〜この物語はフィクションです〜


快特3000平成33(2021)年3月6日(土)、ついにその日はやって来た。『大牟田〜福岡(天神)を55分』・・・西鉄天神大牟田線に、京浜急行ばりの『快速特急』が走る日である。この日、10年以上の歳月を掛けて続いてきた福岡市南区〜春日市〜大野城市に亘る連続立体交差化工事が完成し、天神大牟田線は新たに井尻〜雑餉隈間のJR立体交差付近から九州自動車道をくぐる大野城市の御笠川橋梁付近まで、連続した高架化が実現した。『快速特急』はこれを期に実施されたダイヤ改正の目玉商品だ。



永年の高架工事の完了により天神大牟田線は、大橋駅からの高架線を降りた那珂川橋梁から井尻駅を過ぎ、JR立体交差に至るまでの区間を除けば、福岡(天神)駅から下大利駅を過ぎる地点まで、ほぼ踏切のない軌条が実現。言い換えれば二日市以北の大半が高架化された事になる。工事に際しては一部仮線を敷設して行われたものの、完成した高架線は全て元の線路敷をトレースしており、キロ程は以前の全線74.9kmから変わっていない。



さて天神大牟田線の特急は、この工事が始まった平成23(2011)年の春まで、もともと全線を所要58分で結んでいた。工事中は概ね61分程度となっていたが、もちろんこれは徐行区間が生じたためで、全線の最高速度110km/hは変更なく運行。今回の高架化完成で、当初は特急の58分運行復帰のみが予定されていた。だがこれを機に、以前から唱えられてきた特急の「速達便」設定の機運が高まったのである。


〜念のため…この物語はフィクションです〜


「以前から唱えられてきた」というのは、「かつての停車駅に戻せば、もっと速く走れる」というシンプルな話。名車2000形の活躍した'70年代から8000形の登場する'90年代初めまで、西鉄特急の停車駅は永らく新栄町・柳川・久留米・二日市の途中4駅だけで、大善寺や薬院にはラッシュ時の停車のみ。その後、急行の再編や久留米市内の高架化によって大善寺・花畑が終日特急停車駅となり、以前はラッシュ時の上り特急だけが停車していた薬院にも終日、上下の特急が停車するようになっていた。



既に大善寺や花畑からの特急利用者も定着し、薬院は地下鉄七隈線との接続からも全列車の停車が必須という情勢ではあった。こうした中でも特急停車駅を元通りに減らした「速達便」を要望する声が高まったのには、二つの要因がある。一つは熊本市の政令指定都市昇格。商圏として活性化した熊本市域から福岡へのビジネス需要は増加。もちろん新幹線のシェアは揺るぎないものだが、「多少の時間は掛かってもリーズナブルに福岡へ、天神へ出たい」ニーズも相変わらず高い。加えて新幹線の恩恵に与り難い玉名・長洲・荒尾といった鹿児島本線沿線からも、「大牟田乗り換えでさらにスピーディーに天神へ行きたい」という欲求は常にあった。



もう一つは西鉄グループによる、天神地区商圏拡大の動きである。2011年、新幹線全線開業に伴うJR博多シティのオープンは、予想以上の脅威となって天神地区の商戦に影響を与えた。永らく福岡の中心街であり、80年以上に亘って西鉄グループが手塩にかけてきた天神地区に、商圏として明らかな衰退が起きれば大変な事であった。この危機感から2014年、まず西鉄は、永らく棚上げになっていた貝塚線と地下鉄箱崎線の相互直通を、なんと自ら福岡市に働きかけ実現するのである。



