中国の若者は金が大好き

2025年7月18日


〖プロロ-グ〗

・筆者は長い間、中国の金について研究してきた。その集大成である『中国の金戦略』(1993年12月10日/現代アジア出版会)を上梓した。2024年7月24日「日本経済新聞」は「金に群がる中国の若者」という記事を掲載した。中国の若者の金買いは空前のブ-ムとなっていると。やまぬ金買いの根底には自国の将来への不安がぬぐえない中、目に見える価値を実感したい心理が透けて見える。以下、記事の内容です。

 

〖広東省深圳市〗

・「Tiktok」(ティックトック)のグル-プに入れば安く買えるよ」。7月中旬、広東省深圳市(しんせん)の宝飾店ビル「金展珠宝広場フロアの人混みをかき分け、市内に住む30代男性はスマ-トフォンに語りかける。金展珠宝広場には500近い金宝飾店がひしめく。男性は広場近くで金宝飾店を営みつつ、動画アプリ「TikTok」を使った「ライブコマ-ス」で、広場の活況を中継しながら自社商品を売り込んでいる。

・中継を終えた男性は「市街の人に魅力的な市場を知ってほしい」と熱っぽく語った。配信は延べ2万3000人が視聴し、コメント欄は「多少銭」(1グラムいくら?)、「今天多少(今日の価格?)といった投稿であふれた。「どれが似合うかしら」。広場を訪れた30代の女性は会社員迷ったすえ金のブレスレットを購入。加工費込みで1万元(約20万円)以上とするが「金は価格が上がり続けていて価値が落ちる心配がない」と満足げだ。

 

〖購入の特徴〗

・中国では個人の金買いが急増している。国際調査機関(ワールド・ゴ-ルド・カウンシル<WGC>)によると、1924年1-3月に中国で消費者が買った金の宝飾品や地金、コインなどの総量は294・6トンと前年同期比で13%増えた。世界の消費者需要の37%に達する。中国人は伝統的に金を好んで買ってきた。主な目的は贈答や投資で中高年以上が買う資産印象が強かった。それが、ここにきて若者の人気が加速している。

・火をつけたのは、ここ1、2年で目立ったのは「金豆」ブ-ムである。豆粒大の純金1グラムで、瓶に入れて貯める。出店する店舗の店員は「金は価値の変化がわかりやすく、貯金と違った高揚感がある」と人気の理由を話す。宝飾品大手の六福集団はコ-ヒ豆や魚、小龍包(シャオロンバオ)などの形をしたオンライン限定の金豆を展開する。金豆をためる純金の豚も販売している。宝飾品にとって、今や若者の金買いは収入の柱である。業界大手、周大福珠宝集団の調査では18~40歳の約70%が純金の宝飾品品を買う移行を示した。同社の23年度の主力製品販売額は前年度比で20%伸び、半分近くは35歳以下の購入であった。

 

〖周大福の見方〗

・香港で著名な金専門店の周大福の調査では、Z世代の64%は自分へのご褒美や普段使いのために純金宝飾品を買った。純粋に欲しいから買う面が強く、買うのも手頃な品が多い。一方、金展珠宝広場に店を構える大鳥珠宝では人気なのは「生日快楽(誕生日おめでとう)などの言葉が入った1グラムの純金カ-ドである。有名なキャラクタ-の絵が入った薄いシ-トも並ぶ。透明のスマホカバ-にいれるという。

・同店は客の半分が深圳市外から来る。「購入客」とはSNS『微 信』(ウィ-チャト)で連絡先を交換し、新製品が出たら連絡してオンラインで売買する」という。移り気な若者の気を引こうと、デザインは日々進化する。金展珠宝広場を訪れた20代女性は「2年前に買った高級な金アクセサリ-でも相当古く感じるという。

 

〖個人の購買意欲〗

・若者をはじめとする中国個人の金買いは市場も揺らす。上海黄金交易所(SCE)の金現物価格は、ロンドン価格より割高な状態が1年以上続く。SCEでの旺盛な金買いがロンドン現物をはじめとする世界の金相場を押し上げる一因となっている。買いが高値を呼ぶ。そのサイクルに乗れる若者ばかりでない。中国の国家統計局によると、6月16~24歳の若年失業率は13.2%と、全労働年齢(5%)の3倍近くに達する。

・誰でも憧れる高収入の職に就ける若者はごく一部である。上海市の20代男性の会社員は、結婚予定の女性に贈る金宝飾品を探そうと専門店を訪れたが「今は極端に高い。少し下がるまで買えない」と諦めたという。賃金に限りある若者が生んだ空前の金ブ-ムは、危うさと背中合わせでもある。

