2018年12月05日


〖プロロ-グ〗

・中国では「双11<ダブルイレブン>)」と呼ばれる。「11月11日」とシングルを意味する「1」が並ぶことから、もともと独身者が「自分へのご褒美」で買い物をする日だった。2009年11月11日、アリババ集団がEC(電子商取引)・「天猫」(Tmall)のセ-ルスを開始し成約額は5000万元(8億1000億円)。2017年には1682億元(約2兆7500億円)と拡大した。今や他のネット通販や実店舗も参戦する一大イベントとなった。

・本年で10回目となる2018年のアリババ集団(Tmall)の最終成約額は2135億元(約3兆5000億元)となった。アリババは「天猫」に昨年比3割増の18万ブランドを出店し、百貨店やス-パ-といった20万店の実店舗とも連携した。物流の発生件数は午後11時18分09秒の時点で10億件を突破、「小包10億個時代」の幕分けとなった。
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アリババ集団の独身の日イベント
出所:朝日新聞デジタル

〖概   況〗

(消費大国)

・中国時間11月11日0時52分、米国CNNは「地球上もっとも盛大なショッピングデ-が始まった」と伝えている。その約50分後、1000億元(1兆6200億円)を突破し、イベント開始10年の最高記録を打ち立てた。注目したい記録は75の国と地域から1900以上の海外ブランドがイベントに参加したことである。最新デ-タを見ると、「天猫」、「淘宝」の取引総額は2135億元(3兆5000億円)に達している。この巨額資金はインタ-ネット上を急速に移動し尋常ではない消費スタイルを創出している(注1)。楽天の2017年の年間EC取扱高(約3兆3900億円)に迫る金額を、わずか1日で稼ぐ勘定。

・中国のEC経済の規模は27兆円(437.4兆円)に達し、次世代の消費層はインタ-ネット経済の創造者、参与者、生産者、販売者、購入者でもある。多くの配達員がネット通販の運営を加速すると同時に、自らも新たな消費グル-プになっている。消費のグレ-ドアップが国家経済を索引するという経済的原理は変わらないかも知れないが消費促進の原動力の構造に中国の特徴が現われている。

(ロジスティクス)

・11月11日午後11時18分9秒、「ダブル11」の受注件数が10億件の大台に乗り、10年間で3800倍以上に増加した。国家郵政局の同日の観測デ-タによると、主なEC企業による同日の宅配受注件数は、前年比25.12%増の13億5200万件に達し、過去最大を更新した。数の成長は物流業界の猛スピ-ドの前進の側面に過ぎない。スマ-ト、グリ-ン、国際協力などの要素が物流業界に力を与えており、より多くの新トレンド・新業態が誕生した。

・圓通速逓本部センタ-管理部責任者の李小平によると、小包は毎日約300カ所の目的地に送られる。この設備の高効率集中仕分けより労働者の負担が大幅に軽減され、仕分け効率の精度が大幅に高まった。李氏は「ピ-ク時には面積2000平方メ-トルの作業場で、350台のロボットが昼夜働き毎日50万個以上の小包の仕分作業を行う。菜鳥網絡高級技術専門家の李建軍によると、IoT技術は物流業界での応用によりロボットを含む各種物流要素のリアルタイムのネット接続を実現する。

・「ダブル11」後、宅配便があまりにも多いため既存のロジッテクスでは運びきれないため、中国では貨物専用の高速列車を使用し始めた。北京西駅15番線ホ-ムでは湖南省長沙駅(省都/省会)に向かう高速鉄道車両「復興号」G83便の中に貨物車両になっている。ブル-のプラスチックケ-スが整然と並べてあり、高速列車が高速貨物列車に変身した(注2)。

(消費熱)

・中国国内で「ダブル11」に熱心な地域を見ると、二線都市と三線都市(参考)、さらに県域の農村が通販の中心層としてますます力をつけている。過去10年間の「ダブル11」において、「天猫」で取引額の増加率が最も大きかったのは杭州、武漢、重慶などの二線都市あった。京東では昨年の「ダブル11」期間五に六線都市の利用者が2008年の6700倍に達した。

