〖プロロ-グ〗
▷光棍節(こうこん節)は中国語で11月11日に祝う「独身の日」(ダブル11)のこと。光棍は中国語のスラングで「独身者」ですが、「棒しかない」の意味にもとれるために、初めて、1993年に南京大学の学生たちが、独身者が集まって贈り物をしたりするパ-ティ-を初めて開いたといわれ、「バレンタイン」に対抗したものといわれています。
▷中国企業の阿里巴巴集団(アリババグル-プ)は、そこにビジネスチャンスを見出し、「独身の日」をネット通販(EC)イベントの日にしてから10年が経ち、本年は11回目を迎えました。取引額は2684億元(約4兆2千億円)に達し、昨年の2135億元を大幅に上回った。中国メディアは“中国の消費グレードアップと強大な内需の証明”であると強調しています。
▷これを裏付けるように、取引額が10億元を超えたブランドは15社。通信機器大手の華為(ファウエイ)やスマ-トフォン大手の北京小米科技(シャオミ)、家電大手の海爾(ハイア-ル)といった中国メ-カ-のほか、米国のアップルやナイキ、日本のユニクロなどが入り、世界のビッグビジネスの有力な市場となっています。
出所:「蘋果新聞網」
〖概 況〗
(伸び鈍化)
▷車が1秒で55台売れ、65インチテレビが20秒で1万台売れ、ノ-トパソコンが5分で9万台売れ、キウィフル-ツが30分で30万トン売れたと・・・。本年の「ダブル11」の予約販売の動きを中国新聞網が伝えています。2019年の伸び率は前年比25.7%と、2018年(26.9%)とほぼ同水準でした。
▷しかし、2018年の伸び率も17年の39.4%を下回っています。ネット通販各社による競争激化でアリババグル-プの伸び率も頭打ちになっているほか、米国との貿易摩擦で景気が減速したことが響いたとみられます。中国大手の「京東集団」(JDドットコム)の取引額は2044億元と過去を更新しました。
(多種多様)
▷「独身の日」は当初、販売は主に衣食住関連の商品でした。現在、中国の人々の「買い物かご」に入れている商品をみると、有名ブランドの商品もあれば個性的なオリジナル商品、健康商品、環境保全関連製品、中国国産の定番商品、海外の高品質商品、中国の農家が生産した新鮮な野菜・果物・海外の特色ある生鮮食品などです。
(趣味重視)
▷最近では購入者の多くは、旅行やスポーツ関連の商品が対象になっています。多くの消費者は、レストランや旅行の予約、各種教室やジムなどの申し込みをしています。京東のライフサ-ビスが発表した統計によると、本年11月1日から10日にかけて、オ-ダ-メイド旅行系の売上高が前年同期比で6倍増となりました。
▷ツア-旅行の予約人数が年々減少している一方、飛行機チッケトやホテル、レンタカ-、アクティビティの予約の割合は増えています。祝祭日には他都市に行かず、近場に旅行する人も増えており、週末・祝祭日の経済が盛り上がっているほか、親子旅行の人気も高まり、旅行が“日用消費財化”しています。ユザ-のうち、「90後(1990年代生まれ)」が55%を占めています。「00後(2000年生まれ)」には連続で3ケタ台の成長を保っています。
▷予約プラットフォーム「飛猪(Fliggy)が発表した集計によると、「ダブル11」当日、海外旅行の予約者は500万人、ビサ申請の申込が90万件、高級ホテルの予約日数が100万日に達した。過去5年間、購入された旅行商品の件数は毎年平均約60%増加し、新規購入者数も毎年平均30%以上で増加しています。
〖消費の特徴〗
▷中国商務部(省)が11月14日に公表した最新デ-タによれば、11月1日から11日までの全国オンライン小売額は8700億元(1元≒15.5円)に上り、前年同期比26.7%増加して、過去最高になった。この決算書から中国の消費の4つの注目点があります。
(1)消費エネルギ-が引き続き巨大
▷中国の大手ECプラットフォームでは次々に朗報が伝わっています。天猫(Tmall)はイベント開始から1分36秒で取引額が100億元に達し、過去最高を記録した。京東では65インチテレビが8秒で1万台売れ、掃除ロボットが1分で1万台売れた。この2社の取引額は5千億元に迫り、取引額は“ルクセンブルグの昨年のGDP”(国内総生産)にほぼ相当。強大で安定した国内需要は中国経済が下振れ圧力に対応し、安定成長を維持するための有利な条件を提供しています。
