ついに宿願叶って、ニューヨークに家族旅行に行ってまいりましたヾ(=^▽^=)ノ
色々な諸条件を考えると、今しかないだろうということでこの春から計画していたもので、その主たる目的は、そう、ブロードウェイでのミュージカル観劇です( ̄ー ̄)ニヤリッ

ということで旅行記は別途アップするとして、まずは観劇した3作品を順次紹介していきたいと思います。

〇2016年8月18日(木) ソワレ FUN HOME  於;CIRCLE IN THE SQUARE
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とある方のブログを見て知り、CDを買ってみたところ楽曲が実に素晴らしく、youtubeのビデオクリップでもその片鱗が覗えるところ。おまけに2015年度のトニー賞作品賞受賞作品ということで、今回絶対に見逃せない作品でした。
オリジナルキャストも好みの感じでしたが、ブロードウェイでの上演開始から1年以上たっていますし、キャスト変更も気になるところです。
アカボン家がブロードウェイで見る最初の作品、期待どおりのクォリティを示してくれるでしょうか。


DSC05954〇ストーリー
お話は、アリソン・ベクデルという実在のアメリカの女性漫画家の自伝的な漫画、FUN HOMEをベースとするもの。
自身のレズビアンとしての目覚めと、葬儀屋を営む家族(FUNはFuneralの略)、とりわけゲイである父親との交流を、大人になったアリソンが回想しつつ、それを漫画に描いている、という設定で、子供時代のアリソン、大学時代のアリソンが入れ替わり、立ち替わり登場し、それについて現在のアリソン(出ずっぱり)が、時折コメントしたり、説明したり、日記を読み上げたりする、という構成です。あちらでは、若きレズビアンを主人公とする最初のブロードウェイ・ミュージカルとされています^^;

アリソンの父親、Bruceはアリソンが大学に在学中にトラックに轢かれて死んでしまう(アリソンは自殺と考えている)のですが、アリソンは、後々まで、それが自身がレズビアンであることをカミングアウトしたことと関係しているのでないかと思い悩んで生きてきており、自身も人生に行き詰まりを感じていた時、そのことと正面から向き合うべく、記憶の糸をたどり始めます。

幼いころの父親との幸せな記憶、それも実は危ういバランスの上に成り立っていたこと、父親が、家を美術館のように磨き上げることで、漸く精神の均衡を保っていたこと、そのような表面のみを取り繕った生活を続ける中で、いつしか父親の心は蝕まれ、忍び寄る老いへの不安と相俟って、次第に自死へと追い込まれていったことなど、父の苦しみ、真の姿を理解することで、アリソンの中で、父へのわだかまりが解消していきます。

基本、悲しい、しんみりとしたお話なのですが、大学時代のアリソン(medium Alison)のレズビアン初体験時のエピソードなど、そこかしこにironicでsophisticatedな笑いがちりばめられており、向こうではa family tragicomicと呼ばれているようです。

〇キャスト
DSC05680Beth Malone(Alison Bechdel),Michael Cerveris(Bruce Bechdel),Judy Khun(Helen Bechdel),Gabriella Pizzolo(small Alison),Emily Skeggs(medium Alison)etc.

お父さん役のマイケル・セリヴェリスは、ソンドハイムのスイーニー・トッドでのタイトル・ロールや同じくソンドハイムのアサシンのブース役(トニー賞受賞)でも有名な名優、母親役のジュディ・クーンも、ソンドハイムのパッションのフォスカ役、10周年レミゼのコゼット役などで知られた女優、大人アリソンのベス・マローンと学生アリソンのエミリー・スケッグスとともに、スモール・アリソンを除く主要4人はオリジナ・ルキャスト(=CDキャスト)です(後で良く見たら、スモール・アリソンとクリスチャン・ベクデル以外はオリキャスでした。二人は大きくなりすぎちゃったんでしょうね^^;)。特にマイケル・セリヴェリスは、今回この役で、自身2回目のトニー賞受賞ということで、願ったりかなったりの布陣でした。

