毎月1回開催している「まちづくり読書会」では自治体問題研究所が
発行している「住民と自治」をテキストとして使っています。その「3月号」
には沖縄国際大学の佐藤学氏が、ともすれば「オール沖縄」の運動が
自民党勢力を圧倒しているかのように思われている沖縄で、現在進行して
いる危険な状況に関し「沖縄をめぐる政治の地表と真相」と題する興味
深い論稿を寄せています。その一部を紹介します。

 沖縄県内の「若手政治家」はJC(青年商工会議所)出身の保守ばかりという
状況にあります。40代、50代のの首長は多くがJC出身者であり、その頂点
には知事選挙出馬をうわさされているJC出身の若手経済人がいます。
 JC組織は地域活動に力を入れていて、子どものスポーツの指導や清掃と
いった活動により地域に根を張り、また「体育会系」とも呼ばれる強固な先輩
ー後輩関係の組織を張り巡らせているのです。さらに、現在は大学生や
若手会社員を、異業種勉強会や就職活動のための勉強会という機会で、
猛烈に組織化している実態があります。これは恐らく、この若手リーダーの
知事選挙に向けての活動なのです。JCのネットワークですくい上げれば
若者層は総取り状態になります。宜野湾市長選挙の出口調査では20代の
支持は保守候補が70%の支持を集めたとされています。保守系候補が
票を伸ばした背景には若手経済人の組織の活発な動きがあったとみる
べきです。このような活動はかつては労働組合が担っていました。しかし
「革新勢力」が今も命脈を保っている沖縄でも組合の力は低下しており
特に若年層の組織率は非常に低くなっています。もはや労働組合に地域
活動を展開し、新たな人材のプールとなる力は有りません。「オール沖縄」
勢力の国会議員や地方議員の高齢化は著しく、若手が育っていない構造的
弱体化が進んでいます。JC出身の若手政治家、首長に共通するのは、日本
会議系の復古主義イデオロギーの強い影響下にあることです。沖縄JCは
以前から石原慎太郎講演会を開催するなど、復古主義、国家主義的イデオ
ローグを招いての活動を盛んにおこなっています。
 沖縄の学生に共通する問題は沖縄の歴史、特に戦後沖縄の現代史を
学校教育で全く履修していないことがあげられます。戦後の沖縄がいかに
して今に至ったかの現代史は、小中学校でも、ほぼ何も習っていません。
 歴史教育の欠如は現状を刹那的に受け入れる以上の心性を持たせず
彼らには米軍基地の存在は生まれた時からあるものでそもそもなぜ存在
するかという契機すら持ちません。学生の意見を読み聴く機会があると
いつも目眩を起こすような気持ちになりますが、基地問題とは、雇用問
題との意識しか持たない学生が大多数です。

 いささか悲観的?に過ぎる論調が気になりますが若者に対する「保守陣営」
の系統的取り組みついては、その動きを過小評価することなく、「本土」?に
於いてもその動向に注目していく必要があります。