千早写真は2010年の撮影で、ホーム延伸前の千早駅から捉えた当時僅か2連で運用中の600形。これに対して箱崎線〜貝塚線直通列車は20m車6連。地下鉄線内は西新始発とし、貝塚線内は快速扱いで千早・西鉄香椎のみに停車、香椎花園前で折り返すようになった。ホームの延伸はこの3駅だけで、千早・西鉄香椎の両駅は高架化の際、地下鉄乗入れに備えて6両までのホーム延伸可能な設計となっていた。当初の直通は毎時2本、交通局の1000系・2000系による片乗り入れ形態でスタートしたが、2016年に西鉄は20m級4ドア6連(3連×2本に分割可)の新車9000形を新製して相互乗り入れが実現。自社線内で使用していた600形も全てこれに置き換えた。



こうした動きにより、宗像・北九州方面から天神方面へは、千早乗り換えで博多経由よりも10分程度早く到達出来るようになり、通勤客・買物客は大いに歓迎。その結果2017年、直通列車は利用増により毎時3本に増発、貝塚線内の利用も増加し、「かしいかえん」入場者数も前年比22%増。さらに天神地区百貨店の売上も明らかな伸びを見せ始めた。こうして千早でのJR乗換え需要を見据えた地下鉄箱崎線〜西鉄貝塚線直通列車は、驚くべき事にスタートから僅か数年で、天神〜宗像・北九州方面のメインルートに成長したのである。


〜しつこいようですが、この物語はフィクションです〜


交通面での積極策が、歴史上必ずしも好結果を産まなかった中、貝塚線地下鉄直通の試みが明らかな好結果をもたらした事は、西鉄や関係自治体を前向きにするに充分だった。貝塚線の事例は「新たなルート確立」との側面もあるが、「時間短縮効果」という大きな側面がある。2008年の天神大牟田線110km/h化は、当時の西鉄グループとしては英断だったし、その後新幹線開業後には、速度ダウンとなったJR在来線からの利用者流入という結果ももたらした。こうした「少しでも速く」という努力を、今度は大幅に高架化されたタイミングでも… というのは、自然な流れでもあった。それは天神地区の求心力強化に少なからず繋がるという判断でもある。



さて天神大牟田線『快速特急』は、両ターミナルからデータイム毎時1本、10時台〜16時台発車のみ設定。福岡(天神)を毎時00分、大牟田を毎時52分発車の特急スジを格上げしたものとなり、つまり『特急』とは交互になっている。停車駅は、新栄町・柳川・久留米・二日市・薬院。構想段階でのシミュレーションでは、大善寺・花畑・薬院を通過させれば最高速度110km/hのまま所要55分が実現出来ると判っていた。大善寺・花畑は最善の各停接続を実施して通過する事としたが、ここで問題となったのが薬院。検討を重ねたものの、特急4駅停車時代とは違って地下鉄七隈線の接続する現在は、やはり終日停めない訳には行かない。



そこで、二日市以北の最高速度120km/h化が検討される事となった。『快速特急』に使用予定の車両(8000形・3000形)は問題なく対応できる。検討の結果、踏切のある地上部分を含む二日市以北全線としては、対応や許認可にある程度の時間を要する事が判った。但しこの区間で、平成33(2021)年3月以降も地上区間として残る部分は僅かである事から、高架区間のみを120km/h制限、地上区間を従来通り110km/h制限としたシミュレーションが行われた。その結果、発車時刻ベースで福岡(天神)〜二日市間10分、二日市〜久留米間17分、久留米〜柳川間14分、柳川〜大牟田間14分の運行が可能という結果となった。



快特8000こうして停車駅を絞っただけでなく、踏切のない二日市以北の高架区間のみ120km/hにスピードアップする形で『快速特急』は誕生した。フラッグシップの8000形は2012年から4年間を掛けたリニューアル工事を完了しており、外観上大きな変化はないものの、車体更新や先頭車のボルスタレス台車への交換を初め、座席の取り替え、貫通扉の設置、そして車内の無線LAN装備が実現している。朝夕の運用の関係から、10時台と16時台の『快速特急』には3000形7連が使用され、こちらも2013年には全車の車内無線LAN装備を終えている。

〜かなりしつこいようですが、この物語はフィクションです。実際の人物、団体、事件等は一切関係ありません。〜