2020年09月11日

黒船襲来? 田沢ルールが撤廃

 日本プロ野球では「田沢ルール」の撤廃を決定、これに代わるルールも制定しないことが決まっています。これにより、秋のドラフトで34歳の田澤純一の指名が可能になりました。

 田澤純一の名前は見ての通り「澤」の漢字ですが、田沢ルールは多くの場合「沢」の漢字を用いますので、本記事でもそれに従います。

◇ 復習・田沢ルールって何?

 2008年秋のドラフトの目玉だった田澤、しかし日本球団の指名の拒否とアメリカ挑戦を表明しました。もともと日米間では、互いのドラフト候補選手を直接獲得しないという一種の紳士協定のようなものがありましたが、田澤は長年の慣習を破ることを堂々と表明したのです。

 そこでNPBでは紳士協定ではなく、逸材の海外流出を極力阻止する手段を編み出しました。「日本のドラフトを拒否して海外の球団に入団した選手は、日本に帰国した後も大卒・社会人は2年間、高卒選手は3年間日本球団と契約できない」と明文化したのです。これを田沢ルールと呼びます。

 その後2019年まで何の問題もなく田澤はアメリカでプレーしましたが、コロナの影響で2020年は困りました。メジャー昇格がかなわず、マイナーリーグは全試合の中止が発表されてしまい、アメリカでプレーする場が失われたのです。しかし田沢ルールにより日本球団との契約は不可能で、仕方なくBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズと契約することになりました。

◇ 時代遅れも甚だしい鎖国ルールだ

 当ブログの常連さんなら私がメジャーリーグを嫌いなのはご存知と思います。そして日本からアメリカに行った選手は、大谷翔平以外はほとんど気にもかけません。WBCの時に日本代表として参加してくれる選手ならまだしも、それすらしない選手は(色々事情があるのはもちろん承知の上ですが)個人的に応援する気になれないのです。

 しかし田澤については、応援しているとまでは言いませんが、何となく気にかけてしまう選手でした。田澤が活躍しなければ「それ見たことか、だから日本でプレーすればよかったのに」と「背広組」のジーサンが大喜びしたことでしょう。

 2013年はレッドソックスで、チームメートの上原浩治が抑え、田澤がセットアッパーとしてワールドシリーズ(この呼び方も嫌い)制覇に貢献しました。いまだに外国人枠を設けてレベルの低い日本人を過剰に保護するNPBでプレーしなくて、本当に良かった選手です。

 「鳴かぬなら 縛ってしまえ ほととぎす」とでも言いたげな、鎖国根性全開の田沢ルール。ルールがあるから仕方なしに、しぶしぶ日本でプレーする姿を見てファンは喜ぶのでしょうか?

◇ なぜNPBは「イニエスタ」を呼べないのか

 日本プロ野球とメジャーリーグの実力差と、Jリーグと欧州5大リーグの実力差を比較すれば、間違いなく後者のほうが実力差は大きいでしょう。

 しかしJリーグには、世界トッププレーヤーとも言えるアンドレス・イニエスタがやって来ました。全盛期を過ぎているとはいえ、超一流のテクニックは健在。これに対し日本プロ野球は、相変わらずメジャーで控えに甘んじている選手か3Aの選手か、どちらかが大半です。世界トッププレーヤーは、日本など見向きもしません。一体なぜでしょうか?

 前述のイニエスタを呼ぶことができたのは「DAZNマネー」の影響が大きいと言われていますが、日本プロ野球は資金力でアメリカに太刀打ちできません。

 今年の日本の最高年俸は菅野智之(巨人)の6億5000万円(推定、以下同じ)ですが、メジャーはマイク・トラウト(エンゼルス)の約41億円。日本の一軍の最低年俸は1600万円ですが、メジャーは約6100万円。埋めようもない圧倒的な格差があります。余談ですが、イニエスタは約33億円です。トッププレーヤーを呼ぶならこれくらいは払わないといけません。

 メジャーリーグは世界のトッププレーヤーが集まりますが、日本は外国人枠で不当に日本人を保護する「鎖国リーグ」。メジャーは天然芝が主流ですが日本は人工芝が主流・・・などなど、数え上げればきりがありません。

 日本とアメリカに圧倒的な力の差があった頃は、外国人枠も仕方のないルールだったことでしょう。しかし今は事情が全く異なります。ルールでがんじがらめに縛り付けないと選手を引き留めることができないことが問題なのです。田沢ルールの撤廃は時代の流れであり、当然だと思います。

この記事へのコメント
ご無沙汰しておりました!

田沢ルール撤廃に関しては思うところがありまして、

今季のドラフトが仮に話題に満ちていて、評価する機会も十分に取れて、実力者とスター候補揃いの超豊作年だったとして、
果たしてそのような状況下であっても、田沢ルールは撤廃されたでしょうか...?
田澤が米国で結果を残して契約が続いていたとして、田沢ルールは撤廃されたでしょうか...?

プロ野球界として、コロナ禍の影響で話題性に欠け、ドラフト候補も上位候補の層に厚みがない。
運良く田澤が帰国して話題を作ってくれた。だからルール撤廃に動くことができた、という印象が拭えません。

本当にやるべきなら、田澤がアメリカにいる間にNPBが誰に言われるわけでもなくNPB独自の判断で撤廃すべきでした。あまりに撤廃の流れが後手に回りすぎて格好悪い。

田澤がドラフト候補になることで、本来指名されるはずだった高校生-社会人の選手の一部は指名順位が下がる、あるいは漏れる可能性すらあります。

プロ志望届の提出が解禁された前の決定なら進路選択上有意義でしたが、解禁してしばらく経ってからの「田澤指名OK」というのはあまりに配慮に欠けます。

田澤ルールに該当し渡米選手のみで別枠のドラフトを実施すべきだと考えていますし、なんなら特例で自由契約選手の獲得競争と同じにしてドラフトを経由させる必要はないとすら考えるところです。

ただただ、田沢ルールを理解したうえで、日本にプレーするステージを移した田澤純一の決断だけが素晴らしかったと思います。
Posted by フラワー@BOS研究室 at 2020年09月11日 23:08
>フラワー@BOS研究室さん

お久しぶりです。コメントありがとうございます。

推測の域を出ませんが、今回のような明確なきっかけがない限り、書いていただいたように田沢ルールが撤廃されることはなかったと思います。

田沢ルール制定も撤廃も、どちらも各球団の利益・メンツによるものですからねえ。お飾りとも言われるコミッショナーを始め、野球界全体を統括する組織ができない限りはこの点は変わらないかもしれません。

個人的にはおっしゃるように、一度海外球団と契約した選手についてはドラフトを経由しなくてもいいと思っていますけど、これも12球団の利害を考えると難しいところかなと思います。
Posted by あいけい at 2020年09月13日 19:50