第3次世界大戦、そして世界大金融恐慌が近い。そもそも何故戦争が起こるのか?また金融崩壊は何故起こるのか?数々の資料からそのメカニズムを探ってみよう。今回は「マネー」を取り上げる。

「お金の問題点」を説明するために安部芳裕著「金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った」で彼が創作した寓話を紹介する(同書44頁)。非常によく出来た寓話で、現在の金融システムの致命的な欠点「利子」が生み出す不幸が大変分かり易いよう創られている。

尚、タイトルの「ある平和な村を襲ったお金の悲劇」は管理人が勝手につけさせて頂いたもの。同書本文では「ある寓話」となっている。また、画像は「金融崩壊後の世界」(文芸社2008年、安部芳裕、佐々木重人共著)より拝借した。

「ある平和な村を襲ったお金の悲劇」 引用開始→
 
あるところに、自給自足をしていて、足りないものは物々交換で補っている100人ほどの小さな農村がありました。

Financial Tragedy of a Village 01a


そこへ、どこからともなく見知らぬ男が現れます。男は村中をブラブラしながら、しばらく村人たちの生活を観察していました。

Financial Tragedy of a Village 02a

素朴で疑うことを知らない村人たちは、不審な男へも笑顔で挨拶し、決して豊かとは言えない生活にもかかわらず、家の中に招いて食事をご馳走したり、寝場所を提供したりしてあげたりしました。

Financial Tragedy of a Village 02b

何日か過ぎて、男は村人を集めてこう話し出しました。
 
「皆さんは何て原始的な生活をしているのでしょう。私が良いモノを教えてあげましょう。」


そう言って、あるモノをみんなに配りはじめました。

Financial Tragedy of a Village 03a

「これはお金というものです。これを使えば交換がスムーズに行えますよ」
 
男は、野菜作りが得意な人には八百屋を、狩りが得意な人には肉屋を、釣りが得意な人には魚屋を、料理が得意な人にはレストランを、お菓子作りが好きな人にはケーキ屋を、花が好きな人には花屋を、手先の器用な人には大工を、きれい好きな人には掃除屋をと、各人がお店を開くことを勧めました。

Financial Tragedy of a Village 03b

それまでは自分の生活に必要なモノを各人がバラバラに作ったり調達したりしていたのですが、男が置いていったお金を使って交換をすることにより、それぞれが自分の得意なことや好きなことを活かして生活ができるようになりました。


また、作業分担をすることにより、村人同士のつながりも密接になり、静かだった村に活気が出てきました。

Financial Tragedy of a Village 04a

1年が過ぎて、再び男が現れ、村人を集めてこう言いました。
 
「どうです? お金があると便利でしょ?申し遅れましたが、実は私、銀行家です。この前、皆さんに10万円ずつお貸ししました。来年、また来ますので、それまでに利子をつけて11万円を返してください。もし返していただけない場合は、お店の権利をいただくことになります」

お金のある生活にすっかり慣れてしまった村人たちは、昔のような自給自足の生活に戻る気はありません。お金を貸してくれた銀行家にお礼を支払うのは当然と、利子をつけて返済することを了承しました。

Financial Tragedy of a Village 04b

再び日常生活に戻り、いつも通りに商売に励む日々が続きました。

しかし、なんとなく手元のお金が気になります。すでに11万円持っている人は、お金を減らさないようできるだけ使わないことにしました。また、11万円持っていない人は、足りない分を何とか稼ごうと、もっと儲かる方法はないかとアイデアを捻りはじめました。


返済日が近づくにつれ、11万円持っていない人は焦り始めます。


「どうしよう。このままだとお店を没収されてしまう……」


仕事の目的が、これまでのように人々が必要とするものを提供することではなく、お金を稼ぐことに変わっていきました。


そして、相手が必要としているかどうかなんて関係なく、とにかく売ってお金を儲けることを目指すようになります。


なんとなく村人同士の関係もギクシャクしてきました。

Financial Tragedy of a Village 05a

1年が過ぎ、銀行家は再び村へ戻ってきました。
 
「さぁ、皆さん、約束どおり、利子をつけてお金を返してください」
 
10万円を100人に貸したので、村にあるお金は1000万円です。しかし、銀行家へ返すお金の総額は1100万円。当然、返済できない人が出てきます。結局、村人の3分の1が返済できませんでした。村人の中に「勝ち組」と 「負け組」が誕生します。

Financial Tragedy of a Village 05b

銀行家は「負け組」の人たちに向かってこう言います。
 
「またお金を貸してあげてもいいのですが、皆さんはどうも商売が上手ではないようです。リスクが高いので、今度は利子を20%にして12万円を返してもらいます。ただし、今度こそ返していただけない場合は、お店の権利をもらいますよ」
 
銀行家は返済の誓約を得て、再び村人にお金を貸し付けていきました。
 
「では、また1年後に」
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それでは寓話を振り返ってみましょう。

「負け組」は圧倒的に不利な状態に置かれます。お金を必要としているところにはさらに高い利子がつきます。しかし、もともと返済能力の低い人に、さらに高いハードルを設けるわけですから、再び返済不能に陥る可能性が当然高くなります。

「負け組」と呼ばれる人は、自分の存在価値を見失ったり、社会や人間への不信感を募らせたりすることになるでしょう。それは、モラルの喪失や、犯罪や自殺の原因ともなります。最近「誰でもいいから殺したかった」と無辜の人々を道連れにする凶悪な犯行が目立ちます。もちろん本人の責任が一番大きいのは確かですが、その人たちを追い詰めた社会状況を変えない限り、このような凶行は今後も増え続けるのではないでしょうか。


社会の中に経済的弱者が出れば、通常は社会保障で救済します。つまり、経済的弱者が増えるほど、まじめに働く納税者の負担が増えることになります。


寓話の中の「勝ち組」を現実社会に当てはめれば資本家と言ってもいいでしょう。資本家には有利な選択肢があります。その地域に貧しい人が増えて売り上げが伸びなくなれば、さらなる利益を求めて移動することができます。また、人件費を安く抑えるために、生産拠点を移すことも自由です。

しかし、住民はそれに伴って移動するというわけにはいきません。資本家が地域の外に出れば、その地域からお金や雇用がなくなって、さらに貧しい状態に置かれます。

ただし、この寓話での本当の「勝ち組」は、実は資本家ではありません。誰だか分かりますか?

そう。銀行家です。銀行家が何をしたかと言えば、ただお金を印刷して配っただけ。それだけで村人の労働の成果である元本+利子を受け取れるし、破産した人からもお店の権利をもらえました。実においしい商売です。

→引用終わり

ある村とは言うまでも無く、皆さんの住むこの世界のこと。どうだろうか?家のローンや、商売の借金など、その返済に追われている人が大半ではないだろうか?

次回はさらに深くマネーの問題を掘り下げて行きたい。