バイアスをかけて絵本を紹介します。

バイアス絵本レビュー@エホンバタケ

■「当時」の最先端のセンス

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「絵本」というジャンルの売上の大半は、児童書専門出版社のもので占められています。
しかし、パっと見で「つくりやすい」と見られがちなためか、児童書以外の出版社も数多く参入してきます。

今回紹介する作品は初版が22年前とバブル時代のもので、建築・デザイン系出版社「TOTO出版」の、これまた「人気コピーライター競作 トイレの絵本シリーズ」という、少し不思議なシリーズからの一冊です。
編集者さんがこういうのを好んだのでしょうね。

文は人気CMディレクター、絵とデザインは立体イラストレーターという組み合わせで、今読みますと絵よりもまず、文章の旧さを強く感じます。
文章は総ルビになってますが、ジャーゴン的な言葉、サブカル的な切り口、「です・ます調」と「だ・である調」の(敢えての?)混同など、読者ターゲットが見えにくいです。

でも、当時はこのセンスが受けていたのだと思います。
川崎徹さんはこのころ、「元気が出るテレビ!!」のレギュラーで、毎週テレビに出てました。 

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絵についてはコマーシャルアートに寄り過ぎているように見えます。
でも、絵本のマネタイズは販売収入なので、考え方は間違っていません。
ただ、それだけでは無いのが絵本の難しいところです。

軽いのはいいのですが、薄いのは敬遠されるのです。


そして、カバーのそでに「大人から子供まで楽しめる」とありますが、こういうのがもっとも売れないパターンなのです。
色彩と一緒で、いろんな色を混ぜると濁るのです。
 
本作は時代の後押しもあったでしょうが、きっと重版はかからなかったでしょうね。
Amazonマーケットプレイスでは5000円の値付けです(投稿時現在)。 


[内容]
「トイレ」をキーワードに大人から子供まで楽しめるユニークな世界。多趣味なトイレが外出する度、用を足す際はよそ様のトイレを借りねばならない主人。その悲喜劇をコミカルに描写。
仲畑貴志監修「人気コピーライター競作 トイレの絵本シリーズ」の一冊。

[備考]
1992年初版/40p/左開/印刷:共同印刷

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■過剰に色っぽいお母さん

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今回も「PR用非流通絵本」です。
発行元は東京都遊技業共同組合、つまり、パチンコ・パチスロの組合です。

2006年に東京都内の小学校へ無料配布された絵本で、話は普通に面白く、絵も引き・アップ・見開き展開等がきちんと構成され、レベルの低い出来にはなっていないです。
 
が、「小学校へ配布する絵本」ということを意識し過ぎたせいか、漢字のひらく・とじる具合の微妙なバランス、その割りに総ルビ、そして曖昧な形での『』「」()等の括弧の使用など、全体的に考え過ぎというか、著者と編集者の迷いが散見されます。

しかしこの絵本の魅力は、なんと言ってもさかもと未明さんの絵です。
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こんなに過剰に色っぽいお母さんが登場する絵本は見たことがありません。
また、こういうマンガ的な絵柄の絵本はそうはありません。

その他、表1、見開き、表4に本文頁からのカットを流用する大味さや、その割りに背景は都内の風景を強く意識してトレースを多様していたりと、バラバラな要素が不思議な調和をつくる作品に仕上がっています。
これも非流通の味わいだと思います。
 

最終頁の「発刊にあたって」を読みますと、この業界は積極的に社会貢献活動に取り組んでいるそうです。
そういう意味ですと、同様に社会貢献活動に前向きなゼネコン業界や運送業界と、似た部分があるのでしょうね。

[内容]
小学校一年生になったももちゃん。登校は近所のお兄さんお姉さんと一緒ですが、下校は同じ一年生同士です。しかし最近子供が知らないおじさんに連れていかれそうになった事件が発生し、心配になったお母さんは、ももちゃんと一緒に下校し、気をつけるポイントを確認することになりました・・・。

『牛さんも錦鯉さんも元気でよかったね』に続く「いのちの絵本」シリーズ第二弾。

[備考]
2006年初版/36p/左開/印刷・製本:不明

■保守的であることの重要性

絵本はおおむね「児童が読む本」です。
そして、絵本は「対象読者(=児童)」と「購読者(=保護者等)」が別々という珍しいジャンルの書籍です。

ですから、絵本をつくる時・売る時は、この両者への意識のバランスが重要で、対象読者向き過ぎても購読者向き過ぎてもうまくいきません。
逆に、これらの特性から、うまく使うと1冊で児童にも保護者にもリーチすることが可能だと言えます。

そこに着目した企業が商品のPR用ノベルティとして、一般の流通から外れたところでつくる「非流通絵本」がたくさんあります。
 
私はこの「PR用非流通絵本」が大好きで、古書市やBOOKOFFで見つけると必ず購入します。

先日、老舗の鞄メーカー「土屋鞄製造所」が発行・発売している、上質なPR用非流通絵本を見つけました。
一読し、真摯な姿勢でつくられた絵本だと思いました。
 
著者はイラストレーターで童美連会員(著者HPより)。
購入者ノベルティということで、つくりはオーソドックス、と言いますか、福音館書店の「こどものとも傑作集」とほぼ同サイズ、32ページ構成、松居直チックなタイトル文字指定、表紙はマット加工&本文用紙は斤量重めの上質紙使用などなど、保守的な色合いを強く感じました。
 
でも、裏を返せば、こういう絵本は最大公約数的なつくりにすることがひとつの条件であるように思います。

絵柄にオリジナリティはあまり感じませんが、内容との相性はとても良く、文字の置き方・見開きの使い方などツボを押さえた構成で、まるで児童図書十社の会の出版社のようなメジャー感が漂います。

4色の帯付や見返しが3色なところを見ると、結構な予算で製作されたのでしょうか。
奥付に印刷・製本会社が明記されていなくて残念です。

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[内容]
継ぎはぎだらけの鞄の中に住んでいる、意地悪で気難し屋なかばんねこ。
ある日、あまりの暑さのため水筒の水を汲みに出かけたところ、森の中でまとまって捨てられている汚れた鞄を10個見つけました。
調べてみると、中から水が溢れ出す不思議な鞄で、かばんねこはそれらを修理して一儲けしようと考えたのですが・・・。

前作『かばんねこ』の続編で、土屋鞄製造所のランドセル購入者へのプレゼント絵本。

[備考]
2007年初版/32p/左開

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