・五線都市は同3400倍で全体の増加率を上回った。ネット経済に詳しい李勇堅氏は、「ECは都市・農村間やエリア間のビジネスインフラの不均衡問題の是正に大きく寄与した。三線以下の都市は、農村、遠隔地、貧困地域のネットユ-ザ-もECの販売促進キャンぺ-ンに積極的に参加するようになり、ECはこれまでビジネスインフラが発達していなかった地域に極めて豊富な商品をもたらし、こうした地域の人々の消費を持続的に高度化している。

・中国の消費高度化への渇望は、海外ブランドにとっては「大きなお年玉」だと言える。中国人の専門家は、「世界中を買うというのが、新消費時代によくみられる特徴となっている」という。当日午前0時に先立って発表された網易考拉「人気商品リスト」では、40%を超える商品が初めてリスト入りした商品だった」と説明した。2009年、最も人気のある家電は電気ケルトと電気毛布であったが、2017年には浄水器と掃除ロボットへと変化。

・衣食の充実から健康サポ-トへ。頻度の高い電化製品からAI(人工知能)へと、消費のアップグレ-ドはより良い生活へのニ-ズを呼び起こした。今年の商戦で目立つ変化は、ネットとリアルとの融合である。アリババは通販サイト「天猫(Tモ-ル)」に、昨年比3割増の18万ブランドを出店。加えて、百貨店やスーパ-といった20万店舗とも連携する。店舗に来店した消費者には、店頭のネット端末で商品を購入してもらう。売り上げは店舗に入る一方、アリババ集団経由で購入したのと同じ扱いになり、アリババの取扱高としてもカウントされる。両者はウィンウィンの関係になる。

(予約サイト)

・中国の大手家電メ-カ「ハイア-ル」(海尓集団)の食器洗浄機が6割引き、ユニ・チャ-ムの紙おむつが4割引き-。各社は2~3週間前から“予約サイト”を開設し、目玉商品を展示。11日を前に、すでに予約を締め切った商品が続出している(注3)。

(世界とリンク)

・「ダブル11」の翌日は、大阪、シドニ-、オ-クランド、マドリ-ド、アムステルダム、ロサンゼルスなどで「菜鳥網絡」の14の世界受注履行センタ-が出荷を実施した。国内の消費者は次々と世界からの小包を受け取った。情報によると、今年は世界の物流企業100社以上が「ダブル11」に参加した。30社弱の国家郵政、宅配業物が「菜鳥網絡」と直接リンクを行った。20ヵ国弱の倉庫が、中国の倉庫システムを使用してデジタル化のアップグレードを行った。消費者は当日、世界の75カ国・地域から輸入商品を購入が可能となった。

・「菜鳥網絡」の国際物流部技術専門家の唐韌氏は、「国際越境は物流建設によるビジネス流を生む。重要なのは物流と通関だ。ダブル11は消費者のショッピングの祭典であるが、税関の通関効率によっては試練となる。科学技術による越境商品の高効率的通関はダブル11をサポ-トをする」。

・「ダブル11」が始まる前、各地の税関は物流企業と全リンクとのテストを展開し、システム性能指標を調整し通関のピ-クに対応し、世界の物流業界の連携が強化を続けている。「菜鳥網絡」の万霖総裁は、「今日のピ-クは明日の状態だ」。1日10億個から未来の毎日10億個に至るには、物流企業の1社の取り組みだけでは不十分である。内外とのネットワークの構築が必然的に必要である(注4)。

(日  本)

・今年の日本企業も相当の力の入れようである。「この眼鏡はデザインがいい。職人が1つ1つ作り出している」。伊藤忠商事が出資し、越境ECサイト「豌豆公主」(ワンドウ)を運営するインアゴ-ラ(東京・港区)。11日に先立ち10人の「中国版ユ-チュ-バ-」が日本製品をPRする中継インベントを開いた。消費者に影響力のある人物と組み、期間中に前年比8倍の売り上げを目指す。

