2014年3月12日

【現在の怪物君】

(横   顔)

・日本中の到る所-都会、寒村・僻地に必ず見られる光景がある-寂しいそうにいつも一人ぼっちで24時間働き続け、夜間は明るい照明で自分の存在を強調している-その正体は自動販売機(以降、自販機と略称)である。

自販機は大変稼げる-人間のように常に文句を言うような“柔„ではない。何にも云わずにただ稼ぎ捲るが、問題なのは“電気を大食いする代物„なので、現在の怪物なのである。

・この怪物君は2012年現在、日本に約509万台ある。その内訳は-①飲料自販機が全体の約半分の256万台、②食品自販機7.41万台(インスタント緬・冷凍食品など)、たばこ自販機30.4万台、券類自販機4.2万台(乗車券、切手・はがき・証紙)、その他自販機85.8万台(カミソリ・靴下・ちり紙他、新聞・雑誌、生理・産制用品、乾電池・玩具他)、自動サ-ビス機125.2万台(両替機、ビデオソフト・パチンコ玉貸し機、コインロッカ-他)などである(日本自動販売工業会調べ)。

・設置台数の推移をみると-20世紀中は増加基調で推移した後、2000年(平成12年)には560万台達しピ-クアウトする。絶対数では米国が世界一で691万台(2010年末現在)が普及しているが、人口や国土面積を考えた普及率では日本が世界一である。

・21世紀に入ると怪物君は減少に転じ、2007年(平成19年)540.5万台、2008年(平成20年)には526万台となる。売り上げも2000年の7兆円から2008年には5兆7000億円と減少が続く。なお、怪物君の誕生数が多い地域(工業製品出荷金額)は三重県で、その中で最も多いのは四日市で生産台数は年間約12万台である(注1)。

 

【自販機の商圏】

(便利さが売り)

・人口密集地域の東京の下町の狭い路地には威風堂々として存在感を示している怪物君と古い家並みとのコントラストは実に不具合である。町並みを保存する人達にとっては迷惑な怪物君かもしれないが、住民にとっては便利なものである。近くには怪物君と同様に24時間営業しているコンビニがある-時期にかなった商品が置いてあり、来店者のニ-ズの意識変化に対応している。

・最近の報道によると、コンビニ大手5社は2014年度に国内で合計4800店出店するという。出店から閉店を引いた純増数は3200程度。また、コンビニにより広く、食品ス-パ-よりは狭い“小型ス-パ-„の出店が都市部を中心に営業を初めており、怪物君の商圏を取り込でおり、近頃、怪物君は肩身の狭い思いをしている(注2)。

(消費者の意識)

2003年に全国の20代~50代の500人を対象に「清涼飲料自販機に関する意識と利用実態調査」を実施した結果によると-「清涼飲料自販機」を便利だと「思う」人が99.6%。「清涼飲料自販機は生活に必要なものか」という問いに対して、82.8%の人が必要であると考えている。清涼飲料自販機の必要性は消費者にとって一部であり、社会的に認知されているようである(日本自動販売機工業会調べ)。

・怪物君は生活密着型である-消費者は必要な時に手に入ることでき、しかも百円玉1枚あればゲットできる。消費者が最初に思い浮かべる商品は-「清涼飲料水」(95.4%)、「たばこ」(77.4%)、以下、「酒・ビ-ル」(44.8%)、「乗車券」(43.6%)の順である。購入ランキングをみると、「清涼飲料水」(97.2%)が圧倒的に多い。以下「乗車券」(45.0%)、「たばこ」(40.0%)、「酒・ビ-ル」(26.8%)である。利用者の比率は男性9:女性1である。

 

【自販機の問題点】

(主要課題)

・怪物君の最大の問題は“大食い„(電気を喰う)である。しかも怪物君は四六時中飯を食べており、暑い時は冷たいものを、寒い時は暖かいものを好む“贅沢な奴„である。この生活感溢れる性格にしたのは人間様である。

・試算によると、自販機500万台の電力消費量は500万kWとなる-福島第一原子力発電所の1号機から6号機までの469万kW(定格電気出力)と発表されているので、原子力発電所1箇所の発電量と自販機の消費電力が同じである。怪物君の“暴食ぶり„が分かった。反面、以下のように怪物君は人間様にとって役立っている。

(効 用)

①コンビニのない地域でも24時間買える利便性がある。

②外で労働したり移動したりする人の水分補給には役立っている。

③僅かな敷地を貸し、設置収入が得られる。

④事業者は店舗を構え、人を雇わずして小売販売ができる。

⑤治安面で、暗がりの照明として役立っており、痴漢防止にも一助となる。

 

【省エネの対応】

(カロリ-コントロ-ル)

