2020年4月26日


〖プロロ―グ〗

2019年12月、中国湖北省武漢市で新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の患者が発見されてから、わずか3ヵ月余りでウイルスは世界各地に拡がり、WHO(世界保健機関)は3月11日にパンデミック(世界的大流行)を宣言した。米ジョンズ・ホプキンス大学の調べによると、米東部時間4月22日午後2時半新型コロナウイルスの世界中の感染者数は278万人に達した。全世界の死者数は20万人に迫った(注1)。

反面、中国当局は武漢市に対して、4月8日午前零時、事実上の封鎖を2カ月半ぶりに解除した。また、いち早く中国が派遣した医療支援団が3月13日イタリアに到着した。この動きは、新型コロナウイルスの克服を印象付ける狙いがあるとみられます。以下、“マスクに象徴”される新型コロナウイルスへの中国の対外支援策の現状について報告します。

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武漢市内
佐賀新聞LIVE

〖マスク外交〗

(120カ国へ)

中国外務省によると、2020年3月末までに、中国は、欧米や日本、アフリカ、中東など世界の120カ国に医療マスクや防護服、検査キットなどを援助した。同様に中国・インタ-ネットサ-ビス最大手、アリババグル-プや地方政府も積極的に医療物資を寄贈した。中国のマスメディアは、新型コロナウイルスが“米国の世紀を終わらせた”と主張する。

中国共産党系メディアの「環境時報」(英語版)は3月31日、コラムを掲載-「米国は世界の災難を前に他国を助けられない」と主張し、「感染対策で段階的な勝利を収めた中国は100カ国以上に人工呼吸器やマスクを贈っている」と強調した(注2)。その背景には、中国の指導部がマスク外交に躍起になるのは、初動の対応が遅れ、国内外にウイルスを拡散させたとの批判をかわす見方もあります。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、各国政府はマスク確保のために奔走する。マスク大国である中国は世界のマスクの半分を生産し、各国に輸出している。中国は生産面でも感染拡大前に数千万枚だったマスク生産(日量)は、中国当局の許認可や税金面の優遇などの後押しで、3月には1億枚を突破し、最近は2億枚に近いと言われている。

中国がマスク輸出をテコに影響力増大を狙って“マスク外交”に動く一方、米国はマスクの輸出制限を発動する。中国税関署によると、本年3月1日~4月4日に輸出したマスクは36億6000万枚、中国のマスク生産は2018年45億4000万枚の81%に当たる規模です(注3)。

(マスク争奪)

世界中、マスク争奪は厳しさを増しています。その事例として-①ドイツ首都ベルリン市は4月3日、市警察用に発注した20万枚のマスクがタイ・バンコクの空港で奪われと発表します。市当局は米国の関与主張し、まるで海賊だ!②フランスでは自治体への配送される予定であったマスクが、中国からの発送直前、空港で外国人業者に買い取られていたことが、ラジオ報道で発覚します。犯人は空港で米国人が高額の現金を払い、持ち去ったという(注4)。

(中国の誤算)

中国医療用マスクや防護服などを援助した127カ国に達っしたとアピ-ルします。しかし、①豪公共放送ABCは4月1日までに中国から届いた防護服が基準を満たしていないため、豪当局が税関で押収していると報じた。②オランダやスペイン、フィンランドなどで粗悪品(マスク/検査キットなど)が大量に見つかり、返品したという。このような事態を受け、中国当局は4月1日から約2万8000社に対して、輸出許可制を導入し、4月10日からマスクなど医療分野に厳格な製品検査や申告を義務付けています(注5)。

中国の積極的なマスク外交について、独調査機関「メルカルト中国研究所」のアナリスト、ルクレッィア・ポゲッティ氏は、短期的には“ソフトパワ-の勝利”ですが、反面、「行き過ぎた外部宣伝はすでに世界各国で問題が発生しており、逆効果になる可能性がある」と指摘しています(注6)。

 

〖感染支援策〗

(薬品開発)

・中国の科学技術部(省クラス)の孫燕栄副センタ-長は、中国が世界の感染対策に提供した経験と参考材料を以下のように紹介しています(注7)。

中国の研究チ-ムは中国国内で展開した新型コロナウイルスの薬品臨床研究による研究成果は、いち早く学術論文に掲載され、中国の臨床経験・成果を最速のスピ-ドで世界と共有しています。

中国の科学研究チ-ムは持続的に高頻度で世界の複数の国・地域と交流及び学術研究を行っている国・地域はすでに140カ国以上にのぼります。主な内容は中医薬、クロロキン、ファビピラビル、トシリズマブなどです。新型肺炎臨床研究の進展及び臨床応用経験が、交流おける重点となっています。このような形で、世界の感染対策に中国発のソリュ-ションを提供しています。