〇感想
文句なしに素晴らしかったです。
まず、劇場ですが、その名の通り長方形の舞台を囲む変形の楕円状の劇場(片側の円弧部分は舞台裏につながっており、座席のしつらえは上部のみ、もう片側に演奏者が配置)で、2階席はなく、キャパシティは776人と、比較的小ぶりな劇場です。
しかし、非常に舞台との距離が近く、マイクの音量も絞っているせいか、最初はマイクなしの生声で演じているのかと思ったほどです。
これだけのクォリティの作品ですから、もっと大きな劇場に引っ越しても十分客は呼べるだろうにと思いましたが、作品の内容や規模からして、こういった親密な雰囲気を保持するには最適の環境かと思います。

キャストについても、期待どおりでした。マイケル・セリヴェリスは、映像で見るとおり、張りのある良く通る声で、ブルースの複雑な内面を見事に歌い上げていました。歌だけでなく、ラストの鬼気迫る演技には、思わず涙してしまったほどで、さすがの一言です。
ジュディ・クーンも、前半は毅然として家庭を維持しようとする姿、また、最後は力尽き打ちひしがれるヘレン役を見事に演じ切っていました。
アリソン役の3人も、スモール・アリソンのガブリエラが、オリジナルのSydney Lucasに比べて少し力強さに欠けるかなと感じたことを除けば、いずれも素晴らしく、安定したパフォーマンスを見せてくれました。皆さん、声が良いです。
何せ、34面が客席に向いていますので、あっちを向いたり、こっちを向いたりで演技上も難易度が高いと思うのですが、ごく自然に演じていました。DSC05957
ただ、歌詞カードに出ていない科白部分はさすがに聞き取りが難しく、終演後、売店で脚本を買いなおしました^^; たぶん、これはここでしか手に入らないものかと思いいます( ̄ー ̄)ニヤリッ
(後記;Samuel Frenchという出版元がネット販売しているようですが、shippingしているかどうかは分かりません)

脚本の出来も良いのですが、最初にも書きましたが、楽曲の出来はさらに素晴らしく、全曲耳に残る美しいメロディに満ちています。
その中でも、スモールアリソンのRing of the keys,ミディアムアリソンのChanging my major,アリソンのMaps,Telephon wireなどは名曲ですし、カンパニーで輪唱する冒頭のIt all comes back(スモールアリソンがリードを取ります)及びフィナーレのFlying awayも感動しました。

どこかの批評にもありましたが、どことなくソンドハイムの影響も見て取れ、例えば"I leapt out the closet......"のシーンでブルースが口ずさむbum bum bumという歌詞の断片や、composition,dimensionという表現はSunday in the park with Georgeへの、Helenの絶唱、Days and daysはMerrily we roll alongのNot a day goes byへのオマージュっぽい感じがします。
実際、ブルースの芸術家肌なところや、社会的に適合できなかったところなどは、Sunday in the park with Georgeのジョージ(・スーラ)を彷彿とさせます。
DSC05682ソンドハイムもこの作品を観劇したとどこかに書いてあったような…
(左の写真はPFLAGというLGBTの支援団体がFUN HOMEの500回上演を記念して劇場内にインストールした”Wall of Keys”)全米各地の支援団体のメンバーの写真、と思われるものが鍵の形の中に掲示されています)

というわけで、トニー賞を作品賞を含め5部門受賞したのも納得の作品でした。ブロードウェイでは9月10日まで、10月からはキャストを全面的に新たにしてナショナルツアーが開始されるようです。
内容的に万人受けするものではないので、日本で上演されることは、少なくとも近い将来はないでしょうし、仮にされてもこれだけのクォリティでは難しいでしょうから、間に合って本当に良かったと思います。最初はパパの演目選択に疑義を持っていた相方やこじゃるも大満足のブロードウェイデビューとなりましたv( ̄∇ ̄)v

評価;☆☆☆☆☆