もはやどうにもなりません。

また、システムの構成によっては、お取引先(販売先、仕入先)へのコードの設定を見直さざるをえないケースもあります。

ただ、お取引先へのコードは、上流システム(生産管理や販売)でも使用していたりします。

会計システムを更新するからといって、下流が勝手に変えられるものではないのです。

じゃあ読替表でも作りますか、となるのですが、これはこれであまりいけてない。

そもそものところでシステム屋さんにお話を聞くと、各システムの「マスタ」のありようは、開発者がそのシステムで実現したかった事とつながっていることが多く、そこでシステムごとにまちまちになっています。

だから他メーカー製に移行しようとすれば、当然に従来品で使っていたマスタは間尺に合わない部分が出てきて、どこかはいじらざるを得ない…

だったら、やはり従来品の新バージョンだったらそのままいけるからいいよね、となりますが、それはそれでいいのか?

「マスタ」を人質に取られて、自分たちの業務改善の検討機会を見逃そうとしていないか、と実力に見合わない良心が訴えてくるのです。

さて、どうしたものか。

あと下世話なことを書き足すと、

せっかくシステム更新をするのだから、ということで移行前に各マスタごとの売掛金や買掛金といった残高をきれいにせよ(名寄せも含む)、となり残高合わせに苦しむことになります。

年来の宿痾を一掃だ、と言えばかっこいいのですが、これを完遂するに至るまでは苦しみがかなり大きいので単純に前向きにはなれません。

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などなどを考えたときに、従来品の後継機を担いできたベンダーさんが、「「マスタ」そのままで移行できますよ」とささやくと、やはりかなり心が揺らぎます。

会計システムの更新は新しい機械を用意してから、従来品と同じデータを食わせたときに同じ結果が出てくるか確かめる、移行テストの手間暇が意外にかかります。

移行テストにたどり着く前のところに、さらに作業を増やすことはあまりしたくないなあ、というのが一般的な考え方でしょう。

会計システムの更新とは、選択の余地があれば心悩ませるところの多い修行になります。

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当シリーズ、また続きます。

単独決算用の会計システムに寿命が来る、ということでいよいよ対応を始めました。

連結決算のシステムは過去にも主体となってやってきた経験があるのですが、個別決算用のいわゆるユーザー側プロジェクトマネージャーになるのは初めてです。

以前の更新(約10年前か)は一参加者にすぎませんでしたが、それでもけっこうたいへんだったことを覚えています。

私自身の頭内整理ために、個別用会計システムの更新が何が大変か書き出してみます。

システム構築は、制度会計そのものではありませんが、会計担当者であればいつかは通るオナヤミです。

うっかりこのサイトを開いてしまった方には巻き込んでしまい申し訳ない気持ちもありますが、複数回に及ぶであろう当シリーズしばらくお付き合いください。

・連携するシステムが多い

個別用会計システムには、連結用と比較して、何らかの形で連携する周辺システムがたくさんあります。

この「システム連携」が、経理部門の業務効率を高めてきました。

債権債務、経費精算、販売管理、生産管理、固定資産などなどから、データが流れ込んで来たり、集計結果を送信したりとつながっているのです。

また直接はデータのやり取りはなくても、残高等を一致させるために同期?させているシステムも存在します。

この扇の要的な存在を置き換えるとなると、様々な作業が必要となることは理解いただけると思います。

受け入れるデータの並びは従来のままでいいのか、マスタのコードがすっかり変わってしまったらどうする?などなど。

また、会計システムから排出されるデータを利用して、さまざまな管理資料を作っている人がいます。

これまたシステム更新によって吐き出されるデータの並びが変わってしまったら、動かなくなるマクロや、座標がずれてしまい変な数字が出てくるスプレッドシートが続出することでしょう。

そんなの知らんがな、で許してくれる、、、かな?

