制度会計対応現場のオナヤミ

会社側目線で見た、金商法、会社法、税法、内部統制、IFRSなど、制度会計の現場を書いていきます。 ネタがなくなると、読んだ本の感想でしのぎます。 原則火曜日更新です。

<あの山まで行きたいな>

かなり遠いようだけど、やってみますか。

もうしばらく、原則週イチ(火曜日)更新でがんばります。

移転価格シリーズがあと一回残っているのですが、まとまらないので今回はこちらの感想文。
『織田信長 不器用すぎた天下人』 金子拓 河出書房新社

やまもといちろうさんが下記ブログでご紹介されているのを読んで、手に取ってみた次第。

【書評】『織田信長 不器用すぎた天下人』(金子拓・著)に中小企業オーナー経営者の悲哀を見た

税込み1,728円なので、業務資料となる本ならともかく、趣味で買う分には購入を躊躇するところです。

もっと安い本にも、読むべきもの、楽しめるものはたくさんあるはずなので…

それでも買ってしまったのは、仕事で疲れていていたからでしょう。

そして読んでの感想は…

 んで、本書はそういう日本人の中でも成功した畏敬される戦国武将の一人である「天下人」織田信長の実像に、最新の学説や資料で丁寧に迫る内容です。
なんかどこぞのNHKのヒストリアみたいですが、まあ実際そういう本です。

というやまもとさんの書評通りの内容で、刺激は乏しい。

東大の先生が書いた本なので、変に誇張することも演出することもなく、研究の成果を淡々と描いています。

とはいえ、やまもとさんが「中小企業オーナー経営者の悲哀を見た」と評したように、組織運営的な要素があったのも事実。

二か所ほどご紹介します。

・「相手を心底信用している」

本書では、織田信長を裏切った人物として、浅井長政、武田信玄、上杉謙信、毛利輝元、松永久秀、荒木村重、明智光秀の事例を分析します。

前半の4人は他家、後半の3人は家来という違いがあります。

本書を読む前から考えていたのは、前半の4人は潜在的にでも競合先なので、遠くにいるうちはともかく、国境を接するようになればいずれ紛争が起きる相手。

奇襲をかけられたにしても、「裏切り」ではないよね、と思います。

P.123

また(これは当たり前かもしれないが)裏切られるまで、その気配に気づかないという”油断”も特徴として見られる。これは裏返せば、相手が自分を裏切るとはつゆほども疑っていない、相手を心底信用しているということなのかもしれない。

楽観的でないと次々と領土拡大はできないけども、その楽観さゆえに悪いことが起きることを想像できない。

状況が変化する中で、周囲の感情に変化が起きることを想像できないのだと思います。

「楽観的」と「傲慢」の境目がどのあたりにあるのか分かりませんが、「過度の楽観」は「ただの傲慢」と変わらないのでしょう。

・「不得手・一本気・不器用」

本書において著者は、信長の外交、家臣団統制について、「不得手・一本気・不器用」と評します。

具体的には、P.184「外交の上手下手」という項において、尾張一国から上洛しての有力大名、天下人へとステージが変わる中で、管理スタイルを変えないといけないのに、それを変えられなかったことを論じています。

現代においても、新興企業で管理が追いつかなくなって起きる、いろいろなトラブルが適時開示されています。

私の所属する経理部門でも、人員構成や労働時間への考え方が変わっていく中で、考え方やり方の軌道修正を迫られています。

ですので、管理スタイルの変更問題は、信長様の戦国時代の問題ではなく、「組織運営」という人間が集まって行う営みの中では、かならず起きる問題なのでしょう。

本書の最終項のタイトルは「何かを信じた者だけにある裏切り」です。

「内部統制」の運営を執行する側として、どこまでは信じて、どこからは信頼に任せてはいけないのか、という懐疑心がつねについて回ります。

あのメンバー構成だから認められた「内部統制」だけど、構成員がすっかり変わってしまったら、もっと厳しい統制を課さなければならないのかもしれません。

盲目的に信じての「統制エラー」=裏切り、を体験して悩みながら、人間は成長していくのでしょう。

戦国時代なら悩む暇なく死んでいたことを考えると、まだ現代は殺されないだけ良い時代と言えそうです。

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慎重な著者の書きぶりゆえ、本書には「なかなか煮え切らない」という感想を持ちました。

