制度会計対応現場のオナヤミ

会社側目線で見た、金商法、会社法、税法、内部統制、IFRSなど、制度会計の現場を書いていきます。 ネタがなくなると、読んだ本の感想でしのぎます。 原則火曜日更新です。

<あの山まで行きたいな>

かなり遠いようだけど、やってみますか。

もうしばらく、原則週イチ(火曜日)更新でがんばります。

子会社が新規事業を始めたときの話。

先方の社長から、決算の見込みについて説明がありました。

・売上は計上しますが、原価はありません。

・対応に要した人件費他の費用はすべて販管費です。

とのこと。

これは最初から主張して良いのか?

「売上原価はない」と言うけども、その人件費が売上原価を構成しているのでは?という疑問が湧きます。

とはいえ、人件費の場合、売上原価と販売管理費を分ける線はどこにある?と聞かれると、意外に難しいものです。

会社、業種が違えばまったく違う会計文化?もありえるので、先方の主張が正しいのかもしれません。

ただ、集計する側としては、それが「文化」というほど高尚なものなのか、はたまた「無知」なだけの蛮行なのか、判断できるだけの情報を集めなければなりません。

「しょせん表示の話」といえばそれまでですが、それが正しい管理につながるのかどうか、判断基準をどこに置いたものか悩みながら時間は過ぎていきます。

制度会計から離れた、新しい業務を担当し始めて約半年。

この間、次々に未知の体験をさせてもらって右往左往する日々です。

この仕事、聞くところによると、1年間回してみないと全体像が見えないし、年によってやり方が変わるとのこと。

あとどれくらいやれば、マスターできるのやら。

前任者は約20年、担当していました…

ということで、業務はしんどいのですが、ブログの更新も一定のペースでは続けたい。

ですのでこれからしばらく、1回あたりの分量を減らして思うところを書いていきます。

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監査チームの会計士さんと会社運営の話をしていたときの話。

あの会社さん(有名な会社さん)には非連結子会社がない、という話題になりました。

会計士さんが教えてくれたところによれば、そもそも「非連結はありえない」という方針の会社さんもあるのだとか。

私は都度重要性判断実施の文化で育ったので、違和感ありありです。

子会社を作る/作らない、にはいろいろな論点がありますが、何も初めから「連結ありき」という制約を自分で作らなくても…

「四半期決算は45日」という早期化の制約がある中で、グループ全体の中での規模を考えれば、あえて連結しなくてもよい会社だってあるはず。

監査法人に唆されてうっかりそういうルールを作ってしまったのか、はたまた最初から考慮の余地がなかったのか。

規模の小さい会社でも、連結するためにはそれなりにリソースを要しますが、それに見合った効果があるのかと言えば、たぶん子会社側には………

ただ一方で、非連結にできるくらい重要性がないのなら、そもそも会社を作るなよ、という考え方も理解できます。

「新しい会社を作るということは、とても重たい投資判断なんだよ」と、とある重役経験者は教えてくれました。

でも、連結決算から離れれば、別の会社にすることで得られる効用もたくさんあります。

「何が何でも連結」という制約があるがために、追加経理コストが発生して採算を悪化させてしまうのであれば、何か本末転倒な気がするのです。

会計ルールを順守することは大切ですが、それを順守するために経営をし始めると、うまくいかないであろうことはご理解いただけるかと思います。

「自明の理」と信じていることが、他所では何の制約にもならない、そんなことを考えました。

「デジタルテクノロジーによる働き方改革」というテーマのセミナーに出席してきました。

セミナーでいうデジタルテクノロジーは、「RPA」(ロボテック・プロセス・オートメーション)という技術でした。

同様の仕組みは、日本経済新聞でも次の通り紹介されています。

(有料記事) 事務作業も自動化 「ロボ」ソフトで働き方改革

セミナーで初めて技術を見た経理部員の私が、見せていただいた「ロボット」を表現するならば、エクセルの「「マクロの記録」がエクセル以外のアプリケーションにまで適用できる」仕組みです。

なんのことやら、と思われることでしょう。

セミナーでご紹介いただいたロボットをご紹介すると、こちら↓です。

業務システム向けRPAツール WinActor(ウィンアクター)

