2019年6月13日


〖プロローグ〗

▷2019年5月25日付の日本経済新聞に興味を引く記事が掲載された-「日通の貨物列車定期便、中国-欧州間で来月運行」-日本通運は中国と欧州を結ぶ国際定期貨物列車の「中欧班列」(CHINA RAILWAY EXPRESS)の定期運行を6月から始める。週3便、西安からポ-ランドやドイツを結ぶ-上海など他地域からも集荷し、トラックと鉄道を組み合わせた一貫輸送で競争力を高める。コンテナ船より必要日数が短く、航空便より安価な輸送手段として需要を開拓する。以下、「中欧班列」の歴史と現状について取り纏めました。
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出所:「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年8月2日

〖現   況〗

(運  行)

▷ユラシア大陸を走行する中国と欧州を結ぶ国際定期貨物列車「中欧班列」は2011年3月19日、中国南西部の重慶とドイツ・デュイスブルク(世界有数の河港<ライン河>)を結ぶ路線からスタート。「一帯一路」のもと、2014年以降本数が急増し、2014年308本、2015年815本、2017年3673本、2018年に6300本と爆発的に急増し、2019年3月末現在、61路線、累計運行本数1万4000本に達した。中国の56都市と欧州と中央アジアの15カ国49都市を結んでおり、毎日運行されています(注1)。

▷列車運行の位置は中国版GPS(全地球測位システム/北斗)で追跡し、利用者に提供されます。中国では中欧間の貨物列車を古代シルクロ-ドの駱駝の隊列に例えて「鋼鉄のキャラバン」と呼ばれています。外航海運の週一回のサ-ビスと比べコスト面で優位で、日本通運が「中欧班列」を開設した意図があります(注2)。今後、「中欧班列」はグローバルな物流として、大きな発展が期待されています。

(路  線)

▷「中欧班列」は、毎日、主に阿拉山口駅(新疆ウイグル自治区)の税関所でチェックを受け、カザフスタンに入国します。旧ソ連圏(カザフスタン、モンゴル、ロシア、べラル-シ)の鉄道レ-ル規格(軌間)が、欧州や中国(1435ミリ)よりも広軌(1520ミリ)であるため、最初にカザフスタン(ドルジバ駅)で、荷物(コンテナ)をクレーンで広軌用の台車に積み替えます。2回目はベラルーシで荷物の積み替えが行われます。そのため多くの時間が費やされます。主要幹線は電気化されているが、国境ではディ-ゼル機関車が必要となります(注3)。以下、「中欧班列」のスタートから14番目迄の運行状況です(注4)。

➀2011年3月/渝新欧<重慶とデュイスブルグ(ドイツ)/11179km/14日>

②2012年10月/漢新欧<武漢-デュイスブルグ-ウッチ(ポ-ランド)/10863km/17日>

③2013年4月/蓉欧快線<成都-ウッチ/9826km/10日>

④2013年4月/鄭新欧<鄭州-ハンブルグ(独)/10214km/14~16日>

⑤2013年9月/蘇満欧<蘇州-ワルシャワ(ポ-ランド)/11800km/11~14日>

⑥2013年11/粤新欧<東莞(広東省)-モスクワ(ロシア)/10000km/15日>

⑦2013年11/西新欧(長安号)<西安-ロッテルダム(蘭)/モスクワ/9850km/7251km/18~14日>

⑧2014年10月/湘欧快線<長沙-デュイスブルグ/11808km/18日>

⑨2014年11月/義新欧<義烏-マドリ-ド(スペイン)/13052km/21日>

⑩2015年2月/哈欧<ハルビン-BIKLYAN(露)/ハンブルグ/6574km/9820km/10~13日>

⑪2015年4月/遼満欧<大連-モスクワ-ハンブルグ/10868km/N.A>

⑫2015年6/合新欧<合肥-ハンブルグ/11000km/15日>

⑬2015年8/長満欧<長春-シュウァルツハイデ(ドイツ)/9800km/14日>

⑭2015年10月/瀋満欧<瀋陽-ハンブルグ/11000km/12~14日>
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出所:NNA ASIA(
【重慶バンコク】東南アと欧州つなぐハブ (1)重慶のホンダ、「中欧班列」利用)