・怪物君の“大食い„に対するカロリ-コントロ-ル(節電)としての処方箋は、以下のとおり。

①断熱強化、気密性強化、夏の電力消費時には電力消費を減らすエコベンダ-、商品の一部しか冷却しないゾ-ンク-リング、その機能を支援する販売予測機能などがある。②怪物君には周囲の明るさを感知するセンサ-を搭載し、自動的に昼は蛍光灯を消灯、夜は点灯させる-1992年から省エネ開発を進めた結果、2001年には缶飲料自販機の1台当たりの年間消費電力量を1992年の時点の約半分となったとの報告がある。

(マイカップ式自販機)

・省資源・ゴミ対策の一環として「マイカップ自販機」が全国的に普及してきた。その事例として-平成177月、「第83回中部圏知事会」において、三重県からの提案により、同知事会の合意を踏まえて、中部9県1市で構成される「中部圏ごみゼロ社会実現推進会議」の進める“ゴミゼロ社会の実現„向けた取組の一環である。

(給水スポットの拡充)

・ライフスタイルへの転換の一環としての給水スポットの設置を推進している武蔵野市の事例を紹介する-「武蔵野市開発公社」では環境省に申請をして同省の「マイボトル・マイカップキャンペ-ン」参加し、その活動として給水スッポトを設置している。市内の公共施設や学校、大型商業施設などの飲料自販機、冷水器の設置台数-自販機217台、冷水器171台であった(2012年現在-〈自販機へらそうキャンペ-ンむしの〉の調べ)。

 

【所  見】

・自販機の存在が問題になったのは「東日本大震災」を機に電力不足への懸念から街頭に自販機があること自体が「電力の無駄遣いになる」などの批判が巻き起こった。爾来、飲料会社はメ-カ-と協力として、夜間に全体を冷却して、日中は保冷する省エネ自販機を製造(ピ-クシフト自販機)することで、年間の消費電力では約10%節電しているという(日本コカ・コ-ラ)(注3)。自販機への先行きについての自販機の開発者は、「時代が変わっても自販機の魅力は変わらない」と強気である(注4)-暑い日に冷えた缶を取り出した時に感じる心地よさ!と言っているが・・・・。

・変わり身の早い消費市場における消費者の武器は選択肢が多岐にわたっていることである。このような環境の変化の中で現在の自販機の存在は消費者にとってなんであろうか-現在でも怪物君の“良さは„消費者の目の前にあり、スリムになったことで、自分の存在感を高めている。2000年前後から怪物君は以下のような新たな機能持つようになった。

①災害情報発信機能(ポケビル機能を搭載-災害時の情報発信端末)。

②緊急時フリ-ベント機能(災害時-自動的に飲料を提供)。

③一部加温機能-自販機は巨大な冷蔵庫(+一部加温庫)。

“怪物君は悪„という直線的な論調に終始することなく、すでに社会インフラの一部となっている„との見方もある、しかし、怪物君の取り巻く環境はマイカップの推進や給水スポットなどの広報活動の進化で、更に厳しくなることは必至である。

人間様の欲望は果てしなく続く中で、自販機の将来は“環境と共生„できる技術開発に注力することが不可欠である。

 

 

《参 考》

【自販機の歴史】

世界で最初の自販機は、エジプトのアレキサンドリアの科学者であるヘロンが「気体装置」という書物で紹介した「聖水自販機」であると言われている。テコの原理を利用し、硬貨をいれると、その重みで栓が開き一定時間水が出てくるという仕組みで、紀元前215年頃にアレキサンドリアの寺院に置かれていたようである。

【日本の自販機の歩み】

・日本で初めて作られた自販機は、1888年(明治21年)に馬関(現在の山口県・下関市)の指物師で発明家の俵屋高七が考案した免許を取ったタバコなどを販売する自販機。現存する日本最古の自販機は、同じく俵屋高七が製作した「自働郵便切手葉書売下機」で、外枠が木製で装飾が施され、切手と葉書を売るだけでなく、ポストを兼ねる三位一体のユニ-クなものであった、からくり人形の原理を使ったもので、つり銭装置や売価表示を示している。

・1950年代から自販機の本格的な普及が始まり、自販機管理運営業者の登場、飲料自販機におけるビ-ル系飲料メ-カ-の参入などにより、自販機は急速に普及し、東京オリンピックが開かれた1964年には24万台であったものが、1973年には200万台を超えた。1984年には500万台に達し後、緩やかに増えている。2008年現在、日本における自販機の普及台数は約526万台となり、日本は世界に類を見ない高い普及率となった。

(注)

  (1) 「ウィキペディア(Wikipedia)」。

(2)「日本経済新聞」(電子版)2014年1月13日。

(3)「朝日新聞」2014年34日。

(4)(注3)と同じ

          (グロ-バリゼ-ション研究所)所長 五十嵐正樹