2017年12月18日

〖プロロ-グ〗

・日本人にとって、阿拉山口駅(中国語:アラシャンコウ)という地名は知られていない。この駅は新疆ウイグル自治区ボルタル・モンゴル自治州の西北角に位置する阿拉山口市にあります(付図参照)。中国鉄路総公司ウルムチ鉄路局北疆鉄路公司が管轄する駅です。同駅はアラタウ峠に位置し、蘭新線(蘭州-ウルムチ)の蘭州駅(甘粛省省都)より約2358.376km離れ、北疆線(ウルムチ-阿拉山口)の終点にあり、カザフスタンへの出入口で、中国西部で唯一の鉄道の国際運輸拠点です。

・阿拉山口駅からカザフスタン鉄道、トルキスタン・シベリア鉄道に接続します。➀新ユ-ラシアランドブリッジ(四川省重慶市-成都-阿拉山口-ドイツデュイスブルグ)。②ユ-ラシアランドブリッジ(中国江蘇省連雲港-蘭州-ウルムチ-阿拉山口-オランダ・ロッテルダム)の結節点にあります(付図参照)。中国と欧州で使用されている鉄道の標準軌(1435mm)は同じですが、カザフスタン側は旧ソ連標準の広軌(1520mm)のために直通できないため、カザフスタンのドストゥク駅(旧ソ連のドルジバ駅)で、中国側の車両からクレ-ンでコンテナを吊り上げ、カザフスタン側車両の台車に置き換えて、欧州に向け出発します。
図3







資料元:中国地図出版社

〖阿拉山口市〗

(経済インフラ)

〈税関設立〉

・阿拉山口市の気候は大陸性で年間最低気温-29.8℃、最高気温38.3℃、年間平均気温8.5℃、年間8級以上の大風が年間166日に吹くため、気候は劣悪の状況にあります。この地には2013年現在、常駐人口約1万1000人、流動人口約3万2000人が活動しています。1990年6月国務院は阿拉山口税関の設立を承認。1995年12月、第3国に開放します。

・2006年7月、中哈(カザフスタン)パイプラインが完工し、中国の原油輸入量は、2014年現在、1008.97万トンで、前年比5.5%増です。2011年6月、国務院は阿拉山口総合保税区を承認し、建設が始まります。この保税区は全国16番目で、新疆ウイグル自治区では最初。2012年12月に阿拉山口市となります。2002年現在、阿拉山口市における鉄道、道路を利用して出入境国する人は約8万1000人。現在、阿拉山口市の発展と共に出入国者は増えていると思われます。

〈輸出入〉

・阿拉山口市には中国最大の陸路の税関があります。2011年の貨物輸出入量は2034万トン、貿易総額は174億ドル、前年比46.5%増です。内訳を見ると、輸入量は1862万トン、輸入額は140億ドルで、前年比35%増です。輸出量は172万トン、輸出額は34億ドルです。

〈運行状況〉

・阿拉山口市税関監管によると、2017年1月-8月の通過した貨物列車は1138便、前年比70.36%の大幅な増加です。貨物運輸量は42.86万トン、前年比126%増、コンテナは95284個です。毎年、増勢基調にあります。同駅は中国の「中欧班列」の戦略的拠点であります(注1)。

〈生産活動〉

・阿拉山口市の2013年の生産総額は36.8億元、前年比5%増、公共財政預産収入は1、66億元、前年比22%増です。2014年の生産総額は42.7億元で、前年比16%増。公共財政予算収入は2億元、前年比20%増、全社会固定資産投資15.3億元で、前年比31%増です。工業増加額は6.9億元、前年比35.2%、2014年の通関貨物は2545トン、貿易総額は154.5億元、税関収入103.5億元。

・2016年、阿拉山口市の生産額は61.6億元、そのうち、第2次産業14.07億元、前年比26.8増、第3次産業47.56億元、前年比24.8%増、全社会固定資産投資は26.35%、前年比26.4%増です。2013年の生産総額と対比しますと、約1.7倍の増加で、同市の工業化は急速に進展していることが分かります。

〖阿拉山口駅〗

(歴  史)

・1954年にソビエト連邦と中華人民共和国の間に鉄道敷設の合意が交わされ、ソ連は1959年にソ連側国境の町ドルジバ(現ドストゥク〈友好という意味〉現カザフスタン)まで鉄道を完成しましたが、中国側は蘭新線が1962年にウルムチまで完成した段階で計画を中断します-この中国側の動きは、当時、中ソ対立が背景にあったためと思われます、中国側の蘭新線、北疆線が開通したのは1990年9月で、両国の鉄道は28年の長きにわたって接続されませんでした。なお、自動車道路の国境が開かれたのはソ連崩壊後の1995年12月です。