リンク先の中ほどに、「自動化の利用シーン例」という記事があるので、こちらをご参照ください。

先ほど「エクセルの「「マクロの記録」がエクセル以外のアプリケーションにまで適用できる」」と書きましたが、伝わったでしょうか。

当ブログの読者の方ならエクセルの「マクロの記録」によって、業務スピードを向上させた経験をお持ちの方はたくさんおられるはずです。

ただし、あの機能が及ぶのはあくまでもエクセル内だけ。

でもそれがエクセルの外にまで及ぼせるのであれば、と境界線をぐっと広げることで、効率化できることがもっと増えるかもしれません。

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とはいえです。

セミナー受講後に、いっしょに受けた人たちと懇親会で議論する中で、RPAについて以下の論点に突き当たりました。

・比較優位

先のリンク先サイトにお値段の表記がないのでここでも遠慮しますが、利用するにはそれなりにお金を要します。
(直感的にはリンク先の「WinActor」さんは、競合の外国製ソフトと比較すれば安い方だと思いますが…)

その業務をロボット化しますか?と考えたときには、当然に他の手段と比較考量することでしょう。

何とかしたい業務の成果物によりますが、「シェアードサービスなどの外注業者へ出す」とか、「データを買ってくる」といった方法が思い浮かびます。

ロボットの優位(ロボットは文句を言わない、パチッとはまれば間違えない)と、競合の優位を比較して、費用面のコストメリットを勘案することになるのだと思います。

・舞台は経理か?

セミナーを聞いての率直な感想は、これ経理が最初に導入するかなあ、でした。

というのも、経理業務は他の業務と比較すると、システム化が進んでいる分野でもあります。

会計や債権債務、固定資産などの各システムにはたいてい「外部データ取込」機能が装備されているので、業務の効率化を心がけていれば、なんとか前工程から電子データで受領してそのまま取り込めるように改善します。

ですから、どちらかといえば経理よりも前工程の人たちの方が、ロボットを待っているのではないか、そう思いました。

経理から上流部門の人たちの業務を観察して、あそこが手間取っているから作業が進まないと見つけたら、ロボット化を提案すると良いのかもしれません。

・ロボット化は移行期の代替手段なのか

そもそも、どうして「ロボット化」しないといけないのか、ということを考えてみると、その業務のさらに手前が電子データで渡してくれないからではないか、という仮定に行き当たります。

各種申込み(住宅ローンや携帯電話の新規など)で顧客から取得するデータがどうしても手書きのものしかない場合や、税務申告ソフトのように計算したデータを電子データで吐き出してくれない場合に、誰かが電子データかせざるをえません。

この「システムが電子データを吐き出してくれない」は、すごく古い「レガシー」と言われるアプリケーションでもはや改造できない/したくない、という場合においてよくあるオナヤミです。

このときに「ロボット使ってみようか」となるはずですが、逆に言えばその前段の課題をクリアしてしまえば、ロボットという手段は不要になります。

先の例で言えば、顧客がデータを入力してくれる、前工程のシステムが電子データを出力してくれれば、あとは次工程へ電子的に取り込むだけです。

脱線すれば、この「前工程が電子化してくれない」は、「電子化してもラクになるのは後工程だけ」「どうしてオレたちの予算でシステム化しないといけないんだ」という全体最適の視点を欠いた思考によって起きる、よくあるオナヤミです。

こう考えれば「ロボット」という手段は、前工程が電子化してくれないという課題を、後工程がなんとか自力救済するための手段なのかもしれません。

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このRPAという技術、考え方によっては「ロボットへ外注する」という表現ができます。

こう考えれば、外注先に選択肢が増えたということで、現業側としては喜ぶべきことなのでしょう。

再び更新お休みします。

本業というか、社内の諸々が押し寄せてきており、その弥縫に苦心しております。

この諸々、根源をたどればアンバランスな人員構成から、組織の各所がきしんでいるように感じます。

団塊世代のベテランたちが引退していく一方で、40~50代がいないくて30前後の若者が主力になった組織は絶対的に経験値がどうしても足りない。

その一方で、業務のシステム化が進み内部統制も整備されたことで、エラーが発見されても人力で止める術がない。

そのあげく、経理が間違えた間違えたと喧伝される始末 (;´д`)トホホ

こういう時の経理は、サッカーの得点シーンにおけるゴールキーパーのようなもので、もっと手前にたくさんいろいろあったのに、スポーツニュースに映るのは最後の5秒だけであることから、失点の全責任があたかもキーパーにあったかのように見えてしまいます…

