2019年3月6日


〖プロロ-グ〗

・金は無国籍通貨と言われる。金の輝き、金の重量感、金の品質不変は他の金属と比べ、絶対無比の物である。古今東西の歴史の中で政治制度(資本主義/社会主義)と無関係に当該国の国民はただただ金を重用してきた。そこで、中国の事例を紹介する。新中国成立以来(1949年10月)、中国の産金政策は主に探鉱への持続的投資を実行し、成果を上げてきた。

・専門家によると、中国当局は金の情報公開については「極秘扱」にして、全く明らかにしなかった。改革・開放政策の起点となった第11期3中全会(1978年12月)を機に、逐次、断片情報を開示するようになった。今日では生産面・消費面の具体的な数字を発表するようになり、中国の金事情は次第に明らかになり、将来の予測もできるようになった。以下、中国の改革・開放政策始動以降の金政策(生産・消費)である。

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出所:新華網日本語版2019.2.1「中国の黄金消費5.73%増6年連続トップ」

〖金政策推移〗

(基本政策)

・中国の金資源はかなり豊富で、世界でも有望な金鉱床の類系がすべて発見されている。探査の状況をみると、原始埋蔵量は世界各国の中でも比較的多い。中国の金鉱開発をみると、➀多くの金鉱を建設し、様々の生産能力をもつ100余りの鉱山を相次いで完成させた。②脈金鉱のほか、採金舟や洗選措置の生産方式をとる砂金鉱山も建設した。併せて、金鉱山の生産技術水準は絶えず向上し、発展している。

・中国の金鉱開発は、①『大金鉱の大開発、小金鉱の自由化』という政策をとり、国家の採掘とともに、集団・個人の採掘も奨励している。②中国は生産を発展させるため、近年、中国は新たな鉱山開発のため、外国との技術交流を促進し、相次いで300リットルの採金舟と新技術を導入し、初めて外国で金鉱山の合弁会社を設立した(注1)。

(5カ年計画)

・1991年1月27日に開かれた「第2回全国金工作会議」によると、➀中国は第8次カ年計画(1991-1995年)期間、金生産への投資を拡大することになった。②同期間の金生産への投資は、70~80億元に達する見込みで、第7次5カ年計画(1986-1990)期間に比べ、ほぼ倍増した。

・第8次5カ年計画期間中、➀中国の金生産は毎年8.7%増加する見込みだが、これは中国の“国際的な信用と債務償還能力”を高めるためである。②ここ数年、金採掘で生じた“秩序の混乱現象は抑制”されつつあるが、今後は非合法的採掘および投機取引の違法行為に打撃を加える(注2)。

(技術導入)

・国家黄金管理局長の徐大銓工業次官は1990年9月10日からソ連を10日間訪問し、金生産拡大について協力求めることにした。ソ連の永久凍土層の金採掘技術と樹脂処理のよる金回収の輸入について協議する予定。ソ連の技術は中国の炭素を使った回収技術に比べ、安く済むという。

・両国は世界的な金産出国だが、2年前まで金採掘について交流はなかった。ソ連訪問の後、フィンランドを1週間訪問し、新しい金採掘設備の輸入について話し合う。徐局長によると、中国はオ-ストラリア、英国、米国、日本から設備や原料を輸入するため協力交渉を行っている(注3)。

〖政策転換〗

(優遇策)

・中国は産金企業に対して、特別な優遇策を講じてきた-➀過去10年間の産金業への国家投資は28億元で、それ以前の30年間の投資総額の数倍相当する。②1989年は金融引き締めが行われているが、産金企業の投資は昨年を上回った。③このほか国は補助金を支給、税金の一部免除、交通基金への拠出金の免除などの施策を行っている(注4)。

(債務支援)

・中国政府は1989年、金採掘に昨年より1億元(約38億円)多い10億元強を投資する。その背景として、1992年から始まる“対外債務返済のピ-クに対処し、外貨不足を補う”のが狙いという。中国の金生産はこの10年間、年平均10%の成長を見せたが、金鉱の老朽化、生産資材の値上がりなどによって、経費も年平均10%増えており、当局はその対応に追われている(注5)。

〖生産概況〗

(山東省)

・第6次5カ年計画~第7次5カ年計画当時の中国の産金量の具体的な数字は不明であるが、当時の産金量について、有力な情報を提供していた「金属鉱業事業団」(現石油天然ガス・金属鉱物資源機構<JOGMEC>)の北京海外連絡員報告を参考することにする(注6)。

▽中国の産金量は約60~70トン/年と予想される。その内、約4分の1は山東省煙台市からの産出である。同市は過去7~8年にわたって年平均17%の伸びを示している。この高い伸び率の最大の原因は1975年に始まった“個人・集団”などへの対内開放政策によるところが大きい。現在11万人以上のもの農民が採金に従事していると言われ、農民による採金量は中国の産金量の40~50%を占める。

▽中国の主要産金地は、山東省、河南省、黒龍江省などである、山東省・山東半島東部は埋蔵量、生産量とも中国一である。特に煙台市が所轄する周辺の県(町/村)には玲瓏、灵山、焦家、新城などの大型金鉱が操業中であり、また、近年、相次いで三山島、河東、馬塘、上唐等の大型鉱床が発見されている。三山島金鉱は1984年より建設に着手された。1500トン/日の採・選能力を有する中国最大の金鉱である。本鉱山は1987年完成予定である。