(類  型)

▽「中欧班列」の種類を出発駅の立地と集荷範囲によって以下に分類されます(注5)。

➀内陸発の域内貨物依存型

▷最初に「中欧班列」のコンセプトを打ち出し具現化した。

▷域内産業集積の形成とそれに伴う欧州向け輸出の増大に対応。

▷比較的に安定的な運行が維持されている。

▷重慶、成都、合肥、長沙、瀋陽、長春を起点とする「中欧班列」はこのタイプに分類。

②沿海発の域外貨物依存型

▷従来のシ&レ-ル複合型(鉄道と船舶)一貫輸送(海鉄聯運)やCLB(チャイナ・ランド・ブリッジ)輸送の衣替えが多い。

▷「中欧班列」より早く創成した欧州までの国際鉄道貨物一貫輸送サ-ビス。

▷営口や大連などの沿海港湾を起点とする。

▷連雲港、天津、青島、寧波、深圳などの海鉄聯運やCLBの便を「中欧班列」/中亜班列に変更する計画が立てられている。

▷日本企業や韓国企業から関心を集めている。

③内陸発の域外貨物依存型。

▷交通の要所の物流ハブに広域的に貨物を集約して、「中欧班列」に積載。

・鄭州/西安/ハルビンなどが典型的である。

▷鉄道コンテナ・センタ-の整備(全国18箇所、うち10箇所供用開始)。

▷国内の定期的コンテナ列車と「中欧班列」のリンケ-ジが重要。

④沿海発の域内貨物依存型

▷蘇州、義烏、東莞、アモイなどを起点とする「中欧班列」。

▷輸出指向の産業の厚い集積が域内に依存。

▷発達した外航海運サ-ビスに補完

・多様な荷主企業のニ-ズ:LT短縮、高運賃の空運の回避など。

▷内陸発の域外貨物依存型の「中欧班列」との提携や連結、統合が課題。

(貨  物)

▷2008年1月、「中欧班列」は、試験貨物列車が15日の走行を経て、ハンブルグ貨物駅に到着。ドイツの責任者は当時、この動きを“未来の産物”と比喩。9カ月後、パソコンを載せたコンテナ列車がハンブルグに到着した。「中欧班列」は10年前の開始当時は、未来予測が不可能でしたが、今日はすでに力強く発展しています(注6)。

▷中国側の貨物はIT製品、自動車や機械部品から木材、食品まで多岐にわたる。当初は中国からの輸出に偏っていたが、流れは変わりつつある。2015年からサ-ビスを始めた日本通運によると、復航は、中国の富裕層向けの自動車やネット通販で購入した雑貨やワインなど食品類など(中国輸入)も増えています(注7)。

(税  関)

▷「中欧班列」は、中国から欧州に向かう貨物は主にウルムチ税関管轄の阿拉山口とコルガス検査場から輸出される貨物は、エレンホント税関(内蒙古)と満洲里税関(内蒙古)から輸出される貨物量を遥かに上回っています。また、広州と深圳は経済が最も発達した市場であり、産業、大型市場、外国企業が多数集中しているため、多くの製品がこの2都市で荷積され輸出される。東南アジア諸国に輸出される貨物も主にこの2都市からである(注8)。

▷「中欧班列」の貨物列車が中国国内を運行して通過する税関は、ウルムチ税関とその隷属税関(阿拉山口税関、コルガス税関)の管轄区域を通過するため、ウルムチ税関の差し止め比率が高くなっており、2015年の場合、ウルムチ税関の事件数は19件で、中国全体の45%にも達している。事件の輸出先をみると、カザフスタン行きの貨物は主としてウルムチ税関から輸出される。同年の差し止めをおこなった製品をみると、靴類、かばんおよび比較製品、通信設備、腕時計といった模倣品が多い。

