20141210

【世界の糖尿病】

(背景と現実)

・世界の糖尿病患者は4億人に迫る勢いで、10年間で倍増しています。糖尿病は贅沢病といわれ、先進国に多いイメ-ジですが、患者の大半は開発途上国に集中しており、急速な経済発展でライフスタイルが激変したことによるものです。先進国では低所得者の患者が目立ちます。所得、教育水準が健康に弊害をもたらす“負の連鎖„が深刻になっています。

・国際糖尿病連合(IDF)は、本年1114日、「世界糖尿病デ-」に合わせて、「糖尿病アトラス第6版」を発表しています。それによると、世界の糖尿病人口は爆発的に増え続けており、2013年現在、糖尿病有病者は38200万人、有病率は8.3%です。有効な対策を施さないと、2035年までに59200万人に増えると予測しています。

(超大国の増勢)

2013年現在、世界・各国の糖尿病患者のランキングをみますと-1位中国(9840万人)2位インド(6507万人)3位米国(2440万人)です。上位7カ国の順位は前年と変わりませんが、第8位にドイツ(755万人)が新たに加わり、日本は昨年の9位から10位へと後退しています。因みに4位ブラジル、5位ロシア、6位メキシコ、7位インドネシア、8位ドイツ、9位エジプト、10位日本です。

・同アトラスは、世界を7地域に区分し、統計値を出しています。日本を含む西太平洋地域は、13820万人(成人人口の8.1%)と多く、2035年には2180万人に増えると予測しています。また、世界で、2013年に糖尿病が原因で死亡した人は510万人(6秒で1人)で、糖尿病による経済的損失は総支出の11%に相当する548000億円(5480億ドル)に上ります。今後、中国を筆頭に糖尿病大国にとっては大変な負担となります。

【糖尿病と貧困】

(有病者の特徴)

・世界のすべての国で2型糖尿病有病者数は増え続けており、そのうちの80%は低・中所得者に集中しています。従来から糖尿病は“豊かな先進国に多い疾患„というイメ-ジがありますが、これは誤りであることが浮き彫りになりました。また、欧米など先進国では糖尿病の発症や治療経過に、学歴や職業、所得などの社会経済状況が影響しているとの報告があります。富裕層は、健康に配慮した食生活をし、スリムな体形を保っていますが、低所得者は安価で高カロリ-のファ-ストフ-ドに偏り肥満になりやすく、糖尿病患者も多いのです。日本でもこうした傾向が見られ、40歳以下と若いうちに2型糖尿病になる人の7割以上が、体格指数(BMI)30以上で、世界基準(25以上)の肥満にあたります(全日本民主医療機関連合会調べ)

【中国の現状】

(有病率の急増)

・1978年の改革・開放施策以来、中国の国民生活は豊かになりました。反面、生活スタイルの都市化、食生活の変化、運動不足などが原因による生活習慣病、とくに糖尿病は近年急増しています。2013年9月、米医学誌「米国医師会雑誌(JAMA)」が掲載した「上海交通大学医学院付属瑞金医院」の医師らが2010年に中国各地で98658人を対象にしたサンプル調査(糖尿病)を行いました。

・それによりますと、成人の糖尿病有病率が中国の人口の11.6%にあたる11390万人(男性12.1%、女性11.0%)で、世界全体の有病率の8.3%を大きく上っています。成人人口の50.1%にあたる49340万人の血糖値が正常値より高く、糖尿病の一歩手前の「境界型糖尿病」(糖尿病予備軍)です。

(教育の普及)

・中国の有病率の推移をみますと、1980年は1%以下でありましたが、20002001年の調査では5.5%2007年には9.7%に上昇しています。サンプル調査に携わった医師によると、糖尿病は“流行病„といえるレベルに達しているとみています。問題は、糖尿病有病者のうち、本人が糖尿病であると自覚している人は、30.1%に過ぎない点です。

・治療を受けている患者は25.8%、そのうち血糖のコントロ-ルが良好なのは39.7%です。深刻なのは3040歳の予備軍の多く人が、病気や予防についての知識を持っていないことです。当局は糖尿病に関する適正な情報を広めて、患者の意識変化を促し、サポ-ト対策が必要だとしています。

(医療協力)

・中国の爆発的糖尿有病者の増加への医療支援として、「日本式糖尿病診療サ-ビス」を、経済産業省が主導する「医療サ-ビス国際化推進事業」の一環として、東京大学医学部付属病院糖尿病・代謝内科の医師と看護師などで構成する医療チ-ムを中国に派遣し、日本の医療サ-ビスを提供することになりました。

・第1回の派遣は201110月、上海交通大学付属病院にて日本の医師による診察と治療、看護師による糖尿病教室、管理栄養士による栄養指導を実施しました。とくに管理栄養士を導入した予防医療の普及により、現在、年間推定2兆円の糖尿病医療費の削減が見込まれます。

【所   見】

(予  防)

・最近、とくに日本の若者の食生活で憂慮しなければならないのは、外食チェ-ンで、高カロリ-の食事を日常的に取っていることです-安くて、栄養価が高く、便利なことから多くの人の胃袋を満たしてくれるのに加え、マスメディアが盛んにグルメ特集を組み、多くの人の食欲を煽っているような印象を受けます。将来の成人病、とくに糖尿病予備軍を誘発することにもなりかねません。

40代になりますと、付き合いも多くなり、高血糖な飲食を多く摂取します。このライフスタイルを続けますと、医者から予期しないことを告げられ、糖尿病への有資格者となります。糖尿病は忍者のように“忍び寄り身体を蝕んでゆく„怖い病気です。厄介なのは自覚症状が余りありません。糖尿病を防ぐ最大の防御は自己管理なのです。

(警戒水準の中国)

・中国の糖尿病の発症率は警戒レベル„に達しています。国家が主導して糖尿病対策に乗り出さないと、際限なく有病患者は増えつづけることになるのに加え、重い合併症を引き起こします。中国の現状を考えると、糖尿病の予防を周知徹底することが重要です。中国は世界第2位のGDP大国ですが、第1位の“糖尿病大国„でもあります。

                                       (グロ-バリゼ-ション研究所)代表 五十嵐正樹

~中国の生活環境(1)~