2020年10月5日


〖プロロ-グ〗

中国の金企業は2016年から「走出去」政策<外国へ出よう>を展開します。産金量が2016年をピ-クを機に減少基調に推移しているからです。中国黄金協会は、背景として、国内の金鉱山の生産が大幅に減少して、金精錬用の原料の供給不足が表面化したことで、輸入原料は、今や中国の金生産を補完するする重要な存在となったと言及しています。

そのために、中国当局は、積極的に進出先の企業への技術供与、資金提供、M&Aを展開をしています。中国は今から40年前、中国は産金量の増産のため、積極的に海外企業からの設備・技術の導入を図る。主に中国の主要産金地と地方の有力な産金鉱山が対象となっています。その成果が功を奏して、産金量は漸増します。現在、中国の産金量は世界一です。中国の金増産のための外国技術導入を如何に図ったかを参考に、今後の中国の金企業の「走出去」政策を展望します。

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金塊
出典:「写真AC

〖外国の技術導入〗

(産金設備・資金)

中国の産金設備について、外国企業の考え方として、①外国会社によって供給された機械設備や技術サ-サビスなどが中国の産金増加によって寄与しつつある。②中国の産金奨励、とくに大規模鉱山の能率増進に対する考え方については、外国の設備供給業者と投資家ににとって好ましい動きである。③すでに鉱山が特別の資金を新技術獲得のために投じている。以下は、中国の主力金鉱と地方の金鉱の金増産の動きです。

 

<山東省>

中国有数の金鉱山の一つである山東省の招遠金鉱(Zhaoyuan)は原子力工業部(省)の研究機関が開発したイオン交換技術を導入して金の実収率を5-10%向上させています。その他の多くの鉱山は外国会社に多種多様の設備とサ-ビスの提供を求めています。外国からの産金設備の購入は1980年から一層盛になります。当時の山東省の金生産は全国金生産の約25%のシェアを有していると言われています。

1980年Davy Mekee Cory.(英国)サンフランシスコ事務所は、山東省掖(Ye)県の2金鉱のために、最も経済的な技術で金の実収率の向上を目指す増産計画のフィジビリティスタディ(F/S=事前調査)を依頼されています。

1980年、バンク-バ-のWright Co.Ltd.は山東省の渤海(Bohai)に臨む三山島(Sanshantao)金山の増産のための計画を立案し、1982年には鉱山と選鉱場の設計と資材調達を受注しています。2010年には、山東黄金集団がこれまでの最も深い4000メ-トルの金鉱探査が実施されました。今回の投資額は1億元を上回りますと、2010年11月15日付「半島都市報」は伝えています。

三山島金鉱は平均品位が6-13g/t(参考1)の金鉱を採掘するために1500t/日の鉱山建設が、完成するのは1987年です。以上の産金量拡大のためのプロジェクトに加えて、山東省は、さらなる外国援助による多くのプロジェクトの開発融資を行っています。1984年には、山東省の代表団が、最新技術を求めて米国の金山と機械製造会社を歴訪しています。

 

<黒龍江省>

龍江省呼県(Huma)の2砂金鉱山のために、オランダのMining and Transportation Engineering BVからの300lのバケットドレッジ3隻を輸入します。加えて、同年に米国オレゴン州PortlandのWagner Mining EquipmentCo.は、中国の金鉱にLHD(loadhauldump)用車両を12両販売しました。

黒龍江省は、省内3金鉱山の増産を支援するために、1億1400万ドルの投資を引き受けてくれる外国人パトナ-を求めています。省政府の陳雷(Chen Lei)主席は、エネルギ-源、用水、輸送、港湾設備、電気通信、建設地と労働力の優先的供給と、土地使用税の3年間の免除と土地開発税の70-90%の減税を、外国人投資推進のために約束しています。

1985年4月現在、外国のエンジニヤリング会社は中国の金鉱山開発に一部の技術サ-ビスについては対応しました。事例として、加圧酸化法などという新しい技術を使って、特殊な選鉱を処理するための工場設計は、外国技術者の援助がなくしては実現困難です。探査のためのコンピューター化した最新の遠隔探査技術を中国に提供しました。

 

<陝西省>

中国は外国援助によって最初に生産を開始する山金(参考2)鉱山は陝西省潼関の潼関金山と河北省宣化県の張家口金山です。1984年の初めにDavy Mckee Corp(DMC)のサンフランシスコ事務所は、この2つのプロジェクトのための基礎設計、資材調達工事に関して、中国と契約を結んだ。DMCの現地調査班が中国を訪問したのは、1984年5月末で、同調査班は潼関で、既存の設備に関する現地資料を収集して帰国しました。

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習近平国家主席
出典:「SankeiBiz

〖対外金鉱へ進出〗

(山東黄金集団)

「2025年までに金生産企業で世界トップ5入りを目指す」。2020年8月、山東省済南市で、開かれた国有の中国銀行との戦略提携の調印式で、山東黄金の陳玉民薫事長は拡大に意欲を示し、同行から300億元(約4500億円)の信用枠を得て海外買収で協力受けることが決まった。中国共産党との関係を生かした世界進出を加速する。

山東黄金集団は山東省が管轄する国有企業で、同社の金鉱は抗日戦争の時代に大量の金塊を延安の共産党に運び党を支えた歴史を有しています。同省に大規模な生産拠点を構え、2017年には金生産で中国トップにに躍進します。アルゼンチンなどでも鉱床開発を進めており、2019年の生産量は48トンで、世界トップ10に入りました。同年の売上高は768億元(約1兆1520億円)に達しました。