人手不足とはまた違った形ではありますが、人員構成を誤った組織を経理の立場から何とか転覆しないように維持していく、これが当面の私の業務になりそうです。

最近の疑問は、これって転職しようと思った時に、アピールできる職歴になるのだろうか?ということ。

いよいよ現勤務先でしか使い物にならない、よそでは採用してもらえないガラパゴス人間に近づいているように感じています。

移転価格シリーズがあと一回残っているのですが、まとまらないので今回はこちらの感想文。
『織田信長 不器用すぎた天下人』 金子拓 河出書房新社

やまもといちろうさんが下記ブログでご紹介されているのを読んで、手に取ってみた次第。

【書評】『織田信長 不器用すぎた天下人』(金子拓・著)に中小企業オーナー経営者の悲哀を見た

税込み1,728円なので、業務資料となる本ならともかく、趣味で買う分には購入を躊躇するところです。

もっと安い本にも、読むべきもの、楽しめるものはたくさんあるはずなので…

それでも買ってしまったのは、仕事で疲れていていたからでしょう。

そして読んでの感想は…

 んで、本書はそういう日本人の中でも成功した畏敬される戦国武将の一人である「天下人」織田信長の実像に、最新の学説や資料で丁寧に迫る内容です。
なんかどこぞのNHKのヒストリアみたいですが、まあ実際そういう本です。

というやまもとさんの書評通りの内容で、刺激は乏しい。

東大の先生が書いた本なので、変に誇張することも演出することもなく、研究の成果を淡々と描いています。

とはいえ、やまもとさんが「中小企業オーナー経営者の悲哀を見た」と評したように、組織運営的な要素があったのも事実。

二か所ほどご紹介します。

・「相手を心底信用している」

本書では、織田信長を裏切った人物として、浅井長政、武田信玄、上杉謙信、毛利輝元、松永久秀、荒木村重、明智光秀の事例を分析します。

前半の4人は他家、後半の3人は家来という違いがあります。

本書を読む前から考えていたのは、前半の4人は潜在的にでも競合先なので、遠くにいるうちはともかく、国境を接するようになればいずれ紛争が起きる相手。

奇襲をかけられたにしても、「裏切り」ではないよね、と思います。

P.123

また(これは当たり前かもしれないが)裏切られるまで、その気配に気づかないという”油断”も特徴として見られる。これは裏返せば、相手が自分を裏切るとはつゆほども疑っていない、相手を心底信用しているということなのかもしれない。

楽観的でないと次々と領土拡大はできないけども、その楽観さゆえに悪いことが起きることを想像できない。

状況が変化する中で、周囲の感情に変化が起きることを想像できないのだと思います。

「楽観的」と「傲慢」の境目がどのあたりにあるのか分かりませんが、「過度の楽観」は「ただの傲慢」と変わらないのでしょう。

・「不得手・一本気・不器用」

本書において著者は、信長の外交、家臣団統制について、「不得手・一本気・不器用」と評します。

具体的には、P.184「外交の上手下手」という項において、尾張一国から上洛しての有力大名、天下人へとステージが変わる中で、管理スタイルを変えないといけないのに、それを変えられなかったことを論じています。

現代においても、新興企業で管理が追いつかなくなって起きる、いろいろなトラブルが適時開示されています。

私の所属する経理部門でも、人員構成や労働時間への考え方が変わっていく中で、考え方やり方の軌道修正を迫られています。

ですので、管理スタイルの変更問題は、信長様の戦国時代の問題ではなく、「組織運営」という人間が集まって行う営みの中では、かならず起きる問題なのでしょう。

本書の最終項のタイトルは「何かを信じた者だけにある裏切り」です。

「内部統制」の運営を執行する側として、どこまでは信じて、どこからは信頼に任せてはいけないのか、という懐疑心がつねについて回ります。

あのメンバー構成だから認められた「内部統制」だけど、構成員がすっかり変わってしまったら、もっと厳しい統制を課さなければならないのかもしれません。

盲目的に信じての「統制エラー」=裏切り、を体験して悩みながら、人間は成長していくのでしょう。

戦国時代なら悩む暇なく死んでいたことを考えると、まだ現代は殺されないだけ良い時代と言えそうです。

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慎重な著者の書きぶりゆえ、本書には「なかなか煮え切らない」という感想を持ちました。