・中国人の主婦に人気のある「ユニ・チャ-ム」はオ-ガニック素材の高級オムツ「ナチュラルㇺ-ニ-」について、商品特性や使い使い心地の良さを紹介する動画を制作。アリババサイトなどで配信し、多くの予約を獲得している。また、最近、「爆買い」に象徴される中国の消費パワ-。最近は帰国後もネット通販を通じ、日本の商品を継続購入する中国人が多い。「独身の日」でこうした好循環に弾みをつけたい日本企業が増えている。三越伊勢丹やJTBなども今年からセ-ルに参加する(注5)。

(ロシア)

・隣国のロシアでも盛んなネットショッピングイベントになり、現地の買い物習慣を変えつつあると新華社は伝えている。アリババサイトをみると、商品サイトの多さにロシアのネットユザ-を引き付ける。関連デ-タによると、ロシア人消費者の約10%が「ダブル11」の2週間前から商品を選び、カ-トに入れ始めているという。統計データによると、現在、全球速売通のロシアのIPアドレスへの月間アクセス数はのべ1億4千万件を超え、数多くの商品の中でも電子製品、子供用品、衣類がロシアの消費者に最も歓迎されていることが分かる(注6)。

〖課   題〗

(ゴミ問題)

・「ダブル11」の成約額の拡大は宅配便の総数の増大につながり、今年の事例では15億件以上と試算しており、使用される段ボール箱をつなげると、地球を“7周半”する計算となる。膨大な量で種類も多く、急増している宅急便から出るゴミの処理方法に今、中国で注目されている。宅配業務従事者によるとゴミは主に利用者が処理することになる。多くの消費者は商品を段ボ-ルから取り出すと、すぐにそれを捨てている。江蘇省の女性・朱さんは、「ビニ-ルは何も考えずに全部捨てている。使われているビニ-ルはとても薄く、環境に悪いのは分かっているけど、使い道もない」。

・中国では段ボ-ル箱を廃品回収業者に売ることができる。ある業者は500グラム0.8元(14円)ほどであるため、わざわざ家に沢山溜めている人はほとんどいない。実際、段ボ-ルはどうのように処理されているのか。北京のあるゴミ処理業者は、再生に適さない場合、火力発電に使われると説明している。清華大学の環境経済産業研究センタ-温宗国センタ-長は「回収後に再生されている割合も50%ほどにとどまっている」。この中国の「爆買い」による影響は日本の年末商戦を前に段ボ-ル不足が生じている。日本の製紙会社が調達困難に陥っている(注7)。

〖エピローグ〗

・「ダブル11」は“中国経済のバロメ-タ-”である。その年の中国の消費者の購買力を正確に反映しているといわれる。毎年更新される取引総額記録の背後にもさまざまな要因が内在する-①中国経済の力強いパワ-の源泉は14億の人口である、②中国経済の柔軟性は消費高度化の活力となっている、③インタ-ネットと実体経済が親密に結びついたことなどである。

・中国銀行国際金融研究所が2018年11月28日に発表した経済予測によると、今年の経済成長は6.6%であった。2019年は6.5%の上昇を見込んでいる。また、米中貿易戦争の行方は中国経済の発展に厳しい影を投げかけている。来年の「ダンブル11」はどのような展開を示すか注目される。私見であるが、同イベントは世界中を巻きこんだ展開が予想される。

(グロ-バリゼ-ション研究所)所長 五十嵐正樹

(注)

(1)「人民網日本語版」2018年11月12日。

(2)(注1)と同じ。

(3)「日本経済新聞」2018年11月9日。

(4)「人民網日本語版」2018年11月13日。

(5)(注4)と同じ。

(6)(注3)と同じ。

(7)「産経新聞」2018年11月24日。

(参考)

・1線都市:全国的な政治活動や経済活動などの社会活動で重要な地位にあり、指導的役割を備え、波及力・牽引力をもった都市を指す(北京市/上海市/広州市/天津市/深圳市)。

・2線都市:青島市/厦門市/西安市/寧波市/長沙市など。

・3線都市:珠海市/大原市/貴陽市/紹興市など。