1: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/11(金) 21:25:12.13 ID:z2QY2eLFM.net




2: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/11(金) 21:26:27.57 ID:z2QY2eLFM.net

――――――

海未「……」

ことり「……はぁ。せっかく海未ちゃんと楽しくお喋りして、良い気分だったのに」

ことり「また思い出しちゃったよ、元のことりのこと……さいあくだ、もう」

ことり「あんなのが自分だなんて、思いたくないよ。同じことりとして、恥ずかしい」

海未「……それは多分、元のことりの方も、同じことを思ってたんじゃないですか?」

ことり「まあ、そうなんだけどさ……ほんと、嫌になるよ」

ことり「バカみたいに私の掌の上で、踊ってればよかったのに……余計なことして空回りして、私の愛する穂乃果ちゃんを、悲しませるようなことしてさ」

ことり「結果的にはまた、ほのキチになれたけど……これなら再起動とか考えないで、あのまま元に戻ったりするんじゃなかったな……」

海未「……」

ことり「……あぁ、ごめん。一人で喋ってたね」

ことり「どうかな、海未ちゃん。面白かった? ことりのダメダメエピソードは」

ことり「よかったら感想とか聞かせてもらえると、嬉しいな」

海未「……質問は?」

ことり「えっ?」

海未「いえ、さっきの話では最後に『質問はあるかな』と聞かれましたが、今回はなかったので……。今回は質問は、受け付けていないのでしょうか」

ことり「……別にいいけど、なにかある?」

海未「……その」

海未「穂乃果が私のことを好きだというのは、本当ですか……?」

ことり「えっ、うん……」

海未「そ、そうですか……///」

ことり「……」


ことり「は?」


4: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/11(金) 21:30:14.07 ID:z2QY2eLFM.net

 
海未「ふふっ。可愛い幼馴染二人に、好かれてしまうなんて……こんな変態でも、捨てたものではありませんね」

ことり「ちょ、ちょっと、海未ちゃん……?」

海未「はい?」

ことり「なんていうか、ことりと全く関係のない質問だったことは、ひとまず置いといて……」

ことり「まさか海未ちゃん、たった今私の話を聞くまで、穂乃果ちゃんの気持ちに気づいてなかったの……?」

海未「……そうですね。そしてそれこそが、私の罪です」

ことり「いや、かっこつけないでよ……。今回の事件が起きる直前までならともかく、今この段階まで気づいてなかったのは、流石にやばいよ……」

海未「や、やばいっ!? 私は今あなたに、やばいと言われたのですかっ!?」

ことり「だ、だってさ、海未ちゃんは穂乃果ちゃんがスイッチを押したのは自分のせいだって、思ってたんでしょ……?」

ことり「その思考に乗っていけばどの道を進んでも、『穂乃果ちゃんの恋心』に差し掛かると思うんだけど……。あれ、おかしいな……」

海未「なっ、おかしくありませんよっ! ちょっと道に迷ってしまっただけですっ! おかしくはありませんっ!」

ことり「うわぁ……。こういう人って、現実にいるんだ。漫画の中だけかと思ってた……」

海未「なんですかその目はっ! そんな目で私を、見ないでくださいっ!」

ことり「あ、あはは、すごいね、海未ちゃん。うわぁ、すごぉい……」

海未「っ!!」

海未(ほ、ほのキチに、ドン引きされるなんて……。私は一体、何者なんですかっ!?)

海未(一生の、不覚です……)ガクッ
 


7: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/11(金) 21:45:25.77 ID:z2QY2eLFM.net