このように、前後左右に連携するシステムが存在する個別用会計システム。

ともすれば、経理側が連携していることをすっかり忘れてしまっているものもありえます。

あれやこれやを想像すると、発生する作業量に気が重くなるばかりです。

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ということで、当シリーズしばらく続きます。

四半期決算の対応やら、諸々の事務局に巻き込まれて右往左往しているうちに、1月は終わってしまいました。

そうこうしているうちに、今回のKAMやら有報と事業報告の表示の統一など、制度改訂の準備が進んでいるようです。

今回はKAMについて議論している監査部会の議事録から、いつものごとく議論の本筋から外れているけども興味深いところを二点ご紹介します。

企業会計審議会 第40回監査部会議事録(平成29年12月19日開催)

・だんだん対象増えていく

○中西委員

ただし、会計のところでKAMが開示されるのに、なぜ会社法のほうではないのかという株主の疑問、あるいは会計監査人が書いているのに、監査役がなぜ書かないのかという疑問、そういったこともおそらく出てきますでしょう。また、株主との対話の中で出てくると思われますので、実質的には監査役も、自らの業務監査などについて自主的にKAMは開示していかざるを得ない、そういった方向になろうかと考えております。

金商法に書いたがばかりに会社法でも、会計監査人が書いているから監査役も、というこの悪の連鎖発想は、会社側実務者としては悪夢でしかありません。

費用は会社負担なのだから法定にしていくらでも出させればよい、という考え方なのであれば、それがために会社側がコストを消費して対策するだけなので、結果として投資家にとってもよろしくない結果となります。

そして一度出させた情報を再び出させないようにするには、これまた相当な労力が必要なので、あまりやりすぎるのはやめておいた方が良いと思います。

ただこんなことを述べても、出させようとしている側は彼らなりの理屈あってのことですので、聞く耳持たないでしょうが。

・求む「KAMの超訳」

「アサーション」を業界用語では「監査要点」と言いますが、この翻訳に異論はあるのでしょうか?

○町田委員  
 ありがとうございます。まず1つ目は、ちょっと余談に近いような話になってしまって恐縮なんですが、今日の審議をずっと伺っていて、委員の皆さんがKAMというのを連呼しているんですけれども、そろそろKAMというのを何か日本語の表現に置き換えたものを出していただきたいなということを、金融庁の事務局にお願いいたします。というのも、KAMに対して「監査上の主要な事項」という訳語を当てることについては、これは公認会計士協会が以前から当てておられる訳語だと思うんですけれども、学会での議論では、「この訳語は不適切だ」と明確に批判をされる方もいますし、私もそれに同意して、自分で訳語を付ける際には使用しておりません。

 また、私が監査を勉強し始めた、研究を始めたころは、「リスク」というカタカナさえ監査基準に入れるのはどうかということで、「監査上の危険」という訳語を当てられた時期もあったことを記憶しています。監査基準の審議の場で、皆さんが、「カム」「カム」「カム」「カム」と言っていることには、隔世の感がありますが、いずれにしても、日本の基準を策定しているわけですから、早めにご対応いただけたらなと思います。


町田先生が言う通りKAMを「監査上の主要な事項」と訳すことについて反対の声があるのであれば、何か別の翻訳が必要です。

それにしても"key audit matter"を「監査上の主要な事項」とするのは何がダメなのでしょう?

直訳に過ぎるということですかね。

明治期は漢文の素養を持った学者が理文の分野を問わず多数いたので、欧米での考え方をしなやかに翻訳することで日本人はすんなり全く違う考え方を吸収出来ました。

しかし、現代においては江戸時代以前の漢文の素養やセンスが失われており、もはや翻訳を諦めてカタカタそのままが増えています。

翻訳困難な例としてジャンルは違いますが、例えば「ユビキタス」を現代の文脈に沿った熟語にどう翻訳あるいは造語すればいいのか、さっぱり分かりません。

KAMについても直訳ではニュアンスがおかしいのであれば、もう「超訳」するしかないのでしょう。

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いよいよKAMの件は煮詰まってきました。

もはや「書かない」という選択肢はないようです。

昔は楽だったなあ、という感想しかないのは、どうしたことなのでしょう。

なんだかんだで出張が続いております。

その移動時間に読んだのがこちら↓。

『転身 瀬島龍三の「遺言」』 新井喜美夫 講談社

瀬島龍三さんについては、日本陸軍の参謀でありシベリア抑留時の日本側責任者の一人であったが、『不毛地帯』を書いた山崎豊子さんが「大事なことはちっとも話してくれなかった」と評していたことくらいしか知りませんでした。

