1: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 22:08:32.63 ID:HDVTnWU5M.net




7: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 22:16:34.97 ID:HDVTnWU5M.net

 
――――


スタスタ


ことり「……ねえ、海未ちゃん?」

海未「はい?」

ことり「どうして、元に戻れたの……? いつの間に、私の匂いを嗅いでたの? 別に抱きついたりとかも、してなかったのに……」

海未「別にその必要はありません。私はあなたや穂乃果の匂いを嗅ぐのに、いちいち抱きついたりなどしてませんでしたから」

海未「それに『いつの間に』というのなら、『いつでも』です。私はあなたや穂乃果に気づかれないように、『いつでも』匂いを、嗅ぎ続けてきたんですから」

ことり「……そ、そっか。分からないわけだね」

海未「……ごめんなさい、ことり。今回の件で、あなたには特に、たくさんの迷惑をかけてしまいました」

海未「私、どうやってあなたに償えばいいか……」

ことり「そ、そんな、私の方こそほのキチになってた時は、海未ちゃんにすっごく迷惑かけちゃって……」

海未「……ふっ、そうですね。あなたには随分、苦労させられましたよ」

ことり「ごめん……」

海未「ですが……。もうこれで本当に、終わりです。スイッチはもう、誰の手にも渡らぬよう……。今度こそ真姫に、処分してもらいましょう」

ことり「そうだね……。でも、海未ちゃん」

海未「えっ?」

ことり「結局レベル5は、嗅げなかったけど……。これで、よかったの?」 

海未「……当たり前じゃないですか。これで、よかったんです」

ことり「本当は嗅いでみたかったとか、思ったりしてない?」

海未「そんなこと……」

ことり「……」

海未「……ちょ、ちょっとだけしか、ありませんよ」

ことり「やっぱり……」

海未「うぅ、変態で、ごめんなさい……」

ことり「……ふふっ」


ことり(『気持ちの変化』、か……。海未ちゃんは、自分を変態だと認めることで、ほのキチから戻ったんだね)
 


10: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 22:21:44.18 ID:HDVTnWU5M.net

  
穂乃果「ん、ぅ……?」

海未「……あっ、穂乃果、起きましたか?」

穂乃果「……あ、あれ?」

ことり「ふふっ、ぐっすり眠ってたね、穂乃果ちゃん」

穂乃果「えっ、こ、ことりちゃん? あれ、ここどこ……?」

海未「全部終わって、今、帰るところですよ」

穂乃果「終わった……?」

海未「私、元に戻ることができたんです」

穂乃果「っ! えっ……? じゃあ……」

ことり「穂乃果ちゃん、もう、終わったんだよ。これでやっと、私たちは……」

穂乃果「……」

穂乃果「そ、っか……」

穂乃果「よかった……。ふふっ」

ことり「穂乃果ちゃん……」

穂乃果「これでやっと、私たちは……いつもの私たちに、戻れたんだねっ」

海未「……ええっ」

穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃん……」

ことり「なあに?」

海未「なんですか、穂乃果?」

穂乃果「……だいすきっ」

海未「……ええ。私もです」

ことり「私もだよ、穂乃果ちゃんっ」
 


12: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 22:27:54.10 ID:HDVTnWU5M.net

 
海未「それでは、穂乃果。そろそろ、自分の足で歩いてもらえますか?」ピタッ

穂乃果「えっ?」

海未「それだけ寝たんですから……。もう十分でしょう?」

穂乃果「えー……」

海未「えー、じゃありません。さぁ」

穂乃果「わ、分かったよぉ。んしょ……」

ことり「あはは……」

海未「ふぅ……。では、ことり。次はあなたです」

ことり「……へっ?」

海未「あなたも、相当疲れてるはずでしょう? 乗ってください」

ことり「えっ、い、いいよっ! 私は、おんぶなんて……海未ちゃんだって、疲れてるでしょう?」

海未「私は平気です。体力には自信がありますので」

穂乃果「そうそう、遠慮しないでいいよー、ことりちゃんっ」

海未「あなたが言わないでください」

ことり「で、でもぉ……」

海未「いいですからっ」

ことり「……じゃあ、その、お言葉に甘えて」ガシ

海未「ふっ……」スクッ

ことり「お、重く、ない……?」

海未「全然です。では、行きましょうか」

穂乃果「うんっ」

ことり「……///」


ことり(海未ちゃん……)
 


13: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 22:38:39.56 ID:HDVTnWU5M.net

  
――――――


穂乃果の家


海未「本当に、申し訳ありませんでしたっ!」ドゲザ

雪穂「……」ツーン

海未「ゆ、雪穂……」

雪穂「海未ちゃん、さぁ……。私に一体なにしたか、分かってるの?」

海未「わ、分かってます。はっきり、覚えてます……。私はあなたに、とても酷いことをしました……」

雪穂「そうだよっ! あ、あんな、あんなことして……っ!」 

海未「ごめんなさいっ!!」

雪穂「トラウマものだよっ! ほんとに、怖かったんだからぁっ!!」

海未「ごめんなさいっ! どうしても、抑えきれなかったんです……っ!」

雪穂「抑えきれないって、なにっ!?」

海未「あ、あなたの匂いが、予想以上に良い匂いだったので……。抑えきれませんでしたぁ……っ!」

雪穂「……い、良い匂い? 私が?」

海未「それはもうとっても、良い匂いでした……。さすが穂乃果の妹だと、言わざるを得ませんでした……っ!」

雪穂「そ、そう……//」

海未「……雪穂?」

雪穂「あっ! そ、そんな風に褒められたところで、あなたを許すわけじゃないんだからねっ!!」

海未「は、はいっ! 私は絶対に、許されないことをしましたっ!」

雪穂「くぅ~っ!」ギリギリ

雪穂(もうっ、ほんとになんでお姉ちゃんは、こんな変態のことを好きになっちゃったの……っ!?)
 


14: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 22:43:48.67 ID:HDVTnWU5M.net

 
雪穂「もう、いいよっ!」

海未「えっ……?」

雪穂「海未ちゃんには一応、前にお姉ちゃんのことを守ってくれた恩があるし……。お姉ちゃんに免じて、今日のところは許すよ」

海未「そんな、雪穂……」

雪穂「……まさか、お姉ちゃんにまで変なこと、してないよね?」

海未「っ! そ、それは、大丈夫です。それは……」

雪穂「まあ、お姉ちゃんとことりちゃんも大丈夫だって言ってたから、いいけどさ……」

海未「ありがとうございます……」

海未(これは、昔から匂いを嗅いでたなんてことがバレたら、殺されますね……)

海未(はぁ……。普段私に怒られてる時の穂乃果も、こんな気持ちなのでしょうか……。今度からはもう少し、優しくしましょう)

雪穂「……で、スイッチは?」

海未「あ、はい……。ここに」スッ

雪穂「……」ヒョイ

海未「あぁっ!?」

雪穂「これ、私が預かるから。いいよね?」

海未「で、でもそれは明日、真姫に返して、処分してもらおうと……」

雪穂「そんな言葉、信用できるわけないでしょっ!? 私はあなたが本当に元に戻ったのかどうかも、半信半疑なんだからっ!」

海未「そ、そうですよね。では、あなたが持っていてください……」

雪穂「……私にしたことは、一応誰にも言わないどいてあげる。もう二度と、変なことするのはやめてよね」

海未「はい、もちろんです……」
 


15: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 22:53:55.95 ID:HDVTnWU5M.net

  
ことり「また明日、穂乃果ちゃんっ」

海未「それでは……」

穂乃果「うん、ばいばーいっ」



雪穂「お姉ちゃん、ほんとに大丈夫だった? 海未ちゃんに変なことされなかった……?」

穂乃果「あはは、大丈夫だよ……。心配し過ぎだよ、雪穂は」

雪穂「……そうかな」

穂乃果「うん。それに海未ちゃんになら、私……」

穂乃果「ちょ、ちょっとくらいなら、変なことされても……。いいかな、って……///」

雪穂「……」

雪穂(そっか……。そうだよね。お姉ちゃんは、そうだった……)

雪穂「……これ」スッ

穂乃果「えっ? こ、これって」

雪穂「さっき海未ちゃんから預かったの。これ……」

雪穂「お姉ちゃんに、あげる」

穂乃果「えっ。でも……」

雪穂「そもそも、お姉ちゃんの匂いを強くするスイッチなんて……他の人が持ってることが、おかしかったんだよ」

雪穂「これは、他の誰でもない、お姉ちゃん自身が持つべきなんだ。これは、そういうスイッチなんだよ……」

穂乃果「……」

雪穂「……それはもう、お姉ちゃんの物だから。あとはどうしようが、自由だよ」

雪穂「真姫さんに返して、処分してもらうのも……。海未ちゃんに、また渡すのも……自分で、使うのも」

雪穂「お姉ちゃんは、どう使う? そのスイッチ……」

穂乃果「……」


穂乃果「……私ね、ちょうど最近、欲しくなったものがあるの」

雪穂「へえ、なに?」
 


16: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 22:58:45.96 ID:HDVTnWU5M.net

  
『……あれ? 穂乃果ちゃん、香水つけてきたん?』

『えっ、ううん……?』



穂乃果「『香水』……」

雪穂「……」

雪穂「……ふふっ。まあ、代わりにはなるんじゃない?」

穂乃果「……うんっ」

雪穂「それじゃ、ご飯にしよっか。昨日の残り物だけど……」

穂乃果「えっー!? お寿司はーっ!?」

雪穂「やっぱりやめた。お母さんに怒られそうだし」

穂乃果「えぇー、そんなぁ~……」



――――


スタスタ……



ことり「……雪穂ちゃんに、こっぴどく叱られたみたいだね」

海未「はい……。完全に、嫌われました……」

ことり「そ、そっか……」

海未「スイッチも、とられてしまいましたし……。まあ、万が一にも雪穂なら、悪用することはないでしょうが」

ことり「うん、きっと大丈夫だよ」

海未「はぁ、でも……。手放す前にもう一度、レベル3くらいは嗅いでおきたかった……」

ことり「……海未ちゃん、本当に元に戻ったんだよね?」

海未「えっ!? じょ、冗談ですよっ!? 本気にしないでくださいよ……っ!」

ことり「そ、そうだよね、冗談だよね……」

海未「そうですよ。せいぜいレベル2くらいまでで十分です」

ことり「……」

ことり(……まあ、仕方ないか。海未ちゃんは元々、こういう人だったんだし……)
 


17: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 23:07:33.87 ID:HDVTnWU5M.net

  
海未「しかし、あれだけ長い間ほのスメルを嗅いでたのは、初めてですね……。まだあの匂いが頭から、離れません」

ことり「そうだね……」

海未「はっ! そういえば……」

ことり「なに?」

海未「あれだけ長く、スメルが充満した場所にいたんですっ! もしかして私たちの服などにも、ほのスメルが染みついてしまっているのではっ!?」

ことり「あぁ、うん……どうかな」

海未「確認してみましょう……っ!」スンスン

海未「……そんなことなかったです」ガクッ

ことり「だろうね……」


ことり(海未ちゃん……。昔は恥ずかしがり屋さんで、真面目な女の子だったのに……)

ことり(ほんと、一体どうしてこんな子に、なっちゃったんだろ……)

ことり(穂乃果ちゃんのせいだよ、もう。穂乃果ちゃんの匂いが、よ過ぎるから……)


ことり「……」

ことり「……ねえ、私のも、確認してみて?」

海未「えっ!?」

ことり「自分じゃ、よく分かんないから……。私の服にほのスメルが染みついてるか、海未ちゃんが確認して?」

海未「……い、いいんですか?」ハァハァ

ことり「……」

ことり「やっぱり、ダメ」

海未「えっー!?」


ことり(……そうだね。私のせいでも、あるんだったね)
 


18: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 23:15:33.15 ID:HDVTnWU5M.net

   
ことり(海未ちゃんは実は、昔から穂乃果ちゃんの匂いを嗅ぐ、変態だった)

ことり(だけど本当は穂乃果ちゃんだけじゃなくて、私の匂いも、嗅いでた……)

ことり(……じゃあ、もしも――)


ことり「それじゃ、私はこっちだから」

海未「はい。では、また明日……」

ことり「……海未ちゃん。一つ、聞いていい?」

海未「はい?」

ことり「もしもあのスイッチが、穂乃果ちゃんじゃなくて……」



ことり「『ことりの匂いが強くなるスイッチ』だったら、海未ちゃんは、押してた?」



海未「押しまくってましたね」

ことり「即答なんだ……。しかも、押しまくるんだ……」

海未「というか、あぁ……。そうですか、そういえばその発想は、ありませんでした……」

ことり「えっ……?」

海未「い、いいですね、それ……。ちょっと待ってください、それは……」

海未「ことりの匂いが、ほのスメルのように、増幅していくわけでしょう? レベル1、レベル2と……」

海未「うわぁ、レベル3なんて、『ことりのシャツの中に入り込んで、直接匂いを嗅いでるかのような』感覚が味わえるわけでしょう……?」

海未「あ、あぁ、レベル4なんて押したら……っ! あぁあぁ~っ////」

ことり「……」

ことり(な、なんか海未ちゃんの、変なスイッチが入っちゃった……)
 


19: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-8eIG) 2015/10/21(水) 23:25:00.19 ID:HDVTnWU5M.net

  
ことり「海未ちゃん……」ジトッ

海未「あっ……あっ!? ごめんなさい、ことりっ! 私はことりの前で、一体何を……っ!?」

ことり「海未ちゃんは結局元に戻っても、あまり変わらないんだね。私の苦労は、なんだったのかな……」

海未「ご、ごめんなさい、ことりぃ……。き、嫌いにならないでくださいぃ……っ!」

ことり「な、ならないよ……。大丈夫だから」

海未「ほ、ほんとですか……?」

ことり「……うん」

海未「ことり……。これからもずっと一緒に、いてくれますか?」

ことり「もちろんだよ……。どうしたの、急に」

海未「わ、私はきっと、『ことスメル増幅スイッチ』があったら、レベル5まで押してしまいます……そんな、人間です」

海未「それでも……ですか?」

ことり「……」


ことり「もうほんとに、海未ちゃんは……」




ことり「どうしようも、ないなぁっ」




ことり(普段は真面目でしっかり者で、恥ずかしがり屋さんな、女の子なのに……)

ことり(強くてかっこよくて凛々しくて、優しくて……本当に素敵な女の子なのに)

ことり(『匂い』のことになると、どうしてこんなどうしようもない変態に、変わっちゃうんだろうなぁ……)

ことり(……)


ことり(だけど、それでも……)


  

ことり「それでも、私は――」



  


ことり「そんな海未ちゃんのことが、ずっと好きでした」
 
  


45: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 21:40:02.37 ID:QRdCR9ZoM.net

   
――――――

次の日……


『そんな海未ちゃんのことが、ずっと好きでした』
 
『そんな海未ちゃんのことが、ずっと好きでした』
 
『そんな海未ちゃんのことが、ずっと――』


海未「あぁああぁっ~!!」

穂乃果「わぁっ!?」

海未「……あっ、ほ、穂乃果?」

穂乃果「お、おはよう、海未ちゃん……。どうしたの?」

海未「あ、い、いえ、何でもないです、はははっ……」

穂乃果「そう……?」

海未「……」ソワソワ

穂乃果「……海未ちゃん?」

海未「きょ、今日は暑いですねっ!」

穂乃果「えっ、割と涼しいと思うけど……」

海未「はぁ、はぁ……」

穂乃果「……?」

海未(なんですか……。なんですか、これ……?)

海未(なんですかこの気持ちは……。こんなの、おかしいです……っ!)


『ずっと、好きでした――』


海未(ことりのことが、頭から離れません……っ////)

海未(い、一体私は、どうしてしまったのでしょうか……////)
  


47: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 21:44:02.11 ID:QRdCR9ZoM.net

  
穂乃果「ね、ねえ、海未ちゃん……?」

海未「はぁ……。はっ、はい?」

穂乃果「あ、あのね、その……」モジモジ

海未「……? どうしました?」

穂乃果「うっ……。えっと――」


「おはようっ」


海未「っ!!」ビクッ

穂乃果「あっ、おはよーっ! ことりちゃんっ!」

ことり「ふふっ、おはよう、穂乃果ちゃん……」

ことり「……海未ちゃん」

海未「は、はい……おはようございます、ことり」プイッ

ことり「……」

穂乃果「海未ちゃん……?」

海未「い、行きましょう、二人とも。遅刻してしまいますよ」

ことり「そうだね、いこっか」

穂乃果「う、うん……」

海未「……っ」ドキドキ


海未(ことりの顔が、まともに見れない……っ! なんなんですか、この気持ちは……っ!?)
 


48: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 21:57:15.49 ID:QRdCR9ZoM.net

   
――――――

教室


ガラッ

ドタドタッ


花陽「海未ちゃんっ!」

にこ「う、海未っ! あんた、元に戻ったんですってっ!?」

凛「ほんとかにゃ、海未ちゃんっ!?」

穂乃果「あっ、花陽ちゃんとにこちゃんと、凛ちゃんだ」

ことり「ちょ、ちょっと三人ともっ!? 二年生の教室に入ってきちゃダメだよぉっ!」

にこ「今はいいでしょそんなことっ! それより、海未……っ!」

海未「え、ええ。戻りました……」

にこ「……花陽」

花陽「はいっ」ササッ

海未「……? ノートパソコンなんか開いて、なにを――」

花陽「動画再生っ!」カチッ


~♪

『私、あなたのことが好き……』

『俺もだ……。愛してるよ……』

ギュゥ……


海未「っ!!? あ、あぁ、あぁ……」

海未「いやぁああぁああっ! は、ハレンチです~っ!!////」ガタンッ

凛「っ! いつもの海未ちゃんだにゃぁ~っ!」

にこ「やったわっ! 『恋愛映画の予告編作戦』、大成功ねっ!」

花陽「うんっ!」

ことり(いやあ、その判別方法はどうなんだろ……)
 


49: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 22:03:20.41 ID:QRdCR9ZoM.net

   
ことり「でもみんなには昨日、海未ちゃんが元に戻ったことは、電話で伝えたはずだけど……」

にこ「やっぱ自分の目で確かめないと、安心できなくってね」

凛「よかったにゃあ~。これでやっと、みんな元通りだねっ!」

花陽「うんっ。ということは、今日からμ'sは……」

にこ「完全復活っ! よーし、さっそく他のみんなにも伝えに行くわよっ!」

花陽、凛「「おーっ!」」

ドタドタッ……

ガラッ


ことり(仲良しだなぁ……)

穂乃果「海未ちゃん、大丈夫……?」

海未「あ、あぁあ、ああぁあ~っ!」

穂乃果「も、もう平気だよ? 三人とも、行っちゃったし……」

海未「いやぁあぁ、だめです、ハレンチです、うわぁあぁ~っ////」

ことり「海未ちゃん……?」

穂乃果「こ、ことりちゃん、どうしよう。海未ちゃん、なんか変だよ……」

ことり「……っ!」

穂乃果「いつもなら、映像さえ止まれば平気なのに……。海未ちゃん、まだこんなに顔真っ赤だよ……?」

ことり「う、海未ちゃんっ、大丈夫っ!? 落ち着いてっ!」ガバッ

海未「っ!!」


フワ……


ことり「海未ちゃん――」

海未「だめええぇっ!!」

ドンッ

ことり「きゃあっ!?」
  


52: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 22:10:28.65 ID:QRdCR9ZoM.net

   
海未「はぁーっ。はぁーっ///」ググッ

ことり「う、海未ちゃん……?」

穂乃果「どうしたの? 鼻なんか抑えて……」

海未「ご、ごめんなさいっ。い、今は、だめなんですっ。ごめんなさいぃ……っ!」

穂乃果「あっ、海未ちゃんっ!?」

海未「あぁあぁあ~……っ!」


タッタッタッ……ガラッ


穂乃果「海未ちゃん……?」

ことり「……」

穂乃果「どうしちゃったんだろ、海未ちゃん……。ことりちゃん、なにか知ってる?」

ことり「えっ!? あ、えっと……」

穂乃果「……?」

ことり「その……」


『そんな海未ちゃんのことが、ずっと好きでした』


ことり「……」

穂乃果「こ、ことりちゃんっ!?」

ことり「えっ、あっ……///」

穂乃果「なんでことりちゃんまで、赤くなっちゃうのっ!? ねえっ!」

ことり「っ! な、なんでだろ、おかしいね、あはは……///」


ことり(海未ちゃんは昨日のことを、気にしてるんだ……。昨日私が、海未ちゃんに……)

ことり(こっ、告白、したことを……////)

穂乃果「ことりちゃん……?」

ことり「あ、うぅ……//」


ことり(そうだ……。私、本当に、海未ちゃんに告白しちゃったんだ……)

 


54: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 22:19:16.04 ID:QRdCR9ZoM.net

  
――――

廊下


タッタッタッ……

海未「はぁ、はぁっ! あぁ、あぁあぁっ!」

海未(なんで、どうしてっ! こんなこと、今までなかったのに……っ!)

海未(当たり前のように嗅いでいた、ことりの『匂い』まで、まともに嗅げなくなってしまうなんて……っ!)


ドンッ

「きゃぁっ!?」

海未「あうっ! あ、ご、ごめんなさいっ!」

真姫「う、海未……?」

海未「あっ、ま、真姫……」

真姫「どうしたのよ、顔真っ赤だけど……」

海未「べっ、別になんでもないです……」

真姫「……ああ。そういえばさっき教室で、凛と花陽が妙なこと話してたわね。大体想像がつくわ」

海未「……」

真姫「海未。元に、戻ったのね?」

海未「……ええ。ことりのおかげで」

真姫「そう、よかったわ……」

海未「ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした……」

真姫「そんなの、お互い様でしょ。とにかく、これでようやく今日からμ'sも、ちゃんとした活動ができそうね」

海未「……そうですね。ここ最近はずっと、落ち着かない日々が続いて……あっという間に時間が、過ぎてしまいましたが」

海未「もう、来週末にまで迫ってきているんですよね」

真姫「ええ。ラブライブ、最終予選……」

 
 
真姫「『A-RISE』との、対決の時が」
  


56: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 22:28:26.54 ID:QRdCR9ZoM.net

 
海未「……ええ」

真姫「ほんとあのスイッチに、えらく振り回されたものだわ……。おかげでラブライブの緊張なんて、どこかに飛んでいっちゃったかも」

海未「そ、それは……良かったの、でしょうか」

真姫「そう思うしかないでしょ……。って、そういえば、そのスイッチは?」

海未「あっ……」

真姫「今日、持ってきてる? なら今すぐにでも、私が預かっちゃうけど」

海未「ご、ごめんなさい。あのスイッチは雪穂に、取り上げられてしまって……」

真姫「えっ? あ、そうなの……」

海未「私のことは信用できないと、言われてしまいまして……。本当に、面目ないです」

真姫「い、いいわよ、別に」

真姫(……私も前に雪穂ちゃんに、同じこと言われてるし。これじゃスイッチは当分、返してもらえそうにないわ……)

真姫「分かった。しばらくはあのスイッチは、雪穂ちゃんに預けておきましょ。彼女ならスイッチを使うことも、ないでしょうし」

海未「そうですね……」

海未「……では、もう落ち着いてきたので、私は教室に戻ります」

真姫「あっ、待って」

海未「はい?」

真姫「実は私も、あなたに用があってね。そっちの教室に、向かうところだったのよ」

海未「……? 用とは、私が戻ったかどうかの、確認ではなくてですか?」

真姫「それもそうだけど、もう一つ……」
  


57: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 22:34:46.53 ID:QRdCR9ZoM.net

  
真姫「『これ』を、あんたに渡したくて」スッ

海未「えっ……? こ、これは……?」

真姫「昨日、家に帰って、部屋に戻ったらね……。私の机の上に、置いてあったの」

海未「……」

真姫「だけどね、私は『こんな物』、知らない。なんで机の上に置いてあったのかも、分からない」

真姫「正直、どうしたらいいのかも分からない……だから――」

真姫「あんたに、託すわ」

海未「わ、私に……?」

真姫「ええ。あんたなら『これ』をどうするべきか、分かるんじゃない?」

海未「……しかし」

真姫「どっちにしろ、私が持ち続けてても仕方ない物だし、渡すならあんたしかいないしね……」

真姫「もちろん『これ』をどうするかは、あんたの自由よ。責任は全部、私が負うわ」

海未「……」

海未「……分かりました。では私が、預かりましょう」スッ

真姫「そう言ってくれると思ったわ。それじゃっ」

タッタッタッ……


海未「あっ、真姫……」

海未「……まったく、ここにきて、『こんな物』を渡してくるなんて――」


『海未、ちょっといい?』

『なんです?』

『これね、ほのスメルを増幅させるスイッチ、なんだけど』

『ほのスメルを増幅させるスイッチ?』

『そう。名前の通り、このスイッチを押す度に、ほのスメルが――』


海未「――本当に、いつも唐突過ぎますよ、あなたは……」
  


60: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 22:45:03.73 ID:QRdCR9ZoM.net

 
――――

教室



ヒデコ「穂乃果ー。ラブライブ、もう来週だねー」

フミコ「私たち、絶対応援いくからねっ」

穂乃果「うんっ、ありがとー」

ミカ「あれ? 穂乃果、なんか今日……」

穂乃果「えっ、な、なに?」

ミカ「昨日せいかな、なんだか――もごっ!?」

穂乃果「しーっ! 海未ちゃん戻ってきたっ! これ、海未ちゃんには内緒なのっ!」

ミカ「むぐっ……ひょ、ひょうなの?」


スタスタ……

海未「……」

ことり「お、おかえり、海未ちゃん」

海未「っ! こ、ことり……」

ことり「大丈夫……?」

海未「はい……。ごめんなさい、さっきは突き飛ばしてしまって……」

ことり「あ、うん……。気にしないで、平気だから」

海未「……ごめんなさいっ!」

ことり「い、いいよ、そんな」

海未「……っ」プイッ

ことり「……海未ちゃん?」

海未「……きっ」

海未「昨日は、その……。ちゃんと返事できなくて、ごめんなさい……」
  


62: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 22:50:37.52 ID:QRdCR9ZoM.net

  
ことり「……えっ?」

海未「あ、あなたが、その……。せっかく勇気を出して、気持ちを伝えてくださったにも、関わらず……」

海未「何も言えなくて、ごめんなさい。私、こういったことが、初めてで……。ビックリ、してしまって」

海未「そ、その、返事、なのですが……」

ことり「……」

ことり「いいよ、海未ちゃん。返事、今すぐじゃなくても」

海未「えっ……」

ことり「ことり、待ってるから。いつまででも、待ってるから……」

ことり「……だからいつかことりに、海未ちゃんの本当の気持ちを、聞かせて?」

海未「ことり……」

穂乃果「海未ちゃんっ!」

海未「っ! 穂乃果……」

穂乃果「もう、大丈夫なの?」

海未「は、はい……。ご心配をおかけしました……」

穂乃果「ううんっ。そんなことより、大変だよっ!」

海未「どうしました?」


ことり(……)

ことり(穂乃果ちゃん、そういえば今日……)

ことり(……でも、自分から言わないってことは、そういうことなのかな)
 


65: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 22:59:03.35 ID:QRdCR9ZoM.net

  
穂乃果「昨日出された数学の宿題、全然やってないよぉっ!」

海未「あぁ、昨日は色々大変でしたから、全然やる暇ありませんでしたもんね……」

穂乃果「どうしよう、海未ちゃんっ!? このままじゃ、私たち……」

海未「仕方ありませんね。私のせいでもありますし、今回は私が見せてあげます」

穂乃果「やったぁー……って、なんで海未ちゃんは終わってるのっ!?」


ことり(ふふっ。海未ちゃんといると、本当に楽しそうだなぁ、穂乃果ちゃん……)

ことり(……)


ことり(……伝えなきゃ)

ことり(穂乃果ちゃんにも私の気持ち、伝えなきゃ。私も海未ちゃんのことが、好きだったんだって……)

ことり(だって私は、穂乃果ちゃんが海未ちゃんのことが好きなのを、知ってて……告白したんだから)

ことり(……穂乃果ちゃんは、なんて思うだろう?)

