2019年4月25日


〖プロロ-グ〗

・当節は猫も杓子もペット時代である。筆者の家も2匹の猫がいる-オスのモッタ・メスのナイである。名前の由来は、2004年にノ-ベル平和賞を受賞したワンガリ・マ-タイ氏が2005年に来日の際に感銘を受けたのが“もったいない”という日本語でした。この表現が環境問題の重要性を表す言葉として、世界に紹介され、話題となりました。

・これにあやかり、命名しました。毎日家では、ボス(著者・親分)と子分(モッタ・ナイ)の力関係です。ボスの家に来たのは11年前のことです。モッタとボスとの関係は良好ですが、ナイとボスとの関係は未だに“冷戦”状態。ボスと細君は高齢者、ボスは後期高齢者です。ところで、中国も当節、若者の間ではペットブ-ムがおきている。以下、その内容を紹介します。
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〖中国の現状〗

(市場規模)

・関連統計デ-タによると、2010年-2016年に中国のペット産業の成長率は49.1%に達した。2016年は犬・猫市場だけで1720億元(2兆7864億円/1元=16.2円)に達した。予測によると、2020年のペット市場規模は2000億元を突破し、中国は、米国に次ぐ世界第2位のペット市場になると予測(注1)。

(若者中心)

・家族構成の変化や高齢化の進行にともない、「ワンちゃん」、「ネコちゃん」を中心にしたペットたちが、人々の生活に入り込んでいる。周りを見渡すとペットの糞を始末する人、犬を散歩する人が多くなり、これにともないペット関連消費も爆発的な勢いを見せている。中国では多くの若者がペットを飼うことで、心の隙間を埋めるようになった。彼らは、お金をつぎ込み、“ペット経済”の発展とバ-ジョンアップを推進している-中心となったのは1980年代(80後)生まれと1990年代(90後)生まれの若者層である。

・『2018年の中国ペット産業白書』によると、2018年の中国ペット消費市場(犬・猫)の規模は1708億円(2兆7670億円)に上り、前年比27%増加した。都市部で犬・猫を飼う人は5648万人、全国都市の犬・猫飼育頭数は9149万匹に達した(注2)(参照)。同白書によると、2018年の中国のペット市場では、犬の飼い主の年平均消費額は5580元(9万396円)、猫の飼い主は同4311元(6万9838円)である-“ネコノミクス”は“イヌノミクス”を急追中である。

〖飼育の背景〗

(心のケア)

・ペット市場の拡大は、若者の消費モデルの多様化を意味し、経済発展や社会と文化の進歩の現れともいえる。ペットを飼うことは身体の健康と心の健康にとってプラスになり、血管疾患やがんの患者はペットを飼うことで病状の回復に良いと言われている。また、ペットと触れ合うことでイライラや落ち込みや孤独感が軽減され、幸福感を高めることもできるという。

・反面、急増するペット消費が映し出す社会問題がある-①都市生活におけるプレッシャ-や疎外感の高まりにともない若者層はますます孤独になり、ペットから癒しを求めるようになる。つまりペット経済とは「孤独経済」を構成する重要な要素だということになる。②一人暮らしで、人間関係や心の交流が希薄な若者層を中国では、「空の巣若者」と呼ばれる。大都市で感じるプレッシャ-と孤独は天から降ってきたものでない。長い労働時間と少なすぎる休息時間が若い人からコミュニケーションを奪い、仕事のプレッシャ-を緩和する場所を失わせ、緊密な人間関係を構築することを難しくしている。

(地方事情)

・浙江省のペットフ-ド・用品輸出入産業協会の朱招寵事務局長の話によると-「➀浙江省のペット消費能力とペット飼育頭数は、全国で5位から6位である。2010年から中国ではペット消費が急速に発展し、前年比で20~25%のぺ-スで成長してきた。②このぺ-スでいくと、2020年のペット市場規模は2000億元を超える。5~10年後には、中国は世界最大のペット消費市場になることが予想される」とみている(注3)。

〖エピローグ〗

・日本でも中国でも、飼い主とペットの高齢化は避けられないのは現実です。ペットの取り扱いを見ると、その国の文化レベルが分かるといわれています。2014年、ソチオリンピックではロシア放浪犬対策が問題となりました。米国人のガス・ケンワ-ジ選手が野犬を持ち帰ったエピソ-ドが全世界に広まりました。ロシアという国のイメ-ジを、ひどく傷つけ事件でもあります。

・最近、日本ではペットの犬や猫が繁殖しすぎて世話ができなくなる「多頭飼育崩壊」の対応に自治体が苦慮しているという。持病の悪化や家族の認知症などをきっかけに状況が悪化して、担当者が気付いたと時には室内が糞尿だらけになっているケ-スもあり、動物虐待の側面もある上、飼い主の生活立て直しは、福祉専門職のアドバイスが不可欠で、政府や自治体は具体策の検討に入ったという(注4)。

・我家のモッタ・ナイも高齢化に入った。とくに、モッタは足を痛めていることもあり、運動しなくなり、肥満も著しい。悪いことに食欲は旺盛である。反面、ナイは女の子らしく、優しい顔をしているが、ボス(著者)にはまったく愛想が良くない。ボスの顔をみると、一目散に2階の隠れ家にしけこむ。猫は薄情ということになるが、そんなことは“ない”とボスは考える。

(グロ-バリゼ-ション研究所)所長 五十嵐正樹

(注)

(1)「人民網日本語版」2018年12月24日。

(2)「人民網日本語版」2018年9月27日。

(3)「注2」と同じ。

(4)「日本経済新聞」2019年4月23日。

(参 照)

・ペットフ-ド協会(一般社団法人)が発表している飼育頭数の推移は2008年に最

高で1310万1000頭までいた犬が徐々に減って、2016年には987万8000頭となっています。猫については、同協会の実態調査で2016年に984万7000頭で、数字的には横ばい。同協会によると、今後、猫の飼育頭数は犬を超しiて逆転傾向にあるという。また、昭和40年代には10歳前後だった犬の寿命が、現在は15~17歳に伸びたようです。これは飼い主の意識やペットを取り巻く環境の変化が大きく影響している。

~「最近のペット事情」~ペットをめぐる現状と課題~「国民生活」2017年6月。