2019年3月20日


〖プロロ-グ〗

・著者が若かりし頃、日本の男性の多くが、奥様を愚妻と称していました。日本人特有の遜る(へりくだる/謙遜)言い方かもしれませんが、反面、日本語の奥ゆかしさを感じます。日本の歴史の中で、長い間、女性は蔑視されてきましたが、戦後、女性に参政権が付与され、男性と同等になりました。戦後、よく言われていたのは、“女性と靴下”が強くなったと、いわれる時代を思い出します。

・ところで、読者の皆様、『国際女性デ-』という日をご存知でしょうか?1904年3月8日、米国・NYで、婦人参政権を求めたデモが起源となり、1910年、デンマ-ク・コペンハ-ゲンで行われた国際社会主義会議にて、「女性の政治的自由と平等のために戦う日」と提唱したことから始まります。以後、国連は1975年の国際婦人年において、3月8日を『国際婦人デ-』(International Women‘s day)を制定します。この日を中国では祝意を表します。以下、中国社会における女性の地位について取りまとめた。

〖経済と女性〗

(家庭力学)

・財布の紐を握るというのは、時代が変わっても、女性は常に一家の経済的な“安全弁”でした。中国の家庭内における奥様の夫との力関係について、HSBC(匯豊銀行)の調査によると、諸外国と異なり中国では家庭で、「財務大臣」を担当している奥様が多く、6割以上の女性が“財布の紐を握っている”との報告があります(注1)。中国以外の国と・地域では財布の紐を握っているのは夫の方が多く、世界全体では、65%の男性が家計の決定権を持ち、女性の53%を上回っているとの見方です。 

(賃金格差)

・端的に格差を表す指標として男女の賃金格差を見ますと、「2019年中国の職場における性差別報告」によると、2018年の女性の平均賃金は6497元(1元=16.6円)で、男性の平均の73.3%にとどまった一方、男性は前年比8.7%上昇し、全体として男女間の賃金格差が拡大しています。格差に影響を与える三要素として-ポジション、業種、勤続年数であるといいます。また、教育は格差是正にプラスの効果を上げるといわれています(注2)。

〖労働と女性〗

(労働強度)

・同報告によると、男女の賃金が分化した最大の要因は職業選択にあるという。男女それぞれの職業選択に見られる特徴として、男性は技術や販売などの労働強度(参照1)が高く、賃金の高い職業を選ぶことが多く、女性は事務、運営、市場などの労働強度がそれぞれ高くなく、賃金がほどほどのバランスの取れた職業を選ぶことが多いという。この2年ほどでは、多くの女性がハイレベルの技術、製品管理などのポジションにつくようになりましたが、高賃金のポジションのほとんどで、男女比が明らかにバランスを欠いた状態が続いているという。

(参照1)

<労働強度>

△労働の激しさの程度。筋肉作業の激しさを表す。尺度としてエネルギ-代謝率が用いられる。労働時の消費エネルギ-を減じ、この値が基礎代謝量の何倍にあたるかを示す数値である。

(技術職)

・現在、技術分野で最も人気の高い機械学習、ディ-プラ-ニング、画像認識、システムア-キテクトなどの人工知能(AI)やビッグデータに関わるポジションでは女性の割合は20%に届かず、1ケタ台です。女性の技術職への参入率の低さが男女間の賃金格差をますます広げています。ここ数年、各分野のビジネスモデルのメリットが縮小し、産業大手が技術駆動型に移行する中、高い技術を求められるポジションは賃金が上昇を続け、男性の賃金面の優位性をさらに強化されています(注3)。

(就業率と女性)

『第3回中国女性の社会的地位に関する調査報告』による概況は以下のとおりです。

▽経済的状況に注目すると、①18-64歳の女性の就業率は71.1%、うち都市部が60.18%、農村部が82,0%。②就業女性のち、第1次産業に従事している女性の割合は46.3%、第2次産業は14.5%、第3次産業は40.2%。③都市部の女性の平均年収は、男性の67.3%、農村部の女性は56.0%、農村部の女性で、農村以外の仕事に従事している人の割合は24.9%と10年前に比べ、14.7ポイント上昇した

