『ボブ・ディラン : ロックの精霊』(岩波新書)なんて本を読んで、思い出したこと、考えたこと。ボブ・ディラン、学生時代に少し聴いたくらい。最近では全然聴かない。もっとも、歌自体を聴いたりしない日々がもう長いんだけど。
ボブ・ディランの“Like a Rolling Stone”は奇妙な歌だ。“How does it feel?”「どんな気がする?」と問い続ける。答えはない。
きれいなお嬢ちゃんが、落ちぶれ、帰る家もなく、転がる石のように生きている。そこへこの問いかけ。
「どんな気がする?」
宮沢賢治に「眼にて云う」という詩がある。息子が小学生の時、「雨ニモマケズ」を読みたいというので、持っていた文庫版の宮沢賢治詩集で、「雨ニモマケズ」を探していて、偶然見つけた詩。「雨ニモマケズ」のすぐ前に置かれていた。
瀕死の患者が、まわりの想像とは反対に、見えるのは「きれいな青ぞらとすきとほった風ばかり」という詩だ。
どちらもずっと気になっていた歌と詩だ。それが今になってなんとなくつながる。この「どんな気がする?」という問いに対する答えが、「きれいな青ぞらとすきとほった風ばかり」見えるということなのではないか。
落ちぶれた女性に貧乏人の気持ちがわかるかとか、死にゆく時間は恐怖に違いないという紋切り型の解釈に対し、落ちぶれた女性こそ、死にゆく人こそ、「きれいな青ぞらとすきとほった風ばかり」を見ているのではないか。
患者さんに聞いてみたい。熱が出ている患者さんに。咳が止まらない患者さんに。おなかが痛い患者さんに。
「どんな気がする?」
たぶん怒られるけど。
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Poetry Japan 宮沢賢治