図2











出所:ウィキペディア 阿拉山口駅

〈鉄道敷設〉

・中国とカザフスタン間の鉄道敷設推移は以下のとおり。

▽1990年9月 北疆線(ウルムチ駅-阿拉山口駅)が開通。

▽1990年9月 ドルジバ駅(カザフ国境)-阿拉山口駅が開通。

▽1991年7月 中哈間において貨物の臨時通関を開始。

▽1992年6月 アルマトイ(カザフ)-ウルムチ間の国際旅客輸送開始。

▽1992年10月 北疆線の営業運転を開始。

▽1992年12月 国際輸送を正式に開始。

▽1993年4月 ウルムチ-アルマトイ間国際旅客輸送を開始。同時にウルムチ-阿拉山口間の国内列車の運行を開始。

▽2008年10月 阿拉山口-間の道路が正式に開通。

▽2008年11月 アジア最大規模の新しいコンテナ積み替え施設完成(阿拉山口)。

アジア最大のコンテナ積み替え施設で、その面積は1.97平方キロメ-トルで、年間積み替え能力は20万個(標準コンテナ)。但し、阿拉山口駅は強風地域(最大55メ-トル)ため、効率面で問題はありますが、今後、当局は全天候の対応が可能となるような施策が不可欠です(注2)。

図4














資料元:新华社
〖カザフの鉄道〗

(工事概況)

・カザフスタンの鉄道プロジェクト(駅の改修工事など)は日本の川崎製鉄(現JFEスチ-ル)などの会社によって、2001年10月15日完工。以下、その工事概況です。

・カザフスタンの鉄道は中国・江蘇省連雲港とトルコ・イスタン-ブルを結ぶ。東西輸送の大動脈ともいえます。通称シルクロ-ド鉄道の重要な位置を占めています。経済のグロ-バル化に伴い、アジア諸国と欧州諸国への貨物輸送が拡大する中、環境保護面で、鉄道は重要な輸送手段であり、カザフ鉄道の重要性が高まっています。1997年5月工事着工、冬季はマイナス20℃の過酷な環境の中で、4年の工期を無事終了し、無事故・無災害でした(工事費94億円/日本政府借款)。工事の完工で貨物輸送能力が400万トンから1000万トンに増加します(注3)。

〈プロジェクト〉

▽ドルジバ駅-べス-コル駅間の軌道工事更新(21Km)。

▽ドルジバ駅-アクトガイ駅間のアルコル湖沿岸部分の迂回線新設工事(24Km)。

▽ドルジバ駅向け貨物積み替え機器の供給。

▽アルマトイ車両基地における新修理工場の建設及び既存設備の改良。

▽ドルジバ駅-アクトガイ駅間の鉄道通信網施設の近代化工事。

〖最近の運行〗

(状  況)

・阿拉山口駅は既述のように①新ユ-ラシアランドブリッジ(四川省重慶市-四川省成都-阿拉山口-カザフスタン-ロシア-ポ-ランド-ドイツ・デュイスブルグ)、②ユ-ラシアランドブリッジ(中国江蘇省連雲港-蘭州-ウルムチ-阿拉山口-オランダ・ロッテルダム)の結節点です(付図参照)。その利点として、阿拉山口駅は両ブリッジの運行状況を確認する上で、定点観測地でもあります。

・最近の運行状況を見ると、同駅の税関を経由して出入国する「中欧班列」(中国-欧州は間を運行する貨物列車)は累計で3000便(主にコンテナ)を突破し、阿拉山口税関は2017年5月末時点で、貨物取扱量が最大の国際陸上港の一つとなりました。同駅税関の最新デ-タによると、2017年1~4月までの税関が監督管理する欧州からの復路の国際貨物列車の運行重量は4万3600トンで、総額30億元(1元=約17円)を超え、前年同期に比べて、「爆発的」な伸びを示しました(注4)。

・最近の中欧班列に関する中国鉄路局の情報によると、2011年3月19日-2017年11月17日までの運行回数はすでに6000便を超えたといいます(注5)。このように中欧班列は、運行路線はすでに57路線に達し、国内の開業都市は35地点、欧州の国12ヵ国、34の都市へ運行しています。

(コンテナ貨物)

〈ブロックトレイン〉

・阿拉山口駅を通過するコンテナを積載して走る貨物車両数は-編成38編成から40編成、最大で50編成(1両に2TUE積載が一般的)。「ブロックトレイン」(参照1)の遅延はほとんど発生していない。通関貨物の8割程度が通過貨物である(注6)。