「すぐに買って読むべきです」とまでオススメはしませんが、信長自筆とされる書状の写真が掲載されている等、2017年時点での研究成果が反映されている本書、書店等で手に取って確認してみる価値はあると思います。


「「移転価格税制の文書化」シリーズ4回目です。

前回まではこちら↓
移転価格税制の文書化制度1-(1) 国税局HP情報 

移転価格税制の文書化制度1-(2) ローカルファイル以外

移転価格税制の文書化制度1-(3) ローカルファイル(前編)


移転価格税制の文書化制度1-(4) ローカルファイル(後編)

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さて、国税庁HPに6月9日付けで、「移転価格ガイドブック~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~」というサイトが公表されました。
こちらでは、

移転価格税制に関する納税者の自発的な税務コンプライアンスを高めることを目指し、事務運営(取組方針、具体的な施策)を見直すとともに、納税者の予測可能性や行政の透明性を向上させるため

という目的のために、『移転価格ガイドブック』がダウンロードできるようになっています。

「移転価格ガイドブック ~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~」(一括ダウンロード)(PDF/3,984KB)

全部で124ページあるので、真面目に頭から一字一句読み始めると、なかなか大変です。

平易な書き方に相当な意を尽くしたことは伝わってくるのですが、例えば「独立価格比準法」について一から解説してあるわけではないので、前提となる用語知識はどこかで身につけてくる必要があります。

そこさえクリアすれば、本書は無料で入手できる移転価格税制についての良書といえます。

たとえば、「Ⅱ 移転価格税制の適用におけるポイント」は、様々なケースにおける検討すべき事項を、納税者側と税務署側のそれぞれからの視点で論じてくれています。

P.36の「ケース2:価格設定」では、会社側担当者の、うかつとはいえやってしまいそうな答弁が出てきます。

本書を読んで、地雷を踏まないための準備はしておくべきでしょう。

また、「Ⅲ 同時文書化対応ガイド」は、ローカルファイルに記載する内容や表のサンプルが掲載されています。

ローカルファイルを作る側も大変ですが、読む側もあまりにオリジナリティあふれるものは見るのも大変なので、ある程度は例示をして一定の範囲内に納めて欲しいという希望があるのだと思います。

逆に言えば、「これくらいのものは作ってください」とも取れるので、納税者にとっていいことばかりとも思えませんが…

そして本書において、もっとも衝撃だったのはP.17 「(2) 移転価格文書化制度に関する指導、助言等のための企業訪問の実施(平成29(2017)年7月~」です。

概要にはこうあります。

移転価格文書化制度を適正かつ円滑に実施することなどを目的として、同時文書化対
象取引に関する個別照会への対応を開始するのと併せて、平成29(2017)年7 月から、企業の皆様のご理解とご協力の下で、国税局の調査部の職員が同時文書化義務の対象となることが見込まれる企業を対象として、ローカルファイルの作成状況等の確認を行うため、事務所等を訪問します

申告期限の間際に作ればいいや、と思っていたとしても、早々に「進捗どうですか?」と当局の方からお尋ねがあるのかもしれないのです。

「さあ」、とか「まだやってません」とか答えたとして許してもらえるのかどうか。

また、訪問時にお見せしたローカルファイルについては、こんな記載もあります。

ハ 企業を訪問した際の指導、助言等について

ローカルファイルの記載内容で指導を受けた事項については、改めてご検討いただくようお願いいたします。後日の移転価格調査を含む税務調査やローカルファイルの作成状況等を確認するために事務所等を訪問する際に、指導、助言等を行った事項の対応状況について質問や確認を行うことがあります。

「ここがイマイチですね」となったら、改善に取り組まざるをえません。

後日にその実施状況を確認することもあると言ってます。

まあこの「助言等のための訪問」である限りは、提出しなかったとしても罰や不利益になることはしない、と言ってくれていますが、誠実な実務者でありたいと思えば何もしないわけがない…

仕事がまた増える。

人生というのはかくして、業務量が拡大し続けるものなのかもしれません。

あともう一回、続きます。


「「移転価格税制の文書化」シリーズ4回目です。

前回まではこちら↓
移転価格税制の文書化制度1-(1) 国税局HP情報 

移転価格税制の文書化制度1-(2) ローカルファイル以外

移転価格税制の文書化制度1-(3) ローカルファイル(前編)