著者の新井氏は瀬島氏とともに、1981年から始まった第2次臨時行政調査会(いわゆる「土光臨調」)のメンバーとして活動したそうです。

その期間中、新井氏と瀬島氏はホテルの隣り合わせの部屋を事務所としていて、そこで瀬島氏から聞いた様々な話に新井氏の持論を加えたものが本書の内容です。

実際のところ瀬島氏は積極的にみんなが知りたいことを発信する方ではなかったため、本書は著者による観察と推理で作られています。

そのため、明治維新の功罪や、坂本龍馬の人物評、現代の日本のリーダー評など、瀬島氏そのものには直接関係なかろうと思われる部分も多々あります。

瀬島氏を軸として現代を評論した、と言えばそうなのかもしれませんが…

さて、当ブログでは本書の中で紹介されている、今となっては忘れ去られていそうなことを三点取り上げてみます。

・票は金を出せば買える

著者は東急グループの会社の幹部を歴任した方です。

1980年代にはこんなことが起きていたそうです。

P.46

五島も中曾根もともに真のエリートではなかったが、私がまだ東急グループに入る前に五島を「日本商工会議所の会頭にする会」と中曾根を「総理にする会」が前後して結成され、それぞれ身を置く世界で共に頂点を目指していた。

(中略)

五島の目指す日商会頭は会員の票で決まる。東急グループが拡大するにしたがって、票が増えたうえに、票は金を出せば買えるので、五島の日商会頭就任には既に目途がついていた

あまりに直截な表現なのですこし引きますが、これが現実なのでしょう。

日本商工会議所の会頭というポジションの価値を私は知りえませんが、そこに価値を見出す人がいるのであればなんらかの意義があるのでしょう。

本書では他に勲章の話も出てきますが、これを目指して頑張る人がいる、ということは知っておくべきなのだと思いました。

・お前ら逃げろ

単純にフーンというお話。

P.172

先の戦争が終わるまでは、軍人の税金は申告制であった。そのため軍人は一切申告せず、ビタ一文も納めていなかったのだ。

戦費が嵩むようになって、さすがに大蔵省は軍人たちにも税金を負担するように求めた。国民が食べるのも我慢して、戦費を拠出していた時代である。

さしもの陸軍省も、「前線の兵隊は別にしても、時勢が時勢だけに仕方がなかろう」と、国内の軍務官僚の税金徴収に渋々応じた。

大蔵省の役人は、海軍にも話をつけてくれるように依頼したが、陸軍省の取った行動はまるで逆だった。大蔵省の役人が帰ると、すぐに海軍省に連絡を取り、「大蔵省の役人が行くからお前ら逃げろ」。海軍軍人たちは一報を受けて、船で海上に逃げたというとんでもない話が残っている。

本書では繰り返し日本陸軍と海軍の仲の悪さについて論じているのですが、これを読む限り陸軍の同志愛というか「いいやつじゃん」という感想を持ちます。

それにしても、海軍省の軍人が船に乗ってすぐに逃げた、と言われても「明日から仕事どうすんだよ」と思うばかりです。

・内乱だけは避けたい

いわゆる太平洋戦争の開戦について、当時の参謀本部の考え方を本書では以下のように論じています。

P.187

そのわかりやすい例が、南進・北進問題であり、日米開戦である-。

瀬島は、自分の意思を横において、開戦に至る過程で、天皇の御心を考えたに違いない。

天皇は、「内乱だけは避けたい」という思いを強くお持ちになっているはずである。2.26事件では寸前のところで内乱は回避できた。だが今度はそうはいくまい。外交に持ち込めば、再び陸軍の不満が高まり、同様の事件を引き起こす可能性がある。それでは、天皇の御心に適わない-そう考えたのではないか。