〈国境での作業〉

▽阿拉山口国境(中国)では中国への貨物の貨車取り換え、取卸し作業を実施。

▽中国から輸出される貨物の貨車積替え、取卸し作業はカザフスタン側(ドストゥイク)で行われます。

▽貨車の積替作業手配は駅側(駅を管理する総公司)で実施。

▽コンテナの貨車積替え作業はクレ-ンを用いており、時間は一編成当たり1時間30分程度で完了。

図1












出所:株式会社日通総合研究所レポート(中国-アジア鉄道物流事情調査)
〈通関手続〉

▽簡素化されており、最大1時間程度、通常であれば、5分程度で完了。

▽通関手続きは大まかに税関に必要な書類を提出し、税関審査を受け、許可が下りる流れ。

▽税関へは事前に発駅から電子的に申請の内容が通達されており、国境では確認のみとなるため短時間での通関が可能。

▽欧州へのコンテナ貨物列車(「中欧列車」)の運送状は専用の様式を使用。

〖直面する問題〗

(復路運行)

・中欧班列(57路線)は、欧州向け鉄道コンテナ専用列車での輸送の共通課題は帰り荷、各国から中国へ輸出される貨物の確保が今後の発展の重要案件です。現状、コンテナ専用列車は、特定の企業が特定の目的で利用しているに過ぎず、広くオ-プンになっていない(注7)。

(当面の課題)

・2011年3月、「中欧班列」の最初の貨物列車(渝新欧)が重慶からドイツ・デュイスブルクへ向け出発してから6年が経った。その間、中国各地から57本の路線が開通している。しかし、多くの分野で直面する課題として-①路線の対立、②サ-ビスの同質化、③集荷をめぐる過当競争、④往航と復航のインバランス、⑤補助金依存体質などが問題化しています(注8)。

〖エピロ-グ〗

・中国の“白髪三千丈”は、唐代の詩人・李白の五言絶句「秋浦歌」第十五首の冒頭の一句です。日本では中国の極端な誇張表現の事例ですが、習近平国家主席の主導の「中欧班列」は、実現可能なプロジェクトです。これは習主席の政策への執念とグロ-バリズムが背景にあります。その支えとなっているのは中国の科学技術の進歩と中国の外交力です。

・2014年11月、「義新欧」は義烏-マドリ-ド(スペイン)1万3052キロを走破する鉄道をつくりあげました。「中欧班列」は、世界のロジスティックスを大きく変える可能性があります。この鉄道について、日本通運の調査報告によると、同物流ル-トは依然として手続きや積み替えなどによる時間、費用、破損などの物流品質の低下が懸念されるとの見解です(注9)。反面、日本の博多港にブロックトレイン(貨物専用列車)を編成するのに十分な貨物を集め、江蘇省連雲港まで輸送し、ブロックトレインに繋げるというSEARAILの意欲的な構想となっております。今後の展開が注目されます。

(グロ-バリゼ-ション研究所)所長 五十嵐正樹

(注)

(1)「証券日報」2017年9月13日。

(2)「新華社」 2008年11月5日。

(3)「カザフスタン共和国 鉄道プロジェクト完工」 川崎製鉄(株)/蝶理(株)/川鉄商事(株) 2001年10月15日。

(4)「中国通信」2017年7月6日。

(5)「人民日報」2017年11月19日。

(6)「中国-アジア鉄道物流事情調査」山口修プリンシパル・コンサルタント(日通総合研究所)、2015年10月20日、23頁。

(7)(注6)と同じ。13頁。

(8)現代版のシルクロ-ド「中欧班列」の実態と意義、法政大学経営学部教授李 瑞 雪、2016年2月22日、講
  演会資料。

(9)「日通総研」ニュースレターろじたす、注目される中国-欧州鉄道輸送の国境施設。

(参  照)

(1)「ブロックトレイン」とは、同一仕向地・同一ワゴンでのサ-ビスとなり、最終仕向地までの輸送途中に、列車の編成が行われないのが特徴です。

(資 料)

・中国検索エンジン「百 度」。

・「阿拉山口市」HP

・現代版のシルクロ-ド「中欧班列」の実態と意義、法政大学経営学部教授李 瑞  

  雪、2016年2月22日(日)、講演会資料。

・「中国-アジア鉄道物流事情調査」山口修プリンシパル・コンサルタント(日通総合研

究所)、2015年10月20日。

・「日通総研」ニュースレターろじたす、注目される中国-欧州鉄道輸送の国境施設。