前回、

・一の国外関連者との、①取引金額が50億円以上か、②無形資産取引金額が3億円以上、のどちらにも該当しない場合には、「同時文書化義務」を免除される、となっていること、

・しかしそれは、確定申告書の作成と「同時」にローカルファイルを作成する義務を免除されているだけで、当局が必要と判断すれば、「ローカルファイルに相当する書類」を60日以内に提出しないといけないこと,

をご紹介しました。

こんな嫌がらせみたいなことを当局がするのか?という考え方は当然にありますが、ここはやはり日頃の行いにも気をつけておくべきなのでしょう。

しかるべき理論武装無きままに、税率の低い国の子会社相手に極端な安売りをしたり、高い買い物をすることは、文書作成義務リスクを抱え込むことになるのです。

そしてまた、何とか文書化して提出したとして「これじゃダメだよ」と言われたときにどうなるのか、ここが気になるところです。

「あらまし」によれば、納税者がローカルファイルを一定の期日までに提出できない場合は、「推定課税及び同様の事業を営む者に対して質問調査を行うことができる」とあります。

※『移転価格ガイドブック』によれば、この「同様の事業を営む者に対して質問調査を行うこと」を「同業者調査」と言うそうです。

本当に文書を出せない場合は当然として、文書を出したものの内容がイマイチな場合も、「提出できない」認定されてしまうのでしょう。

この場合、「推定課税」であればイマイチな本人だけの話ですが、「同業者調査」が発動された場合を想像すると、気分が暗くなります。

イマイチなローカルファイルを提出した本人は、これによってエライ目にあっても仕方がありません。

イマイチなローカルファイルを提出したがために、「推定課税」が発動されてしまい、「おたく海外子会社へ利益を移転してますよ」と認定されたとしても自業自得です。

たぶん、税務署は同業者に質問調査に行ったとしても、「○○さんのローカルファイルがイマイチなので、御社に調査に来ました」と名前を明かすようなことはしないでしょう。

ですから、「○○さんのローカルファイル、イマイチだったんだって」とか業界内の噂になって、辱めを受ける心配をする必要はないと思います。

問題は、そのことによって同業者調査を受けることになった方です。

この質問調査にうかつな対応をしてしまうと、今度は自身の移転価格問題に飛び火するリスクがあります。

また、こないだ税務調査が来たところだからしばらくローカルファイルはしばらく作らなくても大丈夫だ、と高をくくっていたら、「同業者調査に来ました。ローカルファイル見せてください。」となるかもしれません。

同業者がきちんと対応してくれていれば来ることもなかった、移転価格の調査を受ける羽目になってしまうのです。

同業者のポカは連帯責任なのでしょうか。

心配のしすぎかもしれませんが、心配しても心配し足りないのが心配性。

今回の文書化制度、提出する先が国家権力だけに、不安と心配は尽きません。

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このシリーズ、全4回で準備していたのですが、『移転価格ガイドブック』が出たこともあり、あと2回くらい続きそうです。

「「移転価格税制の文書化」シリーズ3回目です。

前回まではこちら↓
移転価格税制の文書化制度1-(1) 国税局HP情報 

移転価格税制の文書化制度1-(2) ローカルファイル以外

今回と次回で、当制度で作成する文書のうち、多数の会社さんが作ることになると思われる、「ローカルファイル」についてご紹介します。

4.独立企業間取引を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)

こちらは、使用言語の指定はありません。

この文書は、「国外関連取引を行った法人」に、確定申告書の提出期限までに作成する義務があります。

ただし、一の国外関連者との、①取引金額が50億円以上か、②無形資産取引金額が3億円以上、のどちらにも該当しない場合には、「同時文書化義務」を免除されるとあります。

この「同時」というのは、文書の作成時期が確定申告書の提出と同じ、ということのようです。

ですから同じことの繰り返しですが、一の国外関連者との、①取引金額が50億円以上か、②無形資産取引金額が3億円以上、のどちらかをやっていれば、確定申告書と同時に作成することになります。

この作成制度の適用開始は平成29年4月1日からなので、つい先日です。

3月決算の会社の場合、原則通りであれば平成30年5月31日が原則の作成期限となります。

ただし、確定申告書に添えて提出するわけではありません。

想定される提出は、税務調査が来たとき、あるいは、当局からのお尋ね電話にて、調査官より提出要求があるものと思われます。

「あらまし」によれば、提出日は「調査官が書類の準備に通常要する日数を勘案して指定する」とあり、ローカルファイルは45日、ローカルファイルの基礎情報は60日が、猶予の上限と解することができます。