 
ことり「……い、いけないいけない。完全に海未ちゃんにペースを、乱されちゃってたよ」

海未「それはこっちの台詞です……」

ことり「いや絶対に、こっちの台詞だよ……。じゃなくてさ、えっと……そうだ」

ことり「どう? 穂乃果ちゃんと両想いになれた、感想は」

海未「……」

ことり「一度はほのキチから戻って、穂乃果ちゃんへの気持ちを忘れて……ことりから告白されて、ことりのことが好きだと勘違いして」

ことり「でも海未ちゃんは今、自分の本当の気持ちに気づいて、穂乃果ちゃんの恋心を知った。これで本当に二人は、両想いになれたよね」

海未「……私は」

ことり「穂乃果ちゃんも別に、焦る必要はなかったのにね。ほのキチになんてならなくても、元から海未ちゃんは穂乃果ちゃんのことが、好きだったのに」

ことり「『私自身、ほのキチとの境界が曖昧な人間だ』って、海未ちゃんは言ってたけど……。つまりどっちの状態でも穂乃果ちゃんに対する気持ちは変わらないって、そういうことだったんだよね」

海未「しかし私は、あなたのことも……」

ことり「いい加減にしなよ、海未ちゃん」

ことり「『ことりのことも好き』だなんて、そんな言葉でごまかすのは、もうやめて。キリがないよ」

海未「……」

海未「……そう、ですね。では、さっきの話の感想ですが……」

ことり「あっ、答えてくれるんだ。なに?」

海未「話の中で一つ、明らかに不自然な点がありましたよね?」
  


8: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/11(金) 21:54:19.84 ID:z2QY2eLFM.net

  
プルルルル


海未「っ!?」

ことり「あれ、また電話? いいところだったのにー」

海未(……雪穂。あちらでなにか変化が、あったのでしょうか)

海未「……出ますね」

ことり「どうぞー」


ピッ

海未「もしもし、雪穂?」

『……』

海未「雪穂……? どうかしましたか?」

『……うみ、ちゃん?』

海未「はい、私ですが」

『海未ちゃん……あのね……』

海未「……ごめんなさい。もう少し、大きな声でお願いできます?」

『ご、ごめん、その……』

海未「……」

海未(雪穂……?)

『海未ちゃん……。ごめんね、私……』

海未「……ちょ、ちょっと待ってください」

『えっ……?』

海未「その声……。あなた、もしかして――」




海未「穂乃果、ですか……?」

『……』
   


9: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/11(金) 22:00:52.30 ID:z2QY2eLFM.net

  
『うん、穂乃果だよ……』

海未「っ!!」

海未(穂乃果……ほ、本当に……)

海未「あっ、そ、その、あの……」

『ご、ごめん、雪穂の携帯からだから、分からなかったよね』

海未「えっ!? い、いえ、そんな……」

海未(な、なんで……。相手は、穂乃果ですよ?)

海未(なんで私、こんなに緊張してるんですか……っ!?)

『あのね、海未ちゃん……お願いが、あるの』

海未「は、はい……?」

『……ことりちゃんも今、そこにいるんだよね?』

海未「っ! はい、います……」

『連れてきて、ほしいの。ことりちゃんを……』

海未「……ことりを?」

『うん。でも、どうかな。ことりちゃん、元のことりちゃんに、戻れそうかな……?』

海未「元に戻してみせます。私が、必ず」

『……ありがとう、海未ちゃん』

海未「いえ、と、とんでもないです……ええ」

『海未ちゃん、私ね……二人に謝りたいことが、たくさんあるの』

海未「……えっ? あっ」

『だからあとでいっぱい、謝らせてね……?』

海未「は、はい……」

『それじゃ、海未ちゃん……』

海未「はい、それでは……」



 

『講堂で、待ってるから』




プツン
 


10: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/11(金) 22:06:36.11 ID:z2QY2eLFM.net

 
海未「……」


海未「……っ、ぷはぁっ! はぁ、はぁ……」

海未(ど、どうして穂乃果と話すのに、こんなに緊張してるんですか、私は……?)

海未(……)

海未(……いえ、それ以上に、どうして――)


ドクン


海未(どうして穂乃果から電話がかかってきたことくらいの、ことが……)


ドクン、ドクン


海未(もう二度と口を聞いてもらえないかと思っていた穂乃果と、再び話すことができたくらいの、ことが……)


ドクンッ


海未「う、うぅ……っ!」


ガクッ


海未「ああぁぁっ、あ……っ!」


海未(どうしてこんなにも嬉しいのですか……?)