本件については、今まで数多の論議を経ている話なのであまり踏み込みませんが、こういう思考経路があったのかと驚くばかりです。

「内乱だけは避けたい」や「再び陸軍の不満が高まり、同様の事件を引き起こす可能性がある」として、引き起こしたあの戦争の結果としての大戦禍を考えるとやりきれません。

現在進行形の判断は難しいのですが、その判断の結果を知る後世の立場からすれば、最前線で何も知らずに死んだ人たちを気の毒に思うばかりです。

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最後に。

本書のP.126「無能な者は黙殺」以下のくだりを読む限り、瀬島氏は上司になるととても大変な方だったようです。

私の今の職場の上司には感謝するばかりです。

世の動きを見極めて慎重に対応することを是とする私の勤務先にも、ついに「働き方改革」がやってきました。

社内にはいろいろな考えの人がいて、あまり改革らしくなかったのですが、ついに本当の「定時退社日」が設定されて厳正に施行されるようになりました。

取締役を含めた全社員の事務所締め出しを実施するようになったのです。

もちろん、突発事象に対応するための例外規定は設けられていますが、その許可を得るための手間暇が結構面倒で、それを乗り越えてまで残業したいと思わせないような仕組みになっています。

この取り組みの責任者の意気は高く、今後は「定時退社日」の実施対象日拡大に意欲を燃やしています。

ここで困ったことになるのが会計監査。

会計士さんたちはクライアントのためを思って夜遅くまで監査してくれています。

だのに、「弊社都合ではありますが定時日ですので帰ってください」と言わざるを得ない事態となっています。

一応私、会計監査を「突発事象」として届け出るため、事前に「働き方改革事務局」へ根回しに行きました。

すると、

・監査日程は通常事前に決まっている

・監査提供資料は大半が電子データだ

・最近の監査において弊社従業員が監査部屋でヒアリングを受ける時間は極めて短い

・そもそも社外の方が弊社就業時間外に社内に滞在していること自体がおかしい

ことから、「それでも弊社事務所で夜分まで監査いただかなければならないのだろうか?」という疑問を事務局から投げ返されました。

悲しいかな、監査法人の事務所ビルは某弊社事務所から普通に見えていて、かつ徒歩圏内にあり、「事務所に戻る時間がもったいない」という言い訳が通用しません。

これらを総合すると、改革事務局が言いたい結論は見えてきます。

さて、その結論を誰が伝えに行くのか。

改革事務局は「各論の実施には関与しない」とつれないし、エライ人は「これをやりきるのが現場の改革だ」と取り付く島もない…

かくして言いにくいけど言わねばならないことを、お願いのリハーサルとしてここに書いておきます。

1.クライアントの事務所に依存しない監査手順の開発

従来、監査中は会社の人がじっと待機していることを前提として監査スケジュールが作られてきました。

しかし今後は前提を、「会社側の人が対応できるのは通常の就業時間内のみ」に変更せざるをえません。

だとすれば、監査の進め方の切り口に、「クライアント事務所でしかできないこと」/「監査法人の事務所でもできること」を加えてもらって、時間割を考えていただくよりありません。

「決算と監査のタスキリレー」という表現がありますが、たすきの受け渡し時間短縮が求められているのです。

監査法人でも「効率的な監査のやり方」を検討されていると聞いています。

お手数ですがそれにもう一段、検討事項を追加ください。

2.クライアント事務所滞在時間が短くなってもコミュニケーションの質を維持する施策の実施

「早く帰ってくれ」と言っておいてなんですが、一方で会計士さんと会社側の面談時間確保にはご留意ください。

「効率化」の名のもとに、「前回と同じ資料があればそれで良い」とする風潮があります。

ただ、人間がやっていることですから、話を聞いてみないと以前からの変化があるのかないのか分からないし、また、会社側も何も言われないからそれでokと思っていることが多々あります。

監査法人が、経理部員や場合によっては営業部長、製造部長を呼び出して内容確認レベルであっても面談してくれるだけで、社内には緊張感が増えてそれなりのけん制効果があるのです。

「見られてる」と思うことで、何か思い至ることがあるのでしょう。

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個人的には「会社にいたらお金を使わない」などのメリットも感じているので、一概に長時間会社にいることに否定する気持ちにはなれません。