ことり(ショック、受けるかな……。でもきっと、穂乃果ちゃんなら――)

ことり(……)

ことり(ていうか、私も宿題終わってない……)



海未「どうぞ、ノートです」スッ

穂乃果「わーい、ありがとぉ~っ」

海未「……」

ことり「あ、あの、海未ちゃん。次、私にも見せてくれる?」

海未「は、はい、いいですよ……」

ことり「……ありがとう」ニコッ

海未「っ!」ドキッ


海未(ことり……)
  


66: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 23:03:59.11 ID:QRdCR9ZoM.net

  
『だからいつかことりに、海未ちゃんの本当の気持ちを、聞かせて?』


海未(私の、気持ち……)

海未(私はことりのことが、好きです。それは、間違いありません……)

海未(10年近く匂いを嗅ぎ続けるくらい、大好きです)

海未(でも……それは、お友達としての、はずで……)

海未(……ことりは)

海未(ことりはいつも可愛くて、おっとりしていて、お洒落で……。服飾が得意で、メイドカフェでアルバイトをしていて……)

海未(……私なんかより、ずっとアイドルみたいで)

海未(私が持ってないものを、ことりはたくさん持っている……)

海未(そして、ことりは――)


『い、今だけは、諦めたく、ない……っ! 諦めたく、ないよぉ……っ!!』

『海未ちゃん、お願いだからぁ……。目を、覚ましてよ……っ! 正気に、戻ってよぉっ!!』


海未(ほのキチだった私を元に戻すために、必死になってくれて……)


『海未ちゃんは、変態だよ』

『そんな海未ちゃんのことが、ずっと好きでした』


海未(私が変態であることを受け入れた上で、私のことを好きになってくれた……)

海未(ことりは……ことりは――)


穂乃果「海未ちゃん?」
  


69: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 23:09:09.88 ID:QRdCR9ZoM.net

    
海未「っ! えっ、はい?」

穂乃果「あ、あのね……。ここの問題が、よく分かんないの。教えてくれる?」

海未「はい……いいですよ」

穂乃果「……」

海未「というか、あなたが問題のことで私に質問してくるなんて珍しいですね」

穂乃果「っ! そ、そうかな……?」

海未「だっていつもはただ、丸写しするだけじゃないですか……。どこですか?」ススッ

穂乃果「こっ、ここ……」

海未「そうですね、ここは……」

海未「……」

穂乃果「……///」モジモジ

海未(穂乃果、なんだか顔が赤いような……。気のせいですかね)

海未(……穂乃果)

海未(今日も可愛いですね、穂乃果は……)

海未(穂乃果……)



海未(ほのか……?)

海未(あれ……?)



海未(私は……。私は、穂乃果のことが、好きだったのでは……?)

海未(そう、私は穂乃果のことが、大好きで……。ずっと彼女の匂いを、嗅ぎ続けて……)

海未(……その『好き』は、友達として?)

海未(それとも……)
 
 
海未(いつもこの手で守り続けてきた、幼馴染と……)

海未(必死になって私を救おうとしてくれた、幼馴染……)

海未(……私は)





海未(私は穂乃果とことり、どっちが『好き』なのですか……?)
   


70: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/23(金) 23:18:30.79 ID:QRdCR9ZoM.net

  
ズキン

海未「……」

穂乃果「海未ちゃん……」


海未(なんですか、この、頭の痛みは……?)

穂乃果「あのね、海未ちゃん……。今日、私ね……」

海未「……うっ」


『……けてくれてありが……海未ちゃ……海未ちゃんが助け……わた……』

『怖かっ……ありが……未ちゃん………………』


『……に……さい……乃果……』

『えっ……?』



『私が、あなたを――』



ズキンッ


海未「う、ぐぅ……」

穂乃果「……海未ちゃん?」


海未(なんですか、この感覚は……? 何か大事な記憶が、抜け落ちてしまっているかのような……)

海未(分からない……思い出せない。どうしても……)

海未(私は一体、何を、忘れて――)



この日、穂乃果、海未、ことり……三人の間で生まれた小さな『歪み』に、まだ誰も気がついてはいなかった。

しかしその歪みは、日が経つにつれ、徐々に広がっていき……。

そして、ラブライブ最終予選――その、前日。




『悲劇』は、起きた。

 


103: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 21:08:13.06 ID:9YrMYlDRM.net

――――――――
――――――
――――
――


穂乃果「きたよ。ことりちゃんっ」

ことり「ご、ごめんね、急に……」

穂乃果「ううんっ。それで、大事な話ってなに?」

ことり「あのね……」

ことり「……穂乃果ちゃんは海未ちゃんのこと、好きなんだよね?」

穂乃果「えっ? う、うん……」

ことり「恋人同士に……なりたいん、だよね?」

穂乃果「っ! うん……///」

ことり「……」

穂乃果「……や、やっぱり、変かな?」

ことり「えっ?」

穂乃果「お、女の子同士なのに、恋人になりたいなんて……変、かな」

ことり「……ふふっ。今更そんなこと、気にするの?」

穂乃果「だ、だって……」

ことり「変に決まってるよ、そんなの。普通じゃない」

穂乃果「っ! そ、そうだよね……」

ことり「……でも、相手が海未ちゃんなら、仕方がないんじゃないかな」

穂乃果「えっ……?」

ことり「例え女の子同士でも……海未ちゃんが相手なら、好きになっちゃう気持ち、分かるよ」

穂乃果「……ことりちゃん?」

ことり「うん……。私も海未ちゃんのこと、好きなんだ」

穂乃果「……」


105: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 21:12:54.98 ID:9YrMYlDRM.net

 
穂乃果「い、いつから……?」

ことり「……ずっと昔。子供の頃から、かな」

穂乃果「っ! そう、なんだ……」

ことり「うん……」

穂乃果「……あ、あはは、ことりちゃんは、すごいなぁ。そんな前から自分の気持ちに、気づけてたなんて」

穂乃果「私なんて……。つい最近、やっと、気づけたばかりだったのに」

ことり「……ううん、私は全然、すごくなんてないよ。穂乃果ちゃんや、海未ちゃんに比べたら……」

穂乃果「えっ……?」

ことり「二人は昔から本当に、すごい女の子だった。私なんかと、違って……」

穂乃果「そっ、そんなことないよっ! 私なんてほら、おバカだし、何の取り柄もないし……」

穂乃果「それに比べてことりちゃんは、素敵な衣装も作れるし、バイト先でも伝説になってるし、何より可愛いし……私より、全然すごいよっ!」

ことり「ううん、そうじゃないの。二人の『すごさ』っていうのは……もっと特別な、何かなんだ」

穂乃果「……どういう、こと?」

ことり「そうだね。例えば、二人は……お話の中だったら『主人公』になれちゃうような、そんな女の子なんだよ」

穂乃果「……??」

ことり「でも、私はそんな特別じゃない。私は特別な二人の傍にいつもいるだけの、『普通の女の子』……」

ことり「……だから海未ちゃんの恋人にふさわしいのは、私なんかじゃなくて、穂乃果ちゃんなんだ」

穂乃果「そんな……」

ことり「だから私は、自分の恋は諦めて……。二人の恋を、応援するつもりだったんだ」

穂乃果「そ、そんなの、おかしいよ。もしかしたら海未ちゃんは、ことりちゃんのことが好きかもしれないのに……」

ことり「……」

ことり「……応援、するつもりだったんだよ」

穂乃果「えっ……?」

ことり「穂乃果ちゃん……私ね、昨日――」


ことり「海未ちゃんに、告白したの」
  


106: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 21:21:01.83 ID:9YrMYlDRM.net

  
穂乃果「……え」

ことり「昨日穂乃果ちゃんと別れた後に、海未ちゃんに、『ずっと好きでした』って……。私の子供の頃からの気持ちを、伝えたの」

穂乃果「どう、して……」

ことり「海未ちゃんと、恋人同士になりたかったから」

ことり「例えそれで……穂乃果ちゃんのことを裏切ることに、なったとしても」

ことり「……私たち三人の日常が、崩れることになったとしても」

穂乃果「……っ!」

ことり「本当は……海未ちゃんが元に戻って、また私たちの関係も、元通りになって、それで……」

ことり「またいつも通りの楽しい日常が、続いてくはずだった」

ことり「穂乃果ちゃんは、それを望んでたんだよね……。だからあの時穂乃果ちゃんは、私に言ったんだよね」

ことり「『私が海未ちゃんのことが好きだっていうのは、内緒だからね』、って……」

ことり「自分の気持ちが海未ちゃんに知られちゃったら、また私たち三人の関係が変わっちゃうかもしれないって……そう思ったんでしょ?」

ことり「……今まで通りの関係を続けたいなら、このまま海未ちゃんへの気持ちを伝えずに、胸にしまっておいた方がよかったんだ」

ことり「穂乃果ちゃんも、私も……」

ことり「……でも、私は」

ことり「私は海未ちゃんのことが、好き、なの……っ!」

ことり「ずっとずっと、好きだったの……っ! 海未ちゃんの恋人に、私も、なりたいの……っ!」

ことり「本当は、諦めるつもりだった……でも、諦めきれなかったっ!」

ことり「私は『普通』だけど、でも――海未ちゃんの『特別』に、なりたいのっ!!」

穂乃果「ことり、ちゃん……」

ことり「……だから私は海未ちゃんに、告白したの」

ことり「穂乃果ちゃんの気持ちを、知った上で……私は……」
 


107: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 21:23:04.90 ID:9YrMYlDRM.net

 
穂乃果「……」

ことり「海未ちゃんからは、まだ返事はもらえてない。きっと今、海未ちゃんは、悩んでると思うんだ」

ことり「だから私は、海未ちゃんに、好きになってもらえるように……。精一杯、頑張るつもり」

穂乃果「……わ、私は」

穂乃果「私は、どうしたらいい、のかな……」

ことり「……私に相談するのはナシだよ。穂乃果ちゃん」

穂乃果「っ! でも、だってっ! 私はいつも、分からないことがあったら、『二人』に……っ!」

ことり「穂乃果ちゃん。これから、私たちは……『敵同士』に、なるんだよ」

穂乃果「っ!!」

ことり「分かるよね、穂乃果ちゃん……?」

穂乃果「わ、分からないよ、そんなの……っ! 私たち、親友でしょっ!? どうして敵同士だなんて……」

穂乃果「どうしてそんなこと、言うのっ!? ことりちゃん、まさかまた変になっちゃったの……っ!?」

ことり「……私たちは親友だよ、穂乃果ちゃん。それだけは絶対に、この先も変わらない」

ことり「でも……。仕方がないんだよ」

穂乃果「ど、どうして……っ!」

ことり「だって私たちは、同じ人を、好きになっちゃったんだから」

穂乃果「……」

ことり「だから私は、穂乃果ちゃんと……戦うんだ」

ことり「もう、二人についていくだけの、私じゃない……。いつまでも『ダメな子』のままじゃ、いられないんだ」

ことり「私は絶対に、穂乃果ちゃんに、『勝つんだ』」

ことり「……う、う――」



ことり「海未ちゃんは、渡さないんだからぁ……っ!」
  


110: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 21:39:43.45 ID:9YrMYlDRM.net

   
――――――――
――――――
――――
――



9日後……

ラブライブ最終予選、前日(金曜日)

朝、屋上――



絵里「最終予選前、最後の朝練よ」

にこ「ふわあぁ……。いいけど、なんで今日は神社じゃなくて、屋上なのよ?」

希「始業時間ギリギリまで練習するためやって、昨日えりちが説明してたやろ~?」

花陽「A-RISEとの対決は、いよいよ明日ですっ! ちょっとでも、練習しておかないと……っ!」

真姫「そうね。ただでさえ私たちは、遅れを取ってるわけだし……」

凛「頑張らないとっ! ……ってそういえば結局、曲の方はどっちでいくのかにゃ?」

絵里「それは……穂乃果っ」

穂乃果「な、なに?」

絵里「最終的な判断はあなたに任せるって、言っておいたと思うけど。曲、どっちにするか決めた?」

穂乃果「……それは、その」

穂乃果「う、海未ちゃんは、どう思う……?」

海未「えっ……?」

絵里「……穂乃果?」

海未「私は、そうですね……」

海未「……やはり、最初に決めていた方にすべきだと思います。もう一つの方は、とても披露できる完成度に達しているとは思えませんので」

真姫「ま、そうよね、流石に……」

絵里「……分かったわ。じゃあ明日、私たちが躍るのは――」



絵里「――『Snow halation』で、決まりね」
 


111: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 21:48:45.97 ID:9YrMYlDRM.net

   
絵里「それじゃ、ストレッチから始めましょう。ペアを組んで」

にこ「ことりちゃんっ。にことペアを組んでほしいにこっ♪」ギュッ

ことり「えっ? うん……」

希「うーみちゃん。ウチとストレッチすると、胸が大きくなるって噂やでー?」

海未「ど、どこをストレッチする気ですか……」

絵里「じゃあ一年生は、三人仲良く組んでもらうとして……穂乃果っ!」

穂乃果「えっ……?」

絵里「私と、組みましょう?」ニコッ


……


にこ「このままじゃ私たち、負けるわよ」

ことり「……っ」

にこ「バレてないとでも思った? ここ一週間くらいずっと、あんたたち三人とも、様子おかしいわよね」

ことり「あはは……。意外とメンバーのことしっかり見てるよね、にこちゃんって」

にこ「意外は余計だし、私だけでもないわ。希と絵里も、気づいてる」

ことり「……こんな時、三人は先輩なんだなぁって、実感するよ」

にこ「いいから話してみなさいよ。何があったの?」

ことり「……」

にこ「……」


にこ(喧嘩とかじゃ、ないわよね。三人とも、普通に話したりしてるし……)

にこ(でも三人が、『いつも通り』じゃないのは確か……。話してる時もどこか、無理をしてるような気がする……)

にこ(なんだろ、この違和感。まるで、前にことりの留学の件で、色々あった時みたいな……)

にこ(あの時も屋上だった……。何か嫌な予感が、ずっとしてて……。そうしたら穂乃果が急に、μ'sを辞めるとか言い出して……)

にこ(……ううん、そんなわけない。もう私たちμ'sの間にあんなことは、二度と起きないんだから……)
  


112: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 21:54:02.70 ID:9YrMYlDRM.net

  
にこ「……話したく、ないの?」

ことり「ごめん……」

にこ「なら、無理に聞いたりはしないけど……。でもね、ことり。私が気になってるのわね……」

にこ「あんたが三人の中で一番、暗い顔をしてるように見えることなのよ」

ことり「っ! そ、そうかな……」

にこ「ええ。暗い顔、というか……疲れきったような顔、というか」

ことり「……そんなこと、ないよ」

にこ「……あんたたちの間に何があったのかは分からないし、あんたが一体何を隠してるのかも分かんないけどさ」

にこ「本番は、明日なのよ……? そんな調子であんた、本当に大丈夫なんでしょうね?」

ことり「……ありがとう、にこちゃん。心配してくれて」

ことり「大丈夫、だよ。今日中に……ちゃんと気持ちの整理は、つけるから」

にこ「……なら、いいけど」


にこ(いいわけない。今日中に解決できる問題なら、とっくに解決できてるはずよ……)

にこ(でも私じゃ、何もできない。私は三人の『仲間』だけど、『幼馴染』じゃないから……)

にこ(この三人の関係は、深すぎる……。他人の私じゃどうやったって、手出しできない――)


……


希「海未ちゃん、いい加減に話してくれんと、わしわしするで~?」

海未「の、希……。そうは言われましても、話せないものは話せないんです」

希「んー。そう言われちゃうとなぁ……。無理に聞き出すのも、悪い気がするし……」

海未「……わしわしではなく、普通にストレッチしましょう。さぁ、まずは私が……」

希「恋愛かな?」

海未「ぶっ!!」

希「あ、当たり?」

海未「ど、どど、どうして……」

希「カードがそう言ってるやん♪」ピラッ

海未「今初めて出しましたよねっ!?」
  


113: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 22:03:36.04 ID:9YrMYlDRM.net

  
希「ま、海未ちゃんは必死に何か、悩んでるみたいやったし。年頃の女の子が悩むことと言ったら、恋愛しかないやろ?」

海未「そ、それにしたって……」

希「スイッチのことやったら、そう言ってくれてもええはずやしな。ふぅん、そっかそっかー」

海未「希……。このことは、誰にも」

希「分かっとるよ。海未ちゃんは、恋愛なんて初めてやろ。悩むのも、無理はないと思うで」

希「大切なことや。じっくり悩んだ方がええ……。でも、分かっとるよね?」

海未「ええ、分かってます……。私たちμ'sにとって大事なのは、明日のラブライブです」

希「ふふっ。海未ちゃんは、大丈夫そうやな」


希(恋愛……海未ちゃんがなぁ。相手は誰やろ? 男の子の知り合いなんて、おったかなぁ……。それとも……)

希(むむー……。海未ちゃんだけじゃなくて、ことりちゃんや穂乃果ちゃんの様子までおかしいことを考えると……)

希(……これは、厄介なことになってそうやなぁ)

希(三人は傍から見てても羨ましくなるくらい、仲が良いけど……。それだけにこういう問題になると、なかなか解決しにくいんよなぁ――)


……


絵里「はっきり言って最近のあなたは、全然あなたらしくないわ」

穂乃果「……」

絵里「さっきだって、そう。あなたはμ'sのリーダーでしょう? なんで海未に判断を、投げたの?」

穂乃果「……だって私なんかより海未ちゃんの方が頭いいし、正しい判断をしてくれるかな、って」

絵里「だったら海未がリーダーをやるべきよね?」

穂乃果「……」

絵里「いい、穂乃果。別にあなたがμ'sの発起人だから、言いだしっぺだから、リーダーを任せてるわけじゃないのよ」

絵里「『あなただから』、リーダーを任せてるの。私たちは、『高坂穂乃果という女の子についていきたい』と思ったから、μ'sに入ったの」

絵里「誰の判断が正しいかなんて、関係ない。私たちはあなたの下した判断を、正しいと信じるしかないんだから」
  


114: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 22:08:04.15 ID:9YrMYlDRM.net

   
絵里「だからあなた自身が、自分の判断を正しいと信じられないのなら……リーダーなんて、やるべきじゃないわ」

絵里「ただ、これだけは忘れないで。あなたが自分を信じられなくても、私たちは全員あなたを、信じてるってことを」

穂乃果「絵里ちゃん……」

絵里「……あぁ、ごめんなさい。偉そうに、説教なんてしちゃって……。でも、ずっと思ってたことだから」

穂乃果「絵里ちゃん、ありがとう。こんな私のことを、信じてくれて……」

絵里「……こんな、って」

穂乃果「私なんかのことを信じてくれて、ありがとう……。そうだよね、私はμ'sの、リーダーなんだもんね……」

絵里「……」


絵里(やっぱりおかしい……。今は私に説教をされて、落ち込んじゃってるんだとしても……)

絵里(最近の穂乃果は、全然穂乃果らしくない。あの底抜けの明るさみたいなものが、今の彼女からは感じられない)

絵里(いつだってみんな、穂乃果の元気で積極的な姿に、惹かれてた……。でも、今は……)

絵里(その元気を支えてきた、『自信』みたいなものが……彼女から、消えてしまったかのような――)


絵里「……」

絵里「そういえば、今日もあなた……」

穂乃果「ねえ、絵里ちゃん。今から、私……」

絵里「えっ……?」

穂乃果「……」スッ

絵里「っ! わ、分かったわ。みんなにも、伝えておくから」

穂乃果「……ごめんね、ありがとう」


穂乃果「でも多分……これで、最後だから」
  


115: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 22:19:58.46 ID:9YrMYlDRM.net

   
――――

キーンコーンカーン



絵里「予鈴が鳴ったわね。朝練は、ここまでにしましょう」

にこ「ほ、ほんとにギリギリまでやらせたわね……っ!」

花陽「早く戻らないと、遅刻になっちゃうよぉ~……」

真姫「着替えもしなきゃいけないし、とにかく部室に戻りましょ」

海未「そうですね……」

穂乃果「……海未ちゃん」

海未「は、はい?」

穂乃果「ちょっと、いいかな。こっち……」

海未「……?」スタスタ


ことり「……」

ことり(ダメだ、私……。全然練習に、集中できてない……)

ことり(ラブライブはもう、明日なのに。このままじゃ、にこちゃんの言う通り……)

ことり(……やめよう)

ことり(悩むのはもう、やめよう……。せめて明日の最終予選が、終わるまでは……)

ことり(放課後の練習は、しっかりやらなきゃ。気持ちをちゃんと、落ち着けて……)


ことり「……あれ?」

ことり(海未ちゃんと穂乃果ちゃん、何か話してる……。戻らないのかな……?)
   


116: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 22:21:18.23 ID:9YrMYlDRM.net

   
穂乃果「海未ちゃん……」

海未「どうしました、穂乃果?」

穂乃果「……」

海未「……?」

穂乃果「海未ちゃんは、その……」゙

海未「……はい?」

穂乃果「こ、ことりちゃんのことが、好き、なの……?」

海未「えぇっ!?」ビクッ

穂乃果「……」

海未「すっ、好き、というのは……」

穂乃果「……私、聞いちゃったの。海未ちゃん、ことりちゃんに、告白されたんでしょ……?」

海未「っ!! あっ、そ、それは……」

穂乃果「海未ちゃんは……ことりちゃんのこと、好き?」

海未「うっ……」

海未「……わ、分からないんです」

穂乃果「分からない……?」

海未「この数日間はずっと、そのことばかり考えていました……。ずっと、考えて……でも……」

海未「答えは、出なかった……。私には自分の気持ちが、分からなかった……っ!」

海未「ことりのことを考えると、頭がフワフワして、胸がドキドキして……。こんな気持ち、初めてなんです……っ!」

穂乃果「……そっか」

穂乃果「そう、だよね……」

穂乃果「海未ちゃんはやっぱり、ことりちゃんのことが……」

海未「……穂乃果?」
  


117: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 22:30:37.75 ID:9YrMYlDRM.net

   
穂乃果「分かってた……」


『私は絶対に、穂乃果ちゃんに、勝つんだ』


穂乃果「私なんかがことりちゃんに、勝てるわけないって……」

穂乃果「親友だから分かるもん。ことりちゃんは……。私なんかよりずっと可愛くて、魅力的で、それで……」


『海未ちゃんに、ずっと好きでしたって……。私の子供の頃からの気持ちを、伝えたの』


穂乃果「私なんかよりずっと、『勇気』があった……」

穂乃果「ことりちゃんは、全然ダメな子なんかじゃない……。私なんかより、ずっとすごいんだ」

穂乃果「そんな……そんなことりちゃんと、戦ったって……。勝てるわけ、なかったんだ」

穂乃果「だって私には、何もないから……。本当にダメなのは、私の方なんだから……っ!」

海未「穂乃果……っ!?」

穂乃果「……でも」

穂乃果「でも、あった。一つだけ、私には、あったんだ……」

穂乃果「海未ちゃんに、振り向いてもらえる方法が、あったの……っ!」

海未「穂乃果、なにを、言って……」

穂乃果「これ……」スッ

海未「……」

海未「な、なぜ、それを、あなたが……?」


穂乃果「……におい――」


穂乃果「――私の、『匂い』。これなら私でも、ことりちゃんに勝てるかもって、思ったの……」

穂乃果「だって海未ちゃんは、私の匂いを嗅いで……喜んで、くれたから……」

穂乃果「『これ』を押して、『いい香り』だって……。私の匂い、大好きだって、言ってくれたから……っ!」

海未「っ! あっ、あれは、その……」

海未「……」



海未「えっ……?」
  


124: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 22:44:52.83 ID:9YrMYlDRM.net

 
海未「穂乃果……それ……」

穂乃果「……」

海未「そ、それ、スイッチ……。スイッチを、よく見せてください……っ!」ガシッ

穂乃果「……海未ちゃん」

海未「……っ!!」


海未(レベル、『2』……)


海未「……いつから、ですか?」

穂乃果「『2』にしたのは、朝練が始まる前だよ」

海未「っ! そんな……」

海未「……待ってください。『2にしたのは』……?」

海未「で、では、『1にしたのは』……っ!?」

穂乃果「……ずっと、だよ」

海未「ずっと……?」

穂乃果「ずっと……。『ずっと』、だよ。あの日からだから、えっと……。9日間くらい、かな……」

海未「なん、ですって……?」

穂乃果「最初は、軽い気持ちだったんだ。『1』くらいだったら、誰にも迷惑かけないかな、って……」

穂乃果「『香水』代わりに一回、試しにって……9日前のあの日、スイッチを押して、学校に行ったの」

穂乃果「海未ちゃんに、喜んでもらいたかった、から……」

海未「っ!!」

穂乃果「だけどその日ことりちゃんと、話をして……。私が海未ちゃんに振り向いてもらうには、『匂い』しかないって、思って……」

穂乃果「このスイッチは、もう少しそのままにしておくことにしたんだ……。でもね――」

穂乃果「本当はすぐに、やめるつもりだったんだよ……? 海未ちゃんにまた喜んでもらえたら、すぐに、やめるつもりだったんだよ……」

海未「穂乃果……」

穂乃果「でも……。あはは。結局今日までずっと、これを『0』にすることは、なかったよ……」

海未「ほ、穂乃果……。あなたは9日間もずっと、ほのスメルを……?」

穂乃果「……」

ニコッ……


穂乃果「だって海未ちゃん、全然気づいてくれないんだもん……」
  


136: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 22:56:37.57 ID:9YrMYlDRM.net

カチ、カチ

フッ

穂乃果「……他のみんなには、ね。こっそり話してたの。海未ちゃんに気づいてもらえるまで、みんなは協力してくれるって言ってくれた……」

穂乃果「でも『1』じゃ海未ちゃんは、もう気づいてくれなかった。だから……さっき、初めて『2』まで上げてみたの」

穂乃果「みたん、だけど……)

海未「……そう、ですか」

穂乃果「うん……」

海未(この練習中、彼女のほのスメルはずっと、レベル2だった……なのに)

海未(私はそれに、気づけなかった……)

海未(それどころか……。実に9日間もの間、彼女のほのスメルは、増幅されたままだった)

海未(なのに、それにすら全く、気づけないなんて……)

海未(ずっと考え事をしていたから……? ほのスメルを気にしている余裕なんて、なかったから……?)