▽中国は近代化計画を推進する上での財政負担を軽くする意味で、今後とも積極的な採金奨励策を堅持すると思われる。中国は金生産量の伸びとともに、外貨獲得の手段として、香港経由で保有金を売却しているとみられるが、実態は不明である(注7)。主要産地の金生産量(1985年)は以下の通りである。

△山東省煙台市(9.2トン)/招遠県(4.5トン)/河南省(7.5トン)/黒龍江省(5トン)/内蒙古自治区(3.7トン)。

(生産推移)

・新中国成立時(1949年10月)の金生産量は僅か4.5トンであった。その後の推移をみると、1995年に初めて100トン、2003年200トンを超えた。2007年に産金量世界一の南アフリカを抜き、世界一の産金国となった。以後、2008年292トン(340.6トン)、2010年351トン(453.8トン)、2012年411トン(608.7トン)、2014年478トン(823.7トン)、2016年453.5トン(621.8トン)、2017年426トン(1089トン)である。全世界の13.03トンを占め、現在、世界一の産金国である(注8)。()内は金消費量、主に金装飾品。

・中国黄金協会会長の宋鑫氏は天津市で開催された「2018年中国国際鉱業大会」で、中国の金生産・販売量が世界トップを維持するともに確認埋蔵量が南アフリカに迫る第2位となり、産業全体が新たな発展段階に入ったことを明らかにした。中国は現在、世界第一の黄金生産国・消費国および黄金加工区に成長した(注9)。

(需給ギャップ)

・2017年の産金量は426トン、消費量は1089トン。需給ギャップは663トンである。不足分は外国から輸入している。中国の2019年1月末の金保有量は前月比12トン多い1864トンと2カ月連続増えている。金需要が2018年増加した要因は、中国人民銀行による買い入れ、下半期の金貨と金塊の投資の拡大が理由である。

(探鉱強化)

・中国の産金量は2012年以来、400トン台を維持しているが、500トンは未達である。中国は引き続き探鉱を強化している。その事例として、中国人民解放軍の傘下の「中国人民武装警察部隊黄金隊」は生まれ変わり、「中国人民解放軍基建工程兵黄金隊」が1979年3月7日に誕生している。発足から40年に渡り、部隊は全国26省(自治区)、46の探鉱エリアで地質探査を行い、325カ所の金鉱を発見し、金資源埋蔵量2365トンを突き止めている(注10)。

(最大金鉱)

・山東省で史上最大規模の金鉱が見つかった。「三山島鉱区」の調査を進め発見された。この金鉱は中国初の海上で発見された金鉱(水深2千メ-トル)である。2016年末時点の調査で、金埋蔵量は382.58トン、金鉱石1トンで当たりの平均埋蔵量は4.52トンである。探査の結果、2年後には累計550トン以上の金資源が提供できる。鉱石を1日1万トン採掘したとしても40年以上は稼働が可能である。予測される潜在的経済価値は2000トンで、約1500億元(約2兆2400億円)である。中国では有史以来、最大規模の単体金鉱になるという(注11)。

〖金先物市場〗

・中国黄金協会は2001年に成立した。傘下の「上海黄金取引所」は現在、世界の最も「重要な黄金先物市場の一つ」となっている。この市場に上場する全ての金商品の2017年の取引量は(往復)は合わせて前年比11.54%増の5万4300トンに上り、同取引は世界最大の場内金実物取引所(片道)である。中国の金取引量(片道)は合計で世界第3位の5万5千トンに上り、中国は世界の重要な金市場の一角となった(注12)。

〖エピロ-グ〗

・中国の産金政策は試行錯誤を繰り返し、自由化方向へ舵を切り、今日に至っている。自由化は金増産策を取るうえで、必然的結果と言える。その背景には民需、官需ともに旺盛な需要がある。民需は中国の人々の金選好の強さであり、官需は対外信用力を増強するためのものであり、人民元の国際通貨への方策である。従って、中国は産金のための増強策は不可欠である。そのための戦略として、金産業の海外企業へのM&Aは今後、重要な施策として強化されると思われる。

(グローバリゼーション研究所)所長 五十嵐正樹

(注)

(1)「新華社」1985年5月27日。

(2)「北京週報」1991年2月12日。

(3)英字紙「チャイナ・デ-リ-」1990年9月10日。

(4)「新華社」1989年9月27日。

(5)英字紙「チャイナ・デ-リ-」1989年8月13日。

(6)「海外鉱業情報」、北京海外連絡員報告、1985年12月。

(7)「海外鉱業情報」、1987年12月。

(8)「2018年 Gold Survey」、トムソン・ロイタ-社、田中貴金属(日本語版)。

tomusonn。

(9)「人民網日本語版」2018年10月22日。

(10)「中国網日本語版」2018年12月3日。

(11)「Record China」2017年3月30日。

(12)「チャイナネット」2018年10月22日。

(資 料)

・五十嵐正樹論文『中国の金政策の変遷過程と現状における諸問題』、アジア政経学会、「アジア研究」1996年9月、第43巻第1号、1~29頁。