ドクターナゴーの「EBM Diary」

  • ブログの紹介
    「求められることに対してお役に立てることが医師としてのやりがい」をモットーに、Evidence-based medicineのあれこれなどを綴っていきます。 2011年6月に東京・西国分寺で開業。開業してから今まさに進行していることも紹介できればと考えています。
  • 著者プロフィール
    名郷直樹(なごう なおき) 1961年名古屋生まれ。86年自治医科大学卒。95年、作手村国保診療所所長、2003年地域医療振興協会地域医療研究所地域医療研修センター長、東京北社会保険病院臨床研修センター長を経て、11年武蔵国分寺公園クリニックを開院。著書に『EBM実践ワークブック よりよい治療をめざして』、『人は死ぬ それでも医師にできること』、『治療をためらうあなたは案外正しい』など。

2012年08月

‘EBM’って検索してみた - 一般的なEBMの理解?

‘EBM’でググってみました。

トップと2つ目はWikipediaのEBMについての記述。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B9%E6%8B%A0%E3%81%AB%E5%9F%BA%E3%81%A5%E3%81%84%E3%81%9F%E5%8C%BB%E7%99%82

3つ目は化粧品会社。
4つ目が東京北社会保険病院の総合診療科、南郷先生のページ。(http://spell.umin.jp/index.htm
5つ目がなぜか総合商社。
6つ目が本家本元、雑誌‘Evidence-Based Medicine’(http://ebm.bmj.com/
7つ目が、コトバンクとか言うページ(http://kotobank.jp/word/EBM)で、一番上に知恵蔵のEBMの解説。
ちょっと引用してみる。


医療行為や薬剤が医学的にも経済的にも有効かどうかを厳しく評価し、有効と証明された医療。日本では厳密な証明なしに実施される医療行為が少なくない。欧米では個々の医療現場でも医師がEBMを重視している。EBMはデータによって、数ランクに分けられる。患者を二分し、薬と偽薬の効果を比較する比較臨床試験が多数あるのが最高ランクで、少数の比較臨床試験、比較しない臨床試験などの順で信頼度は低くなる。1992年、英国政府の支援で、各国の研究者が治療法ごとに世界中の論文をデータベース化し、EBMレベルを明らかにする作業が始められた。提唱者の医師、A.コクランの名を取ってコクラン共同計画と呼ばれている。


これは世の中によくある、いわゆるEBMの理解という感じだ。そういう定義を知ることは重要だ。しかし、これはEBMの説明としては間違っているとしか言いようがない。

これを書いた人は、おそらくSackettらの著書を読んでないだろうし、ましてや現場でEBMを実践している人ではない。朝日新聞記者○○なんて、誰が書いたかまで署名があるのは立派だが、署名をするくらいならもう少しよく取材をして、勉強して書くべきだった。


EBMは、5つのステップに沿った問題解決の手法である。単に臨床試験の結果に基づくというようなものではない。

臨床試験はエビデンスのほんの一部にしか過ぎない。さらに治療のエビデンスに限って言っても、最もバイアスが少ないのはランダム化比較試験であるが、どうもそれすらよく理解せずに書かれている。二重盲検が一番重要と勘違いしているようだ。偽薬、プラセボを使うことは重要ではあるが決定的ではない。これはEBMの初学者が最も勘違いしやすいところではあるが、重要なのはランダム化である。

多くのことは元のもとまでたどってみると、案外大きな間違いというものが多いのだろう。二次情報、三次情報は便利だが、伝言ゲームになってしまって、最初の定義とは全然違うものになっている可能性が高い。

原書を読め、これは学問をするにあたっての基本の基本なのだろう。他山の石としたい。






英語の壁を乗り越える   MindsとCMECジャーナルクラブ

『その場の1分、その日の5分』とか言っているが、英語のデータベースを紹介されて1分で勉強と言われても…」
そういう声は多いですし、至極まっとうな指摘と思います。そういう人には、まず日本語のガイドラインを探すことをお勧めしています。

その時の検索方法は、1つはgoogleなどで、疾患名ガイドラインという2単語で検索してみることです。もう一つは、Mindsという日本のガイドラインのデータベースです。

●Minds (厚生労働省委託事業 医療情報サービス Minds:マインズ)
http://minds.jcqhc.or.jp/n/medical_user_main.php?main_tab=1&menu_id=9#HOME_POS




ちなみにgoogleを‘高血圧’‘ガイドライン’で検索すると、以下のページが検索結果として一番上に表示されました。高血圧学会のガイドラインの要約のようです。なかなかのページだと思います。

●日本心臓財団ホームページ 高血圧治療ガイドライン(日本高血圧学会)
http://www.jhf.or.jp/a&s_info/guideline/kouketuatu.html


もう1つのMindsを検索すると、高血圧に関しては以下のデータベースが無料で閲覧できます。

●高血圧治療ガイドライン2009
http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0019/G0000180/0001




それともう1つ日本語のデータベースを紹介しましょう。これは私自身が編集長を務めているデータベースです。手前味噌かもしれませんが、結構いい線いってると思います。

最新の医学論文や、歴史的な医学論文をTVの形で提供するCMEC-TVと、1ページの論文要約で提供するCMECジャーナルクラブの2種類の形で紹介しています。前者は無料サービス、後者は年間購読料5250円で約100本の論文要約を日本語で読むことができます。ぜひ一度訪ねてみてください。

●CMEC-TV/CMECジャーナルクラブ
http://www.cmec.jp/cmec-tv/