海未(いえ……今までどんなときだって私は、ほのスメルのことを忘れたことなどありません)

海未(……もしかして――)

海未「穂乃果……もう一度、スイッチを」

穂乃果「……」


カチッ

――『1』

フワァ


海未「……」スンスン

海未「……もう一度」


カチッ

――『2』

フワッ


海未「……」スンスン

海未(……やはり、ですか)

海未(私はあの廃墟で、あまりにも長く、レベル4を嗅ぎ過ぎてしまった……)

海未(そのせいで私には、強い『耐性』ができてしまった……。レベル2程度の匂いではもう、変化に気づけないほどに……)
  


138: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 23:06:14.91 ID:9YrMYlDRM.net

 
海未「……ごめんなさい、気づけなくて」

穂乃果「……ううん、いいよ。私が勝手に、してたことだし」

海未「あなたが私のために、そんなことを考えてくれてたなんて……思いも、しませんでした」

穂乃果「海未ちゃん……?」

海未「嬉しいです。ありがとうございます、穂乃果」ニコッ

穂乃果「っ!! う、うっ……///」ドキ

穂乃果「や、やだ、よ……」

海未「えっ……?」

穂乃果「やだよ……。どうして、ことりちゃんなの……?」

海未「……穂乃果?」

穂乃果「う、海未ちゃん、言ってくれたよね……? あの時、言ってくれたよね……っ!?」

海未「あの時……?」

穂乃果「わ、私、今でもあの時のこと、思い出すんだよ……っ!? 海未ちゃんと二人で手を繋いで、夜の街を、歩いた時のこと……っ!」

穂乃果「あの夜ね……。私、すごく幸せだったんだよ……。あの時の光景が、今でもはっきり、思い出せるんだよ……っ!」

海未「……あの時、あの、夜――」


ズキン


海未「うっ……」

海未(また、この痛み……)

海未(何か大事な記憶が抜け落ちてしまったかのような感覚……)

海未(そう……。ほのキチになった私はあの日、穂乃果の手を引いて、夜の街を、歩いて……)

海未(それで、それで――)
 


141: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 23:10:22.02 ID:9YrMYlDRM.net

  
穂乃果「それでね、海未ちゃんが怖い男の人から私のことを守ってくれた時、すごくかっこよくて、頼もしくて……っ!」

海未「っ! う、ぅ……」

穂乃果「そ、それで……。その後海未ちゃんが言ってくれた言葉が、私、本当に嬉しくて……っ!」

穂乃果「あの時の海未ちゃんは、確かにいつもの海未ちゃんじゃなかったけど……でもっ!」

穂乃果「海未ちゃんがくれたあの時間は、わたしにとってかけがえのない、大切な思い出で……っ!」

海未「わ、私、は……」

穂乃果「ねえ海未ちゃん、あの時、言ってくれたよね……?」

穂乃果「お、覚えてるよね……っ!? あの時のこと……っ!」

海未「私は、あの時――」




『……穂乃果』

『えっ……?』


『私が、あなたを――』




海未「私はあの時、なんと、言ったのでしたっけ……?」

穂乃果「……」



にこ「ちょっとあんたたち、いつまで話してんのよーっ!?」

花陽「も、戻らないのぉーっ!?」

絵里「ふ、二人とも、急いでっ! 遅刻になっちゃうわっ!」アセアセ

希「えりち、そんなに焦るくらいなら、早めに切り上げといたらよかったやん……」
 


142: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 23:16:04.15 ID:9YrMYlDRM.net

 
カチッ

――『3』

ブワッ

海未「っ!? 穂乃果……?」

穂乃果「ごめん……ごめんね」

穂乃果「私にはもう、これしか、ないから……」

穂乃果「ことりちゃんみたいな魅力的な女の子に、勝つ方法は……」

穂乃果「海未ちゃんみたいな素敵な女の子に、振り向いてもらえる方法は……」

穂乃果「もう、これしかないの……。私には、『匂い』しか、ないから……っ!」

穂乃果「私なんかができることは、このスイッチで自分の匂いを、強くすることくらいしかないからっ!」

真姫「ちょ、ちょっと、大声出してどうしたのよ?」

凛「なにか、あったのかにゃ? ってあれ、この匂い……」

ことり「……穂乃果ちゃん?」


ことり「穂乃果ちゃんっ!? まさか――」

海未「っ!! みんな――」

カチッ

 
――『4』


ブワァッ!


「「――――っ!!?」


絵里「あ、ぁ……///」

にこ「あ、ああぁ、あぁあぁっ!?////」

凛「うっ、こ、これ、って……っ!///」

希「う、ぁあ、あぁあ……っ//」

真姫「れ、レベル4……っ!? うっ、ぁあぁ……///」

花陽「なん、で、穂乃果、ちゃん……っ!?///」

海未「みんな……っ!」

ことり「鼻を塞いでっ!!」
  


143: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 23:23:41.53 ID:9YrMYlDRM.net

  
海未「ことり……っ!?」

バッ

にこ「う、うぅ、ふぅ~……っ!!////」ガクッ

絵里「はぁーっ、はぁーっ///」フラ

花陽「あ、ぅ、うぅぅ……///」ガタガタ

希「うっ、あ……//」ビクン

海未(っ! ことりが咄嗟に指示を出してくれたおかげで、ギリギリまだみんな、意識を保てている……っ!)

海未(だけど、それでもまずい……っ! 特に今までレベル4を嗅いだことのなかった、あの4人は……っ!)

穂乃果「う、うみ、ちゃん……どう、かな。私の匂い……」

海未「穂乃果……っ! スイッチのレベルを、下げてくださいっ!」

穂乃果「っ! えっ……」

海未「『下ボタン』ですっ! 早くっ!!」

穂乃果「なんで……なんで海未ちゃん、鼻を塞いでるの……っ!?」

海未「はぁ……っ!?」

穂乃果「なんで……やだよ、嗅いでよ、わたしの匂い……」

ことり「穂乃果ちゃん……っ!?」

海未「うっ……はぁ……っ!」

海未(……仕方ありません。耐性のできた今の私なら、レベル4でも――)

海未「……」スゥゥ

穂乃果「っ! 海未ちゃん……どう? 私の匂い……」

海未「……ふ、ふふっ」

海未「とてもいい、香りですよ。穂乃果……」

穂乃果「ほ、ほんと……?」

海未「え、ええ……」

穂乃果「えへへ、じゃあ……」



穂乃果「もっと匂い、強くしてあげるね……」
 


149: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 23:32:30.91 ID:9YrMYlDRM.net

 
海未「……えっ」

ことり「っ! うっ、ぅ……」

真姫「もうダメ、息、限界……っ!」

凛「や、やだよ、凛、もうほのキチになんて、なりたくないよ……っ!」

海未「……穂乃果。ダメ、ですよ?」

穂乃果「海未ちゃん……」

海未「ダメですよ……? それだけは、絶対に……」

穂乃果「……だ、め?」

海未「『レベル5』だけは、絶対にダメですっ! 穂乃果っ!」ガバッ

穂乃果「いやっ! う、うぅっ……! いやぁっ!!」バッ

海未「っ!? ほ、穂乃果……っ!」

穂乃果「なんで、なんでダメなのっ!? うっ、海未ちゃんは、喜んでくれてたんじゃないのっ!?」

穂乃果「海未ちゃん、言ってたよねっ!? 『レベル5はまだ嗅いだことがないから、楽しみだ』ってっ!」

海未「うっ……。で、でも、あの時はっ!」

穂乃果「やっぱり海未ちゃんは……元に戻って、ことりちゃんのことを好きになって、穂乃果のことなんてどうでもよくなっちゃったの……っ!?」

海未「何をバカなことを言ってるんですかっ! そんなわけ――」

穂乃果「そうでしょうっ!? だから穂乃果の匂いにも、気づいてくれなくなって……う、うぅ、ぅ……っ!」

穂乃果「どうして、どうして元に戻っちゃったの、海未ちゃん……?」

海未「えっ……」

穂乃果「私、幸せだったのに……っ! 海未ちゃんと、一緒なら……私はあのまま『いつもの日常』に帰れなくたって、よかったのにっ!」

穂乃果「なのに、どうしてっ! どうして『ほのキチ』じゃなくなっちゃったの、海未ちゃんっ!!」

海未「っ!!」

ことり「っ! ほ、穂乃果ちゃん……」

穂乃果「お願い……。私を見て、海未ちゃん……」

穂乃果「もう一度私の手を取って……。私を抱きしめて、海未ちゃん……」

穂乃果「『あの時』の海未ちゃんに戻ってよ……『あの夜』のことを思い出してよ、ねえ……」

海未「穂乃果っ!!」

穂乃果「もう一度私のことを好きになってよっ!! 海未ちゃん――っ!!」

海未「っ!! まっ――」
 


151: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-dKBD) 2015/10/25(日) 23:35:15.12 ID:9YrMYlDRM.net

  
     
カチッ


 

――『5』


  
   
   
ゴォ……ッ!!


   
  
第3部、『レベル5』、完。

最終部、『恋のスメル』に続く。
 




353: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 20:47:04.84 ID:u7R336fbM.net

  
キーンコーンカーン


雪穂「1限終わり、っと……ふぅ」パタン

亜里沙「雪穂ーっ!」

雪穂「亜里沙。なに?」

亜里沙「明日、楽しみだねっ!」

雪穂「ふふっ。亜里沙、それさっきも聞いた」

亜里沙「だってだってっ! いよいよ明日はラブライブ、最終予選だよっ!?」

雪穂「分かってるって」

亜里沙「μ'sがA-RISEと、戦う日なんだよっ! すっごく、大事な日なんだよっ!」

雪穂「分かってるってばー」

亜里沙「うわあぁ~っ! し、しかも明日のμ'sのステージでは、待ちに待った新曲が披露されるんだよっ!」

雪穂「あぁー、そういえばお姉ちゃんも、そんなこと言ってたっけ」

亜里沙「楽しみだよぉ~っ! 楽しみ過ぎて、全然授業に集中できないよぉっ! どうしようっ!?」

雪穂「いや、授業はちゃんと受けようよ……」ピッ

雪穂「……あれ? なんかいっぱい電話来てるな……」

亜里沙「えっ? 誰から……」


ヴーヴー


雪穂「おっ、と思ったらまた……」

亜里沙「……? って、ええぇーっ!?」

亜里沙「ゆ、雪穂っ!? たいへんっ! 『変態』から電話が――」

雪穂「海未ちゃんか。なんだろ、ちょっと出てくるね」

亜里沙「海未さんっ!? なんで海未さんが、変態なのっ!?」

雪穂「あ、ああ、色々あったのよ、いろいろ」

亜里沙「海未さんは変態なんかじゃないっ! 今すぐ訂正して、雪穂っ!!」プンプン

雪穂「わ、分かったよ、ごめんってば……」

雪穂(ふざけて電話帳の名前、変えるんじゃなかったな……)
 


356: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 20:55:17.10 ID:u7R336fbM.net

  
ピッ

雪穂「もしもし、海未ちゃん?」

『……』

雪穂「海未ちゃん? もしもーし」

『あ、雪穂……。よかった、やっと、出てくれましたね……』

雪穂「そりゃ授業中に電話かけられても、出られないよ。ていうか、そっちも授業中のはずじゃ……」

『雪穂……あなたに、お願いが……』

雪穂「……? もしもーしっ! なに、聞こえないよーっ!」

『あなたに、お願いが……あるんです……』

雪穂「お願い? うーん、どうしよっかなー。海未ちゃんには色々と、恨みがあるしなぁー」

『助けて、ください……』

雪穂「えっ、なに……?」

『大変、な、ことに……』

雪穂「……ね、ねえ。もうちょっと大きな声で、喋れない? 聞き取り辛いんだけど」

『大変なことに、なってしまったんです……っ!』

雪穂「大変……?」

『レベル5、が……』

雪穂「……えっ?」

『レベル5が、押されてしまったんです……っ!!』

雪穂「……」
 


357: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 21:04:50.22 ID:u7R336fbM.net

  
雪穂「な、なん、で……?」

『穂乃果が……穂乃果がスイッチを、押してしまって……っ!』

雪穂「おねえ、ちゃん……?」

『で、でもそれは、私のせいなんです……っ! 私が穂乃果の気持ちに、気づいてあげられなかったから……っ!!』

雪穂「ちょ、何を言ってるのっ? 意味わかんないよ、海未ちゃん」

『ゆ、雪穂、もう、あなたしか……っ! あなたしか、いないんです……っ! あ、あぁぁ』

雪穂「落ち着いて、海未ちゃんっ! 海未ちゃんはレベル5を、嗅いじゃったの……っ!?」

『かっ、嗅いで、しまいました……』

雪穂「……っ! そ、それで……?」

海未『とんでもない匂いでした……。しばらく何も考えられなくなるくらい気持ちよくて、もうなんというか、天国って本当にあるんだな、って――』

雪穂「匂いの感想なんて聞いてないってのっ!! 私が聞きたいのは、海未ちゃんはまたほのキチになっちゃったのかってことっ!」

『わ、私は、大丈夫です……。前にレベル4を長時間嗅いだおかげで、耐性ができていたので……』

雪穂「まあ、ほのキチなら私に助けを求めてきたりしないか……。それで、その」

雪穂「海未ちゃん以外に、レベル5を嗅いじゃった人は……? 考えたくないけど、嗅いでほのキチになっちゃった人は、いるの……?」

『……』
 


359: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 21:12:44.33 ID:u7R336fbM.net

   
『全員、です……』

雪穂「えっ?」

『私以外の全員が、レベル5を嗅いで……。ほのキチに、なってしまいました。助かったのは、私だけです……』

雪穂「……」

雪穂「……はは」

ペタン

雪穂「うそ、でしょ……? じゃあ、なに……?」

雪穂「ことりちゃんも……凛さんも、真姫さんも、また……?」

『え、ええ……』

雪穂「絵里さんや、希さんや、にこさんや、花陽さんまで……?」

『は、い……。うっ、うぅ……っ!』

雪穂「……そん、な」

『みんな……みんなほのキチに、なってしまったんです……』

雪穂「う、海未ちゃん……?」

『……はい』

雪穂「悪いけど、私には何も、できそうにないよ……。だって私、今までほのキチ『1人』相手にだって、まともに戦えたことないんだよ……?」

雪穂「海未ちゃんやことりちゃんと違って、私は……」

『……』

雪穂「それが、今度は『7人』だなんて……。そんな人数、どうすればいいの……?」
  


360: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 21:20:42.59 ID:u7R336fbM.net

  
雪穂「本当にみんなは、元に戻せるの……? ねえ、海未ちゃん……っ!」

『雪穂……』

雪穂「ラブライブ、明日だよね……っ!? 亜里沙がね、すごく楽しみにしてるんだよ……っ!」

雪穂「ううん、亜里沙だけじゃない……。私だって、すごく、すっごく、楽しみにしてた……っ!」

雪穂「ねえ、μ'sは……。私たちの大好きなμ'sは、本当に元に戻れるの……っ!?」

雪穂「まさかこのまま解散なんてことに、ならないよねっ!? わ、私、やだよ、そんなの……っ!」

『……』


『……ごめんなさい、雪穂』

雪穂「えっ……?」

『言葉が足りませんでした……。そうじゃ、ないんです』

雪穂「そうじゃない、って……」

『7人じゃ、ないんです。ほのキチになったのは……』

雪穂「……えっ? だ、だって海未ちゃん、『全員』って……」

『違うんです。私以外全員というのは、そういう意味ではなくて――』



 
    
『――私以外の、音ノ木坂学院全校生徒が、ほのキチになってしまったんです』



 
  
雪穂「……は?」

『つまり……いいですか、雪穂。落ち着いて、聞いてくださいね……』

『μ'sの解散どころの話ではなく……。このままでは、あなたや亜里沙が来年、入学する前に――』

 


『音ノ木坂学院は、廃校になります』




――――最終部、『恋のスメル』

 




366: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 21:48:36.53 ID:u7R336fbM.net

  
――――――

『レベル5とは……。つまり超広範囲に拡散する、ほのスメルだったんです』

『その刺激は、レベル4以上。そんな強烈なスメルが、学院全体を覆ったんです』

『その結果、音ノ木坂の全生徒が、ほのスメルを嗅ぐことになってしまった……。厳密には、全ての生徒を確認したわけではありませんが』

『しかし私が見た限りでは、正常な生徒は一人もいませんでした』

『見た、というのはですね……。先ほどまで私は、穂乃果を探して、学校中を探し回ってたんです』

『ええ。穂乃果は……屋上でスイッチを押した後、そのままどこかへ、走り去ってしまったんです』

『μ'sのみんなは、レベル5が押された直後に、全員気を失ってしまいました。私も危なかったのですが、なんとか意識を保ちました』

『しかしあまりにも刺激が強すぎて、しばらく動けなくなってしまったんです。その間に、穂乃果は……』

『……彼女を探して学校中を走り回っている間、私が見た光景は、凄惨の一言でした』

『教室や廊下で気を失っている生徒が、半分ほど……。しかしレベル5ともなれば、ほのキチ化の進行速度も、レベル4とは段違いなのでしょう――』

『もう半分の生徒は、既にほのキチとして目を覚まし、学校中を彷徨っていました……。今はもしかしたら、もっと増えているかもしれません』

『……危険を感じた私は、ひとまず学院を脱出しました。学院の外までは、スメルは届いていないようでしたが、しかし――』

『今でも学院の中はきっと、レベル5が充満しています。あの場所には今はもう、誰も入ることができません』

『私と……あなた以外は』

『……ごめんなさい。本当に、勝手なお願いなのは、重々承知しています』

『しかしこんなことを頼めるのはもう、スメルの効かない、あなたしかいないんです……っ!』

『私と一緒に学院に戻って、穂乃果を……スイッチを、探してくれませんか……っ!?』

『お願いします、雪穂……っ! この使命を果たせるのは、もはや……この世界で、私とあなたしかいないんですっ!』
 


369: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 21:54:03.14 ID:u7R336fbM.net

  
――――――


タッタッタッ……

雪穂「はぁ、はぁ……っ!」

雪穂「もう、なんで、こんなことに……っ!」


『あなたしかいないんです……っ!』


雪穂「なんで、私が……っ! こんなこと……っ!」

雪穂「やめてよ、うっ、うぅ……っ!」


『これは、他の誰でもない、お姉ちゃん自身が持つべきなんだ。これは、そういうスイッチなんだよ』

『それはもう、お姉ちゃんの物だから。あとはどうしようが、自由だよ』


『穂乃果が……穂乃果がスイッチを、押してしまって……っ!』



雪穂「くっ、う、ぅ……っ!」

雪穂「私が……私がお姉ちゃんに、スイッチを渡さなければ……っ!」

雪穂「もう、やだ……っ! 私のせいじゃん、全部……」

雪穂「わ、私のせいで、みんなが……たくさんの、人が……っ!」

雪穂「……ふっ、うぅ」グスッ

雪穂「ううぅ……っ!!」

タッタッタッ……!
 


370: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 21:59:21.03 ID:u7R336fbM.net

  
「雪穂っ! こっちですっ!」


雪穂「うっ、海未ちゃん……。はぁ、はぁ……っ」

海未「ごめんなさい、無理を言って……。ここまで来てもらって」

雪穂「いいよ、緊急事態でしょ……。学校の方は、早退ってことにしてもらったから……」

海未「……雪穂。泣いて、いるのですか?」

雪穂「っ! な、泣いてなんかないっ!」ゴシゴシ

海未「そうですか……。では、急いで学院に戻ります」

雪穂「う、うん……」


タッタッタッ……


海未「……雪穂」

雪穂「なに……?」

海未「もしもあなたが穂乃果にスイッチを、渡していたんだとしたら――」

雪穂「っ! うっ、あ、ご、ごめんなさ」

海未「そうだとしても、あなたが責任を感じる必要は、一切ありませんからね」

雪穂「……えっ?」

海未「全ては私の責任です。あなたはただ、巻き込まれてしまっただけなんですから」

雪穂「……」

海未「年下のあなたをここまで巻き込んでしまうことになってしまったのは、 胸が詰まる思いです。ですが……」

海未「それ以上にあなたには、感謝します。よく、来てくれました……。あなたは私が知る中で、最も勇敢な女子中学生です」

雪穂「う、な、なにそれ……。そんなこと言われたって、私は……」

海未「……」

雪穂「……あり、がとう」

海未「……それはこちらの台詞ですよ、雪穂」

タッタッタッ……
 


371: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:05:48.16 ID:u7R336fbM.net

  
――――――

 
音ノ木坂学院

正門


ザザァ……



雪穂「……誰も、いない」

海未「ええ、とりあえず、外には……。やはりスメルも、ここまでは届いていないようです」

雪穂「静かだね……」

海未「はい……」

雪穂「ここから見る限りじゃ、いつも通りの音ノ木坂にしか見えないけど……」

海未「……そうですね。私もここにいると、さっきまでの出来事が嘘みたいに思えます」

雪穂「……」

海未「雪穂……。覚悟は、できてますか?」

雪穂「……ここまで来て、引き返すわけにはいかないでしょ」

海未「その通りです。では――」

海未「まずは、穂乃果を探します。彼女を見つけ出して、なんとしてでもスイッチのレベルをリセットします」

海未「それが、最優先です。レベル5が充満している今の状態では、例えほのキチを元に戻せたとしても、すぐにまた意識を失ってしまうかもしれませんから」

海未「そもそも全校生徒のほのキチを、どうやって元に戻すか、ですが……時間がありません。その方法は、後で考えます」

雪穂「……うん、分かった」

海未「それでは……手を」スッ

雪穂「えっ……なに?」

海未「繋いでいきましょう。その方が安心ですし、恐怖も紛れるでしょう」

雪穂「……別に私は、怖くなんてないし」

海未「……ふっ、そうですか」
 


372: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:07:14.69 ID:u7R336fbM.net

  
ギュッ


雪穂「っ! ちょ、話聞いてたっ!?」

海未「ごめんなさい。私が、安心したいんです」

雪穂「えっ……?」

海未「こうして、誰かと手を繋ぐと……。何があってもその人を守りたい、という気持ちになるんです」

海未「守るべき人がいる……。それだけで私は、安心できるんです」

雪穂「……なっ」

雪穂「なんで私が、変態の海未ちゃんなんかに守られなきゃいけないのさっ!」ムキーッ

海未「雪穂……?」

バッ

海未「あぁっ!?」

雪穂「自分の身くらい、自分で守るよっ! ほら、さっさと行くよっ!」

スタスタ……


海未(……姉妹なのに、穂乃果とは大違いですね)

海未(いえ、ただ私が雪穂に、嫌われているだけですか……)

海未「……って雪穂、そっちに行ってはいけませんっ! こっちですっ!」

雪穂「えっ? でも入口はこっち……」

海未「中庭に、私が脱出に使った窓があります。そこから、校舎の中に入ります」

雪穂「……いいけどさ。なんでわざわざ、そんなところから?」

海未「下駄箱には、『穂乃果の靴』がありますからね」

雪穂「はぁ……?」

海未「では、こっちから行きましょう」
 


374: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:16:36.06 ID:u7R336fbM.net

  
――――


1階、廊下


グイッ


雪穂「よっ……と」スタ

海未「……とりあえず、潜入成功です」

海未「うっ! やはり、スメルはまだ充満しているようです……。はぁ、うっ……///」

海未「レベル5は刺激が強すぎます……。なるべく吸ってしまわないようにしないと……。うぐっ……」ググッ

雪穂「……」クンクン

雪穂「……ほんとだ、すごいね。確かに、お姉ちゃんの匂いがする」

海未「……ふっ、レベル5を嗅いで、その程度の感想ですか。やはり私とは比べ物にならない耐性をお持ちですね、雪穂……」

雪穂「そんなことで褒められても嬉しくないし……ていうか」

雪穂「やっぱり誰もいないけど」キョロキョロ

海未「ほとんどの生徒は教室がある、反対側にいるはずです。朝のホームルームの時間帯でしたからね」

雪穂「海未ちゃんが探したのは、その教室がある方なの?」

海未「はい……。しかしそっちもまだ、くまなく探せたわけではないのですが」

雪穂「じゃあとりあえず、この辺から探そ。海未ちゃんあっち、私こっちね」

海未「待ってくださいっ! 単独行動は危険です、一緒に行きましょうっ!」

雪穂「はぁっ!? 何言ってんの、手分けして探した方がいいに決まってんじゃんっ!」

海未「そ、それはそうですが、しかし……っ!」

雪穂「急いでお姉ちゃんを探すんでしょっ!? 見つけたら、連絡するからっ!」タッタッタッ……

海未「あっ、雪穂……っ!」
 


375: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:21:28.20 ID:u7R336fbM.net

  
タッタッタッ……


雪穂「はぁ、はぁ……。お姉ちゃん……っ!」

雪穂(私がスイッチをお姉ちゃんに、渡したから……)

雪穂(危険だって、分かってたはずなのに……。あんなスイッチ、やっぱり早く処分してもらうべきだったんだ……っ!)

雪穂(お姉ちゃん……。お姉ちゃんは今、どこで、なにをしてるの……?)

雪穂(一体どんな気持ちで、いるの……?)

雪穂(ごめんね……。お姉ちゃん、どうか、自分を責めないで――)


ドンッ


雪穂「わっ!?」

「きゃっ!」

ドテッ


雪穂「い、たた……」

雪穂(曲がり角……)

雪穂(な、なにしてんの、私、もっと気をつけなきゃ……)


「いったぁ……」

雪穂「あっ、ご、ごめんなさ……」

雪穂「……」



ザワザワ……



雪穂「なに、これ……?」
  


376: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:26:58.48 ID:u7R336fbM.net

   
『私以外の、音ノ木坂学院全校生徒が、ほのキチになってしまったんです――』


 
「はぁ、はぁ……。穂乃果ちゃん、ほのかちゃぁん……///」

「はわわぁ~、すごい、すごいよぉ、穂乃果ちゃんの匂いが、いっぱいだよぉ……////」

「あぁ、高坂さん、あなたの匂いって、こんなに素晴らしいものだったのね……っ!////」

「あはははははっ! あっははははははぁぁっ!///」

「あぁん……。どこなのぉ……。どこにいるの、高坂さぁん……///」

「穂乃果さんっ! あなたの素敵な匂いを、是非ともこの私にっ!///」

「高坂さん高坂さん高坂さん高坂さん高坂さんこうさかさんこうさかさん」

「ほのかぁ……っ! あんたの匂い、もっと嗅がせてえ……////」

「ほのっちぃー、だぁいすきだよぉ……////」

「うひ、うひひひ、うへへへへへ……っ!///」



雪穂「……」ジリ

雪穂「……う、ぁ」

雪穂(なにこれ……。廊下に、こんなに、いっぱい……)

雪穂(あ、明らかにみんな、普通じゃない。まさかこの人たちみんな、ほのキチなの……?)

雪穂「あ、あぁ……」

女子A「う、うぅ~ん。いてて……」ムクッ

雪穂「あっ……?」

女子A「ごめんねー、前見てなかった……。大丈夫?」

雪穂「っ! あ、あなたは、平気なんですかっ!?」

女子A「……?」
  


377: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:36:31.46 ID:u7R336fbM.net

 
女子A「あなた……」

雪穂「えっ……?」

女子B「ちょっとー、大丈夫? あれ、その子……」

女子A「セーラー服だね。別の学校の子かな?」

女子B「なんか見たことある制服だなぁ……。もしかして、中学生じゃない?」

雪穂「あ、あの、その……」

雪穂(まともそうな人がいて、よかったけど……。し、知らない高校生二人と話すのって、ちょっと緊張するかも……)

女子A「にしても可愛いねー、あなた。あはは」

女子B「ほんとねー、食べちゃいたいくらい。うふふ」ナデナデ

雪穂「っ! うっ……///」

雪穂(あ、頭撫でられてる……。高校生って、こんな感じなんだ……)

女子A「それにしても……。似てるよね、この子」

女子B「あ、私も思った。そっくりだよねー」

雪穂「っ!! えっ、あの……」

雪穂(もしかしてこの人たち、お姉ちゃんの知り合い? 私がお姉ちゃんの妹だって、バレた……?)

雪穂(いや、別に隠さなくてもいいのか……。この人たちは、大丈夫そうだし)

雪穂「あ、あのっ!」

女子A「うん?」

雪穂「わ、私、お姉ちゃん……高坂穂乃果の妹の、高坂雪穂と申しますっ!」

雪穂「お二人はお姉ちゃんの、お友達の方でしょうかっ!? あの、もしよかったら、一緒にお姉ちゃんを探して――」

女子A「あーっ! 穂乃果ちゃんの、妹っ!?」

女子B「そっかーっ! 道理で似てると思ったよーっ!」





女子A、B「「匂いが」」
 


380: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:44:10.74 ID:u7R336fbM.net

 
雪穂「……えっ?」

女子A「穂乃果ちゃんの妹……ゆきほちゃんかぁ。可愛いなぁ……」

女子B「お姉ちゃんを探してるんだ? 実は私たちもさっきから探してるんだけどさ、見つからなくて」

女子A「ねえ、でもさ……。もうこの子で、よくない? 可愛いし、良い匂いだし……」

女子B「そ、そうだね、もう我慢できそうにないし……。うん、いいんじゃない……?」

雪穂「ひっ……!?」ビクッ

女子A「ね、ねえ、ゆきほちゃん、お姉さんたちと、いいことしない……?」ジリ

女子B「大丈夫、怖くないよ……。ちょっと匂いを、嗅がせてくれるだけでいいから……っ!」ジリ

雪穂「い、いやぁっ! こ、来ないで……」

女子A「はぁ、はぁ……っ////」スンスン

女子B「いい、いいよぉ。ゆきほちゃん、良い匂いだよぉ……っ!///」スンスン

雪穂「や、ぁ……」

雪穂(なんで……?)

雪穂(なんで私が、こんな目に……)

雪穂(誰か……)

雪穂(誰か、助けて……。だれか――)


ドンッ! ドンッ!