海未「うわあ、あぁ、あああ……っ!」


海未(どうしてこんなにも、顔が熱くて……胸が苦しいのですか……?)

海未(数時間ぶりに穂乃果の声を聞けたくらいのことで、どうして……っ!)


海未(どうして私はこんなにも、幸せな気持ちになっているのですか……っ!?)
  


11: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/11(金) 22:13:21.92 ID:z2QY2eLFM.net

ことり「だからそれが、『恋』ってことでしょ」

海未「……うっ、えっ?」

ことり「それが本当の、好きって気持ちだよ。勘違いとかじゃない、本物のね。うーん、それにしても……」

ことり「……海未ちゃんって、そんな顔もするんだね」

海未「……」

ことり「で、穂乃果ちゃん、なんだって?」

海未「……講堂で、待っていると」

ことり「講堂? 穂乃果ちゃん、そんなところにいたの?」

海未「いえ、最初にいたところは別の場所のはずですが……。どうやら移動したみたいですね」

海未「そしてこうも、言っていました。私たち二人にたくさん、謝りたいと……」

ことり「ふぅん、そうなんだ。悪いのは全部、ことりなのにね」

海未「それは違いますよ」

ことり「……なんで? そうでしょう? ことりが余計なことをしたから、穂乃果ちゃんは」

海未「いいえ……考えてみれば、今回の件のきっかけは、もっと前からあったんです」

海未「そう、全てのきっかけは、あのスイッチなんです。穂乃果は元々あのスイッチの仕組みを知った時から、自分に責任を感じてたんですから」

ことり「……」


『もうやだ、もうやだぁ……っ! なんなの、私……っ!』

『なんなの、私の匂いって……。もうやだよ、こんな体……っ!』


海未「あなたは穂乃果のことを、脆いと言いましたが……。9日前の時点で、穂乃果の精神はとっくに、限界を迎えてたんですよ」


12: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/11(金) 22:19:17.43 ID:z2QY2eLFM.net

   
海未「……だけど」


『私はあなたの匂いが、大好きなんです』

『っ! あ、ありがとう。うれしい……』


海未「ほのキチになっていた時の私の、そんな言葉が……きっと彼女の支えに、なっていたのでしょう」

海未「スイッチを使い始めたのも、私に喜んでもらうためだと言っていましたし……。そうやって私を支えにすることで、なんとか自分の精神を、保っていたのでしょう」

海未「……ですが愚かな私は、穂乃果のそんな気持ちにも気づかず――」

海未「挙句の果てには、穂乃果が大切にしてくれていた私との『思い出』も、忘れてしまう始末です」

ことり「……何があったかは知らないけど、それってほのキチの時の記憶なんでしょ?」

ことり「仕方ないよ、元に戻った時に前の記憶が抜け落ちちゃうケースは、今までもあったんだし」

海未「……しかしそんなこと、穂乃果は知りません。唯一の支えを失った彼女の精神は、とうとうあの時、崩れてしまったんです」

海未「彼女を追い詰めたのが、あのスイッチで……。彼女にスイッチを押す理由を与えてしまったのが、あなたで……」

海未「そして、彼女にスイッチを押す決断をさせたのが、私なんです」

海未「……なのに私は今でもあの時の記憶を、思い出すことができていません」

海未「こんな私に、彼女ともう一度言葉を交わす資格など、ないのかもしれない。そう、思っていました」

海未「でもそう思っていたのは、私だけでした。彼女は私にこうして、電話をかけてきてくれて――」

海未「そして『お願いがある』と、そう言ってくれました……。こんな私をまた、頼ってくれたんです」

ことり「お願い……?」

海未「『あなたを元に戻して、連れてきてほしい』という願いです」

ことり「……」

海未「……こんな絶望的な状況でもまだ、彼女は諦めていなかったんです」

海未「だったら私も、諦めるわけにはいきませんよね……。私はそんな彼女の、願いを――」


海未「私の大好きな人の願いを、これから叶えます」
   


14: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/11(金) 22:25:19.51 ID:z2QY2eLFM.net

