2019年9月18日


〖プロロ-グ〗

▷筆者は毎月、会員制の米国のコストコ「多摩境倉庫店」(町田市)へ出かける。週末に店舗開店前に長蛇の列が発生した場合には、開店時刻(10時)を早める(ア-リオ-プン)。コストコの特徴は食品が主流で、販売単位は多量(肉類、魚類、果物、寿司、パンなど)である。食品のほかに衣類、家電、ソ-ラ-パネル、腕時計、タイヤ、家具など。店内ではロ-ドショ-と呼ばれる実演販売やサンプル配布、試食販売のイベントが行われる。

▷コストコは巨大な倉庫の中に高いパレット(陳列台)が列をなし、商品がおいてある。閉店後の深夜に搬入された商品をフォ-クリフトで手際よくパレットに乗せたままの状態で販売される。食品の大半はショケ-スや台の上に置いてある。お客は買った商品を無造作にカ-トの中に放り込む。お客の多くは若い夫婦連れが多く、子供をカ-トに乗せ、競って、広い店内を欲しいものを探し回る。まるで、レクレ-ション大会のようだ!筆者のお好みは24個入りの寿司を選ぶ。新鮮なマグロ、サ-モン、イカ、ハマチが入っており、夫婦二人で十分すぎる量である。その美味しさは格別で、舌鼓を打つ。

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〖盛   況〗

▷本年8月27日午前9時半、中国最初の上海コストコ店がオ-プンした。初日、少なくとも1万を超える消費者が殺到し、開店4時間後、営業を終了したという。一説には来客のマナ-の悪さが影響したともいわれる。この経験をふまえ、今後は一度に売り場に入れる人数を2千人以内に制限するという。中国メディア『鳳凰網科技』は、「なぜコストコは閉店するほど大盛況だったのか」とする記事を掲載している。

(特   売)

▷コストコは会員制のウェアハウス・クラブ(会員制倉庫型卸売・小売)チェンで、オ-プン初日の爆発的人気は力の入った記念キャンペーンと関係がある。よそのス-パ-が集客を狙って卵、食用油を提供する中、コストコはオ-プンの広告で掲載したのは1948元(1元=約14.8円)の飛天マオタイ酒、919元の五糧液(四川省の焼酎)、割引価格のエルメスなどであった。もちろん、こうした商品がキャンぺ-ンの全てではないが、目を引くことは確実で、実際、飛天マオタイ酒は開店早々売り切れた。

▷コストコの一部は市場価格より10~30%安い。米国では平均粗利益が10%前後のビジネスモデルが中産階級を引き付け、年会費が収入を生み出す。中国の第1号店は上海郊外の閔行(びんこう)で、7月1日に会員募集が始まり、これまでに予想を遥かに上回る数万人の会員を集めた。年会費はオ-プン前なら199元(2927円)、オ-プン後は299元(日本は4400円とほぼ同じ)とメリハリをつけ会員獲得に成果を上げた。

(コストコ価格)

▷米国コストコでは以前から“低価格・高品質”の販売戦略をとってきた。製品の粗利益率は10-11%ほどを維持し、他の小売企業を大きく下回る。他のス-パ-は粗利益率は15-25%だが、コストコで14%を超える商品が出ると、最高責任者(CEO)に報告する義務があり、取締会の承認も必要である。競争相手の価格がコストコ価格を下回るようなことあれば、その商品が棚から下ろされる。

▷米国コストコで商品を低価格で販売できる要因として、多くの店舗が土地と建物の所有権があり、家賃が不要である。反面、中国では店舗開設のための土地の所得コストが米国よりも高く、不動産企業との協力が必要であり、家賃から逃れられない。加えて、中国の家賃体系は店舗の業績とリンクするので、販売が増えても家賃コストを抑えることはできない。

〖反   動〗

(拙   速)

▷コストコ上海店が開店してから1週間後、退会手続きをする消費者の行列ができた。コストコは会員制度をとるため入会時299元(1元=14.71円)の会員手続きをしないと買い物ができない。中国のマスコミは、コストコで1週間以内に発生した“消費者の行列”と“退会者の行列”は明らかに異なる消費現象で、コストコは中国の消費市場と消費者習慣を理解してない。いわゆる“現地化問題”が存在する。

▷この中国の現象について、コストコは勉強不足である。中国市場で成功するには、中国の消費者の消費者に基づき自身の経営戦略を見直し、ユ-ザ-との粘着性を高める必要がある。「安い」 「大規模で揃っている」などの面を、維持をするには、現地化した供給チェ-ンの構築が不可欠である。

〖日本の実情〗

(店舗展開)

▷米系企業のコストコは、日本に上陸した外資小売企業の撤退(カルフ-ル<フランス系>など)が相次ぐ中、日本に進出して20年間で26の大型店舗を展開している。商品のパッケ-ジは巨大、品目数は極端に絞り込む。日本の流通の常識外の店づくりに力点をおいてきた。“店内は薄暗く”“音楽もなし”“店員の呼び込みもない”。「パッレト」と呼ぶ質素な陳列台に、巨大サイズの商品が無造作に積み上げられている。

▷会員制で個人の年会費4400円、日本に進出して20年間で登録数は600万人を超えた。日本では店舗が閉鎖したことがなく、店舗網は札幌から北九州まで26に増えた。年間売上高は5000億円に迫るとみられ、日本のスパ-の売上高ランキングでトップ10の水準に達している(参 照)。日本の中部空港倉庫店(愛知県常滑市)はオ-プン前の事前入会者が、世界最高の5万人以上を記録したという。今後もコストコは、日本各地に店舗展開する計画があるようだ。

〖エピローグ〗

▷コストコは米中貿易戦争の最中に、中国で初めて倉庫店を上海に開店させた。初日には来客者が殺到し、半日で店を閉じた。1週間後、退会者が列をなした。この行動は猫の眼のように変わる中国人の日常茶飯事の動きである。これが中国人のメッリト・デメリットでもある。今後、コストコは中国人の消費行動に注力し、店舗展開をするであろう。

▷コストコのストアコンセプトは、深夜に入荷した商品をフォ-クリフトで店内に運び、パッレトに乗せたままの状態で販売する。管理や陳列にかかるコストを徹底的に抑える“倉庫店スタイル”である。これだけの簡素化した企業戦略は、筆者が定期的に訪れる大きな理由となっている。また、コストコのネ-ミングが気に入っている。

(グロ-バリゼ-ション研究所)所長 五十嵐正樹

(引用資料)

・「Record China」2019年8月29日。

・「人民網日本語版」2019年8月30日。

・「チャイナネット」2019年9月05日。

・「中国網日本語版」2019年9月11日。

・「CNN」2019年8月23日。

・「Newsweek(日本語版)(メディアハウス)転載記事。

・「日経ビジネス」2018年11月30日。

・「ウィキぺディア」。

(参  照)

<コストコ>

・本社:米国ワシントン州イサクア。

・設立:1983年(米国ワシントンカ-クランド)。

・店舗展開:全店舗数750店(2018年6月現在)。

・米国520店/カナダ98店/メキシコ38店/イギリス28店/フランス1店/

日本26店/台湾13店/韓国14店/オ-ストラリア9店など。

・売上高:1290億ドル(13兆9320億円/2017年)。

・営業利益:41億ドル(約4400億円)/純利益26億7900億ドル(2866億円)。

・従業員:約24万人。

(資 料):ウィキぺディア