改正前は、「遅滞なく」となっていたところを日数を明記することで、納税者も事前に予想ができることになりました。

とはいえ、「45日」と聞くと余裕があるように思えますが、書かねばならない内容を考えると、白紙からスタートして45日でそれなりの内容のものを作るのは難しいだろうなあと思います。

ごくごく簡単な取引しか無くて、適正な価格で運用されていたとしても、独立企業間価格を算定する方法を、税法的に無難な文書にして根拠資料をそろえることはけっこうな難題のはずです。

そしてこの難題は以下に書く通り、海外子会社との取引があれば誰であれ「ローカルファイル」は作らなければならない可能性があることから、難題の及ぶ可能性の範囲は意外に広いのです。

というのも「ローカルファイル」について規定では、一の国外関連者との、①取引金額が50億円以上か、②無形資産取引金額が3億円以上、のどちらにも該当しない場合には、「同時文書化義務」を免除される、とあります。

これはあくまでも、「同時」文書化義務を免除されるのであって、「文書化義務」が免除されるのではない、ところがポイントです。

ですから、仮に海外子会社との取引が5億円しかなかったとしても、当局が必要と判断すれば「ローカルファイルに相当する書類」の提出を求めることができる定めとなっています。

単に、「確定申告書と一緒に作っとけ」と言われていないだけのことなのです。

何もないところに、「さあ出せ」と言われても、猶予はマックス60日しかありません。

デキルカナ?

(つづく)


「移転価格税制の文書化」シリーズ2回目です。

前回はこちら↓
移転価格税制の文書化制度1-(1) 国税局HP情報 

今回は当制度で作成する文書のうち、主に大きな会社さんが作成する文書について、ご紹介します。

・作成する文書

平成28年度の税制改正により、条件等に該当した法人は4種類の書類を作成することになりました。

※以下に書いた「提出期限」は、分かりやすくするために3月決算会社の期限を書きました。3月以外の方は脳内調整ください。

1.最終親会社等届出事項

書類の内容については、「あらまし」を読む限りさほど難しいものではないようです。

なお、提出期限は平成29年3月31日、すでに過ぎています。

2.国別報告事項(CbCレポート)

提出期限は平成30年3月31日なのでまだ余裕がありますが、英語で作成すること(日本語はどうやら不可)というハードルがあります。

ただし、記載内容に自由作文というか論述が必要な部分はなさそうなので、自分でむやみにハードルを上げなければ、何とかなるのかもしれません。

3.事業概況報告事項(マスターファイル)

こちらも提出期限は平成30年3月31日で、英語での提出も可能です。

ただし、こちらは英語で提出した場合には日本語による翻訳を求められる場合があります、と弱気な注意書きがついています。

外国法人による英語資料を読むことの困難性を予見して、当局はさっそく予防線を張っているのでしょう。

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ここまでご紹介した1~3の文書は、連結総収入1,000億円以上の法人(←この表現は特におおざっぱなので要注意)に提供義務があります。

そして何より新時代の到来を感じさせるのは、提出方法はe-TAXのみということです。

該当する提供義務者は大会社さんばかりなので、みなさん電子申告に対応済みなのかもしれませんが、これを機会に電子申告へ誘導だ、という関係者の下心を邪推する私は心が穢れているのでしょう。

また提出資料は、原則「CSVかXML形式で」という制約があり、ワードやエクセルはやめてね、という決まり事もあります。(「FAQ 問14参照)

あと2と3の文書は、未提出だと30万円以下の罰金とのことです。

これまた大会社さんに30万円でどれだけの心理的効果があるのか図りかねますが、「罰金を設けた」こと自体が、当局の本気度の象徴みたいなものなのでしょう。

30万円払えば提供しなくても許してもらえる、という解釈はたぶん間違っていると思うので、実行に移される際はよくよくご検討ください。
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次回から、ローカルファイルについてご紹介します。

あれよあれよと言ううちに、6月も10日を過ぎて中旬に至っています。

招集通知、有価証券報告書、臨時報告書、税務申告書、でドッタンバッタン大騒ぎしているうちに、平成29年も半分が終わってしまいそうです。

先日、退位特例法は成立しましたが、退位日はまだ決まっていない模様。(平成29年6月10日現在)

平成30年は来るんですかね?