海外展開の一手として発表されたのが、2020年5月に発表したカナダ鉱山企業、TMACリソ-ズの買収計画ですが、同計画がカナダで反発を招いてしまった-①買収総額が1億4900万ドル(約197億円)と1年前の時価総額の半値になった。②TMACが北極圏でヌナブッド準州に金鉱を持つ。③豊富な埋蔵資源が見込まれるうえ、北極圏の交通の要衝に中国の国有企業が拠点を構えることに将来を懸念する見方が強まったことです。

山東黄金集団は世界最大の金産出企業のカナダのパトリック・ゴ-ルドと、山東省済南市で戦略協力推進協定を締結します。これにより両社は協力の範囲を拡大し、技術、経験を共有するとともに、アルゼンチとチリの国境に位置するバスクア・ラマ金鉱床の共同開発について検討を進めます。山東黄金の陳玉民薫事長は、パトリック・ゴ-ルドとの協力について、「山東黄金集団にとって海外資源、先進技術、国際的人材の蓄積に役立つ」と述べています。

 

(紫金鉱業集団)

<ブラックスワン>

中国の大手紫金鉱業集団は、金、銅、亜鉛などの探鉱と採掘をパプアニューギニアのほか、アフリカや中南米など11カ国に鉱山権益を保有しています。ニューギニアの高地のエンガ州にあるポルゲラ鉱山は、金の埋蔵量314トン、鉱石トン当たりの含有量は4.2グラム、年間平均生産量は15.5トン、世界有数の金鉱山です。2019年には紫金鉱業に8.83トンが配分され、同社の金生産量の21.6%を占めた。

紫金鉱業の決算報告書によると、2019年ポルゲラ鉱山の権益から得た純利益は5億2700万元(約79億円)です。これは同年の総純利益の12.3%に相当します。しかし、同社はブラックスワン(参考3)に遭遇したのです。2020年4月24日、同社の持つポルゲラ鉱山の採掘権の延長を同国政府が突然却下したのです。

同様に、紫金鉱業集団とカナダのパブリック・ゴ-ルド合併企業、バブリック・ニュ-ギニア(BNL)のプロジェクト権益の95%を所有します。紫金鉱業集団は、2015年に2億9800万ドル(約317億円)を投じ、BNLの権益の50%を買収します。BNL採掘権は2019年8月に切れていたが、採掘の継続が認められきたが、パプア政府は突如、採掘権の延長申請を認めず、協議するための国家交渉団を組成すると発表します。これに対して、BNLは、パプア政府や鉱山の土地所有者との話し合いを望むものの、合意にいたなければ、政府に対して損害賠償を求めるという声明を出したのです。

 

<カナダの金鉱>

紫金鉱業集団はカナダのコンチネンタル・ゴ-ルドの株式権益の100%を買収する。2020年1月29日、同社の取締会で決定され、買収額は約10億ドルである。同社が保有するコロンビア・アンテイオキア県北部北部のブリティカ鉱山の権益100%を取得する。同鉱山の金確認埋蔵量は約187トン、紫金鉱業集団は年間約25万オンス(約7.8トン)を生産、14年間の操業見込んでいる。

 

<中央アジア>

紫金鉱業はAltyunken Limited Companyの権益を、カザフスタンのSmmer Gold Limited Liability artner shipから6600万ドル(約4億220万元)で取得しました。残りの40%はキルギスタンの国有企業が保有している。

 

〖エピロ-グ〗

中国の積極的な対外金鉱へ投資の背景として、①中国の外貨準備増強のための金シェアの拡大、②人民元の国際通貨への裏付け、③旺盛な民間の金需要への対応です。

中国の金企業の直接投資は非常にアグレッシブな対外戦略を行っています。特に金資源が賦存するアジア、アフリカ、中南米諸国の積極的な投資です。しかし、あまりにも急激な投資であることから、当該国と摩擦を引き起こしています。

今後も中国の対外金鉱への投資と技術供与は、最近の習近平政権の強硬姿勢からしても、中国の利益の拡大ために、今後も若干の調整あったとしても、不変であると思われます。

(グロ-バリゼ-ション研究所)所長 五十嵐正樹

(引用資料)

・「資源枯渇が見えてきた中国の金生産」、グロ-バリゼ-ション研究所ブログ、2020年9月12日

・「海外鉱業情報」1986年2月、金属鉱業事業団(現:独立行政法人石油・天然ガス・金属鉱物資源機構<JOGMEC>

・「財新・Biz&Tech」2020年5月14日

・JETRO(日本貿易振興機構)、ビジネス短信中国金鉱業集団、コロンビアの鉱山権益100%を取特。

・「日本経済新聞」2020年9月12日

・「中国新聞社」2018年7月12日

・「中国市県手冊」浙江教育社出版、1987年5月、第1版

 

(参  考)

・世界的に著名な日本の菱刈金鉱(鹿児島県伊佐市菱刈地区/住友金属鉱山)の品位は30-40g/1トンです。1985年出鉱開始以来、2020年3月、現在248.2トンの金を産出しました。

・山金とは鉱山で採金とれる金鉱石、砂金は河などに賦存する金で、主に北の黒竜江省などに多い。

・ブラックスワンとは黒い白鳥とは事前に予測できないが、発生したら甚大な被害うけることの意味。