2024年09月25日

エスコンフィールド 独り歩きする経済効果

以前の記事」にも書きましたが、人口56,595人(2024年8月時点)の北広島市は毎年、一般会計の1割を超える巨額の支出をエスコンフィールドに対して行っています。はたしてその効果はあるのでしょうか?

◇ 経済効果8400億円の謎

 長すぎるので肩書きは省略しますが、ファイターズでエリア開発などを担当する小川太郎氏は、「準備段階の2018年から開業10年目まで、15年間の経済効果は北広島市と周辺地域を合わせて8400億円。そこには定住人口や交流人口の増加、事業機会増加などの効果が含まれます」と高らかに宣言しています。

 残念ながら「インタビュー記事」では経済効果の算出根拠が明確ではないので、ここで少し突っついてみることにしましょう。

 Fビレッジの建設作業員が北広島市の飲食店で昼食をとれば、それも経済効果に含まれるでしょう。これを考えてもきりがないので、ひとまず開業前のことは置いておいて、開業後はどうなのでしょうか?

 北広島市内のホテルは皆無に等しい状況なので、宿泊施設関連の経済効果は微々たるものでしょう。そしてエスコンフィールドはごく一部を除いて飲食物の持ち込みは禁止なので、北広島市のコンビニやスーパーで買い物をしてそのままエスコンへ・・・というわけにもいきません。

 首をひねった方も多いと思いますが、何のことはありません。周辺地域を合わせて8400億円」と、曖昧な文言が追加されていますね。札幌市・千歳市・恵庭市などでホテルを予約する方が多く、そちらにお金を落とす観光客はかなり多いことが推測されます。

◇ 見込めない人口増加

 根拠の不明瞭な「周辺地域を合わせて8400億円」の中には、定住人口の増加が含まれていると小川氏は語ります。当ブログではさんざん書いてきましたが、改めて現実を書くことにしましょう。

2007年 61,174人 ピーク時の人口
2016年 59,205人 ボールパーク誘致を表明
2020年 58,171人 エスコンフィールド着工
2024年 56,595人 8月時点の人口

 少なくとも現時点で、エスコンフィールド1個だけでは、人口増加をもたらす効果がないことは明らかですね。もちろんエスコンがなければもっと人口が減っていた可能性はありますが、推測でしか語れない領域なので、ここで深入りすることはやめておきます。

 北広島市と同じく札幌市のベッドタウンとなっている南幌(なんぽろ)町も人口減に苦しんでいましたが、2022年から再び上昇に転じ始め、最近2年で4%も人口が増加しています。さまざまな「助成金制度」により移住が加速しており、現在全国から注目を集めているのです。

 エスコンフィールドに対して北広島市はすでに3ケタ億円もの巨額の資金を投入し、人口増をエサに誘致を強行しましたが、効果は全く見られません。ボールパーク1個より、子育て世代を地道に支援するほうがはるかに効果があるわけですね。北広島市はこの後も毎年巨額の税金をボールパークに吸い取られていくという悪魔のような構造です。

◇ 曖昧な経済効果の数字

 2023年に道銀地域総合研究所が発表したデータによると、Fビレッジ開業による北広島市への経済効果は年間211億円と試算しています。前述の「15年間で8400億円」とはずいぶん開きがあります。

 一方で、2024年に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが発表したデータによれば、Fビレッジによる北広島市への経済効果は年間523億円とのことでした。211億円とはずいぶん差がありますね。

 結局のところ、経済効果という指標自体があいまいで、かつ根拠も不明瞭であることがうかがえます。大阪万博(笑)の経済効果と一緒です。

「経済効果ウン億円!」というデータを出して、これを招致することがいかにお得であるかということをもっともらしく説明するための、水戸黄門様の印籠のようなものに過ぎません。

 8400億円という数字を聞くと「招致しなきゃ損」という気にさせられます。投資詐欺なんかは、そういう人間の心理の弱みに巧妙に付け込んでいるのです。市の一般会計の1割超もの巨額な支出を毎年続けたり、税の優遇措置を続けたりすることが得策なのかどうかは、もっと冷静に判断しなくてはなりません。