女子A「きゃあっ!?」ドサッ

女子B「うわっ……!?」ドテッ

雪穂「……」

雪穂「あっ……」


雪穂「う、海未ちゃん……?」

海未「まったく……」


海未「すぐに突っ走る癖は、お姉さんにそっくりですね。雪穂」
 


381: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:48:00.06 ID:u7R336fbM.net

  
女子A「いったぁ……。ひ、酷いよ園田さん、いきなり突き飛ばすなんて……」

女子B「私たちはただ、ゆきほちゃんの匂いを嗅ごうとしただけなのに……」

海未「あなたたち……」

海未「……っ!」

雪穂「あ……っ!?」


ゾロゾロ


女子C「はぁ、はぁ……/// あれ、園田さん……?」

女子D「はわわぁ~、海未ちゃんだぁ……。穂乃果ちゃんしらなぁ~い……?」

女子E「園田さん、今すぐ高坂さんの場所を教えなさい。さもないと……」

女子F「あははははははっ! あっはははははははぁっ!」

女子G「その子、高坂さんの妹なのぉ……? あぁん、可愛いわねぇ……」

女子H「ほ、穂乃果さんの妹ですってっ!? い、今すぐ匂いを嗅がせてくださいでありますっ!」

女子I「園田さん園田さん、高坂さん高坂さん高坂さん高坂さん」

女子J「穂乃果……穂乃果はどこなの、海未……。早く、教えてぇ……」

女子K「いいなぁ……ほのっちのいもうと、いいなぁ……」

女子L「うひひ、うへへ……っ! ゆきほのにおい、ほのかににてる……」


雪穂「……」ゾッ

海未「……雪穂、こっちですっ! 走りますよっ!」グイッ

雪穂「っ! う、うん……」


タッタッタッ……
 


385: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 22:55:03.96 ID:u7R336fbM.net

  
海未「はぁ、はぁ……っ!」

雪穂「はぁ……っ! う、海未ちゃん、あの人たちって……っ!」

海未「ええ……。全員、私たちのクラスメイトです」

雪穂「っ! そ、そんな……」

海未「彼女たちは、ほのスメルを求め教室を抜け出し、穂乃果を探しにこんなところまで来たんです……っ!」

海未「しかし私が確認したときは、彼女たちは教室で眠っていたはず……つまり彼女たちは、私が雪穂を呼びに行ってる間に、新たに目覚めたほのキチです」

海未「もう十分な時間が経っています。この分だと相当数の生徒が、既に目覚めて……となると、この辺りにも、大量のほのキチが……」

海未「……っ! やはり、ですかっ!」

雪穂「えっ、うわっ……!?」



「きゃははははーっ! 超ウケる、ウケるんですけどーっ!!////」

「マジやばいんだけどーっ!! あたし今、超しあわせーっ!!////」

「穂乃果ちゃんの匂い、サイッコーっ!! きゃっははははははははぁっ!!////」



雪穂「あ、あの人たちも、クラスメイトっ!?」

海未「い、いえ、隣のクラスの方々です……っ! 駆け抜けますよ、雪穂っ!!」

雪穂「うっ……、わ、わかった……っ!」


タッタッタッ……
  


386: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/10/31(土) 23:04:05.42 ID:u7R336fbM.net

   
――――


海未「はぁ、はぁ……っ! とりあえずこの辺りは、大丈夫そうです……」

雪穂「……あの、海未ちゃん」

海未「はい……?」

雪穂「さっきはその、ありがとう。助けてくれて……」

雪穂「それと、ごめん……。勝手に一人で、突っ走っちゃって」

海未「……いいえ、謝るのはこちらの方です、雪穂」

海未「ほのキチが危険な存在であることは、十分に理解できていたつもりでした……」

海未「しかし、基本的にほのキチは、穂乃果以外の人物に興味を持ったりはしないはずだと……そう考えていたのですが……」

海未「……浅はかでした。これだけたくさんのほのキチがいれば、例外なんていくらでもあり得たんです。特に、妹のあなたに対しては……」

海未「ごめんなさい、雪穂……。こんな危険な場所に、あなたを連れてくることになってしまって……」

雪穂「だ、大丈夫、だよ。私は全然、怖くなんてなかったし……」

海未「……雪穂」


ギュッ……


雪穂「……あっ」

海未「絶対にこの手を離さないでくださいね、雪穂」

海未「私が何があっても、あなたを守りますから。どんなほのキチからも、どんな例外からも、あなたを守って見せます」

海未「ですから……」

雪穂「……」

雪穂「……ん」コク


スタスタ……


雪穂(……お姉ちゃんもこんな風に、海未ちゃんに手を引かれてたのかなぁ)

雪穂(まあ、確かにちょっと、安心はするかも……)
  


410: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 21:26:20.99 ID:CP8Bf93iM.net

 
――――


バタン


海未「……くっ、ここにもいませんでしたか。穂乃果は一体、どこへ行ってしまったのでしょうか……?」

雪穂「ま、まさか、もうこの学校の中にはいないんじゃ……?」

海未「それは大丈夫なはずです。校内にスメルが充満している以上……。外で匂いを感じなかった以上、彼女はこの中にいるはずなんです」

雪穂「……そ、そっか」

海未「ええ……」

海未(……いえ、本当はただ、そう思いたいだけなのかもしれません)

海未(レベル5を纏ったまま、穂乃果が外に出てしまった可能性を、考えたくないだけなのかもしれない)

海未(だってもしそんなことになっていれば、この事件は、音ノ木坂の中だけでは留まらなくなる……)

海未(下手をすれば、今度は秋葉原全体を巻き込む大事件に発展してしまうかもしれない……。そんな未来は、考えたくありません)

海未(しかし全ては、穂乃果次第です。彼女の、気持ち次第……)

海未「……」チラッ

雪穂「……」ギュ

海未(雪穂……今はもう、私のことを信じて、手を離さないでいてくれています……)

海未(だけど、ごめんなさい……。私はやっぱり、あなたに信頼されるような人間では、ないんです)

海未(私は、何もできない。穂乃果をこのまま見つけることができたとしても、私にはなにも……)

海未(むしろ、会わない方がいいくらいです……。今の私が穂乃果に会えば、また彼女を傷つけるだけ……)

海未(下手に刺激すれば、状況は悪化する……。私は穂乃果に対して、なにもしてあげられない……)

海未(だからあなたに頼るしかなかったんです、私は……。穂乃果を救えるのはもう、あなたしかいないのだから)

海未(今の私には精々、ほのキチからあなたを守ることくらいしか、できないのですから――)
 


412: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 21:37:12.30 ID:CP8Bf93iM.net

 
――――


タン、タン

雪穂「……さっきの階にはあまりほのキチ、いなかったね」

海未「ええ……ですが、この階は……」

雪穂「……あれ? なんか、声が聞こえる……」

海未「っ! この階は、後回しにしましょう……」

雪穂「えっ、どうして……?」

海未「『部室』が、あります……」

雪穂「……」

海未「では、もう一つ上の階に行きましょう……なるべく、静かに」

雪穂「わ、分かった……」

雪穂「……」


雪穂「……」チラッ


ドサッ……


雪穂「……えっ?」


「う、うぐぅ、むぐっ、はぁ、ふぅ~///」スンスン


雪穂「うっ……海未ちゃん?」

海未「……はい?」

雪穂「あ、あの人……。あそこで、寝っころがってる人……」

雪穂「あの人が、嗅いでるのって……。もしかして、お姉ちゃんの制服――」

海未「っ! 見てはいけません、雪穂っ!!」


 
「――捕らえなさいっ!!」
 
 


413: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 21:40:05.60 ID:CP8Bf93iM.net

  
ガシッ


「うっ!?」

「さぁ、おとなしくその制服を、渡してもらいましょうか」

「い、いやだ、これは私の物だっ! 絶対に渡すもんかっ!!」

「はっ、いい度胸ですのね。クラス委員長の私に、逆らう気かしら?」

「そんなの、今は関係ないっ! せ、せっかく手に入れたこの『宝物』を、手放したりなんて……っ!」

「ふぅん、ならいいですわ。あなたたち、やっておしまいっ!」

「「はい、委員長っ!!」」

「ひっ……!? いや、なにするのっ! あ、やめ……っ!」

「ふふっ……」

「いや、返してっ! 私の、私の宝物……っ! あ、あぁああぁあ……っ!」


「いやぁあぁあぁあああぁっ!!」



海未(あの方々は……制服のリボンの色からして、三年生ですか)

雪穂「な、なに、あれ……?」

海未「……先を急ぎます、雪穂」グイッ

雪穂「ま、まってよ、でも、あの人……っ!」

海未「今は放っておくしかありません。『やる方』も『やられる方』も、結局はほのキチなのですから……」

雪穂「そんな、うぅ……」

海未「……」


海未(部室の外で、あの様子では……。中は、もっと……)

海未(部室には、穂乃果のバッグがあります。あの中には、ほのスメルが染みついた様々な『宝物』が、納められている……)

海未(あれはほのキチからしてみれば、ほのスメルの宝箱……それを取り合う争いが、あの場所では繰り広げられています)

海未(そんな危険な場所に、穂乃果がいるとは考えられませんが……いざとなればあの中にも、飛び込む必要が……)
  


414: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 21:49:27.00 ID:CP8Bf93iM.net

  
……

ザワザワ……


「はぁ、あぁあ~、穂乃果ちゃぁんー///」

「うぅ~、どこぉ、どこなのぉ、高坂さぁんー///」


海未「……」スタスタ


「はぁ、はぁっ! ねえ、アイドル研究部の部室って、どこだっけっ!?」

「下の階だよぉ。でもあそこは三年生が占拠してて、もう入れそうにないよぉー……」


雪穂「う、うぅ……」スタスタ


「あ、園田さん。高坂さんってどこにいるか、知ってる?」

海未「……知りません。ごめんなさい」

「あれー? その子制服違うね。だれー?」

雪穂「っ!」ビクッ

海未「ただの迷子です。それでは私、先を急ぐので」

「うん、ごめんねー。引き留めちゃって」


「あぁー、どこにいるんだろ高坂さん。早く全身を舐めまわしたいなぁ……」



海未「……実験室。次はこの部屋です」

雪穂「う、うん……」


ガシャァンッ!!


「あぁぁああぁあっ!! 匂いが、匂いが足りないよぉぉっ!!」

「嗅ぎたいいぃぃっ!! 穂乃果のシャツの中に入って、匂いを嗅ぎたいいぃぃっ!!」



雪穂「ひっ!?」

海未「っ! ここは、後回しにしましょう……。次です」
  


416: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 21:58:09.48 ID:CP8Bf93iM.net

  
……

「あはっ、あはははっ、あはははは……」

「うふ、ふふふっ、うへ、えへへ、ふふふ……」

「うひ、ひひひ、ひゃっははははははははははぁっ!!」


雪穂「……はぁ、はぁ」

雪穂(もう何人、ほのキチを見てきたんだろう……)

雪穂(『こっち側』だけで多分、50人近く……でも全校生徒の数には、まだまだだ……)

雪穂(1クラス30人ちょっとだとしても、一年生が確か1クラスで、二年生が2クラス、三年生が3クラスで……)

雪穂(……う、うぅ、嘘でしょ……? まだ、そんなに……)


海未「雪穂……大丈夫ですか?」

雪穂「っ! う、うん……平気……」

海未「ですが、顔色が……」

雪穂「わ、私のことなんかいいから、早くお姉ちゃんを……」


「う、うっ、えぐっ、うぅ……」


雪穂「……えっ?」


「ひぅ、ああぁっ/// あ、あぁあぁ……」


雪穂「……」


「ふっ、うぇ、いやぁ、あ、うええぇえん……っ!」


雪穂「う、海未ちゃん……」

海未「……なんですか?」

雪穂「何であの人、泣いてるの……?」

海未「……」

雪穂「ここまで色んなほのキチを、見てきたけど……。『泣いてる』ほのキチなんて、一人もいなかったよね……?」


「グスッ、あっ、うわぁ、あぁ、あぁあぁ……///」
   


417: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 22:28:08.59 ID:CP8Bf93iM.net

  
海未「……彼女は、『辿り着けなかった者』です」

雪穂「……は?」

海未「当然ですが、生徒の中でも、穂乃果の匂いを直接嗅いだことのある人間など、そう多くはいません」

海未「精々、クラスメイトか……。同級生くらいのものです。それももちろん、全員ではないでしょうが」

海未「しかし一度でも穂乃果の匂いを嗅いだことがあれば、先ほど自分の意識を奪った刺激的な匂いが、いま学院内に充満している甘い匂いが、穂乃果の匂いであることに、気づくことは容易いでしょう」

海未「『穂乃果の匂いを知る人物が、ほのキチになる』……今までで言えば、私やことり、凛や真姫は、このパターンでした」

雪穂「……」

海未「ただ今回の場合においては、『例外』が存在します」

海未「なにせ、全校生徒ですから。むしろ例外の方が、圧倒的に多いくらいです」

海未「つまり、『穂乃果の匂いを知らない人物が、ほのキチになる』パターンです。穂乃果とそこまで関わりのない人物が、ほのキチになった場合……」

海未「……それでも同じように、これが穂乃果の匂いであることに気づくことはできます」

雪穂「えっ?」

海未「穂乃果には、『知名度』がありますから。スクールアイドルμ'sの、リーダーとして……。音ノ木坂学院生徒会長としての、知名度が」

海未「この学院で、彼女のことを知らない人物は、恐らく一人としていないでしょう……。つまり――」

海未「それぞれ自分の中にある『高坂穂乃果』という人物像から、彼女の匂いを『想像』し、自分の嗅いだレベル5の匂いと、結びつけることで……それが穂乃果の匂いであることに気づくことも、可能なんです」

海未「それまで穂乃果の匂いを知らずとも、ここで『気づく』ことさえできれば、あとは同じです」

海未「あとはほのキチとして、ほのスメルを求めて、穂乃果を追い求めるだけです。あるいは穂乃果の所有物などを、探ってみたりとか……」

海未「……それが、正しいほのキチの在り方なんです」

海未「そうしてほのキチとして、正しく振る舞うことができれば……。今まで見てきたほのキチのように、以前の私たちのように、『幸せ』になることができるんです」

海未「……しかし『そこの彼女』は、『気づくことができなかった』」

海未「最後まで『ほのスメル』の正体に、気づけなかった」

海未「『高坂穂乃果』と、自分が先ほど嗅いだ……今も嗅ぎ続けている、『ほのスメルレベル5』を、結びつけることができなかった」

海未「正しいほのキチに、なれなかった」

海未「『幸せ』に……あるいは、『天国』に。あるいは、『新世界』に――」


海未「『辿り着けなかった者』なんです」
 


419: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 22:38:48.84 ID:CP8Bf93iM.net

  
海未「その結果、どうなるか……」


「いや、やだ、いやぁあっ……っ!」


海未「理解不能な匂いに、脳を刺激され……」


「っ! あ、あぁぁあぁっ//// もう、いやぁあっ……///」ビクンッ!


海未「正体不明の快楽に、身を捩じらせ……」


「うっ、ぅ、グスッ、やだよぉ……///」

「こわい、こわいよぉ……っ! たすけて、ままぁ……」ビクンッ……


海未「自分の体に何が起きているのかも分からず、ただ恐怖し、涙を流す……」

海未「……これが『間違ったほのキチ』の、末路です」

雪穂「……」

雪穂「たすけ、られない、の……?」

海未「方法はあります」

雪穂「っ! どんな……?」

海未「簡単なことです。彼女に教えて差し上げればいいんです。ほのスメルの、正体を」

海未「それだけで、彼女は……。正しいほのキチの在り方を、見つけることができるんですから」

雪穂「……はっ」

雪穂「なに言ってんのさ。そんなこと、できるわけないじゃん……」

雪穂「だって、そんなことしたら……。あの人もまたお姉ちゃんのこと、探し出そうとするんでしょ……? お姉ちゃんに変なこと、しようとするんでしょう……っ!?」

海未「……ええ、なるでしょう。それがほのキチとしての正しい行動で、それが彼女たちの幸せなのですから」

海未「彼女を助けたいのなら、穂乃果を犠牲にしなくてはなりません……あなたにそれが、できますか?」

雪穂「そっ……そんなの……」

海未「……できるわけありませんよね。私も、同じです」
 


420: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 22:45:02.30 ID:CP8Bf93iM.net

  
雪穂「……も、元に戻して、あげようよ」

海未「はい……?」

雪穂「た、確か他の人の匂いを嗅げば、元に戻れるんでしょっ!? だったらあの人のこと、元に戻してあげようよ……っ!」

海未「言ったでしょう、スメルが充満している今の状態では、元に戻してもまた意識を失うだけです」

海未「……いえ、そもそも、今の私たちでは彼女を元に戻すことは、難しいんです」

雪穂「なんでよっ!?」

海未「他の人の匂いとは言っても、誰のどんな匂いでもいいわけでは、ないのです」

海未「そして……ほのキチから元に戻るためには、『ほのスメル以外の匂い』と、『気持ちの変化』を促す、『言葉』が必要なんです」

海未「以前、真姫に聞いた話です……。言葉で気持ちを大きく揺さぶることが、ほのキチを元に戻す唯一の方法なのだと……」

海未「しかし、今までほのキチから元に戻すことに成功したのは、私たちにとって近しい人物だけです」

海未「ならば知り合いでもなければ、名前すら知らないような彼女のことを、元に戻すことなんて、私たちにできるのでしょうか?」

海未「……可能性は、限りなく低いです。なぜなら、見ず知らずの彼女の気持ちを揺さぶれるような、『匂い』も『言葉』も、私たちは持ち合わせてなどいないのですから」

雪穂「……でも」

雪穂「でも分かんないじゃん、そんなの……っ! 他に何か方法があるかもしれないし……っ! とにかく色々と、試してみようよっ!」

海未「そんな余裕はありません。私たちは一刻も早く、穂乃果を見つけなくてはならないのですから」

雪穂「うっ……、じゃああの人はこのまま、見捨てるの……?」

海未「……今はそうするしか、ありません」

雪穂「そんな……そんなの、ひどい……」

海未「雪穂。仮に時間をかけて、彼女一人を元に戻せたとしても……」

海未「この学院には、今や『200人』近くのほのキチがいるんですよ?」

雪穂「っ!!」
 


421: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 22:48:21.25 ID:CP8Bf93iM.net

  
雪穂「わっ……」

海未「……」

雪穂「分かってるよ、そんなの……。分かってる、けど……」

海未「……いいですか、雪穂」

海未「教室のある『反対側』にいるほのキチの、恐らく半分は、彼女と同じ『辿りつけなかった者』たちですよ?」

雪穂「っ!! えっ……」

海未「彼女たちには『穂乃果を探し回る』という目的がない以上、教室を出る理由はありませんからね……。きっと今も多くの生徒が、あちら側で苦しんでいます」

海未「……もしかしたら、周りのほのキチに合わせて穂乃果を探し始めている者や、当てもなく匂いの原因を探って、学校中を彷徨っている者もいるかもしれません」

海未「そこの彼女は、後者でしょう。ここまで彷徨ってきて、ここで力尽きたんです……」

雪穂「……」

海未「……分かりますか、雪穂。彼女一人を助けてる暇なんて、ないんです。あちら側に行けば、こんな場面は何度でも目の当たりにすることになるんですから」

雪穂「……うっ、うぅ」

海未「行きましょう、雪穂……。決して後ろを、振り向かないように……」

雪穂「うぅぅぅ……っ!」

グイッ

スタスタ……


「う、ぅぅ……ひうっ、たす、けてぇ……」


海未「……」




「たすけて……そのだ、さぁん……っ」



海未「――っ!!」
  


422: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 22:55:53.11 ID:CP8Bf93iM.net

  
雪穂「う、海未ちゃん……? 今、あの人……」

海未「走りますっ! 雪穂っ!!」

雪穂「っ!? ちょ、ちょっと……」

「……け、て……」


タッタッタッ……


海未(……そう、ですよね)

海未(穂乃果だけじゃない……。私のことを知ってくれてる人だって、この学院には、たくさんいるんですものね……)

海未(……)

ギリッ……



雪穂「ねえ、海未ちゃん……っ!?」

海未「……なん、ですか」

雪穂「レベル5をリセットしたらさ……。あの人のこと……」

雪穂「ううん……みんなのことだって、元に戻せるんだよねっ!?」

海未「……」

雪穂「μ'sの、みんなも……。音ノ木坂の、みんなもっ! 全部元通りに、なるんだよねっ!?」

雪穂「わ、私、もう、いやだよ……っ! こんな音ノ木坂、もう見ていたくないよ……っ!」

雪穂「だって、お姉ちゃんが大好きだった、音ノ木坂は……μ'sが守った音ノ木坂は、こんなんじゃないもんっ!」

海未「……」

雪穂「海未ちゃん……?」

雪穂「どうして、黙ってるの……? ねえ……」

雪穂「あるんだよねっ!? μ'sも、さっきみたいな人たちも、200人のほのキチだって……っ!」

雪穂「みんなみんな、ぜんぶ、元に戻す方法が……ちゃんと、あるんだよねっ!?」

海未「だから……さっき、言ったじゃないですか」

雪穂「えっ……?」

海未「それはスイッチをリセットしてから、『後で考える』と……」

雪穂「……」
  


426: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 23:06:37.18 ID:CP8Bf93iM.net

 
バッ


海未「……雪穂?」

雪穂「なに、それ……」

雪穂「結局、無理なんじゃん……。全部元に戻す方法なんて、ないんじゃん……」

海未「雪穂、手を……。先を、急ぎましょう」

雪穂「やだ……もう、やだぁ……」

海未「……」


ヘタッ

雪穂「うっ、ぅ、なんなの、これ……。なんで、なんでこんなことに……」

雪穂「うっ、えぐっ、うぅ……」ポロッポロッ

雪穂「おかしいよ、こんなの……。なんでこんなことに、なっちゃったのぉ……?」

雪穂「わたしたち、なんでこんなことしてるの……。もうやだ、おうちかえりたいよぉ……っ!」グスッ

海未「……雪穂」

雪穂「なんでさっ! ふぅ、うぅ……っ! な、なんでわたしたちがこんなこと、しなきゃなんないのぉ……っ!?」

雪穂「えうっ、ひぐっ……っ! もう帰ろうよ、うみちゃぁん……っ! こんなのもう、どうしようもないじゃん……っ!」

雪穂「私たちだけじゃ、むりだよぉ……っ! 大人の人に、まかせようよぉっ! そ、そうだ、けーさつ、よぼう……っ!?」

海未「……外部の人間に、任せるわけにはいきません」

雪穂「っ! なん、で……」

海未「この事件の原因について……。つまり、『ほのスメル』や『スイッチ』のことが、もしも公になった時……」

海未「……穂乃果は一体、どうなると思いますか?」

雪穂「っ!! う、うっ、うぅ~……」

海未「やるしかないんです。私たちだけで……」

雪穂「ふっ、ぅぅ、うえぇええん……っ!!」
  


427: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 23:14:33.29 ID:CP8Bf93iM.net

 
海未「……ですが、分かりました」

雪穂「う、うぅ……えっ?」グスッ

海未「あなたを巻き込んだのは、私の責任です……。今までごめんなさい、雪穂」

雪穂「海未ちゃん……?」

ダキッ

雪穂「――っ!!」

海未「怖がらせてしまって、ごめんなさい。重荷を背負わせてしまって、ごめんなさい……」

海未「無茶をさせてしまって、本当に、ごめんなさい……。やはりここで引き返しましょう、雪穂……」

雪穂「うっ、ぅぅ……」

雪穂「ごめん……ごめんね……っ! わたしが、弱いから……っ! 勇気がないから……っ!!」

海未「何を言ってるのですか。ここまで来れただけでも、たいしたものです」

雪穂「うぅ……っ!」

海未「……雪穂、約束してくれますか」

雪穂「な、なに……?」

海未「警察などに連絡を入れるのは、私からの合図を待ってからにして頂けませんか?」

雪穂「……へっ?」

海未「それは、最後の手段です……。私が『もうダメだ』と諦めた時だけ、携帯であなたに合図を出します」

海未「それまであなたは、安全な場所で、待機していてください」

雪穂「ちょ、ちょっと待ってよ……。おかしくない? その言い方だと、まるで……」

雪穂「海未ちゃんだけここに残る、みたいな……」

海未「……安心してください」ニコッ

海未「あなたが学院を脱出するまでは、引き続き私が全力でサポートしますので」

雪穂「……っ!!」
 


428: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 23:19:05.68 ID:CP8Bf93iM.net

  
雪穂「ば、バカじゃないのっ!?」

海未「……」

雪穂「な、なんで……? なんでこんなところにまた、一人で残るの……?」

雪穂「もう、いいじゃんっ! やめようよ……っ! 一緒に、帰ろうよっ!!」

海未「……雪穂、それは無理です」

雪穂「だから、なんでっ!」

海未「私はまだ、諦めてないからです」

雪穂「は……?」

海未「……まだ私は、『もうダメだ』なんて、思っていません。だから、ここに残ります」

雪穂「なに言ってんの……? お姉ちゃんの居場所も分からないし、みんなを元に戻す方法も、分かってないのに……?」

海未「そうですね……。いえ、みんなを元に戻す方法は、たった今思いつきました」

雪穂「っ! えっ……?」

海未「一人一人彼女たちを抱きしめながら、私が本で読んで感動した台詞のいくつかを、耳元で囁いていきます」

海未「彼女たちの心にそれが響けば、私の匂いと共に、元に戻ってくれるかもしれません……いかがでしょう」

雪穂「……200人だよ?」

海未「大変ですね……日が暮れてしまいそうです」

雪穂「日が暮れても終わらないよ……。そもそもそんな方法で元に戻るとは、思えないし……」

海未「……でも、やるしかないんです」

雪穂「なんで……? なんで海未ちゃんは、そんなに強いの……?」

雪穂「私なんて、なんの役にも立ってないし……。これじゃあ私、最初からいなくてもよかったじゃん……」

海未「それは違いますよ、雪穂。あなたにしかできないことだって、ちゃんとあるんです」

雪穂「私にしか、できないこと……?」

海未「ええ。私にはできなくて、あなたにしかできないことが……」
 


429: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 23:35:54.74 ID:CP8Bf93iM.net

 
海未「それに私は、強くなんてありません」

海未「本当は今すぐ、逃げ出したいです。全てを、投げ出したいです。こんな絶望的な状況は、生まれて初めてで……どうしたらいいかなんて、何もわかりません」

海未「仲の良いクラスメイトが、見知らぬ生徒が、ほのキチになってしまった姿を見るだけで……。胸が、張り裂けそうでした」

海未「それでもここまで来れたのは、あなたのおかげです、雪穂」

雪穂「私の、おかげ……?」

海未「あなたの手を握っていると、とても安心できました。ここまで本当に、ありがとうございました」

雪穂「……」

雪穂「……ずるいよ、海未ちゃん」

海未「はい?」

雪穂「そんなこと言われたら……引くに引けないじゃん」

海未「あっ……」

雪穂「……分かったよ。怖いけど、私も最後まで、海未ちゃんについていく」

海未「……本当ですか?」

雪穂「うん……役立たずの私にも、海未ちゃんの手を握って安心させるくらいのことは、できそうだしね」

雪穂「だからそっちも、ちゃんと……。私のこと、守ってよ?」

海未「ええ、もちろんです」

海未「そして必ず、元に戻して見せます。音ノ木坂も、μ'sも……私たち幼馴染の、関係も」

雪穂「……うん、頼りにしてる。私も三人が仲良く遊んでるところ、また見たいし」


雪穂(変態のくせに……私の匂いを嗅ぎまくった、どうしようもない、変態のくせに……)

雪穂(どうしてこんなに、かっこよく見えるんだろう、海未ちゃんは……)


海未「三人ではありませんよ、雪穂」

雪穂「へっ?」

海未「あなたも入れて、四人です」

雪穂「……」


雪穂「グスッ……あははっ、そうだね、海未ちゃんっ」


雪穂(ま、仕方ないか……。海未ちゃんは、どうしようもない変態の、前に……)

雪穂(昔からずっと、私の大好きな、『幼馴染』なんだから――)
  


430: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 23:44:08.23 ID:CP8Bf93iM.net