「すぐに買って読むべきです」とまでオススメはしませんが、信長自筆とされる書状の写真が掲載されている等、2017年時点での研究成果が反映されている本書、書店等で手に取って確認してみる価値はあると思います。


「「移転価格税制の文書化」シリーズ4回目です。

前回まではこちら↓
移転価格税制の文書化制度1-(1) 国税局HP情報 

移転価格税制の文書化制度1-(2) ローカルファイル以外

移転価格税制の文書化制度1-(3) ローカルファイル(前編)


移転価格税制の文書化制度1-(4) ローカルファイル(後編)

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さて、国税庁HPに6月9日付けで、「移転価格ガイドブック~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~」というサイトが公表されました。
こちらでは、

移転価格税制に関する納税者の自発的な税務コンプライアンスを高めることを目指し、事務運営(取組方針、具体的な施策)を見直すとともに、納税者の予測可能性や行政の透明性を向上させるため

という目的のために、『移転価格ガイドブック』がダウンロードできるようになっています。

「移転価格ガイドブック ~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~」(一括ダウンロード)(PDF/3,984KB)

全部で124ページあるので、真面目に頭から一字一句読み始めると、なかなか大変です。

平易な書き方に相当な意を尽くしたことは伝わってくるのですが、例えば「独立価格比準法」について一から解説してあるわけではないので、前提となる用語知識はどこかで身につけてくる必要があります。

そこさえクリアすれば、本書は無料で入手できる移転価格税制についての良書といえます。

たとえば、「Ⅱ 移転価格税制の適用におけるポイント」は、様々なケースにおける検討すべき事項を、納税者側と税務署側のそれぞれからの視点で論じてくれています。

P.36の「ケース2:価格設定」では、会社側担当者の、うかつとはいえやってしまいそうな答弁が出てきます。

本書を読んで、地雷を踏まないための準備はしておくべきでしょう。

また、「Ⅲ 同時文書化対応ガイド」は、ローカルファイルに記載する内容や表のサンプルが掲載されています。

ローカルファイルを作る側も大変ですが、読む側もあまりにオリジナリティあふれるものは見るのも大変なので、ある程度は例示をして一定の範囲内に納めて欲しいという希望があるのだと思います。

逆に言えば、「これくらいのものは作ってください」とも取れるので、納税者にとっていいことばかりとも思えませんが…

そして本書において、もっとも衝撃だったのはP.17 「(2) 移転価格文書化制度に関する指導、助言等のための企業訪問の実施(平成29(2017)年7月~」です。

概要にはこうあります。

移転価格文書化制度を適正かつ円滑に実施することなどを目的として、同時文書化対
象取引に関する個別照会への対応を開始するのと併せて、平成29(2017)年7 月から、企業の皆様のご理解とご協力の下で、国税局の調査部の職員が同時文書化義務の対象となることが見込まれる企業を対象として、ローカルファイルの作成状況等の確認を行うため、事務所等を訪問します

申告期限の間際に作ればいいや、と思っていたとしても、早々に「進捗どうですか?」と当局の方からお尋ねがあるのかもしれないのです。

「さあ」、とか「まだやってません」とか答えたとして許してもらえるのかどうか。

また、訪問時にお見せしたローカルファイルについては、こんな記載もあります。

ハ 企業を訪問した際の指導、助言等について

ローカルファイルの記載内容で指導を受けた事項については、改めてご検討いただくようお願いいたします。後日の移転価格調査を含む税務調査やローカルファイルの作成状況等を確認するために事務所等を訪問する際に、指導、助言等を行った事項の対応状況について質問や確認を行うことがあります。

「ここがイマイチですね」となったら、改善に取り組まざるをえません。

後日にその実施状況を確認することもあると言ってます。

まあこの「助言等のための訪問」である限りは、提出しなかったとしても罰や不利益になることはしない、と言ってくれていますが、誠実な実務者でありたいと思えば何もしないわけがない…

仕事がまた増える。

人生というのはかくして、業務量が拡大し続けるものなのかもしれません。

あともう一回、続きます。


「「移転価格税制の文書化」シリーズ4回目です。

前回まではこちら↓
移転価格税制の文書化制度1-(1) 国税局HP情報 

移転価格税制の文書化制度1-(2) ローカルファイル以外

移転価格税制の文書化制度1-(3) ローカルファイル(前編)