(2)消費高度化は不変
▷消費の高度化は引き続き持続しています。新商品のブランド商品を買うだけでなく、「個人のオ-ダ-メイド」市場で、人気を集めたことも消費高度化のもう一つの現れです。所得が増加するにつれ、中国の人々は自分らしさを表現することができようになりました。所得が増加されるにつれ、個人的なニ-ズを満たしてくれる商品を好むようになりました。
▷商務部の高峰報道官は、「ECプラットフォームはビッグデ-タを通じて、ブランド企業がニ-ズを踏まえたオ-ダ-メイドの商品を生産し、供給チェ-ンのモデル転換・バージョンアップを駆動するよう後押しています。「ダブル11」期間、マザ-・べビ-専用洗濯機、加湿器などの新商品の売り上げが10月の2倍に達しています。
(3)サ-ビス消費が急成長
▷商品消費のほか、「ダブル11」期間にはサ-ビス消費も猛烈な勢いで伸びた。同部のデ-タをみると、美容医療、オ-ラルケア、健康状態などの健康消費が新たな注目点になりつつあります。関連サ-ビスの予約件数も5倍以上増加しています。オンラインの旅行売上高が100%以上を増加し、家事サービスや自動車サ-ビスなども増加傾向を維持しています。
▷アナリストは、「世界の経験から考えると、“一人あたり平均GDPが8500ドル”に達すると、サ-ビス消費が加速的に発展・拡大する。現在、中国の平均GDPは1万ドルに迫り、市場の消費環境もさらに改善され、サ-ビス消費の持続的な伸びには力強い支えがあります。また、サ-ビス消費面でも加速的拡大は消費構造の高度化を促進するだけでなく、新興産業の成長を促進する上でもプラスです。
(4)「小都市の青年」が新たな担い手に
▷都市部と農村部の所得格差が縮小するのに伴い、“小都市の青年”が強大な購買力を付けています。商務部デ-タによれば、「ダブル11」期間に新たに増えたネット通販利用者の約70%が三線都市、四線都市(注)、県の中心地、郷鎮を代表する新興都市に住んでいます。
▷二線・三線・四線都市や小都市に暮らす青年の旅行商品に対するニ-ズの伸びは一線都市の住民を明らかに上回りました。家電、化粧品、家具などのベストセラ-商品をみると、注文の60%が新興市場からのものです。中国社会科学院財経戦略研究院産業室の依紹華室長は、「現在、三線以下の都市が中国消費市場の『新たなブル-オシャン』(未開拓市場)になりつつあり、コア消費層が年々若年化し、品質、ブランド商品のニ-ズもより強まっています。これは消費の原動力育成に新たな方向性を提供するだけでなく、中国市場の容量をさらに拡大することにもなります」との見解を明らかにした。
〖エピロ-グ〗
▷2019年11月14日発表した10月分の中国の主要統計によると、固定資産投資(1~10月)が累計で前年同期比5.2%増えています。伸び率は1~9月(5.4%)より鈍化し、統計を遡れる1996年以降で最低です。景気対策の一つの柱であるインフラ投資が伸び悩んだためです。中国経済の不調が続いています。
▷反面、「ダブル11」に代表されるEC市場は本年、伸び率が若干鈍化しているとはいえ、成長市場には間違いない。中国市場の消費動向は世界のアンテナショップとして益々その色彩を鮮明にしています。世界のビッグビジネスは、「ダブル11」の市場の動きを注視し、また、世界経済の将来を展望する上で重要な市場とみています。
(グロ-バリゼ-ション研究所)所長 五十嵐正樹
<引用資料>
・「人民網日本語版」2019年11月08日。
・「人民網日本語版」2019年11月12日。
・「人民網日本語版」2019年11月14日。
・「人民網日本語版」2019年11月18日。
・「人民網日本語版」2019年11月22日。
・「日本大百科全書」(ニッポニカ)の解説。
・邦字各紙。
(注)
<経済用語集>
・「一線都市」(4都市)とは、全国的な政治都活動や経済活動などの社会活動で重要な地位にあり、指導的役割を備えている。北京市、上海市、広州市、深圳市。
・「二線都市」(30都市)とは、自国の経済や社会に対して、大きな影響力を指す。青島市、厦門市、西安市、寧波市、長沙市など。
・「三線都市」(70都市)とは、比較的発達した中小都市、経済規模が大きい都市を指す。珠海市、貴陽市、太原市、烏魯木斉市など。
・「四線都市」(90都市)とは、舟山、泰安、宝鶏、周口など。