 

〖エピロ-グ〗

・従来の金価格の趨勢は、国際情勢が平穏時、金価格が低迷し、反面、国際情勢が混乱時、金価格が上昇する。最近の金価格の急上昇の背景にはコロナ大流行(2020年1月)、ロシアのウクライナ侵攻(2022年2月)時、7000円(g当たり)であった。これが、25年7月16日現在17466円となった。びっくりするほどの急騰である。

・既述のように中国の若者の間で金豆ブ-ム(豆粒1g)である。購入した金をその都度瓶の中に入れる。分かり安い投資方法である。このブームの背景には中国経済の低迷がある。やはり、若者が将来の不安感が増えている証左である。若者はさらに金豆を購入している。中国は過去の歴史動乱から国民に金を購入する知恵を与えた。金ブレスレッドや金指輪を購入し、常に国の動乱から対処していた。これが個人の安全保障であった。(グロ-バリゼ-ション研究所)所長 五十嵐正樹

※グロ-バリゼ-ション研究所のホームページは諸般の事情により、2025年7月末をもってクローズ致します。13年4カ月の長きわたり視聴して頂きました皆様に深謝いたします。

自然の掟(1)―野鳥が居なくなった

2025年7月11日

 


〖プロロ-グ〗

・著者の住んでいる武蔵野市内には雲雀(ひばり)の囀り(さえずり)は聞こえなくなってから数十年は経っている。また、雀(すずめ)、鶯(うぐいす)、尾長(おなが)のギャギャという鳴き声も聞こえなくなった。毎月1回群馬県の南部、東毛地区の大田市内にある高山山彦九郎の研究会に出席している。

・知人の車で5月半ば館林市から国道122号で大田市細谷に入る。その間、左右には麦秋近い麦畑が広がる。知人にこの辺には雲雀が居ますかと聞くと、居るとの返事、車を降りて大空を見上げると雲雀の囀りは聞こえた。自然があった。

・筆者の家の近くには1950年代に麦畑があった。雲雀が大空高くピイチクパ-チクとの囀りが聞こえた。あの青空と雲雀の囀りは人々には大きな喜びを与えた。情報によると、今は多摩川の土手と調布飛行場に行くと、雲雀の囀りがきこえるという。

 

〖自宅付近では〗

・自宅附近(境南町)や武蔵境駅前の観音院内にはキジバトのツガイが地上で餌を探し、もう一羽は樹木から下をウオッチしている。では、今から170年前の安政年間(1855年-1860年)に遡ると、多くの野鳥が飛来して素晴らしい自然があった。以下、安政年間頃の野鳥の楽園を見てみよう。

 

〖関前村の昔〗

・「安政6年8月改政」の古文書「お鷹場御法度手形(写)」見てみよう。武州多摩郡野方領関前村同新田」(現:武蔵野市関前)の「鳥見」(役職名)は、鷹狩の獲物(鳥)を管理していた。鴨・鷺類・水礼(すいれい)・鷭(ばん)・鶉(うずら)・雲雀(ひばり)がいて豊かな自然が残っていた。お鷹場近くに住んでいる農民は、将軍や大名が来て鷹狩が終わるまで、自宅で静かな生活を送っていた。三鷹市には鷹狩を示す標柱が3か所(三鷹の由来)立っており、尾張徳川家のお鷹場があった。

 

〖都立野川公園自然観察センタ-〗

・都立野川公園自然観察センタ-の資料によると、国分寺崖線にそった丘陵地帯には多くの野鳥が住んでいる。例えば、カケス、トラツグミ、ヒガラ、モズ、ツグミ、ビンズイ、オナガ、メジロ、コジュケイ、キジバト、シジュガラ、カワセミ、キジなどである。但し、温暖化の影響で森には生き生きとした力はなく、いつまで野鳥が元気でいられるかを、心配している。

 

〖エピロ-グ〗

・最近、筆者の住む知り合いに野鳥の出没について聞いてみると、従来と比べると野鳥、主に雀の減り方が顕著であると言っていた。3年前ぐらいは自宅近くの刈り上げた丸く鬱蒼(うっそう)とした木々の中から雀がうるさいほどの囀りが聞こえてきた。今は何処に生息しているのか! 