〖消費と女性〗 

・融360が騰訊理財と共同発表した消費報告書によると、妻が日常的に支出を切り盛りする中国の家庭は4割弱に上り、月間世帯収入のうち女性の月収が過半数を占めるのは20%以上に上ります。個人消費が世帯消費支出に占める比率をみると、毎月の個人消費支出が世帯消費支出の3割以上を占める女性は27.01%で、男性を4%弱上回っています。融360のアナリストは、消費のアップグレードの裏にある女性の貢献を無視できないと指摘しています。女性は衣料品や美容などの支出が男性よりも高い比率を占めています。加えて、キャリアップに最もお金を費やす女性の比率は男性の2倍以上です(注5)。

(課  題)

同報告の問題点として-▽西部地域の農村に住む女性の教育レベルと健康レベルが比較的低い。▽男女の所得格差がまだかなり大きい。▽農村女性の失地(強制収用により土地を失うこと)問題が目立つ。▽女性の家事労働負担は依然男性より重いなどである(注6)。

 〖政治と女性〗

(党部門)

・2015年2月頃、党部門、国務院部門には女性の高官がいる。以下、その内容である-▽崔玉英氏が中共中央宣伝部副部長、国務院新聞弁公室副主任に就任し、中央宣伝部唯一の少数民族の女性副部長となったと北京青年報が伝えています。▽党中央部門機関には複数の「女性部長がおり、国務院25部門には女性部級高官が少なくとも15人いる。統一戦線活動部の正副部長には女性が2人いる。中央統一戦線活動部は令計画部長の失脚後、女性の孫春蘭中央政治局委員(前天津市党委員会)を部長に迎え入れた。

(国務院)

・国務院の25部門中、国家安全部を除く24部門には女性部級高官が教育部(教育省)、民生部(民生省)、司法部(司法省)、財政部(財政省)、環境保護部(環境保護省)、水利部(水利省)、商務部(商業省)、「国家衛生・計画出産委員会」、「中国人民銀行」、審計署の10部門に少なくとも15人いる。このうち、女性部級高官が最も多いのは国家衛生・計画出産委員会と教育部で各々3人。また、トップには呉愛英司法務部長(司法省)、李斌為国家衛生・計画出産委員会主任がいる。また、中央規律検査委員会駐部規律検査チ-ム長に5人の女性部級高官がいます(注7)。

(参照2)<働く中国人女性>

・一般的に中国の女性は強い仕事志向を持っていると言われる。人材紹介会社の「智聯招」が発表した「三・八(国際女性デ-)特別女性デ-特別調査」によって、2010年と2012年を比較してみると、10年調査では、仕事で成功したいと考える女性は調査対象者の92.5%に達している。職務に関しては、29.8%が女性企業家(会社社長、CEOなど)、24.9%が中間管理職、22.2%が高級管理職(副社長など)、20.4%12年には、仕事で成功したいと考えている割合は72.04%で、10年の調査から約2割低下している。仕事と家庭のバランスを重視する女性が増えているためだと見られる(注8)。

(参照3)<男性優位の日本の大学>

▽日本の大学では、学長・副学長・学部長は圧倒的に男性が多く、男女平等とはほど遠い。津田塾大学の高橋裕子学長は大学の多様性確保のためにも女性人材の育成と活用が欠かせないと指摘する。現状は学長(国立/公立/私立)の全体数752人の中で、女性学長は85人・11.3%であるという(注9)。

〖エピロ-グ〗

・新中国成立以来(1949年10月)、第1次5カ年計画時(1953~1957年)、新時代の息吹を感じさせる若い男女の労働参加への自信に満ちた“顔・顔”をメディアが取り上げていたことを思い出す。あれから70年近くが経過し、今や中国は米国に次ぐ世界第2位の経済大国になった。その多くを支えてきた中国の女性の役割は大きかった。

・時代は大きく変わり、中国は新しい技術革新の中でも、女性の果たす役割はますます大きくなる。しかし、既述のように待遇面で男女格差は縮小されていないし、むしろ、大きくなる一方です。“同一労働・同一賃金”は理想でありません。この難題を如何に解決していくが、今後の中国の課題であるように思える。

(グロ-バリゼ―ション研究所)所長 五十嵐正樹

(注)

(1)「人民網日本語版」2011年11月15日。

(2)「人民網日本語版」2019年3月07日。

(3)(注2)と同じ。

(4)「人民網日本語版」2011年10月24日。

(5)「中国網日本語版」2019年3月9日。

(6)「人民網日本語版」2011年10月24日。

(7)「人民網日本語版」2015年2月27日。

(8)「働く中国の女性に変化の兆し」、独立行政法人

   労働政策研究・研修機構、2013年7月。

(9)「日本経済新聞」2019年3月18日。