P1030383西鉄天神大牟田線が、九州鉄道として福岡〜久留米間を開業したのは大正13('24)年。その沿線には現在も、開業と前後して建てられた古い変電所建築が点在している。まずこの写真は春日原変電所で、恐らく開業時には既に建てられていたものと想像される。春日原駅南東側の線路沿いにあり、周辺は住宅地やショッピングセンターで埋め尽くされているが、開業時にはただの広大な野原であったという。撮影したのは日も傾いた夕刻で、手前の列車は春日原駅南側を下っていく8000形普通。



P1030385九州鉄道時代は当初、第一変電所と呼ばれていた模様。既に春日原付近では、上り側の沿線に新たな変電所が稼働しており、現在この旧来の変電所建屋には、観察する限り配線類が建物本体に結線されていない。既に建物内には主要な変電施設を存置していないと想像される。
こうした大型切妻屋根で鉄筋コンクリートの変電所としては、かつての味坂変電所(旧第二変電所・味坂駅隣地の宝満川堤防沿い)も同様であったが、こちらは既に建屋が解体され現存しない。余談ながら、かつての宮地岳線(現・貝塚線)香椎変電所も同線電化時の古い建物(現存せず)で、'80年代にはこの春日原変電所を中継点として、味坂変電所から香椎変電所を制御するシステムがあると西鉄広報誌上で紹介されていた記憶がある。当時は中継システムのために、屋根上に鉄塔(アンテナ)が建てられていた。



こうした創業期の春日原変電所建屋は、もちろん現在「保存されている」訳ではなく、「現存している」だけである。天神大牟田線の雑餉隈〜下大利間は現在、高架化工事がスタートしたばかり。春日原駅一帯については直上高架方式となる予定なので、高架化によってルートが変わったり仮線を設けたりという事は考えられない。では当分安泰かといえば、そう単純でもないだろう。工事中は資材置き場などのスペースも要するから、そうした場所を捻出するために解体撤去されないとも限らない。ワシ的には特急で通過する度に、いつも目を凝らして注視しているところだ。



P1030391さて、こちらは高宮変電所。高架の直下ではないものの、沿道沿いにあるために電車の車窓からは見えにくく存在に気付かない人が多いだろう。こちらもご覧の通り、明らかに昭和初期の鉄筋コンクリート建築である。しかし形態は切妻でなく、ご覧のような独特なスタイル。一見、平屋根(陸屋根)に見えるが、上から見下ろしてみると内側に勾配屋根があるのかも知れない。



P1030394こうしたスタイルの変電所は、他に犬塚変電所と渡瀬変電所(いずれも現存)にも見られ、九州鉄道による独特なデザインと言えるだろう。この写真は丸窓だった部分を埋めたと思しき痕跡。ワシの大学時代まで、犬塚変電所には九州鉄道社紋を模った丸窓が残っていた。残念ながら現在は塞がれているが、この痕跡も恐らく同様に「社紋窓」であった可能性がある。
この高宮変電所は当初、第五変電所と呼ばれていたらしい。そこから推察すると、恐らく開業時でなくその後の電源増強のために建設されたものと想像する。現在のところ、ご覧の通り美しい状態を維持しているが、平成23年度の西鉄事業計画では残念ながら、この変電所の建替えが盛り込まれている。



電鉄の変電所というものは、昨今ではテロの対象となる可能性からか、昔と違ってあくまで目立たない建物とする傾向が強い。逆にこうした電鉄創業時の歴史的建築たる変電所は、当時の電鉄が放つ近代的あるいは威厳溢れるイメージの象徴だったのだから、目立つように造られている。そうした意味でも建替えが進んでいるのかも知れないのだが、ご覧の通りこれらは堂々たる近代建築である。ワシ的には、ご用済みになった後も多少の耐震補強を施して、公民館や小規模な図書館など、どうか地域のコミュニティーに活かされる事を期待したい。