前回、

・一の国外関連者との、①取引金額が50億円以上か、②無形資産取引金額が3億円以上、のどちらにも該当しない場合には、「同時文書化義務」を免除される、となっていること、

・しかしそれは、確定申告書の作成と「同時」にローカルファイルを作成する義務を免除されているだけで、当局が必要と判断すれば、「ローカルファイルに相当する書類」を60日以内に提出しないといけないこと,

をご紹介しました。

こんな嫌がらせみたいなことを当局がするのか?という考え方は当然にありますが、ここはやはり日頃の行いにも気をつけておくべきなのでしょう。

しかるべき理論武装無きままに、税率の低い国の子会社相手に極端な安売りをしたり、高い買い物をすることは、文書作成義務リスクを抱え込むことになるのです。

そしてまた、何とか文書化して提出したとして「これじゃダメだよ」と言われたときにどうなるのか、ここが気になるところです。

「あらまし」によれば、納税者がローカルファイルを一定の期日までに提出できない場合は、「推定課税及び同様の事業を営む者に対して質問調査を行うことができる」とあります。

※『移転価格ガイドブック』によれば、この「同様の事業を営む者に対して質問調査を行うこと」を「同業者調査」と言うそうです。

本当に文書を出せない場合は当然として、文書を出したものの内容がイマイチな場合も、「提出できない」認定されてしまうのでしょう。

この場合、「推定課税」であればイマイチな本人だけの話ですが、「同業者調査」が発動された場合を想像すると、気分が暗くなります。

イマイチなローカルファイルを提出した本人は、これによってエライ目にあっても仕方がありません。

イマイチなローカルファイルを提出したがために、「推定課税」が発動されてしまい、「おたく海外子会社へ利益を移転してますよ」と認定されたとしても自業自得です。

たぶん、税務署は同業者に質問調査に行ったとしても、「○○さんのローカルファイルがイマイチなので、御社に調査に来ました」と名前を明かすようなことはしないでしょう。

ですから、「○○さんのローカルファイル、イマイチだったんだって」とか業界内の噂になって、辱めを受ける心配をする必要はないと思います。

問題は、そのことによって同業者調査を受けることになった方です。

この質問調査にうかつな対応をしてしまうと、今度は自身の移転価格問題に飛び火するリスクがあります。

また、こないだ税務調査が来たところだからしばらくローカルファイルはしばらく作らなくても大丈夫だ、と高をくくっていたら、「同業者調査に来ました。ローカルファイル見せてください。」となるかもしれません。

同業者がきちんと対応してくれていれば来ることもなかった、移転価格の調査を受ける羽目になってしまうのです。

同業者のポカは連帯責任なのでしょうか。

心配のしすぎかもしれませんが、心配しても心配し足りないのが心配性。

今回の文書化制度、提出する先が国家権力だけに、不安と心配は尽きません。

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このシリーズ、全4回で準備していたのですが、『移転価格ガイドブック』が出たこともあり、あと2回くらい続きそうです。

「「移転価格税制の文書化」シリーズ3回目です。

前回まではこちら↓
移転価格税制の文書化制度1-(1) 国税局HP情報 

移転価格税制の文書化制度1-(2) ローカルファイル以外

今回と次回で、当制度で作成する文書のうち、多数の会社さんが作ることになると思われる、「ローカルファイル」についてご紹介します。

4.独立企業間取引を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)

こちらは、使用言語の指定はありません。

この文書は、「国外関連取引を行った法人」に、確定申告書の提出期限までに作成する義務があります。

ただし、一の国外関連者との、①取引金額が50億円以上か、②無形資産取引金額が3億円以上、のどちらにも該当しない場合には、「同時文書化義務」を免除されるとあります。

この「同時」というのは、文書の作成時期が確定申告書の提出と同じ、ということのようです。

ですから同じことの繰り返しですが、一の国外関連者との、①取引金額が50億円以上か、②無形資産取引金額が3億円以上、のどちらかをやっていれば、確定申告書と同時に作成することになります。