〖輸   出〗

(重  慶)

▷重慶の鉄道を利用した貿易(2017年)をみると、対ドイツが輸出で58.3%、輸入で47.2%を占め、最大の貿易相手国になっている。貿易収支については、ドイツへの輸出は19億4400万ドルに対し、輸入は2億5100万ドルと、中国側の圧倒的な輸出超過になっています(注9)。

(成  都)

▷成都の鉄道貿易(2017年)については、オランダが輸出で43.9%、ドイツが38.4%を占めている。成都からオランダへの輸出は14億8600万ドル、ドイツから成都への輸入は1億9200万ドルとなっている。品目別にみると、成都からオランダへは自動デ-タ処理機械、モニタ-、ビデオプロジェクタ-、テレビジョン受像機などが主に輸出されています。ドイツからの輸入については、遠心分離機(濾過用、清浄用)、紡織機、糸巻機などが占めています。

〖課題と展望〗

▷「中欧班列」の課題の第1は路線の多さであり、サ-ビスの同質化である。第2は往航と復航のインバランスである。第3は、鉄道輸送のコストが約2倍という悩みがある。にもかかわらず活況を呈しているのは中国当局の補助金によるところが大きい。各路線の運行会社は始発駅がある省や市から助成を受けながら、利用料の値下げ競争している点です。複数の物流業者は2、3年後になくなるかもしれないと運行会社から聞いたという(注10)。仮に補助金がカットされれば、コンテナ利用料金が跳ね上がる。乱立する路線の淘汰につながる可能性が危惧されています。

〖エピローグ〗

▷「中欧班列」はグロ-バル時代の中国の核心的な事業である。今後とも中国と欧州諸国との経済関係は益々増勢基調で推移するものと思われ、「中欧班列」への期待も大きい。但し、各地を出発する「中欧班列」の集荷をめぐる過当競争は一層酷くなるであろう。

▷日本通運は「中欧班列」の路線を使用し、本格的な中国から欧州諸国への輸出を展開する。加えて、2018年12月、41個のコンテナを積載した初の「中欧班列」(長安号)の日系企業の特別列車が西安市(陝西省)を発車した。中国に進出した日本企業による液晶ディスプレイ、カメラ、空気圧縮機、自動車部品などの貨物が積載された。貨物の価値は1700万ドルを上回り、長安号最高記録を樹立した(注11)。今後、日本企業の動向が注視されています。

▷習近平国家主席は一帯一路構想の提案者である。当然、将来展望を描いての構想である。今後、万難排して政策を遂行するものと思われる。その重要な役割を果たすのは「中欧班列」です。米中貿易戦争が一層激化する中、米国との経済関係はしばらく調整の段階である。中国は欧州との経済関係を一層強化することに奔走する。「中欧班列」は今後とも重要な役割を果たすことになる。

(グロ-バリゼ-ション研究所)所長 五十嵐正樹

(注)

(1)「一帯一路構想」(BRI)と中欧班列~国際物流の新展開~法政大学経営学部教授李瑞穂雪。2019年1月30日。於:2019年北東アジア経済発展国際会議in新潟。

(2)「読売新聞」2018年11月25日。

(3)「チャイナネット」、2018年10月9日。

(4)現代版のシルクロ-ド「中央班列」の実態と意義、JSTシンポジウム「現代シルクロ-ド構想と中国の発展戦略」、2016年2月22日、法政大学経営学部教授 李瑞雪論文。

(5)(注4)と同じ。

(6)「チャイナネット」2018年10月9日。

(7)「朝日新聞」2018年11月21日。

(8)「中国の国際鉄道輸送における税関知的財産権保護の現状に関する調査」、日本貿易振興機構(ジェトロ)北京事務所、2018年3月。

(9)(注8)と同じ。

(10)(注2)と同じ。

(11)「チャイナネット」2019年5月24日。