世間の影響を考えると、元号を変えるなら2月1日くらいが無難なのではないかと思いますが、いかがでしょう。

「1月1日改元」はきりが良いけど、初出日から変なデータが無いかシステムを確認して回るとか、誰も望まないですよね。

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さて、社内で経理部が処理すべき業務と思われるもののうち、まったく新しい案件や引き受け手がいないものは、私のところへ流れてくる仕組みになっています。

「移転価格税制の文書化制度」がまさにそれで、取り組み始めたばかりですが、まったく楽しそうな予感がしません。

それでも興味深いところを探しに行くのが私のスタイル。

文書化に取り組み始めたばかりのビギナーが、これはと思った部分を今回を含めて4回に渡ってご紹介します。

ちなみに、これからご紹介する文書化制度、ざっくり書くと、海外子会社との取引があれば、誰であれ「ローカルファイル」は作らなければならない可能性があります

人ごとではないですよ、と無責任に不安をシェアしておいて、シリーズ始まりのごあいさつとします。

【注意】
以下は、「移転価格税制の文書化制度」に取り組み始めたノーライセンスの会社員が書いたものであり、厳密な正確性を保証するものではありません
みなさまの実務においては、顧問の税理士、会計士にご相談のうえ対応ください。

・国税局からのお知らせ

さて、移転価格の文書化制度、セミナーのご案内等飛び交っております。

今回の特徴は、世界各国が同時的に制度適用を開始していることであり、その中でもインドネシアの提出納期設定が厳しいと聞いています

インドネシアは日本からの進出企業が多いこともあり、インドネシアに的を絞ったセミナーのご案内も複数いただきました。

現地子会社から、日本の親会社へ「移転価格に係る資料をください」という流れなのでしょう。

移転価格専門家によるセミナー受講も大切ですが、まず当たるべきは当局の公式情報。

日本における必要な対応については、国税庁の下記サイトに掲示されている各お知らせを、「手引き」として読むことになるかと思います。

国税庁HP 多国籍企業情報の報告
ここに、以下のパンフレットが用意されています。

「移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし」(平成28年6月)(PDF/1,206KB)

「移転価格税制に係る文書化制度(FAQ)」(平成28年10月)(PDF/913KB)

「独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)作成に当たっての例示集(平成28年6月)」(PDF/844KB)

各PDFファイルを開いてみると、「あらまし」は12ページでまだ救いがあります。

しかし、「FAQ」は35ページ・全97問、「例示集」は37ページあり、親切に分かりやすく書こうとした配慮は感じられるのですが、全てを読みこなすことは難しいように感じられます。

やはり自分の手を動かしてみて、自社の課題が何なのか分からなければ、手引きを読んでも理解できないことがあるのでしょう。

分からないなりに読む → 作る → 課題にぶつかる → 手引きを読み直す、という流れを繰り返すことになるのだと思います。

次回以降、「あらまし」から分かる制度の概要と、よく勉強している人っぽく見えるようになるポイントを、ご紹介していきます。

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当シリーズ、1回ずつは短いので、次回は15日(木)にアップする予定です。

P.S.この原稿を書いていた6月9日に国税庁HPにて次のお知らせがありました。

移転価格ガイドブック~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~
ガイドブック、ただいま読書中です。
来週予定の当シリーズ3回目からローカルファイルについてご紹介の予定ですので、何らかの形で反映出来ればと思います。