とはいえ一方で、悪い資本家や悪い管理者が実在することも事実です。

しかし「悪」の事実認定は困難なので、形式的に「長時間会社にいること」をもって悪としてしまう流れは今後も変わらないでしょう。

ウルトラマンが3分間で事態を何とかしなければならないように、会社員も「一日に事務所に滞在できる時間は8時間」を前提とする業務と生活への変化に備えなければならないのです。


前回の続きです。

前回、2018年の取り組みとして、経費精算業務の承認業務を「書類に押印」というスタイルから「システム上で承認ボタンクリック」へ改めることを目標として書きました。

実際には関係者と関連プロセスが多いので、2018年中に完了するものではないのですが、数年後の実現に向けて着手するということです。

さて一方で、その精算の根拠となる証憑については、「原紙提出」を堅持しようと考えています。

精算業務を始める時点で、経費使用者が証憑も電子化する「スキャナ保存」を導入することも認められていますが、会社実務的には難しいなあというのが実感です。

論点としては今回も二つです。

・人間は何時間、発光体を見続けられるのか

映画やゲームならともかく「仕事」で、かつ何らかの不正行為が含まれているかもしれない書類のPDF化されたものを、集中して見続けることはどれくらい可能なのか。

人間の目は光るものを見続けるようにはできていません。

電球を除けば「テレビ」というものが発明されるまで、「光るものを見続ける」という業務は天文学者くらいしかやっていなかったのではないでしょうか。

こんな人体の眼球が、技術の発展でディスプレイがいくらか目に優しくなったとはいえ、一定の注意力をもって見続けるのは限りがあります。

限りを越えれば視力も低下するでしょうし、そもそも眼球の限りに到達する時間も「紙」の場合より相当早いことでしょう。

限界に到達すれば「手抜き」も起きるでしょうし、また誰かの目が悪くなることを前提とした業務方法が良いとは思えません。

本当は「経費精算のチェック」をRPA(ロボット化)できれば良いのですが、「金額の一致確認」程度ならともかく、「経費使用の是非判断」までロボットにはたぶんできない…

・「不正の機会」を作らない

論点のもう一つは、経費精算開始前に証憑を電子化してしまうことにより、不正リスク(同じものを二回使う、偽造など)が高まらないかという心配です。

もし心配を上回る便益が得られるのであれば早々に電子化するべきですが、現実はどうでしょう。

例えば同じ証憑を二回使う「二重使用」は、通常は支払先が請求書の二重発行をしない限りできません。

印刷機の能力向上でカラーコピーの本物そっくり度は相当高くなっていますが、それでもPDFよりはチェック側がカラーコピーに気がつく可能性は高いです。

「原紙」から伝わってくるものが何かあるのです。

次に、「偽造」については紙でもできますが、PDFの改竄よりも物である「紙」の方がハードルは高くなります。

また、ものによっては発覚時のペナルティも高くなることから抑止効果が期待できます。

不正を働く側にもコスト意識があるはずなので、管理側が不正実行コストを高くしておくことは必要なのです。

そもそものところで、会社をまたいで業務全体(発注→納品→検収→請求まで)が一気通貫で電子化されていれば別ですが、最後の請求書だけ電子化されて届いてもなあ、と思います。

「不正のトライアングル」(動機、機会、正当化)といいますが、不正を実行する機会(手段)を与えないことが、結果として組織を救い、不幸な人を生み出すことを防ぎます。

効率を上げることだけを考えて、チェック手法を準備しないままにとにかく大量の電子化を進めることは「不正の機会」を提供するだけです。

チェックする人間の数を増やすなり、待遇を良くするなり、機械にやらせるなりの準備をしておかないと、組織構成員のモラル低下を招きます。

紙を排除した業務改善の結果、不幸な人を輩出してしまったということにはならないようにしたいものです。

かくして、管理部門がチェックする前に、「経費精算業務のプロセスから紙を排除する」ことは難しいと考えています。

それにしても、何かいい方法はないものですかね。

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