  
――――――

屋上


ガチャッ

ギィ……


ヒュゥ……


雪穂「……」

海未「……」

雪穂「……確かお姉ちゃんはここでスイッチを押して、そのままどこかへ行っちゃったんだよね?」

海未「はい。時間も経ってますし、もしかしたらここに戻ってきているかもしれないと、思っていたのですが……」

雪穂「……いない、ね」

海未「ええ、誰も……」

雪穂「流石にこんなところまでは、ほのキチも来てないんだね」

海未「……」

雪穂「……どうする? 戻って、教室側の方探してみる?」

海未「……誰も、いない」

雪穂「えっ、うん……」

海未「ここで倒れたはずの、μ'sのみんなが……誰も、いません」

雪穂「っ!!」

雪穂「ま、まさか……」

海未「そうですね……」

海未「どうやら『彼女たち』も、目を覚ましたようです。全員一人残らずほのキチとなって、そして……」

海未「この屋上から抜け出し、ほのスメルを求め、穂乃果を探しに行ったようです」

雪穂「……っ! で、でも、分かんないよ。もしかしたら無事だった人もいて、私たちみたいにスイッチをリセットするために、動いてる人もいるかも……」

雪穂「例えばほら、ことりちゃんとか、さ……」

海未「……」


431: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-0mYV) 2015/11/01(日) 23:53:45.24 ID:CP8Bf93iM.net

 
海未「その可能性はないと思っておいた方がいいです。今までほのスメルを嗅いで意識を失った人間が、正気で目を覚ましたことは、一度だってなかったんですから」

海未「そして、私や雪穂を除けば最も耐性が強いはずの、ことりもまた……。今回は確実に、意識を失っていました。ですから、彼女も……」

雪穂「……そんな」

海未「雪穂……ここから先はより一層、周りを警戒してください」

雪穂「えっ……?」

海未「この学院で、レベル5を最も至近距離で嗅いだのは、私たちμ'sのメンバーです……つまり――」

海未「ほのキチとなった今の彼女たちが有する『危険性』、及び『異常性』は、下の階にいたほのキチとは比べ物にならないでしょう」

雪穂「……っ」ゾッ

海未「これからまた、下の階で穂乃果を探すことになりますが……もしかしたら、彼女たちと鉢合わせる可能性もあります」

海未「彼女たちがどう変貌しているかにもよりますが、基本的に話は通じないと思っておくべきです。なので……」

海未「もし出会ってしまったら、全力で逃げます。もし彼女たちを見かけたら、すぐに私に知らせてください。雪穂――」


「その、『彼女たち』ってさぁ――」



ヒュゥ……

スタッ



海未「――えっ?」

雪穂「っ! あっ……」ビクッ


 

ニコッ


凛「もしかして、凛も入ってたりするのかにゃぁ?」
  
 


458: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 20:33:26.22 ID:+c+LMpA4M.net

  
――――


海未「り、凛……」

凛「うん、凛だよぉー」

海未(今、空から降って……。いえ、私たちが入ってきた入り口の上に、ずっといたのですか……)

雪穂「あ、ぁ……」ガタガタ

凛「……その子、だれ?」

海未「……雪穂です。知っているでしょう?」

凛「ゆきほ? 知らないにゃぁ」

海未(『記憶障害』……。予想はしていましたが、またしても……)

凛「ゆきほちゃん、そんなに怯えなくていいよ? 凛は全然、怖くないから」ニコッ

雪穂「ひっ!」

海未「っ! 雪穂、私の後ろにっ!」バッ

凛「……なにそれ、酷いなぁ。なーんかさっきも、凛のことをキケンだとか、イジョウだとか……」

凛「うみちゃん、勘違いしてるよ? 凛はただ、穂乃果ちゃんの匂いが嗅ぎたいだけなんだ」

海未「ほのキチはみんな、そう言うのですっ! 凛、私たちから離れ――」

海未「……」

海未「『うみちゃん』……? 凛、あなた、私のことは覚えているのですか……?」

凛「なっ! 馬鹿にしないでよ、うみちゃんっ! 凛は確かに物覚えは悪いけど、一度覚えた人の名前を忘れるなんて、そんな失礼なことはしたことないにゃっ!」

海未「い、いやでも、あなた……」

凛「はぁ、まあいいや。凛はね、うみちゃんを待ってたんだよ」

海未「私を、待ってた……?」

凛「うん。うみちゃんなら、知ってるかなって思ってさ――」


凛「――穂乃果ちゃんの、いばしょっ♪」
  


459: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 20:42:10.96 ID:+c+LMpA4M.net

  
雪穂「っ!」

海未「くっ……。やはりあなたも、穂乃果を探していましたか……」

凛「もちろんっ。凛は穂乃果ちゃんに膝枕してもらいながら、お昼寝するのが夢なのにゃー」

海未「随分可愛らしい夢ですね……」

凛「穂乃果ちゃんの太ももに顔を押し付けて、幸せな匂いを嗅ぎながら、凛はぐっすり眠るのにゃ……///」

海未「うつ伏せで眠る膝枕がありますかっ!」

凛「穂乃果ちゃん、どこー?」

海未「知っていたとしても、あなたには教えません」

凛「えー、困ったなぁ。どうしよう、いくら探しても見つからないし……」

海未「……あなたも学院中を、探し回っていたんですか?」

凛「うん。って言っても他の人たちみたいに、わざわざ歩き回ったりはしてないけどね」

海未「はっ? ならどうやって」

凛「なんか今は、学校中に匂いが広まってて、それはそれですごく良いんだけど……。つまりその中でも、匂いが一番強いところに行けば、穂乃果ちゃんに会えるわけでしょ?」

海未「確かにそうなりますが……」

凛「凛はね、結構鼻が利くんだ。だからここからでも、学校中の匂いを『探し回れる』んだよ」

海未「な、なんですって……?」

凛「すごいでしょー? へへー」

海未(……前の異常な運動神経といい、どうやら凛はほのキチになると、野生の動物のような能力に目覚めるようですね……)

凛「でもねー、見つからなかったんだよ」

海未「見つからなかった……?」

凛「学校中の匂いを探ってみても、穂乃果ちゃんがいそうな場所なんて、どこにもなかったんだ……」

海未「……」
  


462: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 20:51:02.53 ID:+c+LMpA4M.net

  
雪穂「そ、それって……」

海未(穂乃果はもうこの学院の中には、いない……? まさか、私たちの最も恐れていたことが、現実に……)

海未(いえ、ほのキチの言うことを、いちいち真に受けては……。し、しかし、わざわざ私に居場所を聞いてきたということは、本当に……)

凛「……」

凛「……でもね、探してる最中に、一つ気になることがあったのにゃ」

海未「……なんですか?」

凛「うん、なんだかね。穂乃果ちゃんとよく似た匂いが、チョロチョロ動き回ってるなー、って」

雪穂「っ!!」ビクッ

海未「……気のせいでしょう?」

凛「そうだねー、気のせいだと思ってたよ。さっきまでは……うみちゃんたちがここに、来るまでは」

凛「ふふっ、でもやっぱり、気のせいじゃなかった。この距離で嗅いでみると、とってもよく似てるのが分かるね……」

凛「……ゆきほちゃんっ」

雪穂「う、ぁ……」

凛「ねえ、ゆきほちゃんは、穂乃果ちゃんの何なの? もしかして、妹とか?」

凛「穂乃果ちゃん、見つからないし……。どうしようかなぁ、もうゆきほちゃんでも、いいかなぁ?」

海未「離れなさい、凛」

凛「……はぁ?」

海未「例え雪穂の匂いが、穂乃果の匂いと似ていたとしても……それが、どうしましたか? あなたが嗅ぎたいのは、『ほのスメル』でしょう?」

海未「雪穂の匂いは、ほのスメルではありません。『ただ穂乃果ちゃんの匂いが嗅ぎたいだけ』などと言っておきながら、関係ない人を巻き込まないでください」

凛「もー、その穂乃果ちゃんがいないんだから、しょうがないじゃんっ。だから、ゆきほちゃんで我慢してあげるって言ってるんだよ」

海未「ほ、本当にどうしようもありませんね、ほのキチというのは……っ!」

雪穂「り、凛さんっ!!」
 


463: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 20:57:53.77 ID:+c+LMpA4M.net

  
凛「えっ?」

雪穂「い、いいですよ、私の匂い、嗅いでもらっても……」

海未「なっ、雪穂っ!?」

凛「ほんとっ? ゆきほちゃん」

雪穂「はい……。そ、そのかわり……」

雪穂「わ、私の匂いで、元に戻ってくれませんか……?」

凛「……」

海未「雪穂……?」

雪穂「その……私、μ'sのことが、大好きで……」

凛「みゅーず……?」

雪穂「特に、凛さんは……私と一つしか違わないのに、ダンスとかすごく上手で、そ、尊敬してるんです……」

雪穂「それでその……実は今、音ノ木坂に入ったら私もμ'sに入りたいな、とか思ったりしてて……。そしたら先輩の凛さんに、色々と教えて頂けたら、とか……」

雪穂「だから、あの……。わ、私の匂いなんかじゃ、無理かもしれないですけど……。も、元に戻って、ほしいです。私の尊敬する、元の凛さんに……」

凛「……うぅーん」

凛「よく分かんないけど、ゆきほちゃんは石鹸が大好きなんだってことだけは、伝わってきたよっ!」

雪穂「っ! ち、ちがっ……」

海未「雪穂、やはり無理です……っ! ほのキチには、まともな会話なんて……っ!」

雪穂「凛さん、私、本当に大好きなんです……っ!」

凛「あぁ、うん。分かったってば。いいよもう、石鹸は」

雪穂「凛さん……。お願いですから、もう忘れないであげてくださいっ!」

凛「……なにが?」

雪穂「花陽さんのこと、もう忘れないで……っ! 私、いつも仲良しな、お二人のことが大好きなんですっ!」

雪穂「お互いのことを心から信頼し合ってる、お二人のことが……っ! 私と亜里沙もあんな風になれたらなって、ずっと思ってたんですっ!!」

凛「……」
  


465: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 21:05:41.37 ID:+c+LMpA4M.net

  
クルッ

海未「っ! 凛……?」

雪穂「あっ……」

凛「……もう、いいや」

海未「えっ?」

凛「ゆきほちゃん、なに言ってるか分からないし……。ていうかちょっと、怯えすぎにゃ」

雪穂「……っ!」

凛「やっぱりゆきほちゃんは、穂乃果ちゃんとは全然違うよ。確かに匂いは、似てるけど……」

凛「凛は穂乃果ちゃんの、怯えてるみたいで、ちょっと期待しちゃってるような、そんな表情が好きだったんだ」

凛「匂いを嗅がれてる時の穂乃果ちゃんは、凛を怖がってるみたいで……でもちょっとだけ、気持ちよさそうにしてた。そんな穂乃果ちゃんの顔が、凛は大好きだったんだ」

凛「そんな本気で怖がられちゃ、凛もやる気でないよ……」

雪穂「……ご、ごめんなさい」

海未「雪穂、あなたが謝ることでは……っ!」

凛「うみちゃん、実はもう一つ、聞きたいことがあるんだけど」

海未「なんですかっ!?」

凛「かよちゃんって、どこにいるか知ってる?」

海未「……はい?」

凛「はなよちゃんだよ。知らない?」

海未「し、知りませんが……。花陽のことも、その自慢の鼻で探したらいいのでは?」

凛「うーん、そうしたいんだけどね。かよちゃんの匂いを思い出そうとすると、なーんか嫌な予感がするんだよねえ」

凛「例えば今の凛が、凛じゃなくなっちゃうような……そんな気がしてさ」

海未「……」
  


466: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 21:14:02.42 ID:+c+LMpA4M.net

  
凛「ま、いいや……でさ」

凛「なんか、大変なことになってるみたいだけど……。もしかして学校の人たちみんな、凛みたいになっちゃったの?」

海未「……そうですよ。あなたと同じ、ほのキチにね。それが?」

凛「へえー。じゃあさ、かよちゃんも?」

海未「まだ確認はしていませんが、恐らく花陽も、です……」

凛「……あははっ、そっかっ!」


タン、タンッ


雪穂「えっ!?」

海未「っ!? 凛、なにを……っ!」

海未(落下防止の柵を、駆けあがって……登ったっ!?)

海未「あ、危ないですよ、凛っ! 今すぐ降りてくださいっ!」

凛「ふーん、そっかそっか。かよちゃんも凛と同じに、なったんだ」

凛「えへへ、なってくれたんだ。かよちゃん……約束、守ってくれたんだね」

凛「凛とお友達になってくれるって、約束……っ!」

海未「凛、あなた一体、何をする気ですかっ!?」

凛「だからぁ、穂乃果ちゃんとかよちゃんを、探しに行くんだよ」

凛「うみちゃんたちも、これから穂乃果ちゃんを探すんでしょ? ここを出てまた、上から順番に……」

凛「でもうみちゃんたちと一緒に行動するのは嫌だし、また会うのも気まずいから、凛は『下から』探すことにするよ」

海未「……ま、まさか、あなた――」


海未「ここから、飛び降りる気ですかっ!?」
  


467: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 21:21:27.47 ID:+c+LMpA4M.net

  
凛「えっ?」

海未「凛っ! いくらあなたでも、それは無茶ですっ!」

雪穂「凛さんっ、やめて、そんなこと……っ! 死んじゃうっ!」

凛「あはは、やだなぁ。そんな危ないこと、するわけないじゃん」

海未「……凛?」

凛「ふふっ……。ゆきほちゃんっ!」

雪穂「っ! えっ……?」

凛「ゆきほちゃんが一体何を言ってるのか、凛には全然分かんなかったけどさっ! でも一つだけ、分かったことがあるよっ!」

凛「凛とかよちゃんが、『いつも仲良し』だって言ってくれたことっ! それだけは、嬉しかったよっ!」

雪穂「……凛さん」

凛「ま、でもやっぱりゆきほちゃんの言うことは、よく分かんないけどね……っ!」

凛「だって凛とかよちゃんは、『これから』仲良くなっていくんだからっ! あははっ!」


バッ!


雪穂「っ!? いやぁっ!!」

海未「り、凛――」


タッタッタッ……



海未「――えっ?」

雪穂「……あっ」



「ばいばーい、二人ともっ!」
  


469: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 21:32:33.89 ID:+c+LMpA4M.net

  
……

海未「ま、まさか校舎の壁を走って、下に降りるとは……」

雪穂「し、心臓が、飛び出るかと思ったよ……。いや、人が壁を走ってる姿も、だいぶショッキングな映像だったけどさ……」

海未「学院中を探知できる嗅覚といい、やはり以前の凛とは、ほのキチとしての格が違うようです。前は、あんなことまでできなかったはず……」

海未(異常とは言いましたが、あれほどとは……。しかも結局、ここにきて、状況は何も好転していません)

海未(μ'sのみんながほのキチとなって、この学院中に散らばっていったことと……穂乃果がこの学院にいないかもしれないという事実が、判明しただけ)

海未(むしろ状況は、悪化しているとさえ……)

雪穂「……海未ちゃん」

海未「……はい?」

雪穂「やっぱりここからは、二手に分かれていこ?」

海未「……な、なにを言い出すんですか、雪穂」

雪穂「あはは、ごめんね。せっかくさっき、私のことを守るって言ってくれたのに」

海未「それに、単独行動は危険だとも言ったはずです。さぁ、一緒に……」

雪穂「……でも、状況は今、どんどん悪くなっていってる。モタモタしてる暇は、ないんだよ」

海未「分かってますが、しかし……っ!」

雪穂「これから二手に分かれて、まだ調べてないところを探そう。私が必ずお姉ちゃんを、見つけ出すから」

雪穂「だから海未ちゃんは……ことりちゃんを探すことに、専念して」

海未「……ことり、ですか」

雪穂「うん。さっき言ってたけど、私や海未ちゃん以外で一番耐性があるのは、ことりちゃんなんでしょ?」

雪穂「だとしたら、元に戻れる可能性が一番高いのも、ことりちゃんだ……。なによりことりちゃんは前に、海未ちゃんの匂いで戻ってるしね」

海未「……」

雪穂「今は少しでも、味方が欲しいし……。ことりちゃんを元に戻して味方につけることができれば、心強いよ」

海未「それは私も、考えていました。しかしやはり、あなたを一人で行動させるのは……」

雪穂「一人だって、大丈夫だよ。だって私は、海未ちゃんが認めた、勇敢な中学生だもん」

海未「……やっぱりあなた、穂乃果によく似ていますね」

雪穂「わ、分かってるよ。自分でも、無茶なことを言ってるのはさ……」

海未「いえ、そうではなくてですね……」

雪穂「……?」

海未(何かを決断した時の、そのまっすぐな瞳が、ですよ……)
  


470: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 21:36:54.27 ID:+c+LMpA4M.net

   
海未「……私がもしも、中学生だったら」

雪穂「……ん?」

海未「あなたに、恋をしてしまっていたかもしれません」

雪穂「はぁああぁあーっ!? ば、バカじゃないのっ!! 女子中学生相手に、なに言ってんのさっ!! しかも、こんな時にっ!! 今の状況分かってるっ!? 変態、この、変態っ!!」

海未「そ、そんなに怒りますか……」

雪穂「海未ちゃんは一体、何回私をガッカリさせれば気が済むのっ!?」

海未「ごめんなさい……」

雪穂「私、先行くからねっ! 必ずことりちゃんを見つけて、元に戻してよっ!」

海未「はい、もちろんです……。あっ、雪穂っ」

雪穂「なにっ!」

海未「先ほども言ったように、μ'sの誰かを見かけたら、特に気をつけてください……。身の危険を感じた時は、すぐに」

雪穂「分かってるよっ! 危なくなったら連絡するからっ! その時は、すぐに助けに来てよねっ! いいっ!?」

海未「えっ? あ、はい……」

雪穂「ふんっ! じゃあねっ!」

ガチャッ

バァンッ!

海未(一応最低限、信用はされているということでしょうか……)

海未「……」


海未(『かよちゃん』……。先ほど凛は確かに花陽のことを、そう呼んだ……)

海未(……『前回』と、同じように――)

海未(凛は、前回ほのキチになった時の記憶を全て忘れてしまったはずですが、まさか再びほのキチとなったことで、その記憶が戻ったのですか……?)

海未(……)


海未「……私も、急がなくては」

海未「ことり……あなたが再び、ほのキチになってしまったというのなら……私がもう一度、あなたを元に戻して見せます――」


ガチャ……

バタン
 


471: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 21:45:55.65 ID:+c+LMpA4M.net

 
――――――

廊下


スタスタ


(……なんで、こんなことになってるの?)


「ほのか~……」

「ほのかちゃぁん……」

「こうさかさん、どこぉ……?」


(な、なんでみんな、私の名前を呼んでるの……?)


「はぁはぁ、嗅ぎたい、穂乃果ちゃんの匂い、いっぱい嗅ぎたぁい……」

「匂いが、足りないよぉ……っ! 高坂さん、匂いを、もっとちょうだぁい……」


(ひっ……。に、におい? やめてよ、はずかしいよ……)

(どうして……? どうしてみんな、そんなに私の匂いを、嗅ぎたがるの……?)


「あはははは、あははははははぁっ!!」

「いひ、いひひひ、うひゃひゃひゃひゃっ!!」

「うわああぁあぁぁ! あぁぁああぁっ!!」


ガシャァン!!


(ひぃっ!! こわい、こわいよぉ、もう、やだよぉ……)

(だれか、たすけて……。こんなのもうやだ……。うみちゃん、ことりちゃぁん……)

(うぅ……)

(……あれ? あれって、もしかして――)
   


472: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-HlDI) 2015/11/06(金) 21:50:27.13 ID:+c+LMpA4M.net

  
タッタッタッ……

雪穂「はぁ、はぁ……っ!」

雪穂(全く本当に海未ちゃんは、好感度が上がったり下がったり忙しいなぁ……っ!)

雪穂(ていうかここ最近の私って、怒ってばかりな気がするな……。やだなぁ、そんな柄じゃないのに……)

雪穂(……いやいや、そんなことより、今はお姉ちゃんだ)

雪穂(凛さんの言ってたことが、気になるけど……。でもやっぱりお姉ちゃんは、この学院の中にいるはずなんだ……)

雪穂(お姉ちゃんは、誰よりも自分の匂いのことについて、悩んでた……。自分のせいで、みんなが、って……)

雪穂(そんなお姉ちゃんが、外に出て他の人たちまで巻き込もうとするなんて、考えられない)

雪穂(だとするとお姉ちゃんは、今……。どこか暗くて狭い場所に閉じこもって、一人で自分を責め続けているかもしれない)

雪穂(待っててねお姉ちゃん、すぐ行くからね……っ!)


「おーいっ! ゆーきほーっ!!」


雪穂「っ!?」ビクッ

雪穂(えっ! お姉ちゃん……っ!?)


タッタッタッ……

「はぁ、はぁ……よかったー、やっぱり雪穂だ」

雪穂「……あっ」

「なんでこんなところにいるの? あれ、学校は?」

雪穂「あ、学校は、その……」

「……ねえ、雪穂。これ今、どういう状況なの? 私、怖いよ……」

「みんなして穂乃果穂乃果って、私の名前を呼んでさ……に、匂いを嗅ぎたいとか、言ってさ」

雪穂「……」

「雪穂に会えて、ちょっと安心したけどね。それでさ、海未ちゃんとことりちゃんがどこにいるか、知らない?」

雪穂「え、えっと……」






   
雪穂「東條希さん……ですよね?」

希「……へっ?」
  


509: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 22:00:28.86 ID:8/6gTdwUM.net

  
――――――

音ノ木坂学院校舎、教室側

廊下


「穂乃果ちゃん、どこ、どこぉ……っ!」

「いない、そっちはっ!?」

「ダメ、こっちにもいない……っ!」

「きゃっ!?」ドンッ

海未「ご、ごめんなさいっ!」タッタッタッ

海未(廊下を走ることさえ、ままならない……。やはりこちら側の方が、ほのキチの量は圧倒的に多いようです……っ!)

海未(量が多いということは、それだけ多種多様なほのキチがいるということでもあります……。気をつけなくては……っ!)


ガタァンッ!

「あぁああぁあっ!! ほのかほのかほのかぁーっ!!」

「はぁ、はぁっ! もうダメ、我慢できないぃぃぃっ!!」


海未(ああいった過激派には、特にっ! 近づいたら、何をされるか分かりません……っ!!)

海未(くっ、それにしても、ことりは一体どこに……っ! やはり一番可能性が高いのは、私たちの教室ですか――)


「きゃあぁあっ!!」

海未「っ!?」

「いたい、やめて、やめてよぉっ!」

「うるさいっ! あんたがさっき部室から出てくるとこを、私見たんだからっ! 何を持ち出したんだっ!?」

「な、なにも持ってないよぉっ! たまたま高坂さんを探して、部室に寄っただけで……」

「嘘をつくなっ! バッグの中を漁って、なにか持ち出したんだろっ!?」

「ちがう、私は何も……っ!」


海未「や、やめなさいっ!!」
 


512: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 22:06:33.19 ID:8/6gTdwUM.net

  
「っ!? な、なによあんた……園田じゃない」

海未(っ! 弓道部部員の……っ! いつもはとても誠実な方なのに……っ!)

海未「ぼ、暴力なんて最低ですっ!」

「うるっさいわね……。そいつがいけないのよ。高坂さんの私物を、独り占めするから……」

「ち、違う、私は何も、持ってないもん……っ!」

「あぁっ!? いい加減にしなさいよ、あんたっ!」

「ひっ!」

海未「っ! こ、こっちですっ!」グイッ

タッタッタ……

「あっ、待ちなさいよこらぁっ!!」



海未「……はぁ、はぁ」

「はぁ、はぁ……」

海未「大丈夫ですか? ケガとかは……」

「う、うん。大丈夫だよ。服を引っ張られたくらいだから……」

海未「……ごめんなさい、普段はあんな人では、ないんです」

「わ、分かってる。けど、怖かった……。ありがとう、園田さん。助けてくれて……」

海未「いえ……では私、先を急ぐので……」

「あ、待ってっ! お、お礼させてっ!?」ゴソゴソ

海未「お、お礼なんて……」

「これ……」スッ

海未「……なんですか?」

「え、えへへ、穂乃果ちゃんのバッグに入ってた、ペットボトル……飲みかけだよ」

海未「……」

「ぶ、部室からこっそり持ってきちゃったんだ……。ちなみに私まだ、口つけてないから……」
  


515: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 22:10:36.19 ID:8/6gTdwUM.net

  
タッタッタッ……

海未「はぁ、はぁ……っ!」


「穂乃果ちゃぁん、どこ~……」

「あはは、見える、見えるよ、私には……高坂さんは、ここにいるんだ」

「あぁ、穂乃果ちゃんだ、穂乃果ちゃんが、笑ってる……」


海未(ほのキチほのキチほのキチ……こんなところにいては、こっちまで頭がおかしくなりそうです……っ!)

海未「んっ、んっ……」ゴクゴク


「高坂さん、はい、あーん。おいしい? 私の作った、お弁当♪」

「あ、あの、私、高坂さんじゃな……」

「うふふ、かわいいなぁ、高坂さんは」ナデナデ


海未「ぷはぁー……っ!」

海未(しかもずっと走りっぱなしで、のどが渇いて仕方がありませんっ!)

海未(全く、穂乃果の飲みかけとは残念ですっ! 量が少し減ってしまってるではありませんかっ!)

海未(これではすぐに空になってしまいます……っ! あぁ、非常に残念です、穂乃果の飲みかけでさえなければ……っ!)

海未「ん、んくっ……」ゴクッ

海未「ぷっはぁーっ!!」


タッタッタッ……
  


519: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 22:34:06.23 ID:8/6gTdwUM.net

  
――――


穂乃果たちの教室



「はぁ、はぁ、こ、ここが、穂乃果ちゃんがいつも座ってる、椅子……」

「ちょっと、どいてよっ! 高坂さんの席は、私が座るのっ!」

「汚い手で、穂乃果ちゃんの席に触らないでよっ!」

「はぁっ!? 言っとくけど、あんたなんかより私の方が、穂乃果と付き合い長いんだからねっ!」

「どうかしらね、高坂さんはあなたのことなんか、何とも思ってないかもしれないわよ?」

「あははっ、つくえ、つくえーっ! いつも穂乃果ちゃんがほっぺたくっつけて寝てる、つくえーっ!!」

「だからぁ、触んじゃねえよっ! 穂乃果ちゃんの涎がまだ、ついてるかもしれないのにさぁっ!!」


海未「な、なんですか、これは……」

海未(予想はしていましたが……ほのキチの量も、飛び交う罵声も、他の教室とは比べ物になりません……っ!)

海未(こ、こんな場所に、長くいるのは危険すぎます……。ことりも他のメンバーもいないようですし、ここは早々に――)


ゴロン

海未「っ!?」

「あ、あぁ……やだ、やだぁ……」

「たすけて、こわい、こわいよぉ……」

「グスッ、な、なんなのよ、これぇ……うっ、あぁっ////」ビクン

海未「……っ!」

海未(『辿り着けなかった者』たち……。ここにも、多くの……)

海未(し、しかし全員、クラスメイトの方たちです。どうして穂乃果と関わりがある、この方たちが……)


「う、海未ちゃん……」
  


520: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 22:39:38.98 ID:8/6gTdwUM.net

   
海未「っ! だ、大丈夫ですか……っ!?」

「ねえ、これ、どういうこと……? みんな、どうしちゃったの……?」

海未「そ、それは、その……」

「穂乃果ちゃんの、匂いがどうとかって……みんな、なに言ってるの……?」

海未「っ! あなたは、この匂いを……?」

「あ、あぁ、うん、なんだかずっと、すごく良い匂いがするよね……」

「あはは、確かにちょっと、穂乃果ちゃんの匂いに似てるかな……で、でも……」

「そんなわけ、ないよね? 穂乃果ちゃんの匂いなわけ、ないよね……? お、おかしいのは、みんなの方だよね……」

海未「……っ! それは……」

「穂乃果ちゃんは、なにも関係ないんだよね……? うっ、はぁ、はぁ……」

海未「……」

海未(穂乃果の匂いだと気づきつつも、それを認めようとしていない……)

海未(彼女を傷つけないように、必死に快楽に抗って、理性を保とうと……)

海未「……ええ、関係ありません」

「……っ!」

海未「これが穂乃果の匂いなわけ、ないじゃないですか。みんな、大変な勘違いをしているようですね」

「あ、あはは、やっぱり、そうだよね……海未ちゃんが、そう言うなら……」

海未「今、私は匂いの原因を探っているところです。万が一のこともありますので、なるべく嗅がないように」

「う、うん、分かった……。すごいね、海未ちゃんは。こんな状況でも、全然、動じてない……」

海未「……そんなこと、ありませんよ」


海未(どうか、許してください……。今の私では、あなたたちを救うことができません……)

海未(そして、ありがとうございます。ほのキチとしての欲望よりもまず、穂乃果のことを気遣ってくれて――)
  


521: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 22:45:42.96 ID:8/6gTdwUM.net

 
――――

海未(ことり……。私たちの教室にいないのなら、あとは部室くらいしか……。しかしあそこは、今……)

海未(……いえ、行くしかありません。可能性が少しでも、あるのなら……っ!)