連休の谷間に更新します。

1月半ばから忙しくなって、更新お休みを開始して3カ月。

下記を中心に、いろいろ苦心しております。

1.超ベテランから仕事の引き継ぎ

ほぼこれに尽きます。

超ベテランが難しいのは「俺も教えてもらっていない」の一点張りで、ほとんど教えてくれない。

「背中を見て学べ」という方針のようですが、時間がない中では今風ではない…

とはいえ、超ベテラン氏に限った話ではなく、これは私の勤務先の年配者全体に感じられる体質。

こうなってしまった原因を想像すれば、過去の不景気時に採用を一切やめてしまったことが原因なのだろうなあと思います。

人の循環が止まってしまったときに、「教える」という技術が失われてしまったのです。

とはいえ、採用を止めることで人件費の増加を食い止めたから、会社が生きながらえて今があるのも事実。

ここは私ががんばって、ここから「教えて引き継ぐ」という文化を造り出すのだ、そういう意気込みで取り組んでいます。

2.子供の勉強

子供(4年生と1年生)の勉強は、家庭では私の担当。

いわゆる「進研ゼミ」をやらせて、その面倒を見ています。

本当は学習塾にでも行ってほしいのですが、金銭的事情と私自身も学習の状況を把握しておきたいこともあり、通信教育にしています。

先生を雇っていない以上、子供が取り組んだ問題は親が丸付けしなければなりません。

 ※4年生から自分で丸付けをしますが、「学習状況を把握する」という目的がある以上、丸付けの丸付けをする必要があるのです。

3年生の半ばまでは解答用紙を見ればだいたい○×が分かったのですが、3年生の秋くらいから国語であれば問題文をよく読まないと文脈が分からないし、算数の掛け算は暗算では間に合わなくなり答えの本を見ないと時間ばかりがかかります。

社会に至っては「これかな?」と思うものの、やはり答えの本を見ないと確信が持てません。(思い込みはよくない)

かくして、経済的事情を優先したら自分の時間が無くなる、という内製化の問題が起きております。

とはいえ私の場合、「ブログ書く時間がなくなる」というのがたいした問題か、という気もしますが。

3.自分の勉強

いろいろあって、会社が補助金を出すから通信教育を受けませんか、というキャンペーンが勤務先で始まりました。

職場の年長者というか従順な社畜というか、という立場上、率先して取り組む姿勢を上司にも後輩たちにも見せなければなりません。

送られてきたテキストをやってみたら意外に時間を取られます。

週末にブログ書いてた時間くらいをテキストに費やして、ようやく期限に間に合うかどうか。

こちらの苦難もまだ続きそうです。

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ということで、もうしばらくブログ本題の更新休止は続きそうですが、休み休み不定期ながらも更新できたら良いなあと思っております。

日常的にはTwitterにて時折つぶやいておりますので、可能であれば@ifrs85をフォローいただけると幸いです。

私はともかくとして、Twitterの会計クラスタの方々をフォローすれば、経理業務の勉強になることは間違いないですよ。

ネタと時間切れにつき、苦しいときの読書感想です。

本日はこちら↓

『一海軍士官の太平洋戦争』 斉藤一好 高文研 2001年

あの駆逐艦「雪風」乗組士官だった著者による、太平洋戦争の回顧録です。

雪風での担当は、航海士から水雷長とまさに戦闘中の当事者としての体験談です。

例えばこんな感じです。

・中将旗は直ちにおろされました

以下の場面は、雪風を含む艦隊が、ガダルカナル島へ艦砲射撃を実施すべく出撃し、そこで第三次ソロモン海戦に巻き込まれたところです。

艦隊の戦艦比叡は敵の攻撃を受け、航行不能になりました。著者乗り組みの駆逐艦雪風は、動けない比叡の護衛を命じられます。護衛する雪風に、比叡に乗っていた戦隊司令官以下の司令部が移乗してきました。

P.86

司令官は、雪風のマストに、比叡から携行してきた中将旗(大将、中将、少将のそれぞれが指揮していることを示す旗)を掲げます。

比叡のマストに掲げられていた時は小さく見えた中将旗ですが、小さな駆逐艦に掲げると大きく見えます。

そのためでしょうか、司令官が移乗してきた直後、敵機もそれを見つけたものとみえ、今度はわが雪風が集中攻撃を受け始めました。

爆弾は命中しなかったものの、至近弾があり、その破片が艦橋にまで飛んできて、私の隣にいた水雷長、白戸敏造大尉が頭をやられ、血を流しながらばったり倒れます。

ほかにも下士官で負傷したものがありました。

中将旗は直ちにおろされました。


ベトナム戦争時に「大尉の墓場」という表現がありますが、これはベトナム軍が米軍の隊長である大尉を狙って攻撃したことによるものとされています。

階級が遠目に見てもわかる印があると、攻撃しやすくなるのでしょう。

これは船の世界でも同じで、早々にそのことに気がついて旗を降ろした担当者は偉いと思います。

・駆逐艦時代に空襲の恐ろしさをいやというほど経験しました

著者は雪風乗組みの後、人事異動で潜水学校へ赴任します。

著者本人が潜水艦乗り組みを希望したことによるのですが、その動機は次の通りでした。

P.154

ところで、駆逐艦の水雷長でかなりの経験を積んだ私が、どうして新たに潜水艦乗りを命ぜられたか、との疑問をもたれるかもしれませんが、当時潜水艦の喪失ははなはだしく、しかも乗組員の生き残りはほとんどありませんので、その補充が必要であったのだと思います。

