2022年4月30日


〖プロロ-グ〗

露がウクライナに侵攻してから2カ月余り、ウクライナ南東部マリウポリへの集中攻撃は激しさを増すばかりであるが、アゾフスタリ-ン製鉄所・傘下の戦闘部隊「アゾフ大隊」の頑強な抵抗にあって、攻めあぐねている。

4月26日にはグテレス国連事務総長がクレムリンでプ-チン大統領と会談が行なわれた。マリウポリへの人道支援や紛争地からの民間人の退避に関して話し合いが行われた模様であるが、具体的な内容については不明である。

ポ-ランドの国営ガス石油会社PGNiGは4月26日、ロシアの国営ガス会社ガスプロムからポ-ランドへの天然ガス供給は4月27日から停止するとの通告を受けたと発表。露は自国通貨のル-ブルでのガス代金支払いを求めていたが、ポ-ランドが応じなかったためと見られる。

ドイツ政府は4月26日、ウクライナにゲパルト対空戦車50台を提供すると明かにした。ドイツの大型兵器紛争地への供与は戦後初めてであり、戦線の拡大が憂慮される。以下、ここ数カ月間の中欧班列の動向に関し、ジェトロ(日本貿易振興機構)の資料(ビジネス短信)を引用し、作成した。

 

〖中欧班列の動き〗
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四川省
重慶

出典:「人民網日本語版

(減  便)

上記のごとく、中欧班列は欧州を運行するため(注1)、危機回避のため、3月の運行状況は減便となった。この点に関して-商務部国際貿易経済合作研究院国際市場研究所の白明副所長は、「中欧班列がロシアとウクライナを通過するため両国間の衝突は列車の運行に影響するため」と説明(「新京報」22年4月13日)。

(受付停止)

企業間でもロシアや戦闘地域を通過する陸路輸送の回避が顕著となっている-①欧州最大の貨物輸送代理会社・キュ-ネ・アンド・ナ-ゲル(スイスに本社)は、4月15日時点でロシアを通過する欧州発着を受け付けていない。②ドイツの国際物流企業DHLも3月9日、ロシアとベラル-シ向けのサ-ビス提供の停止を発表している。③デンマ-ク物流大手DSVも、4月15日時点で医療物資や人道支援を除き、ウクライナとベラル-シ発着の全ての輸送モ-ドで、サービスを停止している。

(一時停止)

中国交通運輸協会国際班列コンサルティングサ-ビスセンターの楊傑氏は、中欧班列の輸送線路は現時点で物理的には寸断されてはいないが、貨物輸送大手企業が自発的または政府の圧力により中欧班列の業務を一時停止すると発表している点が課題となっていると指摘。

また、「中国の貨物輸出の大半はFOB(本線渡しが条件)(注2)を採用しているため、上海発の中欧班列の貨物のうち少なくとも50%は欧州側の貨物代行会社がイニシアティブを取っている」ためと説明。

これらの企業がロシアを回避するル-トを採用する傾向が強くなれば、中欧班列の貨物量は著しく減少すると述べた(網易<2022年3月25日>)。これまでに露は中欧班列を利用し、主に民生品を輸入しており、年々数量も大きくなっていることから、現在、西側から四面楚歌に陥っている露にとっても大きな痛手になる。

 

〖エピロ-グ〗

(通算5万本)

中欧班列は習近平国家主席の「一帯一路」の一翼を担っている。習国家主席は2014年3月29日、ドイツ西部ノルトラインヴェストファ-レン州デュ-スブルグ河港(参照)を訪問した。折から中国・重慶始発の貨物を満載した列車がゆっくりと到着した。本駅は、重慶から新疆を経て、欧州・アジアを跨ぐ、渝新国際鉄道が結ぶ大動脈の終点である。これまでに中欧班列の各路線は2022年1月28日現在、通算で5万本を突破した。
Duisburg





ドイツ
デュースブルグ
出典:「Wikipedia


(厳しい現状)

習近平国家主席が考えた中欧班列はこれまで順調に推移してきた。しかし、前述のごとく、本年2月24日、露は突然ウクライナへの侵攻し、現在、膠着状態にある。恐らく、ウクライナ戦争は停戦までに相当の時間を要する。その背景には、米国(総額330億ドルの追加予算/4兆円超)・欧州諸国がウクライナへの武器援助の拡大は必至となっている現在、中欧班列は今後、厳しい局面を迎えることになると考えられる。

(グローバリゼーション研究所)所長 五十嵐正樹

(注)

(1):中欧班列のル-トは、中国各地から新疆ウイグル自治区(阿拉山口駅経由)経由で、カザフスタン、ロシア、ベラルーシを経て、ポ-ランド、ドイツに入る長距離路線(11179km/所要日数14日)である。

(2):FOBは貨物輸送の運賃と保険料は輸入車が負担する。FOB、CFR、CIFは本来、海上輸送と内陸水路輸送への適用に限定されるが、長年の取引習慣により、コンテナ輸送にもかかわらず、依然としてFOB使用するケ-スが多い。

(参 考)

筆者は2019年10月、デュッセルドルフから車で約1時間、古都デュ-スブルグ河港(ライン工業地帯)に到着した。同所には中欧班列と書かれたコンテナ(16フィ-ト)が広い地域に野積されていた。

監視小屋があり、トルコ出身の人がウォチマンとして働いており、訪問者にはかなり神経を使っていた様子。近くには写真は禁ずると貼り紙あった。①コンテナ量からして相当の活況を呈していた②急流のライン川河岸からオランダのロッテルダム港(約150km)へ運搬するものと推測される。③中独関係の良好(メルケル首相は11回訪中している)さがわかった。