(グロ-バリゼ-ション研究所)所長 五十嵐正樹

経済の指針(3)-橋本英二日本製鉄会長の講演

2025年7月7日


〖プロロ-グ〗

・筆者は2024年11月22日午前10時、第55回一橋祭卒業生講演会企画(主催大学商学部)「日本製鉄会長(商学部卒業)と語る、「一橋と未来」を参観しました。会場は同大「インテリジェントホール」。会場には50名ほどの聴衆が参加し、中にはアジア系とみられる人が5人ほど見られた。
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一橋大学
インテリジェントホール
出典:「コトブキシーティング

・折から日本製鉄の「USスチール買収問題」が話題になっている時でもあり、その最高責任者の一人が橋本英二会長であったが、直接的な言及はなかった。但し、橋本会長が企業人として強調していたのは、「企業はリスクを取らなければ、企業は成長しない」ということであった。いかにも現状の日本製鉄の「USスチール買収問題」を想起させる発言で、説得力があった。

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橋本英二氏
出典:「一橋大学商学部


 
〖在校時代〗

・橋本英二氏の一橋大学生時代の思い出は、一橋祭運営委員会の委員長として頑張った。もう一つは約70日間のASEANとインドへの一人旅でした。インドネシア、マレ-シア、フィリピン、シンガポ-ル、フィリピン、タイなどの国々がこれから工業国になっていくのか。この目で確かめたいと思っていました。特に、インドで過ごした40日間は、私に考える機会を与えてくれました。この貴重な旅の経験が、グロ-バル企業として、会社を成長させたいと思う、一つにきっかけとなりました。

 

〖入社時代〗

・新日本製鉄時代に入社しました。最初の4年間は、岩手県の釜石に配属になり、職場の人事の仕事を担当していました。次の仕事は営業をやりたくて、「営業に出してもらえなれば会社を辞める」と人事課長へ直談判にいったくらいです。最初の担当はトヨタ自動車で、なかなかタフな交渉が待っていました。

・私が入社したのは、1979年は新日本製鉄が製造業で飛び抜けて大きく、売り上げもトヨタの3倍はありました。ところが、その後の内需がピ-クアウトして、徐々に低成長に陥った一方で、トヨタはぐんぐん成長していきました。
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トヨタ自動車本社
出典:「TOYOTA


・交渉においても冷静に双方の主張を考えると、新日鉄は価格を守ること目的に理屈を考えたのに対して、トヨタ自動車は「自動車メ-カ-としてさらに発展をするために」という考えの下に意見をされており、そんなトヨタ自動車の方が主張していることは真っ当だと感じていました。この経験から学んだことは会社の成長というのはとても大事で、成長しない会社はやはりどこかおかしくなっていくということでした。

・世界一の鉄鋼メ-カ-に復権するということは、わたくしの悲願です。1970年には八幡製鉄と富士製鉄が合併し新日本製鉄となり、世界一の鉄鋼メ-カ-になりました。それから30年近く世界一にありましたが、世界的鉄鋼メ-カ-の再編、また、中国勢の台頭を受け、徐々にその地位を落としていきました。

・八幡、富士が一緒になった時は、国の方針や当時の産業社会の要請に基づいて合併したことで世界一になりました。努力をして世界一の座を手に入れたのではありません。しかし、今回は自分たちの戦略と努力で成長し、自らの手で世界一に復権するという意気込みでやっています(注1)。

 

〖エピロ-グ〗

・日本製鉄の米鉄鋼大手のUSスチ-ルの買収がようやく決着した。米政権の介入で交渉が紆余曲折をたどる間も両社は一貫して相思相愛を強調してきた。その背景には、時には手を携え、時には激しく罵り合う100年もの愛憎劇がありました(注2)。なお、同氏は熊本県人吉高校出身(人吉市)、6月末、同高校を訪れアメリカ観「世界の面倒はもう見ないという米国の大きな転換は変わりません」と語る。
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USスチール工場
出典:「東京新聞


・石破総理は7月2日、官邸で日本製鉄の橋本英二会長と面会した。日本製鉄による米国鉄鋼大手USスチ-ルの買収について、「これから先の日米関係のモデルケ-スとなる」と。今回の買収を日米双方の利益につながる象徴的な案件として位置付けた形だ(注3)。著者の橋本英二氏の印象は、約11万4千人(2025年3月31日現在)の従業員を抱えるトップの人であることを痛感した(注3)
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出典:「毎日新聞

「グロ-バリゼ-ション研究所」所長 五十嵐正樹

(注)

(1)「日本製鉄会長と語る、一橋と未来」第55回一橋祭卒業生講演企画「日本製鉄会長と語る」2025年1月9日

(2)「日本経済新聞」2025年6月21日

(3)「産経新聞」2025年7月3日

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