なお私は駆逐艦時代に空襲の恐ろしさをいやというほど経験しましたので、考課表に潜水艦乗り志望と書きましたから、それが海軍省の人事局に認められたのかと思います。


素人考えですが、この当時は潜水艦であれば空爆とは無縁だったのかもしれません。

とはいえご本人が書かれたとおり、潜水艦は潜水艦で死ぬ確率が高い乗り物。

事故で沈んだまま浮かんでこれなくなることもありますし、駆逐艦に見つかってしまったら物音ひとつ立てずにじっとしていなければなりません。

閉所恐怖症にして粗忽者の私には、まったくもって向かない乗り物です。

私のことはさておき、死ぬ可能性が高い潜水艦乗り組みに打ち勝つくらい、「空爆」は怖い体験だったのでしょう。

以前にご紹介した『指揮官は語る』の著者も、空爆は本当に怖い、精神的なダメージが著しい、と述べておられたので、相当な恐怖なのだと思います。


かくして、潜水艦イ400の水雷長となった著者は、終戦間近の1945年7月、ウルシー特攻作戦を決行すべく青森県大湊から出撃します。

しかし作戦実行前に終戦となり、イ400は降伏し著者は米軍の捕虜となりました。
まさにこの記事↓です



捕虜となった著者は、米軍の捕虜の扱いについて驚きます。

P.188

しかしそのうちに、米軍側の私たち捕虜に対する処遇がきびしくなりました。報復の意味があったのかと思います。すなわち全乗員を三班にわけて、八時間ずつ、自分たちの乗艦を掃除し、錆落としをする作業が命じられたのです。
ここでも私は、またもショックを受けました。というのは、士官については捕虜の取り扱いに関するジュネーブ条約で労働が禁じられているので、米軍側はこれを順守し、士官にはこの作業をさせなかったことです。私は迂闊にも、この条約の存在を知りませんでした。

著者は「迂闊にも、この条約の存在を知りませんでした」と言いますが、教育を受けたはずの士官が知らなければ、部下の兵士たちも知らなくて当然。

国際条約の取り決めを、日本海軍は士官に教育していなかったのではないか、という疑問が浮かびます。

この話はもう一つあって、次のように述べます。

P.190

第三に、私は捕虜という立場でありながら、米水兵たちとしきりに会話するようになりました。英会話の練習のよい機会となります。その一人が話してみると、ハーバード大学のロースクールの学生でした。
彼は、日本の芸者が基本的人権を無視されていることをとうとうと論じたて、私はたじたじとなりました。私は恥ずかしながら、そもそも基本的人権などという言葉にお目にかかったことがなく、ここでポツダム宣言以来二度目に出会ったことになります。

先ほどの条約を知らなかった、もそうですし、基本的人権も知らなかった、もそうですが、当時の日本人は根本的に西洋発祥のルールについて、根本的な理解が不足していたことを感じます。

これが、捕虜虐待とみなされた事案の根本にあり、後に軍事裁判でB級C級といった有罪判決がくだされる事件を起こす原因になったのではないでしょうか。

日本人が「武士道」といっても、それは「基本的人権」とは一致しないので、判決を下す側には理解ができない。

一方で、ついさっきまでドカドカと爆弾を落としていた本人が、なんらかのきっかけで捕虜となったときに、爆弾を落とされていた側は冷静に取り扱うことができるものなのか。

感情的には難しいでしょうねえ。

それでも一定の取り扱いをすることを国家間で約束したのが条約であり、それを当時の日本人が知らなかったとすれば、不幸な事件が起きたのもむべなるかな。

法は「知らなかった」では容赦してくれません。

国家は国民に、しかるべき時にはしかるべき知識を教育しなければならないのでしょう。

さて、同じようなことがIFRSでも起きないものなのかどうなのか

どうも前提条件を理解できていないのではないか、そう感じるときがあります。

かの国では「そんなことするやつはいない」として、いちいち書いていないことがあるのではないか、そんな気がするのです。

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