中国のこれまでの薬品開発による成果が、すでに一部の国によって導入されており、関連する臨床治療プランに盛り込めています。同時にWHO(世界保健機構)及び複数の国もクロロキン、ヒドロキシクロロキンなどの薬品の臨床研究を展開しています。複数の国は回復期の血漿(けっしょう)、トシリズマブなどの中国発のソリュ-ションに含まれる薬品の品種とソリュ-ションを、新型肺炎の治療または臨床研究の展開に応用することを認めています。

 

〖人工呼吸器〗

(生産・輸出)

新型コロナウルスによる肺炎の影響により、本年2月初めに1日あたり200-300台ほどだった北京和嘉業療科技股份有限公司の人工呼吸器の生産能力は、今では約1200台に増加し、在庫はないといいます。同社市場部の姜陳マネージャ-は、「現在、当社が製造した人工呼吸器の約98%が海外に輸出されている」と、中国新聞社が伝えています。

咍和嘉業は現在、30数ヶ国に人工呼吸器2万台近くやマスク10万枚近くを含む防疫製品を輸出しており、感染状況が深刻なイタリアや米国などが主な輸出先だといいます。深圳邁瑞生物医療電子股有限公司も海外から1万台に及ぶ人工呼吸器の注文を受けています(注8)。

江蘇魚躍医療設備股份は人工呼吸機の注文がが4月分までいっぱいで、日産能力は感染症発生前の300台から現在は700台を超えた。深圳邁瑞生物医療電子股份有限公司も海外から1万台に及ぶ人工呼吸器の注文を受けています。

アルジェリアからの情報によると、中国から追加医療支援物資が4月21日、アルジェ国際空港に到着し、同国ジェラ-ド首相と政府職員が出迎えています。支援物資は、人工呼吸器・医療用マスク・核酸検査キットなど20トンです。アルジェリアの新型コロナ感染者数は2811人、死亡者数は392人です。アルジェリアの人口は4223万人(2018年)。

 

〖華僑支援〗

中国在日本大使館は微信公式アカウント(WeChat)で、頻繁に新型コロナウイリスの感染情報を素早く発信し、中日両国の防疫政策を方法を紹介し、日本に居留する同胞との相互連絡ル-トを開設し、医療相談や業務手続などに関連する質問に迅速に対応している。

2020年1月29日大使館は華僑・華人団体(会員約100万人)に対し、「内部登録調査制度」を作ることを推奨し、日本に戻った人は隔離措置をとり、接客を減らし、日常の防護を強化するようにアドバイスしている。日本雲南聯誼協会の丁恵蘭理事長は、「現地にとどまり、心を一つにして防疫に努めるのがベストの選択だ」と話しています(注9)。

 

 〖エピロ-グ〗

(米国の弱点)

中国は明確なグロ-バル戦略(-帯-路)を掲げています。その支柱になっているのは金(マネ-)と技術(テクノロジ-)です。中国の感染支援策(マスク/人工呼吸器など)はそれを裏付けるものです。米国は中国のマスク外交を警戒しますが、感染者数の急増で、中国製の医療物資に頼ざるを得ない面もあります。

(国際協調)

ニュ-ヨ-ク州のクオモ知事は4月4日、中国から1000台の人工呼吸器の寄贈を明らかにしている。アリババの創業者、馬雲(ジャック・マ-)氏によるもので、「われわれには大きな変化をもたらす」と謝意を述べています。同州は1万7000台の人工呼吸器を発注していますが、需要急増で生産が追い付かず、医療現場での不足が懸念されています(注10)。

(日本の課題)

日本国内では医療用サ-ジカルマスクが当面、約2億7000万枚不足するとみられる。なかでも3割を輸入に頼る高性能医療用マスク(N95)に不足感が強い。原料に不織布も4割を輸入に頼り、その半分が中国製です。日本の課題は、①中国への過大な生産依存を改める。②国際的視点の現状分析と即応体制が不可欠である。

(グロ-バリゼ-ション研究所)所長 五十嵐正樹

(注)

(1)「日本経済新聞」(夕)2020年4月25日

(2)「日本経済新聞」2020年4月8日

(3)「毎日新聞」2020年4月10日

(4)「産経新聞」2020年4月6日

(5)「日本経済新聞」2020年4月18日

(6)「日本経済新聞」2020年3月27日

(7)「人民網日本語版」2020年4月15日

(8)「人民網日本語版」2020年4月3日

(9)「人民網日本語版」2020年4月16日

(10)「日本経済新聞」2020年4月6日