「あぁあ、穂乃果ちゃんを、ぐちゃぐちゃにしたいぃ……」

「穂乃果ちゃん、どこー? おいしいパンがあるよー……」

「ごはん……食べたいなぁ……」


海未(……待ってください。今までのほのキチの常識を、ことりに当てはめてもいいものでしょうか?)

海未(ほのキチ状態のことりの厄介さは、随一です……。素直に部室にいてくれるとは、限らないのでは……?)

海未(しかし、他にことりがいそうな場所なんて……)


「舐めたい、ペロペロしたい、あぁ、あぁ~」

「食べたいよぉ……。ごはんが、食べたい……」

「穂乃果ちゃんと、一つになりたいぃぃっ!!」


海未(……私たちの教室には、いなかった。なら穂乃果とは関係のない他の教室を探しても、無駄でしょう――)


海未(――『あの教室』を、除いては)


海未(そう、あそこなら、もしかしたら……。しかし本当に『あの教室』に、ことりがいた場合は……)

海未(……恐らく、今までで最も厄介なことになるでしょうね)


「高坂さんのパンツが欲しいっ! 脱ぎたてだとなお良しっ!」

「えへへ、穂乃果ちゃんに罵倒されたい……」

「ごはん~……。ごはんが、食べたいですぅ……」


海未(……)

海未(というかさっきから一人だけ、周りと何か違う人が……)チラッ

海未「……えっ?」


  

海未「は、花陽……?」

花陽「……ごはん」
 


524: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 22:54:43.93 ID:8/6gTdwUM.net

 
海未「あ、あなた……こんなところに、いたのですかっ!?」

花陽「……? どなたですかぁ?」

海未「っ! わ、私のことが、分からないのですか……?」

花陽「……??」

海未(……そうですか。凛と同じく、『記憶障害』の症状が……)

海未「花陽……あとで必ずあなたも、元に戻してみせます。ですから今はここで、おとなしくしていてくれますか?」

花陽「ごはんがぁ、食べたいんですぅ……」

海未「……わ、分かりました。私が部室にあるあなたのバッグから、お弁当を持ってきます。ですから、ここで」

花陽「穂乃果ちゃんのが……食べたいん、ですぅ……」

海未「はい……?」

花陽「だーかーらぁ……」


花陽「穂乃果ちゃんの汗で炊いたごはんが、食べたいって言ってんですよぉぉっ!!!」

ガシィッ!

海未「っ!?」

花陽「教えてくださいよぉっ!! 穂乃果ちゃんは、どこにいるんですかぁぁっ!!?」

花陽「花陽はぁっ!! 一刻も早く穂乃果ちゃんの体液を、炊飯器に溜めなきゃいけないんですよぉぉぉっ!!!」

海未「うっ、うわあぁっ!!」ドンッ

花陽「きゃぁっ!?」

ドサッ

海未「ご、ごめんなさい花陽、またあとでっ!」タッタッタッ……

海未(バカですか私はっ! 雪穂にあれだけ注意しておいて、自分が……っ!)

海未(ひ、久しぶりに、心の底から恐怖を感じました……。豹変したことりを、初めて見た時以来です……っ!)
  


527: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 23:04:19.37 ID:8/6gTdwUM.net

  
――――――

1階、廊下


海未「はぁ、はぁ……」

海未(……花陽を突き飛ばした拍子に、彼女が肩にかけていたタオルを持ってきてしまいました)

海未(花陽には悪いですが、流石に汗が気持ち悪くなってきたので、使わせてもらいましょう……)

フキフキ

海未(……そういえば、私たちはちょうど朝練を終えたところだったんでしたね)

海未(あの時がまるで、遠い過去のように感じます……でもまだ、午前中なんですよね……)

海未(……本当に、どうしてこんなことに――)


「う、うぅー、おとうさん、おかぁさん……」

「うふふ、きもちいい、こんなきもちいいの、はじめて……」

「高坂先輩……。先輩はどうして、こんなに良い匂いがするんですかぁ……?」


海未(花陽たち、一年生の教室です。ここにも、多くの生徒が……)


「先輩……マジ、パネエっす……。先輩の匂い、超リスペクトっす……」

「私もμ'sに入りたいなぁ……。もし入ったら、穂乃果先輩の匂い、嗅ぎ放題……」

「う、うぅ、もうやだぁ……。こんなことになるならやっぱり、UTXに入ればよかったよぉ……」


海未(ごめんなさい……。必ず、元に戻してあげますから……)

海未(かならず……)


海未「……」


『ほのスメル……即ち、穂乃果の匂い――』
   


529: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/12(木) 23:07:39.17 ID:8/6gTdwUM.net

  
『穂乃果の身体から溢れ出る、あの甘い匂いのことを、きっとそう呼ぶのでしょう』

『幼馴染ゆえに、彼女と接近する機会の多い私は、いつもあの匂いに惑わされてしまいます』

『頭が蕩けてしまいそうな、あの独特な匂い……それを、増幅させるスイッチ?』


『……最高じゃないですか』


あの時の私は、知る由もありませんでした。

あの夢のようなスイッチが、後に、こんな『悲劇』を引き起こすことになるなんて……。


だけど時間は、戻らない。

後悔したところで、何も変わらない。

迷っている暇なんて、どこにもない。

例え希望の光が見えなくとも、未来に絶望しか見えなくても。

私はただ、前へ進むしかないのだから。


だから私は、その扉を開ける。

音ノ木坂学院唯一の一年生、花陽たちのクラスの、教室――


――その『隣の教室』の、扉を。


今は空き教室となっているその教室の、扉を引き……私は後ろから、ゆっくり教室に入る。

前方を見据えると――そこに、彼女はいた。


誰もいない教室の、前方――普段は先生方が教鞭を執る、神聖な教卓の上に、彼女は座っていた。

宙に浮かせた両足を組み、退屈そうに、携帯をいじりながら。

なぜか練習着ではなく、制服姿で、そこにいた。

私が教室に入ってきたことに気づくと、彼女は、携帯から顔を上げ――



ことり「久しぶりだね、海未ちゃん。待ってたよ」
 
 

そう言って、不敵に微笑んだ。

その笑みにはもちろん、私が昔から良く知る、心優しいことりの面影は、どこにもなかった――
  


545: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 21:04:33.43 ID:aoDaHZ5cM.net

 
――――――


希「雪穂ーっ! ゆーきーほーっ!」

希「……もぉ~、雪穂ってば。離れないでって言ったのにー」

希「雪穂って普段はしっかり者だけど、やっぱりこういう時は、穂乃果が面倒みてあげなきゃだめだねえ」

希「あ、ねえねえ。セーラー服着た女の子見なかった? 私の妹なんだけどね……」



タッタッタッ……

雪穂「はぁ、はぁ……や、やっと、撒いたかな……」

雪穂「はぁ……」トサッ

雪穂(……な、なんだったの、あれ……? 最初は希さんのことだから、冗談で真似してるのかと思ったけど……)

雪穂(よく考えたら希さんがこんな時に、そんなことするはずない。あれは本気で自分のことを、お姉ちゃん……『穂乃果』だと、思い込んでるんだ)

雪穂(レベル5を嗅いで希さんは、そうなっちゃったんだ。あれも、ほのキチなんだ……)


雪穂「うっ……」ブルッ

雪穂(こわい……。こわいこわいこわい、こわい……っ!)

雪穂(海未ちゃんの、言った通りだった……っ! ほのキチになったμ'sのみんなは、他と比べても『異常』だ……っ!)

雪穂「……ぅ」ジワ

雪穂(っ! な、なにまた泣いてんの、私……っ!)ゴシゴシ

雪穂(自分で言い出したんでしょっ!? 『二手に別れよう』って、『一人で大丈夫だから』って……)

雪穂(これ以上、海未ちゃんの足手まといにならない様にって……っ! そうだ、泣いてる暇なんかないぞ、私っ!)

雪穂「はぁ、うっ……」ググッ

雪穂(まだ、大丈夫だ……。まだ私の手には、海未ちゃんの温もりが残ってる……)

雪穂(だったら私はまだ、大丈夫だ……っ!)
    


550: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 21:25:33.98 ID:aoDaHZ5cM.net

  
雪穂(……ここは――)


ザワザワ……


雪穂(っ! うわっ、ほのキチだ……いっぱいいる……っ!)

雪穂(ここは……)


「穂乃果ちゃんの靴っ! 靴のにおいいっ!!」スゥゥ

「つぎ、私っ! 私に嗅がせてっ!」


雪穂(『下駄箱』……。そっか、いつの間にか入口まで、戻ってきちゃってたんだ)

雪穂(引き返さなきゃ。こんなところにお姉ちゃん、いるわけないし……)

雪穂(でも、入り口……。ううん、『出口』か……)


『学校中の匂いを探ってみても、穂乃果ちゃんがいそうな場所なんて、どこにもなかったんだ……』


雪穂(もし本当に、お姉ちゃんはもうこの学院の中に、いないんだとしたら……。ここから出て、外を探すっていうのも……)

雪穂(ううん、きっとお姉ちゃんは、この学院の中に……。で、でも、もしも外を探すなら、急がないと……)

雪穂(……)

雪穂(鼻の利く凛さんが学院中の匂いを探しても、お姉ちゃんを見つけられなかった……)


雪穂(学院の、『中』にはいない……学院の、『外』?)


雪穂(まさか……でも、行ってみる価値は……)

雪穂(だとするとやっぱり、ここから外に出なきゃ……っ!)
   


551: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 21:33:49.07 ID:aoDaHZ5cM.net

  
「ふはあぁぁ、いいぃ……」

「もういいでしょ、次は私ねっ!」


雪穂(……っていやいや、外に出るなら別に、ここからじゃなくてもいいんだけど)

雪穂(普通に、海未ちゃんと入ってきた窓から出よう……あの集団の横を通り過ぎるのも、怖いし)


「ちょっとあんた、二回目じゃないっ!? まだ嗅いでない人もいるのよっ!」

「そうよそうよ、ちゃんと順番は守りなさいよっ!」


雪穂(っ! あんまり大声出さないでよ、ビックリするなぁ……)

雪穂(まあいいや、無視無視……)

雪穂(そういえば海未ちゃん、ことりちゃんに会えたかなぁ。大丈夫だよね、海未ちゃんならきっと……)


「さいっこぉー。これが穂乃果ちゃんの、足の匂い……////」

「あぁ~、踏まれたい。穂乃果ちゃんの足に、踏まれたいぃ……」


雪穂(……)

雪穂(もう……)


雪穂「もう、やめてよ……」


「っ! ふ、ふふ、いいわ。思ったより濃厚ね、すごくいい……っ!///」

「もう我慢できないっ! 早く貸してっ!」

「あ、返しなさいよっ! まだ私が――」



雪穂「もうやめてよっ!!」
   


552: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 21:42:41.24 ID:aoDaHZ5cM.net

  
クルッ


「「……?」」


雪穂「っ! うっ……」ビクッ

雪穂「……い、いい加減にしてくださいよ。さっきから何してんですか、あなたたち……」

「何って……」

雪穂「ひ、人の靴を、勝手に嗅いだりして……。最低ですよ、気持ち悪い……」

「そんなこと言われても……ねえ?」

「嗅ぎたいものは仕方ないでしょ? 別に靴くらい、嗅いだっていいじゃん」

雪穂「……嗅がれる方はどんな気持ちになるのか、考えてみてくださいよ」

「穂乃果ちゃんが……? うーん、どうかなぁ」

「案外、喜んでくれたりするんじゃない? だって良い匂いって言われて嬉しくない人なんて、いないでしょ?」

雪穂「……そうですね。お姉ちゃんは確かにそういう人です。でも……」

「お姉ちゃん……?」

「……あっ、セーラー服。もしかしてこの子、例の……」

雪穂「でもお姉ちゃんが、本当に匂いを嗅いでもらいたいと思ってるのは……あなたたちなんかじゃない」

「は……?」

雪穂「お姉ちゃんは、ちゃんと悩んで、『一人』に決めたんだ。こういうことは、『好きな人とだけ』って……」

雪穂「そんなお姉ちゃんの気持ちも知らないで、あなたたちは……っ!」

「なに言ってんの……?」

「ねえ、あなたってもしかして、穂乃果ちゃんの――」

雪穂「私は高坂穂乃果の妹の、高坂雪穂だっ!!」

「「っ!?」」

雪穂「お姉ちゃんの靴を……返せえっ!!」

ダッ!
  


553: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 21:51:06.32 ID:aoDaHZ5cM.net

   
ドンッ!


「うわっ!?」

雪穂「っ!」ドテンッ

雪穂(や、やった……取り返したっ!)

雪穂(あとは、外へ……っ!)ズリズリ

ガシッ

雪穂「うぐっ!?」

「待ちなよ、妹ちゃん」

「いくら穂乃果ちゃんの妹でも、それを渡すわけにはいかないなぁ~」

雪穂「……うっ」

雪穂「うわぁああぁあっ!」ジタバタ

「っ!? こ、こら、暴れるなっ!」

バッ

「あっ……」

雪穂(あの時の海未ちゃんに比べれば、こんな人たちなんかっ!)

雪穂「はぁ、はぁっ!」


バンッ

タッタッタッ……


「外に逃げたっ!」

「追うわよっ!」
  


554: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 21:59:04.08 ID:aoDaHZ5cM.net

   
タッタッタッ……


雪穂「はぁ、はぁ……っ!」

雪穂(取り返せたのは、いいけど……。あの人数のほのキチに追われるのは、キツイぞ……っ!)

雪穂「……」チラッ

雪穂「あれ、追ってこない……?」


「ちょっと、あんたが追いなさいよっ!」

「い、いやよ、私はここから出たくないものっ!」

「あ、あぁ~、穂乃果ちゃんの靴がぁ~……」


雪穂(……もしかして、匂いが充満してる学院の中から出るのが、嫌なの?)

雪穂(外に一人もほのキチがいないのは……そういうことだったの?)

雪穂(は、はは……なにそれ、変なの……)

雪穂「やった……やったぞ……」

雪穂「ほのキチに一矢、報いてやったっ! 靴一足だけだけど……あいつらから、取り返したぞっ!」

雪穂「見たか……っ! 見たか見たかっ! 私だって、やればできるんだっ!!」

雪穂「グスッ、あははっ、ははっ……」


雪穂(あとは『あそこ』に、向かうだけ……っ!)

雪穂「はぁ、はぁ……お姉ちゃん……っ!」

雪穂「お姉ちゃん……っ! お姉ちゃんっ!」ギュゥ……


タッタッタッ……
   


555: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 22:35:19.32 ID:aoDaHZ5cM.net

  
――――


アルパカ小屋


フェェ フェェ


「うっ、うぅ……」

雪穂「……」

「えうっ、うっ、うぅ~……」

雪穂「……はっ」



雪穂「は、ふぅ……」フラッ

トサッ


雪穂「お姉ちゃん……」

穂乃果「うえぇえん……」

雪穂「よかった……いてくれて……」

穂乃果「ゆ、ゆきほぉ……」グスン

雪穂「探したよ、もぉ……」


雪穂(お姉ちゃんは……学院の『外』だけど、『中』にいたんだ)

雪穂(凛さんが、『匂い』を頼りに探せないわけだ……。お姉ちゃんは、こんな動物の『臭い』がたっぷりの場所に、ずっといたんだから)


雪穂「お姉ちゃんは、自分の匂いをかき消すために、こんなところに隠れてたんだね……そうでしょ?」

穂乃果「う、うぅ、うあぁあぁ……」

雪穂「な、泣かないでよ。あっ、そうだ、見てよこれ、お姉ちゃんの靴……」

雪穂「私、頑張ったんだよ。ほのキチから頑張って、取り返したんだ。すごいでしょ?」

雪穂「ってお姉ちゃん、もう運動靴履いてるね。そっか、朝練してたんだもんね。あはは……」

穂乃果「う、うぁあぁん……」

雪穂「お、お姉ちゃん……」

穂乃果「ごめんなさい、ごめんなさいぃ……」

雪穂「……えっ?」
  


556: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 22:43:08.68 ID:aoDaHZ5cM.net

  
穂乃果「ひぐっ……ごめん、なさい……うわぁ、あぁぁ」

雪穂「……お姉ちゃん?」

穂乃果「私が、私の匂いで、みんなおかしくなって……っ!」

雪穂「……っ!」

穂乃果「す、スイッチ、私が、押しちゃったのぉ……っ! わ、私のせいで、みんなが、あぁぁ……っ!」

雪穂「お姉ちゃん……っ!」

雪穂(やっぱりお姉ちゃんは、自分を責めて……そりゃそうだよね、自分の匂いでこれだけ多くの人が、おかしくなっちゃったっていうんだもん……)

雪穂(きっと私なんかじゃ想像もつかないほどの、重圧だ……。お姉ちゃんはそれを、たった一人で、背負いこんで……っ!)


雪穂「お、落ち着いて、お姉ちゃんっ!」ダキッ

穂乃果「ゆ、雪穂ぉ……っ!」

雪穂「怖かったよね、うん、うん……っ! 平気だから、すぐに全部、元通りになるから……っ!」

穂乃果「う、うぅ、でも、でもぉ……っ!」

雪穂「大丈夫だから……海未ちゃんがきっと、全部元通りにしてくれるからっ!」

穂乃果「っ! うみ、ちゃん……?」

雪穂「う、うんっ、海未ちゃんが今、頑張ってくれてるんだ。だから……ねっ?」

穂乃果「……」
  


557: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 22:50:24.76 ID:aoDaHZ5cM.net

   
雪穂「そ、そうだっ! 会いにいこっか、海未ちゃんにっ!」

穂乃果「……えっ」

雪穂「海未ちゃん、ずっと心配してたんだよ……。顔、見せに行ってあげようよっ!」

雪穂(そうだ……。きっとお姉ちゃんも、大好きな海未ちゃんに会えば、泣き止んでくれるはず……っ!)

穂乃果「む、無理、だよ……」

雪穂「……えっ、む、無理って?」

穂乃果「あ、会えないよ……。私、海未ちゃんに、もう……っ!」

雪穂「な、なんで? そんなことないよ……?」

穂乃果「グスッ、もう、無理だよぉ……っ! こんなことして……っ! 私、どんな顔して海未ちゃんに、会えばいいのぉ……?」

穂乃果「必死に私を、止めようとしてくれてたのに……っ! 私は全然話も聞かないで、こんなことになっちゃって……っ!!」

穂乃果「嫌われた……。絶対に、嫌われちゃったよぉ……っ! 私もう、海未ちゃんと、みんなと、友達じゃいられないよ……っ!」

雪穂「そんなことないってばっ! あの海未ちゃんが、お姉ちゃんのこと嫌いになるはずないじゃんっ!」

穂乃果「う、うぅ……」

雪穂「スイッチのことなら私が一緒に、謝ったげるからっ! そもそもお姉ちゃんにあれを渡したのは、私なんだし……」

穂乃果「……雪穂」


雪穂(やっぱりお姉ちゃんには、海未ちゃんが必要だ……。海未ちゃんの、言葉が)

雪穂(今のお姉ちゃんを救えるのは……海未ちゃんしか、いないんだ)

雪穂(……だったらせめて、今の私が、やれることは――)


雪穂「……お姉ちゃん」

穂乃果「えっ……」

雪穂「スイッチは……?」
  


558: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-KvYt) 2015/11/16(月) 22:54:24.78 ID:aoDaHZ5cM.net

   
穂乃果「……」グスン

穂乃果「……そこ」

雪穂「えっ? あっ、あった……」ヒョイ

雪穂「……ねえ、お姉ちゃん。ほんと、安心していいよ。とりあえずこのスイッチのレベルさえ下げちゃえば、なんとかなるから」

穂乃果「……」

雪穂「ねっ」ニコッ

穂乃果「ゆきほぉ……」

雪穂(……ほんとはまだ全然、みんなを元に戻す方法とか、見つかってないんだけどね)

雪穂(ううん、海未ちゃんの言う通り、これでレベル5をリセットしちゃえば……まだいくらでも、方法は試せるもん)

雪穂(大丈夫、希望はある。スイッチの、レベルさえ……)

カチッ

雪穂(下げちゃえば……)


カチ、カチ、カチ……


雪穂(……)


カチ、カチ、カチ、カチ


雪穂「……なんで」

穂乃果「ごめんなさい、雪穂……だめ、だめなのぉ…っ!」

穂乃果「何度も、試したの……。何度も、何度も、『下ボタン』を……っ! でもぉっ!」

雪穂「なんでよ……っ! ここまできて、なんで――」



カチカチカチカチカチカチカチカチッ!



雪穂「――なんでレベルが、下がんないのっ!!?」

   


583: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 20:58:01.12 ID:itLZs9w1M.net

  
――――


1階、空き教室


海未「――『待ってた』という言葉は、あまり聞きたくありませんでしたね」

ことり「どうして?」

海未「何かを企んでいると、言っているようなものだからです」

ことり「あはは、別に何も企んでないってば。そんな警戒しないでよ」

海未「この場所に当たりをつけた時点で、なんとなく嫌な予感はしていましたが……。できれば普通に、部室とかにいてほしかったですよ」

ことり「あぁ、部室には一応寄ったよ。練習終わりで汗かいてたから、着替えちゃいたくて」

海未「……それで制服姿なのですか。しかし着替えのためだけに、あんな危険な場所に立ち入るとは……」

ことり「穂乃果ちゃんの私物に手を出そうとしなければ、割と安全だったよ。流石にあそこで海未ちゃんを待つわけには、いかなかったけどね」

海未「だからと言って、よりによってこの教室を選ぶとは……本当に厄介ですね、あなたは」

ことり「えー、ことり的には素敵なチョイスだと思ったんだけどなぁ。だってここは私たちの、思い出の教室でしょ?」

海未「……『一年生の時の、私たちの教室』――確かに思い出の教室と言えば、聞こえはいいですけれど」

ことり「そうそう。新しく入学してきた一年生が一クラス分の人数しかいなくて、今はこの教室は使われなくなっちゃったけど……」

ことり「ここは確かに一年前まで、『私たちの教室』だったんだ。確か、そこの席が穂乃果ちゃんの席で、そこが海未ちゃんで……」

ことり「で、海未ちゃんが立ってるそこが、ことりの席」

海未「……」

ことり「その席で海未ちゃんは、ことりの体操着の匂いを嗅いでたんだよねっ♪」

海未「ふざけないでください」

ことり「……うん?」

海未「人をからかうのも、いい加減にしてください。そんなことを言うために、私を待っていたわけではないのでしょう?」

ことり「いやぁ? こんなことを言うために海未ちゃんを待ってたんだよ。私はただ、海未ちゃんと楽しくお喋りがしたいだけなんだから」

海未「……」

ことり「そんな怖い顔しないで、ゆっくり話そうよ。海未ちゃん――」

ことり「久しぶりにこうしてまた、会えたんだから」
  


585: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 21:21:23.53 ID:itLZs9w1M.net

  
海未「……『久しぶり』、ですか。確かに『あなた』と会うのは、10日ぶりですが」

海未「しかしまさか再び、あなたと相対することになるとは思いませんでしたよ。まさかことりが、再びほのキチになる事態が訪れるなんて……」

ことり「そうかなぁ? 私はいつか絶対に、もう一度海未ちゃんと会える日が来るって、信じてたけどなー」

海未「……なんですって?」

ことり「ふふっ……。それにしても、すごいことになっちゃったねえ。目が覚めた時、ビックリしちゃったよ」

ことり「どこに行っても、ほのキチ、ほのキチ……」

ことり「穂乃果ちゃんを探すほのキチ、私物を漁るほのキチ、暴れるほのキチ、転がるほのキチ、悦ぶほのキチに、苦しむほのキチ……」

ことり「おまけに学院中に広がる、レベル5の匂い……ん~///」スンスン

ことり「すごいね、わくわくするね、海未ちゃん。これが海未ちゃんの言っていた、『新世界』ってヤツなのかな?」

海未「いいえ。こんなのはただの、『地獄』です」

ことり「……じごく、ねえ」

海未「ですが希望の光はまだ、途絶えていません。こんな地獄のような場所からでも、必ず元の音ノ木坂に帰ることはできるはずです」

ことり「これだけの人数のほのキチ……本当に元通りにできるの?」

海未「そうですね。絶望的な人数ですが……どれだけ時間がかかっても、一人ずつ元に戻して見せますよ」

ことり「ふぅん、大変そうだねえ。頑張って、海未ちゃん。ファイトだよっ」

海未「まずはあなたからです、ことり」

ことり「……」

海未「まず最初に、あなたをまた元に戻します。私はそのために、ここにやってきました」

ことり「……あはっ」

ことり「それはちょっと、困るかなー。せっかくここまで、『うまくいった』んだから」

海未「……っ。ことり、あなた……」
   


586: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 21:28:27.51 ID:itLZs9w1M.net

  
ことり「なぁに?」

海未「あなた一体、何なんですか……っ!?」

ことり「……何なのって言われてもぉ」

海未「私は元々、ほのスメルが大好きな人間です……。故にほのキチたちの考え方を理解することは、そう難しくありませんでした」

海未「ただ、あなたのことだけは、いつまで経っても分からない……あなたが何を考えてるのか、私は今でも理解できない……っ!」

ことり「あはは、ほのキチの考えることなんて、いつだって一つでしょ?」

海未「違う……。目的は共通していても、あなたは他のほのキチ達とは明らかに違う……っ!」

海未「匂いだけを純粋に求める他のほのキチとは違い、あなたからは何も見えてこない……っ! あなたは一体、何を考えてるんですかっ!?」

海未「どうして私と『もう一度会える』と確信できたんですかっ!? 『うまくいった』とは、どういう意味ですかっ!? あなたは、何を企んで――」

ことり「例えばさ、海未ちゃん」ピッピッ

海未「……っ!?」

ことり「携帯の調子がなんかおかしいなー、とか、『あれ、故障かな?』なんて思った時さ、海未ちゃんならどうする?」

海未「修理に出しますが、それがっ!?」

ことり「早いよ……。その前にまず、誰でも一度は試すことがあるでしょ?」

海未「……は?」

ことり「海未ちゃんみたいに機械に詳しくない人でも、なんとなくこうすれば直るんじゃないかなー、って……なんの根拠もなく、試すことがあるでしょ?」

海未「……」

ことり「『電源の入れ直し』……『再起動』。私たちが悩むような大抵の不具合って、意外とこれで直っちゃったりするんだよねー」

海未「……あ、あなた、何を言ってるんですか? そんな話に今、なんの関係が……」

ことり「だからさ、『不具合』があったんだよ、10日前の私には」

ことり「『頭が痛くて』、仕方がなかったんだよ……。もう、うんざりしてたんだ。こんなんじゃ、穂乃果ちゃんの匂いを思う存分楽しめない、ってね」

ことり「だからことりは、思いついたんだ」

ことり「電源を入れ直そうって、思ったんだよ」
 


588: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 21:37:07.18 ID:itLZs9w1M.net