この作成制度の適用開始は平成29年4月1日からなので、つい先日です。

3月決算の会社の場合、原則通りであれば平成30年5月31日が原則の作成期限となります。

ただし、確定申告書に添えて提出するわけではありません。

想定される提出は、税務調査が来たとき、あるいは、当局からのお尋ね電話にて、調査官より提出要求があるものと思われます。

「あらまし」によれば、提出日は「調査官が書類の準備に通常要する日数を勘案して指定する」とあり、ローカルファイルは45日、ローカルファイルの基礎情報は60日が、猶予の上限と解することができます。

改正前は、「遅滞なく」となっていたところを日数を明記することで、納税者も事前に予想ができることになりました。

とはいえ、「45日」と聞くと余裕があるように思えますが、書かねばならない内容を考えると、白紙からスタートして45日でそれなりの内容のものを作るのは難しいだろうなあと思います。

ごくごく簡単な取引しか無くて、適正な価格で運用されていたとしても、独立企業間価格を算定する方法を、税法的に無難な文書にして根拠資料をそろえることはけっこうな難題のはずです。

そしてこの難題は以下に書く通り、海外子会社との取引があれば誰であれ「ローカルファイル」は作らなければならない可能性があることから、難題の及ぶ可能性の範囲は意外に広いのです。

というのも「ローカルファイル」について規定では、一の国外関連者との、①取引金額が50億円以上か、②無形資産取引金額が3億円以上、のどちらにも該当しない場合には、「同時文書化義務」を免除される、とあります。

これはあくまでも、「同時」文書化義務を免除されるのであって、「文書化義務」が免除されるのではない、ところがポイントです。

ですから、仮に海外子会社との取引が5億円しかなかったとしても、当局が必要と判断すれば「ローカルファイルに相当する書類」の提出を求めることができる定めとなっています。

単に、「確定申告書と一緒に作っとけ」と言われていないだけのことなのです。

何もないところに、「さあ出せ」と言われても、猶予はマックス60日しかありません。

デキルカナ?

(つづく)


「移転価格税制の文書化」シリーズ2回目です。

前回はこちら↓
移転価格税制の文書化制度1-(1) 国税局HP情報 

今回は当制度で作成する文書のうち、主に大きな会社さんが作成する文書について、ご紹介します。

・作成する文書

平成28年度の税制改正により、条件等に該当した法人は4種類の書類を作成することになりました。

※以下に書いた「提出期限」は、分かりやすくするために3月決算会社の期限を書きました。3月以外の方は脳内調整ください。

1.最終親会社等届出事項

書類の内容については、「あらまし」を読む限りさほど難しいものではないようです。

なお、提出期限は平成29年3月31日、すでに過ぎています。

2.国別報告事項(CbCレポート)

提出期限は平成30年3月31日なのでまだ余裕がありますが、英語で作成すること(日本語はどうやら不可)というハードルがあります。

ただし、記載内容に自由作文というか論述が必要な部分はなさそうなので、自分でむやみにハードルを上げなければ、何とかなるのかもしれません。

3.事業概況報告事項(マスターファイル)

こちらも提出期限は平成30年3月31日で、英語での提出も可能です。

ただし、こちらは英語で提出した場合には日本語による翻訳を求められる場合があります、と弱気な注意書きがついています。

外国法人による英語資料を読むことの困難性を予見して、当局はさっそく予防線を張っているのでしょう。

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ここまでご紹介した1~3の文書は、連結総収入1,000億円以上の法人(←この表現は特におおざっぱなので要注意)に提供義務があります。

そして何より新時代の到来を感じさせるのは、提出方法はe-TAXのみということです。

該当する提供義務者は大会社さんばかりなので、みなさん電子申告に対応済みなのかもしれませんが、これを機会に電子申告へ誘導だ、という関係者の下心を邪推する私は心が穢れているのでしょう。

また提出資料は、原則「CSVかXML形式で」という制約があり、ワードやエクセルはやめてね、という決まり事もあります。(「FAQ 問14参照)

あと2と3の文書は、未提出だと30万円以下の罰金とのことです。

これまた大会社さんに30万円でどれだけの心理的効果があるのか図りかねますが、「罰金を設けた」こと自体が、当局の本気度の象徴みたいなものなのでしょう。

30万円払えば提供しなくても許してもらえる、という解釈はたぶん間違っていると思うので、実行に移される際はよくよくご検討ください。
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次回から、ローカルファイルについてご紹介します。

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