「電子記録債権 導入体験記」の途中ではありますが、興味深い講演録があるのでこちらを先にアップします。


さて、3月に日本取引所さん主催で、「企業価値の向上のためのコーポレートガバナンス」と題したセミナー開催されました。


参加される方の立場によって、その参加目的は違うと思いますが、私のお目当てはこちら↓でした。


「監査法人検査を通じて見えてくる上場会社の課題」
   講師 佐々木 清隆氏 
 (金融庁検査局審議官 兼 公認会計士・監査審査会事務局長)


金融庁の佐々木審議官といえば、


ビジネス法務の部屋 「金融庁の佐々木審議官より書評をいただきました(経営財務)」


にて、「金〇庁のチョイ〇るおやじ ことS審議官」とご紹介のあのお方。


講演への期待はとても高まっていたのですが、どうしても抜けられない社内打合せにつかまってしまい、泣く泣く欠席せざるをえませんでした…


ところがです、先日気がついたのですが、日本取引所HP 「過去のセミナー情報」にて講演録が公表されているではありませんか。


(2014年度 上場会社セミナーのところにあります)


「監査法人検査を通じて見えてくる上場会社の課題」
  佐々木 清隆氏(金融庁検査局審議官 兼 公認会計士・監査審査会事務局長)


・講演録


・資料


神様ありがとう、ということで講演録より、会社側目線で興味深く感じたところをご紹介します。


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まず、佐々木審議官、公認会計士・監査審査会事務局長も兼ねておられるので、講演の始めの方にてこう言われます。


審査会の直接の検査対象は監査法人ですが、その先にあります皆さま方上場企業の問題も、少なからず把握できるということです。


「うちにも何か問題があるのだろうか?」


講演当日の聴衆は、こうしてお話に引き込まれていったのでしょう。


・根本原因(root cause)の究明


3-2.オンサイト検査の実効性向上


オンサイトの検査の実効性を向上させるためには、事前のリスクアセスメントが当然重要ですが、併せて、この数年力を入れていますのは、根本原因(root cause)の究明です。


今、監査法人の検査も金融検査もそうで、あらゆるところで共通のワードなので、「root cause(根本原因)」はぜひご記憶いただきたいと思うのですが、金融監督の世界ではかなり頻繁に出てまいります。


なぜかと言いますと、例えば検査をします。


金融庁の検査、あるいは監査法人の検査でも、検査チームがまず発見してくる一番簡単なものは規定を守っていないことで、これを指摘するのが一番簡単なのです。


銀行検査でもそうです。監査法人も監査基準を守っていないという指摘は、検査チームとして簡単ですが、私は検査局の立場でも、審査会の立場でもこの数年言っていますのは、それは検査ではないと。


そういうルールを守っているかどうかを指摘するのが検査ではなくて、なぜ守っていないかということの根本原因、その背景を指摘することに検査の意味があるということを強く言っています。



企業側担当者としては、この件はぜひ強化いただきたいところです。


「ルールを守ってる/守ってない」、だけでは、担当者の責任ですべてが片付けられてしまいます。


でも、「ルールが守られていない」という事象が起きている場合には、ルールを「守ることができない」環境があることが多々あります。


環境云々が原因となると、これは担当者個人の努力ではどうにもならなくて、もっと上から改めさせないと本質的な改善に到らない…


これには「外部からのご指摘」がきわめて効果的です。


ということで、「根本原因、その背景を指摘する」はぜひとも続けていただきたいと思います。


・会計監査人はスカウターが必要なのでは?


4-4.監査人と監査役のコミュニケーション


4-4-1.双方が不十分なコミュニケーション(PPT33-35)


われわれも見ていますが、監査法人が提供する資料も非常に形式的なものもありま
す。


要は聞かれなければ答えないという傾向が、一部の会計監査人、監査法人には見られます。


ですから、会計監査人にこれは問題があるということですが、併せて、「②監査役→会計監査人」の、監査役側にも問題がある。


要は会計監査を含めて、監査役に能力が必ずしもない、会計監査人の説明を鵜呑みにするというケースも、われわれの検査の中で分かってきます。


(中略)


具体的に、私は審査会の立場で監査法人に聞きますと、監査法人側は「いや、ちゃんと説明しています」と、「こういう資料を渡して、このように各チームから、銀行も含めて監査役さんに説明しています」と言うのですが、一方で、今度は銀行の監査役会に聞きますと、「いや、そういう説明は聞いていない」と、「資料はもらったけれども、そういう説明は聞いていない」ということで、監査法人と監査役の両方から見ていますと、どちらに問題があるかいうことがよく分かってくるということです。


もっと具体的に、どっちが悪いのか教えていただきたいところですが、個別ケースについては当然書いてありません。


それはさておき、知っていることを全部話し始めると長くなるし、一方で必要と思うことはすべて伝えたつもりでも、「聞かれなければ答えない」と批判される会計監査人もつらい立場です。


監査役、にもいろいろな人がいるし…


会計士さんは「監査能力」だけでなく、「相手方の力量を推し量る能力」が問われているのでしょう。


・会計士さんへのお知らせ


最後に余計なお世話ではありますが、もしかしたら不幸な人が増えることを防止できるかもしれないのでお知らせしておきます。


われわれ審査会としましては、先ほど申し上げたとおり、いろいろな枠組み、手続きはありますが、審査会の検査結果について、できるだけ監査法人は、個別の上場企業、監査先に説明しなさいということを求めていますので、ぜひお聞きになってください。


もし監査法人がそれでも答えないということであれば、ぜひ審査会におっしゃっていただければ、その監査法人に対して指導をいたします



もしクライアントが急に「審査会の検査結果はどうでしたか?」とか聞いてきたとすれば、それは誘導尋問なのかもしれません。


うかつに「知りません」とか「言えません」と答えると、金融庁から指導がやってくるのかも?


「本部に確認のうえ、近日中にご回答します」というのが模範解答なのでしょう。


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今回ご紹介していませんが、議事録では他に、当局が「海外発の会計不正」に関心を寄せていることや、企業がもっと監査法人の質を問うことを求めています。


今は該当がないかもしれませんが、他社での不具合は将来、我が社でも起きるのかもしれません。


当局の気付きを共有できる貴重な議事録だと思うので、ぜひご一読をオススメします。