 
ことり「それにあの時の私は、明らかに変だったもんね。匂いを嗅ぐのを我慢したり、みんなに謝ろうだとか考えちゃったり」

ことり「自分の欲望を優先できなくなってた……みんなの優しさに触れて、私まで優しくなっちゃってた。ほのキチとして、『故障』しちゃってたんだよ、私は」

ことり「……でもそんな時、海未ちゃんからの『レベル5』っていう魅力的な誘いを受けて、少しやる気が出たんだ」

海未「……」

ことり「やる気が出た私は、色々なことを考えてた……。海未ちゃんと一緒に嗅ぐこととか、海未ちゃんを裏切って嗅ぐこととか……」

海未「っ!! あ、あの状況からまたしても私を、裏切るつもりだったのですかっ!?」

ことり「あ、いやいや、ただちょっと一足先に、穂乃果ちゃんを独り占めしちゃおうかなぁって、考えてただけだよ」

海未「本当に、あなたは……っ!」

ことり「でもね、とりあえず私はそんな、目先のことは諦めて……。ひとまず、元に戻ることにしたんだ」

海未「……『元に戻ることにした』、ですって?」

ことり「うん。『故障』を直して、後で思う存分、穂乃果ちゃんの匂いを楽しむために……私は自分から、戻ることにしたんだよ」

海未「なっ……そ、そんなことが……」

ことり「真姫ちゃんから聞いてない? ほのキチから元に戻る上で何より重要なのは、『元に戻りたい』っていう意志なんだって」

ことり「不思議に思わなかった? どうして私が海未ちゃんのハンカチを嗅いだだけで、あっさり戻れたのか……」

海未「……」

ことり「それは『元に戻りたい』っていう意志が、あの時点で私にはあったから」

ことり「『ほのキチを元に戻す』ことは、難しいけれど……『ほのキチが自分から元に戻る』ことは、実はとっても簡単だったんだよ」

ことり「『他人の匂いを嗅ぎながら、元に戻りたいと強く願う』。たったそれだけで、いいんだから」

ことり「私は海未ちゃんのハンカチを嗅ぎながら、そうやって、『自分から元に戻った』んだ」

ことり「もう一度完璧なほのキチとして『再起動』するために、一旦電源を落としたんだよ」
  


589: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 21:38:21.77 ID:itLZs9w1M.net

 
海未「……そんな」

海未「そんな馬鹿な話がありますかっ! ほのキチに『なり直す』ために、自分から元に戻るなんて……っ!」

海未「大体、元に戻ったあなたが、もう一度ほのキチになれる保証なんて、どこにもないではないですかっ!」

ことり「そんなことないよ。言ったでしょ? 私は海未ちゃんといつかもう一度会えるって、信じてた」

海未「……ま、まさか、この状況ですらあなたは、見越していたというのですか……?」

ことり「あははっ、まさか。流石にこんなことになるなんて、私は夢にも思ってなかったよ」

ことり「……でもね、私がもう一度ほのキチになるためには、きっと『レベル5』を嗅がなきゃいけないな、とは思ってたんだ」

ことり「耐性ができちゃったせいで、レベル4じゃもうなれないかもしれないし……。なれたとしても、また不具合が起きちゃうかもしれないから」

ことり「……私は、確信してた。元に戻った私がレベル5を嗅ぐ時は、必ず訪れるって」

ことり「でもこの状況は、想定外。穂乃果ちゃんがスイッチを押すことになるなんて、私は微塵も思ってなかった。だって……」

ことり「私は海未ちゃんが押したスイッチで、またほのキチになる予定だったんだから」

海未「私がスイッチを、押して……?」

ことり「全部、教えてあげるよ。海未ちゃんが知りたがっていた、私の考えっていうのを……」

ことり「海未ちゃん。これが、『ほのキチ』だよ」
 


590: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 21:53:40.96 ID:itLZs9w1M.net

 
――――


ことり「まず元に戻る前に、私は自分の胸に、聞いてみたんだ」

ことり「もし元に戻ったら、『ことり』はまず何をしようとするかな、って」

ことり「答えはすぐに出た。海未ちゃんがほのキチになったことを知った、ことりなら……必ず海未ちゃんを、元に戻そうとする」

ことり「でもそれはすぐじゃない。わざわざ海未ちゃんにバレないように元に戻ったんだから、ことりはそれを利用するはず」

ことり「海未ちゃんが隙を見せるまでは……汗を流しながら無理をしてでも、ことりはほのキチのフリをする」

ことり「海未ちゃんが隙を見せるとしたら、穂乃果ちゃんの家に着いた時……。その時にことりは、行動を起こす」

ことり「だけどことりはきっと、失敗する」

ことり「ことりはダメな子だから」

ことり「というよりほのキチを元に戻す方法なんて、あの時はまだ詳しく知らなかったから……必ず、失敗する」

ことり「さて。ここまでは、元に戻った私がとる行動を、『元のことり』の気持ちになって、考えてみたけど……」

ことり「今度は、海未ちゃんの方。ほのキチになった海未ちゃんは、ことりに計画を邪魔されたその時、一体どうするかな?」

ことり「私はまず、『自分ならどうするか』って考えた。同じほのキチ同士として、ある程度考え方は共通していると思ったから」

ことり「私なら誰にも邪魔されないような場所に穂乃果ちゃんを連れて、逃げる。二人きりになれるような場所に移動して、穂乃果ちゃんを独り占めしようとする」

ことり「海未ちゃんが私と同じ行動をとるかどうかは、自信なかったけど……。でもその時、思い出したんだ」

ことり「その日の『前日』……。『昨日』のことを」
  


591: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 21:58:43.48 ID:itLZs9w1M.net

  
ことり「『昨日』。つまり海未ちゃんが、ほのキチになった日」

ことり「私は希ちゃんからスイッチを奪って、逃げて……。その後穂乃果ちゃんの部屋で色々あって、レベル4を嗅いで、寝ちゃって……」

ことり「目が覚めた時にはもう夕方で、穂乃果ちゃんと雪穂ちゃんと海未ちゃんがいて、ボーっとしたまま、家に帰って……」

ことり「お母さんに学校サボったこと怒られて、バッグはにこちゃんと絵里ちゃんが届けてくれてて……」

ことり「ご飯食べてお風呂入って歯磨きして、部屋に戻ったところで、なんとなくカーテンを開けて窓の外を眺めてたら――」

ことり「海未ちゃんが、外を歩いてるのが見えたんだ」

ことり「なんか荷物を持ってね……。まあ暗かったし、その時は海未ちゃんがほのキチになってたことなんて知らないから、普通に見間違いだと思ったけど」

ことり「でも思い返してみたら、きっと海未ちゃんはあの時、逃げ場所を予め探しに行ってたんでしょう?」

ことり「逃げ場所を用意したり周りを騙したり、縛り方を調べたりマカロンに睡眠薬を入れたり……『準備』を決して怠らないっていうのも、ほのキチの特徴の一つなのかもね」

ことり「とにかくその『昨日』のことを思い出して、私は確信したんだ」

ことり「ほのキチの考えることなんて、やっぱり一緒だな、って」

ことり「ことりに邪魔された海未ちゃんは、穂乃果ちゃんを連れて、用意してあった逃げ場所に逃げ込む」

ことり「穂乃果ちゃんは、海未ちゃんのことが好きだから、きっと海未ちゃんについていく」

ことり「ことりはもちろん、そんな二人を追おうとする」

ことり「逃げ場所で海未ちゃんは、スイッチを押して、今度こそレベル5を迎える」

ことり「そしてことりは、海未ちゃんたちに追いつく……けれど、一歩遅かった。そのままレベル5を嗅いじゃって、意識を失う」

ことり「形的には、海未ちゃんがほのキチになった状況と一緒だね」

ことり「ここまでが私の想定していた、元に戻ったことりがレベル5を嗅ぐまでの流れだよ」
 


592: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 22:10:10.45 ID:itLZs9w1M.net

  
ことり「これで『ことり』はもう一度、『私』になる。電源を入れ直して、不具合が解消されて、私は完璧なほのキチとして、復活する」

ことり「復活した後のことは、その時の気分次第だったかなー。海未ちゃんと一緒に、穂乃果ちゃんを堪能しようとしてたかもしれないし……」

ことり「もしかしたらまた海未ちゃんを騙して、スイッチを奪おうとしてたかもねっ♪」

ことり「あははっ、怒らないでよぉ。私がこんな感じなのは、今に始まったことじゃないでしょ?」

ことり「とにかくこれで、話は終わり。私の考えてたことが分かって、スッキリできたかな、海未ちゃん?」

ことり「……うん、できるわけないよね。まだ大事なこと、話してないもんね」

ことり「そうだね。そもそも『元のことりが海未ちゃんの逃げ場所に辿り着けなかったら』、意味ないよね」

ことり「ていうか本当なら、辿り着けるはずがなかったんだよね」

ことり「海未ちゃんの用意した『あの逃げ場所』って、秋葉原の中に限定したって、何の手がかりもなく見つけられる場所じゃないもん」

ことり「この教室と違ってあの場所には、何か思い出があるわけでもないし……。そもそも行ったこともなかったし」

ことり「海未ちゃんも秋葉原を適当に探し回って、なんとなくであそこを選んだんでしょ? 別にあそこじゃなくてもよかったし、他に候補はいくらでもあったんでしょう?」

ことり「だからいくら探したって、元のことりがあの場所に辿り着くことは、不可能だったんだ。あの場所は私たちにとって、何の意味も持たない場所だったんだから」

ことり「じゃああの時ことりは、どうやって海未ちゃんの居場所を知ったのかな?」

ことり「確かことりは、『メールで教えてもらった』って、言ってたっけ……誰からのメールなのかは、海未ちゃんには教えなかったみたいだけど」

ピッピッ

ことり「……あっ。文面の最後に、『私のことはナイショでお願い』って書いてあるよ。そっかそっか、だからことりは言わなかったんだ」

ことり「でももうこの際だから、教えちゃってもいいよね。えーっと、差出人の名前は――」


ことり「『ミナリンスキー』」
  


593: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 22:16:09.19 ID:itLZs9w1M.net

  
ことり「……まあこれはただ、なんとなく自分のメルアドを、その名前で電話帳に登録したってだけなんだけど」

ことり「そう。私は自分で自分に、メールを送ったんだ」

ことり「『予約送信』。知ってた? メールって、時間を指定して送ることもできるんだよ」

ことり「ちょうどことりが元に戻って、海未ちゃんを元に戻そうとして失敗して、逃げられて……いま探しているところだろうな、っていう時間を予測して、指定して――」

ことり「海未ちゃんの居場所を書いたメールを、送ったの。ほのキチのことりから、元に戻ったことり宛に、ね」

ことり「私は『未来の自分』に、メールを書いたんだよ」

ことり「……うん、そうだよ。『元のことり』じゃ無理でも……『ほのキチの私』には、海未ちゃんの逃げ場所が分かってたんだ」

ことり「どうして分かったって? ふふっ……さっき、言ったでしょ? 『ほのキチの考えることは一緒だ』って」

ことり「『自分ならどうするかって考えれば、すぐだった』。『私なら、誰にも邪魔されないような場所に穂乃果ちゃんを連れて、逃げる』、って」

ことり「海未ちゃん。私も、だったんだよ」
 


594: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 22:16:58.97 ID:itLZs9w1M.net

 
ことり「だから、あの日は海未ちゃんが穂乃果ちゃんを部屋に連れ込んだけど、その『前日』は、私が穂乃果ちゃんを部屋に連れ込んだでしょ?」

ことり「海未ちゃんを裏切って、希ちゃんからスイッチを奪って、みんなに追われながら……私は穂乃果ちゃんの部屋に、穂乃果ちゃんを連れ込んだ」

ことり「……海未ちゃんは計画を邪魔された時のために、その『前日』に、予め逃げ場所を用意していたんだよね?」

ことり「じゃあ、私は?」


ことり「私がもしも『更にその前日』に、海未ちゃんと同じことを考えていたとしても、おかしくないよね?」


ことり「だって私たちは同じ、ほのキチなんだから。ほのキチの考えることなんて、一緒なんだから。決して準備を怠らないのが、ほのキチなんだから――」

ことり「つまり私も失敗した時のために、用意してたんだよ、逃げ場所を。海未ちゃんと一日ずれた、『前日』にね」

ことり「秋葉原を適当に、探し回ってたんだ……。誰にも邪魔されず、穂乃果ちゃんと二人きりになれて、海未ちゃんたちにも絶対分からないような、そんな場所を……」

ことり「カラオケボックスや、漫画喫茶は店員さんがいるし……。ホテルだとなんか、緊張しちゃうし」

ことり「……そんな時、見つけたんだよね。『あの廃墟』を」

ことり「廃墟って言っても、まだ結構綺麗だったし……。怖い人とかもいなそうだったし、いいかなって」

ことり「あははっ、偶然とはいえ、用意した場所まで同じだったなんて、ビックリだよね。親友同士、やっぱり通じ合う部分があるのかな、私たち」

ことり「あの場所は、『元の私たち』にとっては、何の意味も持たない場所だけど……『ほのキチだった私たち』にとっては、特別な場所だったんだよ」
  


595: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 22:22:24.90 ID:itLZs9w1M.net

 
ことり「……なんて、流石にその時は、海未ちゃんが私と同じ場所を選んでたなんて、知らなかったけどね」

ことり「他に廃墟なんて、いくらでもあったし……別に廃墟じゃなくても、よかったし」

ことり「だからあの廃墟も含めたいくつかの候補を上げて、それをメールに書いたんだ。そうやって私はそれを『自分』に、教えてあげたんだよ」

ことり「元のことりじゃ、絶対にあの場所には辿り着けないから。元のことりはほのキチの考え方なんて、できないし」

ことり「そもそも私たちは同じ『ことり』なんだから、考えは共有できるはずなんだけど……。私の考えは全部、元のことりの頭の中にもあるはずなんだけど」

ことり「でも元のことりはきっと、私の考えを思い出せない。『私』を思い出そうとすることを、無意識のうちに頭の中で拒否するはず」

ことり「だって『ことり』はμ'sで一番、ピュアな女の子だもん」

ことり「それは『私』が一番よく知ってる。ほのキチの私が考えてたことを、元のことりは思い出せない……だから海未ちゃんにも、辿り着けない」

ことり「そんなピュアピュアでダメダメな元の自分が、ちゃんと海未ちゃんのところに辿り着けるように、私はメールを送ったんだ」

ことり「自分を海未ちゃんのところに向かわせて……そこでレベル5を、嗅がせるために」
 


596: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 22:23:34.22 ID:itLZs9w1M.net

  
ことり「そして指定した時間通りに、ことりはメールを受け取って、それを見て、海未ちゃんのところに辿り着いた」

ことり「ここまでは全部、私の狙い通り……計画は、順調だった」

ことり「でも結局、廃墟に充満してたのは、レベル4で……レベル5じゃなかった。海未ちゃんはまだ、レベル5を迎えてはいなかった」

ことり「予想はしてたよ。レベル5の前に下のレベルで耐性をつけようとするのは、私も同じだったからね」

ことり「だからその時間もちゃーんと計算に入れて、メールの時間を指定してたんだ。海未ちゃんがレベル5を押した『後』に、ことりが到着するように……」

ことり「私の送った候補の中から、元のことりが正解の場所を見つけるまでの時間も、全部計算に入れて、予約送信したはずなんだけど……」

ことり「……ちょっと、ずれちゃった。惜しいなぁ、あれさえなければなあ……」

ことり「うん? あぁ、それがね。ことりがメールを見て街を探し回ってる最中に、海未ちゃんたちを見たって人に会っちゃってね……」


『二人はどっちへっ!?』

『えっ……。あ、あっち、かな……』


ことり「そのせいで候補が、だいぶ絞られちゃったんだよねえ……。あーあ、ほんとあれさえなければ……」
  


597: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/22(日) 22:24:08.37 ID:itLZs9w1M.net

   
ことり「それでも着いた後で、またことりが失敗して、海未ちゃんにレベル5を押されちゃうってこともありえたんだけどねー」

ことり「でも、まさか――」


『私、見ちゃったんだ……。誰もいない教室で……海未ちゃんが、一人で――』

『体操着の匂いを、顔を真っ赤にして、必死に嗅いでる姿を……』


ことり「あんな切り札があったなんて……。元のことりは別に海未ちゃんを元に戻すために、『あの話』をするつもりだったわけじゃないみたいだけど」

ことり「あれは流石に想定外だったよ。仕方ないんだけどね、元に戻るまで私は、あのことを忘れてたわけだし……」

ことり「……想定外が二つもあったせいで、私の狙いは外れちゃった。結局ことりはほのキチになれなくて、おまけに海未ちゃんまで、元に戻っちゃった」

ことり「全部元通りになって、私たちの間に平和が戻ってきて……。ほのキチの私はもう、二度と復活できなくなっちゃった」

ことり「電源を入れ直そうと思ったら、切ったまま電源が入らなくなっちゃった……なんて、笑えないよ」

ことり「……でも」

ことり「でも私はまたこうして、海未ちゃんと話してる」

ことり「ほのキチとして、ことりはまた、ここにいる」

ことり「んんー……。はぁ、はぁ……///」スンスン

ことり「レベル5を嗅いで、感じてる……っ!」

ことり「まさか、こんなことになるなんて。穂乃果ちゃんがスイッチを押すなんて……ほんと、何もかも想定外だよ……っ!」

ことり「……ふふっ、ふふふふ」

ことり「ふふっ、あははは……っ! あっはははははははぁっ……!!」

ことり「ははは……はぁ、はぁ……。ふぅ……」

ことり「ふふっ……。頭の痛みも治って、忘れてたことも思い出せて……スッキリした」

ことり「ことりは今、最高の気分だよ」

ことり「さぁ、海未ちゃん……。私の話は今度こそ、これで終わり」

ことり「何か質問は、あるかな?」
  


625: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/23(月) 21:15:55.76 ID:74fBI7SrM.net

  
―――――


海未「なっ……」

ことり「……」

海未「なん、てことを、考えるのですか、あなたは……」

ことり「うん?」

海未「私とあなたが同じ、ですって……? あ、あなたと同じほのキチなんて、いるものですか……っ!」

海未「ここまでたくさんのほのキチを見てきましたが……。あなた以上に、凶悪で、不気味で、狡猾なほのキチはいませんでした……っ!」

ことり「……買い被り過ぎだよ。結局考え方は、私もみんなと変わらないもん」

ことり「だってこの計画も全部、穂乃果ちゃんの匂いを思う存分嗅ぐためだけに思いついたものなんだから」

海未「たったそれだけのために、あなたはここまでしたというのですか……っ!?」

ことり「そうだよ。いつだって私は、たったそれだけのために、動いてきたんだ」

海未「それだけのために、あなたはとうとう、『自分』まで騙したんですかっ!?」

ことり「……」

海未「やはり、理解できない……っ! あなたは一体、何者なんですか……っ!?」

海未「こんな計画を、考えつくなんて……自分が元に戻った後に起きることを、ここまで予測できるなんて、あり得ませんっ!」

海未「しかも途中まではほぼ、あなたの予測通りに事が進んでいる……っ! これではまるで、私たちみんな、あなたの手のひらの上で踊らされていたみたいではないですかっ!」

海未「あなたは練習の合間という短い時間の間で、こんな計画を考えついたというのですかっ!?」

ことり「……そうだね。短い時間だったからこそ、リスクも高い無謀な計画になっちゃったけど……」

ことり「でもそんなに、驚くことじゃないよ。前も言わなかったっけ? 穂乃果ちゃんの匂いを嗅ぐと、頭が冴えるんだ」

海未「……っ!!」
  


627: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/23(月) 21:28:59.28 ID:74fBI7SrM.net

  
『やっぱり穂乃果ちゃんの匂いを嗅ぐと、頭が冴えるなぁ。おかげでやっと、分かったよ』


海未「確かに以前あなたはそう言って、真姫が、スイッチを奪った犯人の協力者であると当てて見せた……」

海未「その直前に、あなたは穂乃果に頼み、彼女を抱きしめながら匂いを嗅いでいましたね」

海未「『ほのスメルを嗅いだ直後、ほのキチは最高のパフォーマンスを発揮できる』。なるほど、そういうことですか……」


『あなたが急に屋上を飛び出していったので、追って来てみれば……。それは、穂乃果の服ですか?』


海未「あの時あなたは、『部室で穂乃果の服を嗅いだ直後』だった……」

海未「ほのスメルにより活性化した脳を、フルに使って生み出したのが、この計画だったというわけですか」

ことり「そういうことっ」

海未「……元のことりが、あなたの送ったメールを受信する前に、送信ボックスの方を見てしまう可能性も、あったはずです」

ことり「送信ボックスなんて、普段は滅多に見ないでしょ。まあ、元のことりがもし、『自分が携帯で何かメールを打っていたこと』だけでも思い出せてれば、それもあったかもだけど……」

ことり「でもそれができないことも、私は確信してた」

海未「……なぜですか?」

ことり「絶対に元のことりが思い出せない……ううん、『思い出したくない』ような状況で、メールを打ったからだよ」

海未「は……?」

ことり「ほら、練習の合間に私、トイレに行ったでしょ?」

海未「よく覚えていませんが、行っていてもおかしくはないでしょう。トイレでメールを、打ってたんですか?」

ことり「うん。穂乃果ちゃんのことを想像して、色々なことをした後にね」

海未「あなたという人はっ!!」
  


628: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/23(月) 21:40:11.15 ID:74fBI7SrM.net

  
ことり「ピュアなことりは頑張って『私』の記憶を思い出そうとしてたみたいだけど、これは流石に無理だったみたいだねー。あははっ」

海未「いい加減、ことりの体でハレンチなことをするのはやめてくださいっ!」

ことり「私もことりだもーん♪」

海未「くっ……っ! 私があの時ほのキチでなければ、あなたをトイレに行かせたりなどしなかったのにっ!」

ことり「ほのキチはトイレにも、行かせてもらえないんだ……」

海未「本当に、あらゆる意味で元のことりとは大違いですね、あなたは……っ!」


プルルルル



海未「っ!?」

ことり「あらら?」

海未(電話……私の、ですか)

ことり「どうぞ」

海未「……」


ピッ

海未「……雪穂、ですか?」

『海未ちゃん……』

海未「大丈夫ですか……? 何か、ありましたか?」

『あのね……』


『……お姉ちゃん、いたよ』

海未「っ! ほ、ほんとですかっ!?」

『うん……。アルパカ小屋にいたんだ。特にケガとかは、してなさそう』

海未「そ、そうですか、そんなところに……。とにかく良かったです、無事で」 


海未(穂乃果……)


629: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/23(月) 21:57:27.76 ID:74fBI7SrM.net

  
海未「それでその、穂乃果は今……」

『……すぐ近くにいるけど、ごめん。今お姉ちゃん、ちょっと不安定っていうか……海未ちゃんと話せる状態じゃないの』

海未「あっ、そう、ですか……」

海未(穂乃果、やはり私のことを……。無理も、ありませんか)

海未(私は穂乃果の気持ちを、分かってあげられなかった……。私のせいで、彼女は……)

海未(もう一度会った時、私は一体彼女に、どう接すればよいのでしょう……。私は穂乃果に、何をしてあげれば……)

海未(……いえ、今はなにより無事が確認できたことを、喜ぶべきでしょう。あとは……)

海未「……穂乃果のことはひとまず、あなたに任せておいてもよろしいでしょうか?」

『うん、分かった。とりあえずここにいれば、安全っぽいし……』

海未「はい……。それと」

海未「スイッチの方は、どうなりましたか? 穂乃果が持っていたはずですよね?」

『っ! そ、それは……』

海未「こちらではまだスメルは、充満したままです……。なるべく早急に、レベルを下げて頂きたいのですが」

『……』

『だ、だめ、なの……』

海未「だめ、とは……?」

『レベル、下げられないの……』

海未「っ! つ、つまりそれは、穂乃果がレベルを下げることを拒んでいるということですか……?』

『違うよ……っ! お姉ちゃんは反省して、必死に自分でレベルを下げようと、してくれてたんだ……っ!』

海未「えっ……」

『でも、だめなの……っ! 下げられないの……っ!』

『私も、何度も下ボタンを押した……っ! でも5になったまま、下がんないんだよぉっ! う、うぅ……っ』

海未「なっ……なん、ですって……?」
 


630: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/23(月) 22:01:18.23 ID:74fBI7SrM.net

『ど、どうしよう、海未ちゃん……っ! どうしよぉ……っ!』

海未「……っ」

『も、もしこのままずっと、匂いが強くなったままだったら……お姉ちゃんは、どうなっちゃうのぉ……?』

海未「お、落ち着いてください、雪穂っ! 大丈夫です、大丈夫ですから……っ!」

『このままじゃみんなも、元に戻せない……っ! う、うぅ、どうしよう……』

海未「ことりを、見つけましたっ!」

『えっ……?』

海未「今、私の目の前にいます……っ! やはり彼女も、ほのキチになってしまっていましたが……」

海未「……私が必ず、元に戻してみせます。もしもことりが戻ったら、一緒に打開策を考えましょう」

『……』

海未「大丈夫です。希望はまだあります。諦めるのはまだ早いですよ、雪穂」

『海未ちゃん……』

海未「必ずことりを連れて、そちらに向かいます。ですからそれまで、穂乃果を頼みます」

『わ、分かった……』

海未「……では」

ピッ

海未「……」


無理に壊そうとして、万が一暴発してしまったら……例えばレベルが上がったまま元に戻らなくなってしまえば、大変なことに――


海未(『暴発』……? いえ、雪穂も穂乃果もレベルを下げようとしただけで、スイッチを壊そうとはしていなかったようです……)

海未(……まさか――)

海未(あのスイッチ……一度レベル5まで押したら、二度とレベルが下げられなくなる仕組み、だったのですか……?)

海未(そんな……そんな理不尽なことが、あっていいのですか?)


海未「はっ……」


海未(……ここまでなんとか耐えてきましたが、流石にこれは、きついですね)

海未(『希望はまだある』……? そんなのもう、どこにもないじゃないですか……)
  


631: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/23(月) 22:18:34.07 ID:74fBI7SrM.net

  
ことり「どうかしたの、海未ちゃん? 顔が真っ青だけど」

海未「……雪穂が穂乃果を見つけてくれたんです。スイッチも……」

ことり「雪穂ちゃん? へえ、雪穂ちゃんもここに来てたんだ」

海未「……雪穂たちはスイッチの下ボタンを押して、レベルを下げようとしてくれました」

海未「しかし、レベルは5のまま、下げられなかったそうです。いくら押しても……」

ことり「……えっ?」

海未「未だにスメルが消えていないのが、その証拠です……。も、もしかしたら、このまま、穂乃果は……」

ことり「あははっ!」

海未「……っ!?」

ことり「すごいな……。ほんとに、予想外なことばかりだぁ……あははっ」

海未「な、なにが可笑しいのですか……? あなた、分かってるんですかっ!?」

海未「スイッチのレベルが下げられないということは、穂乃果のスメルは『ずっと増幅されたまま』だということなんですよっ!?」

海未「穂乃果の体は……『永遠にレベル5を発し続ける体』になってしまった、ということなんですっ!」

ことり「ふふっ、分かってるよ。だから私はこんなに、ワクワクしてるんだよ」

海未「……」

ことり「はぁ~、これでスイッチなんてなくても、穂乃果ちゃんはずっとレベル5のまま……。あの匂いをずぅーっと、漂わせ続けるんだ……」

ことり「あははは、嗅ぎ放題だ……っ! すごいなぁ……楽しいなぁ。うふふふっ……」

海未「……永遠にレベル5を発し続けるということは」

海未「穂乃果はもう二度と、外を出歩けないかもしれない、ということなんですよ……?」

海未「どこかに行くことも遊ぶこともできず、誰かと会うことも、話すことさえも……。もう二度と彼女は、できないかもしれないんですよ……」

海未「それを分かっててもまだ、あなたはそうやって、笑えてしまうのですか……?」

ことり「……」
 


632: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/23(月) 22:33:13.34 ID:74fBI7SrM.net

  
ことり「うーん。じゃあ、こーゆーのはどうかな?」

海未「……はい?」

ことり「穂乃果ちゃんには一生、家の中で過ごしてもらうの」

海未「……」

ことり「雪穂ちゃんなら、スメルも効かないし……。ってことはきっと、お父さんやお母さんも大丈夫そうだよね」

ことり「それに海未ちゃんももう、耐性は十分だし……家の中を出入りするくらいなら、全然平気じゃないかな」

ことり「私も海未ちゃんほどじゃなくても耐性はありそうだし、大丈夫かな。うん……」

ことり「確かに外には出歩けないけど、家族や友達はいるし、意外と幸せに過ごせるんじゃないかな?」

海未「……そんなわけ」

ことり「それで……大人になったらね、穂乃果ちゃんと海未ちゃん、ことりの三人で、お部屋を借りるの」

海未「っ! は、はぁ……?」

ことり「どこかの安い、アパートでね……。私と海未ちゃんで、穂乃果ちゃんを養ってあげるの。ふふっ」

ことり「昼間は私と海未ちゃんが、外で働いて……。穂乃果ちゃんは部屋で、家事をやっててもらおうかな」

ことり「夜、私たちが仕事から帰ってきたら、『おかえり』って、穂乃果ちゃんは言ってくれてね」

ことり「それから穂乃果ちゃんが用意してくれてたお夕飯を、三人で食べるの。楽しく、お喋りしながら……」

ことり「私と海未ちゃんが、今日あったことを、穂乃果ちゃんにいっぱい教えてあげるの」

ことり「外に出られない穂乃果ちゃんは、私たちがする『外の世界』の話を、とっても楽しそうに、聞いてくれるんだ……」

ことり「それでね。お風呂に入って、パジャマに着替えたら……。三人で一緒に、お布団に入ってね……」

ことり「いーっぱい、エッチなことをするんだぁ……。うふ、うふふっ……」

海未「……」


海未「何を言ってるのですか、あなたは……?」
 


636: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/23(月) 23:02:07.90 ID:74fBI7SrM.net

  
海未「あなたは……本気でそんなことを、考えているのですか……?」

海未「だとしたら、本当にあなたは、終わっている……」

海未「い、異常です、あなたは……。とても私のよく知ることりと同一人物とは、思えない……」

ことり「……」

海未「私はあなたを元に戻すために、ここに来ました」

海未「しかしあなたは本当に、元に戻れるのですか……? ことりは……元のことりは本当に、帰ってきてくれるのですか?」

海未「今のあなたを見ていると、元のことりはもう二度と帰ってこないのではないかとさえ、思います……」

ことり「それは海未ちゃん次第だし、ことり次第だよ。だけど……」

ことり「……私の想像した『未来の話』、そんなにおかしいかな?」

海未「当たり前です……。いえ、あなたは結局ほのスメルさえ嗅げれば、それでいいのでしょうが……」

海未「あなたの言っていることは、『穂乃果を部屋に閉じ込めて、私たちで管理する』ということです。そんな未来が、あっていいはずがありません……っ!」

ことり「……でもさぁ、私たち三人にはそれくらいのことをしなきゃ償えない、『罪』があるんじゃないかな?」

海未「……はい?」

ことり「少なくとも穂乃果ちゃんには、あるよね? だってスイッチを押したのは、穂乃果ちゃんなんだから」

ことり「だから責任をとって、『一生外に出られない』くらいの罰は、受けてもらわなきゃ。そうでしょ?」
  


637: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/23(月) 23:03:37.52 ID:74fBI7SrM.net

 
海未「……穂乃果に責任がないとは、言いません」

海未「しかし彼女がスイッチを押すことになったのは、全て……」

ことり「そうだね。私たちにも、罪はあるよね」

ことり「だって、スイッチを押したのは、穂乃果ちゃんだけど……。『穂乃果ちゃんにスイッチを押させた』のは、私たちだもん」

海未「……」

ことり「だから私たち二人も、責任をとらなきゃいけないよね」

ことり「一生をかけて『穂乃果ちゃんを養っていく』ことが、穂乃果ちゃんへの償いで……。『責任もって穂乃果ちゃんを管理する』ことが、みんなへの償い」

ことり「ちゃんと、償わなきゃ。私たちはそれだけのことを、したんだから」

海未「『私たち』……?」

ことり「……」

海未「私のことなら、分かります。私に責任があるのは、重々承知しています。穂乃果がスイッチを押した原因は、私にあるのですから」

海未「でも……ことりは、違うでしょう? あなたに……。いえ、元のことりに、罪はないはずでしょう?」

ことり「……なぁんにも分かってないんだね、海未ちゃん」

海未「……えっ」
  


638: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MM42-FeHY) 2015/11/23(月) 23:05:52.10 ID:74fBI7SrM.net

  
ことり「海未ちゃんはほのキチの私から見ても、本当に素敵な女の子だと思うけど……。『匂い』と『恋愛』のことになると、ほんとにダメだねえ」

海未「わ、私が、何を分かってないというのですか……?」

ことり「……『私』の考えてたことはもう全部、話したけどさ」

ことり「『元のことり』が考えてたことはまだ、何も話してないよね」

海未「っ!? な、なにを言うのですかっ! あの優しいことりが、あなたのように何かを企んでたというのですかっ!?」

ことり「せっかちだなぁ、海未ちゃん。別に『企んでた』ってほどのことじゃないよ」

ことり「ただ私が言いたいのは、元のことりには、ほのキチの私の考えを共有することはできなかったけど、『逆』は別にそうじゃないってこと」

ことり「私は全部、知ってる。『ことり』の考えも、思い出も、気持ちも……。全部この頭の中に、胸の中に、残ってる」

ことり「聞かれたから答えたけど、私の計画のことなんて本当は、どうでもよかったんだ。本当に海未ちゃんが知らなきゃいけないのは、こっちの方なんだよ」

ことり「だいぶ遠回りしちゃったけど……。私は『この話』をするために、海未ちゃんをここで待ってたんだよ」

海未「……」

ことり「じゃあ、今から話すけど。まずはその前にもう一度、復習しておこうか。テストには出ないけど、大事なとこだからね」

ことり「南ことりは園田海未ちゃんのことが、昔からずっと好きでした――」
  


672: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMb5-p9Wi) 2015/12/05(土) 21:23:55.75 ID:3KHOY4I9M.net

 
――――

ことり「――だけど『ことり』は、知ってたんだよ。海未ちゃんが好きなのは、穂乃果ちゃんだって」

ことり「昔から、気づいてたんだ。海未ちゃんの、気持ちに……」

ことり「えっ? ことりのことも好き? あははっ、ありがと。嬉しいよっ」

ことり「あぁ、こっちのことりのことじゃないって? 別にわざわざ訂正しなくてもいいのに……」

ことり「ま、いいや。じゃあ聞くけど、その『好き』って言うのは、お友達として? それとも……」

ことり「……えっ、分からない? 自分の気持ちが、分からないって? あはは、海未ちゃん……」

ことり「そうやって逃げるの、もうやめにしない?」

ことり「『分からない』んじゃない。海未ちゃんは、『分かろうとしてない』だけでしょ?」

ことり「自分の気持ちと向き合って、答えを出すことから……逃げてるだけでしょ?」

ことり「海未ちゃんは、答えを出さなきゃいけない。ことりからの告白を受けた以上は、選ばなきゃいけないんだよ」

ことり「穂乃果ちゃんと、ことり……。自分がどっちのことを『好き』なのか、選ばなきゃいけないんだ」

ことり「……だけど、ここでどっちかを選んじゃったら、どっちかが傷つくかもしれない。海未ちゃんはそう思って、それが怖くて、ずっと逃げてたんだよね」

ことり「でもね、海未ちゃんは早く、答えを出すべきだったんだ」

ことり「穂乃果ちゃん……きっと不安だったんじゃないかな。海未ちゃんの気持ちが見えなくて……。そんな不安が大きく膨れ上がって、あの時、破裂しちゃったんだ」

ことり「だから海未ちゃんがはっきりと『どっちが好きなのか』、答えを出せていれば……穂乃果ちゃんがスイッチを押すことはなかったかもしれない」

ことり「これが、『穂乃果ちゃんにスイッチを押させた』……海未ちゃんの、罪だよ」
 


675: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMb5-p9Wi) 2015/12/05(土) 21:38:07.14 ID:3KHOY4I9M.net

 
ことり「ことりも確かに、いつまでも待ってるなんて言ったけど……。流石に9日間は、待たせすぎだよ」

ことり「問題を先送りにしたって、ろくなことにならない……なんてことは、留学の件で、学んだはずでしょう?」

ことり「なんて、張本人が言ってみたけど。でもさ、海未ちゃん……」

ことり「……これで問題がなくなったわけじゃ、ないよね?」

ことり「まさかこのまま答えを出さないまま、穂乃果ちゃんともう一度会えるなんて思ってないよね?」

ことり「向き合うときが来たんだよ、海未ちゃん。逃げるのはもう、これで終わり」

ことり「私が海未ちゃんを、逃がさないから。この問題を解くまで、この教室から出ることは許さない」

ことり「さて、問題です」

ことり「海未ちゃんは一体、穂乃果ちゃんとことり、どっちが好きなんでしょう?」

ことり「……」


ことり「……なんてね」

ことり「本当はもう、答えなんて出てるんだけどね」

ことり「海未ちゃんがそれに、気づいてないだけで……答えは誰の目から見てももう、明らかなんだ」

ことり「だからこの問題は、海未ちゃんが自分の気持ちと『向き合って』、自分の気持ちに『気づく』ための問題なんだよ」

ことり「……それとももう、海未ちゃん自身も気づいていて、それを認めようとしてないだけなのかな?」

ことり「まあ、どちらにしても、海未ちゃんが穂乃果ちゃんを好きって事実は、変わらないんだけどね」




ことり「……えっ?」 

ことり「だからぁ――」

 

ことり「海未ちゃんが好きなのは、穂乃果ちゃんなんだよ」

ことり「昔からずっと……今も変わらず、ね」

ことり「それが、この問題の答えだよ」
  


676: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMb5-p9Wi) 2015/12/05(土) 21:46:10.63 ID:3KHOY4I9M.net

 
ことり「あとは海未ちゃんがそれに、気づくだけ……認めるだけ」

ことり「そうすれば、この問題は……」

ことり「……」

ことり「うん。この前ことりから告白されて、それで……?」

ことり「それからずっと、ことりのことを考えると……頭がフワフワして、胸がドキドキしてた?」

ことり「顔がカァーッと熱くなって、ことりのことが頭から離れない……。だから海未ちゃんが好きなのは、ことりなのかもしれない?」

ことり「あははっ、そっか。海未ちゃんはそれで、自分がことりに恋をしちゃったのかもしれないと思ったんだ?」

ことり「違うよ、海未ちゃん。海未ちゃんのそれは、恋じゃない」

ことり「海未ちゃんは『ことり』にドキドキしてるんじゃなくて、『告白されたこと』にドキドキしてるんだ」
 


677: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMb5-p9Wi) 2015/12/05(土) 21:46:59.03 ID:3KHOY4I9M.net

 
ことり「だからね、海未ちゃんは別に告白されたのがことりじゃなくても、同じような反応をしてたに違いないんだよ」

ことり「そうでしょう? だって海未ちゃんは、恋愛映画もまともに見れないような恥ずかしがり屋さんなんだから」

ことり「相手が男子だろうが、女子だろうが……。友達だろうが、クラスメイトだろうが、希ちゃんだろうが花陽ちゃんだろうがフミコちゃんだろうが亜里沙ちゃんだろうが――」

ことり「誰が相手でも告白なんてされたら、海未ちゃんは同じようにフワフワして、ドキドキしてたんじゃないかな」

ことり「でもそれって、本当に恋なのかな? その相手は海未ちゃんの、本当に好きな人なのかな……?」

ことり「勘違いだよ、海未ちゃん。海未ちゃんが恋だと思ってた『それ』は、ぜんぶ勘違い」

ことり「海未ちゃんがことりに対して感じていた想いは、間違いで……。穂乃果ちゃんに感じていた想いこそが、正解なんだ」

ことり「……それをことりも、分かってた。だからあの時も、言ったでしょ?」


『いいよ、海未ちゃん。返事、今すぐじゃなくても』

『ことり、待ってるから。いつまででも、待ってるから……だからいつかことりに、海未ちゃんの――』


ことり「『本当の気持ちを聞かせて』、ってね」

ことり「認めちゃおうよ、海未ちゃん。『私はことりのことが大好きだけれど、それは友達としてで、別に恋をしてるわけじゃない』――」

ことり「『私が本当に好きなのはことりじゃなくて、穂乃果だ』……ってさ」
 


679: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMb5-p9Wi) 2015/12/05(土) 21:57:31.62 ID:3KHOY4I9M.net

 
ことり「……ふふっ」

ことり「どうしたの、海未ちゃん。どうしてそんな、悲しそうな顔をするの?」

ことり「別に私の前ではそんなに、気を遣わなくていいよ。海未ちゃんに恋をしてるのは、『あっち』のことりなんだし」

ことり「『こっち』の私は海未ちゃんのことなんて、とても大切な親友程度にしか思ってないんだから」

ことり「でも……そうだね。『あっち』のことりは海未ちゃんのことが昔からずっと、好きだったんだ」

ことり「だけどこれが絶対に叶わない恋だってことも、分かってた。ことりはいつか自分の恋を、諦めるつもりだったんだよ」

ことり「ううん、本当はとっくに、諦めてたんだ……でも全然悲しくなんて、なかったんだよ」

ことり「穂乃果ちゃんと海未ちゃんが、幸せになれるなら……それだけでことりは、幸せだったから」

ことり「……そうだよね」

ことり「じゃあなんで、ことりは海未ちゃんに告白なんかしたんだろうね。諦めてたんなら、どうしてそんなことしたんだろう?」
   


680: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMb5-p9Wi) 2015/12/05(土) 22:02:10.47 ID:3KHOY4I9M.net

  
ことり「昔からずっと、ずぅーと、子供の頃から胸に隠してた、その想いを……。どうして今になって海未ちゃんに打ち明けようと、したんだろう?」

ことり「……うん。その理由も私には、分かってるよ。だって私も同じ、『ことり』なんだから」

ことり「ねえ、海未ちゃん……」

ことり「別に元のことりは、海未ちゃんが昔から穂乃果ちゃんだけじゃなく、ことりの匂いも嗅いでたことを知って、『もしかしたら』と思ったとか……」

ことり「諦めきれなくなったとか、気持ちを抑えきれなくなったとか、穂乃果ちゃんと戦う決意をしたとか――」

ことり「そんな理由で告白したわけじゃ、ないんだよ?」

ことり「そんな素敵な理由じゃなくて……もっと歪で醜くて、人に話せば神経を疑われるような、そんな理由で告白したんだ」

ことり「……それが、ことりの犯した罪」

ことり「海未ちゃんの罪が、ちっぽけに思えるほどの……。一生かけて償わなきゃいけないような、ことりの罪――」
  


681: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMb5-p9Wi) 2015/12/05(土) 22:15:12.07 ID:3KHOY4I9M.net

   
ことり「結論から言うと、ことりは『穂乃果ちゃんのために』、海未ちゃんに告白したんだ」

ことり「……何を言ってるのか分からない、って顔だね。大丈夫、私も自分で何を言ってるのか、分かってないから」

ことり「だって告白なんて、『その人と結ばれたい自分』以外の、誰のためにするんだって話だもんね」

ことり「『他の誰かのために』、自分の好きな人に告白するなんて、聞いたことないや……」

ことり「……そもそも、なんでことりが海未ちゃんに告白することが、穂乃果ちゃんのためになるのか、って話だよね」

ことり「まずことりはね、穂乃果ちゃんが、海未ちゃんのことが好きだっていうことを、前に本人の口から直接聞いてたんだよ」

ことり「それとそのことは、『海未ちゃんには内緒にして』……ともね」

ことり「まあ、分かるよ。ずっと三人で『親友同士』としてやってきた、私たちだもん。もしも自分の恋心が海未ちゃんに知られちゃったら、私たちの関係は崩れちゃうかも知れない――」

ことり「きっとそう思って穂乃果ちゃんは私に口止めをして、自分の気持ちをひた隠しにしようとしたんだ」

ことり「……穂乃果ちゃんはそうやって、『ことりに気を遣ってた』んだよ」

ことり「だって、もしも自分が海未ちゃんに告白なんかして、それで三人の関係が崩れることになっちゃったら……」

ことり「……『告白とは関係のないことりちゃんにまで、迷惑がかかっちゃう』。そんな風に穂乃果ちゃんは、考えたんじゃないかな」

ことり「そうやってことりに遠慮して、自分の恋心を胸の奥に、しまいこんで……。きっとそのままずっと、しまったままにするつもりだったんだろうね」

ことり「……それまでの、ことりみたいにね」
 


682: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMb5-p9Wi) 2015/12/05(土) 22:17:22.57 ID:3KHOY4I9M.net

  
ことり「とにかくこうして穂乃果ちゃんと海未ちゃんは、お互い知らない間に、両想いになってた……」

ことり「でも海未ちゃんは自分の気持ちに気づいてないし、穂乃果ちゃんは三人の関係が崩れることを恐れて、気持ちを隠してた」

ことり「二人の関係はこのままじゃ、いつまで経っても進展しないまま……。ずっと、友達同士のまま。それはそれで、いいのかもしれないけど……」

ことり「……でもことりはね、思ったんだよ」

ことり「そうやって恋心を胸にしまうことを決めた、穂乃果ちゃんと……それまでの自分を、重ねて」

ことり「最もらしい言い訳を並べてたけど、本当は告白する勇気がなかっただけの、弱い自分を重ねて……ことりは『このままじゃダメだ』って、思ったんだ」

ことり「穂乃果ちゃんには、自分みたいになってほしくなかったから」


ことり「だからことりは、穂乃果ちゃんが恐れていたことを、あえて自分から起こしたんだ」


ことり「今までの関係のままでいることも、大事だけど……ことりに気を遣って、海未ちゃんへの想いを、胸に閉じ込めて欲しくなかったから」

ことり「ことりは、『穂乃果ちゃんの代わりに自分が海未ちゃんに告白すること』で、三人の関係を先に『自分から崩そうと』したんだよ」
 


683: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMb5-p9Wi) 2015/12/05(土) 22:19:29.11 ID:3KHOY4I9M.net

  
ことり「でね……。次の日、ことりは自分が海未ちゃんに告白したことを、穂乃果ちゃんに伝えたんだ」


『穂乃果ちゃん……私ね、昨日――海未ちゃんに、告白したの』


ことり「そしてことりは穂乃果ちゃんに、『宣戦布告』をした」


『私は、穂乃果ちゃんと……戦うんだ。もう、二人についていくだけの、私じゃない……。いつまでもダメな子のままじゃ、いられないんだ』

『私は絶対に、穂乃果ちゃんに、勝つんだ……。う、う――』

『海未ちゃんは、渡さないんだからぁ……っ!』


ことり「……ふふっ、そう。本当に言ったんだよ。ビックリだよね。あのことりが、そんなことを言うなんて」

ことり「でもどうやらことりはね、そうやって穂乃果ちゃんに、『勇気』を与えたかったみたいだよ」

ことり「ことりらしくない、キツイ言い方だったけど……。あの時の言葉は全部、穂乃果ちゃんに対するエールだったんだ」


ことり「『私は海未ちゃんに告白したよ。今度は、穂乃果ちゃんの番。だから勇気を出して、頑張ってっ』」


ことり「……これが『穂乃果ちゃんのため』に告白した、ことりの細やかな『企み』……」

ことり「とっくに、諦めてたのに……。海未ちゃんの気持ちにも気づいてて、自分がフラれることも、分かってたのに」

ことり「親友を勇気づけるためだけに、ことりは好きな人に告白をしたんだ」

ことり「ねっ、頭おかしいでしょ?」
  


684: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMb5-p9Wi) 2015/12/05(土) 22:32:28.55 ID:3KHOY4I9M.net

  
ことり「でも結果は、この通り――」


ことり「ことりは、『失敗』した。ことりは穂乃果ちゃんに勇気を与えるどころか、その真逆のことをしでかしちゃったんだ」

ことり「穂乃果ちゃんはことりが思ってるよりもずっと、ことりのことを高く評価してくれてた。嬉しいことだけどね……今回はそれが、裏目に出ちゃったんだ」

ことり「そんなことりから宣戦布告を受けて、穂乃果ちゃんは、逆に自信をなくしちゃったんだよ」

ことり「『自分なんかじゃことりちゃんには勝てない』。穂乃果ちゃんは、そう思い込んだ……」

ことり「本当は、勝ちの決まっていた戦いなのに……。穂乃果ちゃんはことりの言葉を受けて、焦っちゃったんだよ」
 


685: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMb5-p9Wi) 2015/12/05(土) 22:33:21.34 ID:3KHOY4I9M.net

ことり「ことりは、信じてた。『いつも元気で前向きな穂乃果ちゃんなら、きっと私と戦う決心をしてくれる』、って――」

ことり「でも穂乃果ちゃんは、ことりの想像以上に、脆かった」

ことり「平気なように振舞ってたけど、穂乃果ちゃんの顔からは、明らかに笑顔が減っていって……」


ことり「そして穂乃果ちゃんはとうとうあのスイッチに、手を出してしまった」


ことり「……本当はそれも、想定すべきだったんだけどね。レベル1とはいえ、穂乃果ちゃんが海未ちゃんにバレないようにスイッチを使ってたことには、ことりも気づいてたんだから」

ことり「それでもことりは、穂乃果ちゃんなら必ず、スイッチなんて使わずに立ち直ってくれるって、信じてたんだろうね……」

ことり「思えばことりはいつも、『穂乃果ちゃん穂乃果ちゃん』って、甘い声で名前を呼んで……勝手に期待して、信頼を押し付けてた」

ことり「でも穂乃果ちゃんだって、無敵じゃないんだ。お話の中の主人公じゃあるまいし、そんなことあるわけないんだ」

ことり「そんなこともことりは、わかってなかったんだね……」
  


686: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMb5-p9Wi) 2015/12/05(土) 22:37:55.57 ID:3KHOY4I9M.net

   
ことり「……とにかく、こうしてことりは、大失敗した。美術部の予算を間違えて通しちゃうくらいのミスが、可愛いドジに思えるくらいのね」

ことり「あぁ、いや、もちろんあの時のことは、ちゃんと反省してるけど……。うん、でもさ……」

ことり「……留学の件もそうだけど、どうしてことりってこんなに、ダメなんだろうね」

ことり「ほら、何かと個性が強い穂乃果ちゃんや海未ちゃんと一緒にいると、ことりって周りから割と、まともな子だと思われがちだけど……」

ことり「……ほんとはことりが三人の中で一番、問題児なんだよね」

ことり「周りの人たちは優しいから、いつも目を瞑ってくれるけど……。いつだってトラブルメーカーは、ことりだった」
 


687: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMb5-p9Wi) 2015/12/05(土) 22:38:45.68 ID:3KHOY4I9M.net

   
ことり「ほんとにことりは、ダメな子だ」

ことり「せっかく海未ちゃんを元に戻すことに成功して、ちょっとは評価が上がったかな、ってところなのに……。最後の最後でやっぱりやらかしたね、この問題児は」

ことり「しかもその『海未ちゃんを元に戻す』っていうのも、結局は穂乃果ちゃんを追い詰める結果にしかならなかったわけだし」

ことり「言ってたもんね、穂乃果ちゃん。海未ちゃんに、『どうして元に戻っちゃったの』、って……『どうしてほのキチじゃなくなっちゃったの』、って」

ことり「穂乃果ちゃんがレベル5を押したのも、もう一度海未ちゃんにほのキチになってほしかったから……それしか頭になかったんだろうね」

ことり「……そのせいで全校生徒がほのキチになっちゃって、標的だった海未ちゃんだけが助かったのは、皮肉だけど」

ことり「まあ、要するに……何から何まで全部、ことりのせいだったってこと」

ことり「目論んでたことは失敗して、せっかくの成功も結局は、次の失敗への布石でしかなくて」

ことり「あははっ、なにこれ? 空回りにも程があるよ。滑稽だねえ、あははははっ……」

ことり「あは、あははははは、あはははははははっ!!」

ことり「あはっ、あはは、はぁ、はぁ……」

ことり「……ほんと、消えちゃえばいいのに」
   


689: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMb5-p9Wi) 2015/12/05(土) 22:46:08.71 ID:3KHOY4I9M.net

    
ことり「ねえ、海未ちゃん。なんなんだろうね、『ことり』って」

ことり「『南ことり』って、なんだろうね?」

ことり「私って、なんなのかな……。はぁ、もう……」

ことり「……」


ことり「そういえばさ、海未ちゃん」

ことり「皮肉にも海未ちゃんだけほのキチにならなかったのは、前にレベル4を長く嗅いで耐性ができてたおかげ、なんだよね?」

ことり「うん。その代わり、海未ちゃん以外の全校生徒がほのキチになっちゃって、私もこの通り、またほのキチになったわけだけど」

ことり「なんで私、ほのキチになれたんだろうね?」

ことり「いやだって、ことりもあの廃墟で海未ちゃんと一緒に、厳密には海未ちゃんほどじゃないけど……相当長い時間、レベル4を嗅いでたよね」

ことり「それならことりにも、レベル5に耐えられるくらいの耐性はできててもおかしくないよね。なのにどうしてまた、ほのキチになっちゃったんだろう?」

ことり「……ほのキチが自分から元に戻ることは簡単だって、さっき、そう話したけど」

ことり「逆の場合は、どうなんだろう?」

ことり「つまり、いくら強い耐性があったとしても――」


ことり「『自分からほのキチになりたいと強く願えば』、人は簡単にほのキチになれちゃうんじゃないのかな」


ことり「……」

ことり「……うん。そういうことだよ、海未ちゃん」

ことり「元のことりは……さっき屋上で、レベル5を嗅いだ時……」

ことり「『自分から』、ほのキチになったんだよ」
  


690: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMb5-p9Wi) 2015/12/05(土) 22:49:52.62 ID:3KHOY4I9M.net

    
ことり「本当は耐えられたはずなのに……あれだけ海未ちゃんの前で、『もう二度とほのキチにはならない』なんて、豪語してたのに」

ことり「あの瞬間、ことりは心の中で『ほのキチになりたい』と願いながら、レベル5を嗅いでたんだよ」

ことり「……この意味が、分かる? 海未ちゃん」

ことり「限界だったんだよ、ことりは」

ことり「少しずつ笑顔が減っていく穂乃果ちゃんを見て、自分のしたことは間違いだったんじゃないかって、どんどん不安になっていったことりは……」

ことり「穂乃果ちゃんがレベル5を押した瞬間に、確信したんだ。『やっぱり間違いだった』、『私は失敗したんだ』、って」

ことり「前からダメな自分には、嫌気が差してたけど……その瞬間、ことりの心は完全に崩れ落ちたんだ」

ことり「『こんなダメな私は、もう嫌だ』」

ことり「『ことりなんて、消えちゃえばいいのに』」

ことり「自分に絶望したことりはそうやって、『自分』を消したんだ」

ことり「ほのキチの私に、後のことを全部押し付けて……」

ことり「……これが海未ちゃんが好きかもしれないと勘違いしてた、『元のことり』の考えてたことだよ」

ことり「ねえ……。海未ちゃんは、ことりを元に戻すためにここに来たって、言ってたけど――」


ことり「こんなどうしようもない女の子を、海未ちゃんは一体どうやって、元に戻すつもりなのかな?」
   



691: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMb5-p9Wi) 2015/12/05(土) 22:56:30.22 ID:3KHOY4I9M.net

ここまでで。間が空いてしまいすいませんでした
次の投下のとき次スレ立てますが、容量制限がない速報に移ろうか悩んでます
何か意見があればお聞かせください




694: 名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/ (ワッチョイ d4d0-+1pt) 2015/12/05(土) 23:52:29.71 ID:P/1PfCw80.net


ここで続けてほしいなあ


698: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ (アウアウ Sa58-p92M) 2015/12/06(日) 01:25:06.77 ID:gLCYZ40Ua.net

面白い…ほんとうに面白い


704: 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ (スプー Sdf1-qrii) 2015/12/07(月) 05:37:08.86 ID:zPv1OuoNd.net

更新乙です
そろそろ最初から見直さないと話忘れかけてきた


706: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ (ワッチョイW 78a5-hqun) 2015/12/07(月) 09:05:17.44 ID:3SJoxe1d0.net

福本漫画並みの心理描写だな











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