  
ことり「……ふふっ、やっと自分の気持ちに気づけたみたいだね、海未ちゃん」

ことり「まったく、遅すぎるよ……。ことりはずっと昔から、気づいてたのに……」

海未「……どうして」

ことり「えっ?」

海未「私本人ですら、気づけなかった気持ちを、どうしてことりが気づくことができたのですか?」

ことり「そんなの簡単だよ。だってことりは昔からずっと、海未ちゃんのことばかり見てきたんだから」

ことり「ずっと見てれば……なんとなくそれくらい、分かるよ」

海未「……私はあなたたち二人のことが、大好きでした」

海未「初めてのお友達で、一緒にいるととても楽しくて……可愛くて良い匂いのするお二人のことが、大好きでした」

海未「『二人』のことが……。好きだった、はずなんです。なのに……」

ことり「海未ちゃんは、穂乃果ちゃんを選んだ。でもそれは全然、不思議なことなんかじゃない……むしろ、必然だったんだよ」

海未「……?」

ことり「だってさ……確かに私たち二人は、海未ちゃんの『初めての友達』だったけど……」

ことり「あの時海未ちゃんに『初めて手を差し伸べたのは』、穂乃果ちゃんだったんだ」

海未「……」

ことり「あの日、穂乃果ちゃんが海未ちゃんを、かくれんぼに誘ったから……私たちは、出会えた」

ことり「それまで恥ずかしがり屋さんで、友達のいなかった海未ちゃんは……あの時穂乃果ちゃんの差し伸べてくれた手に、救われたんでしょう?」
  


16: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/11(金) 22:30:12.45 ID:z2QY2eLFM.net

 
海未「……」

海未「……ええ、その通りです」

海未「なるほど、そうですね……。私の恋は、あの時から、始まっていたのかもしれません」

ことり「……ことりもね、自分の恋を諦める一番の理由は、これだったんだよ」

ことり「後悔してた……らしいよ、元のことりは。『もしも穂乃果ちゃんよりも先に、私が海未ちゃんに声をかけていたら』、ってね」

ことり「まあどっちにしろ、あの頃のことりには、知らない女の子に声をかける勇気なんてなかったんだけど……」

ことり「……もしかしたらあの時からことりは、穂乃果ちゃんに、負けてたのかもね」

海未「……」

ことり「……」


ことり「……ねえ、海未ちゃん。教室の外、見てみなよ」スッ

海未「……?」チラッ



「う、うぐっ、なんで、どうしてぇ……」

「う、あぁ、先輩の匂いが、あぁあぁ……」

「あぁ、そんなぁ、穂乃果ちゃん、行かないで……」


 
海未「……っ!?」

海未(ほのキチたちの様子が、何かおかしい……? 何か、呻いてるような……)

ことり「海未ちゃんさ、気づいてる?」

海未「な、なにがですか……?」

ことり「……」スンスン

ことり「……この教室に充満してるほのスメルが、さっきよりも薄くなっていってることに」

海未「……えっ?」
  


17: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/11(金) 22:43:09.11 ID:z2QY2eLFM.net

   
スンスン

海未(っ! 確かに……。そういえば、慣れてしまったせいで、今まで意識していませんでしたが……)

海未(雪穂と一緒に学院に入ったときに比べると、明らかに匂いが、弱まっているような……)

ことり「……スイッチのレベルが5から下がらないって、雪穂ちゃんは言ってたんだよね?」

海未「……ええ、そうですが」

ことり「でもそれってきっと、単にスイッチの液晶画面の数値が、下ボタンを押しても『5』から下がらないから、そう言っただけだよね?」

海未「……何を言うのですか。もちろんそれもそうですが、下ボタンを押しても匂いが弱まらないから、そう言ったに決まって――」

ことり「でもさ、押したのは、雪穂ちゃんでしょ?」

海未「……」

ことり「海未ちゃんや私なんかとは違って、レベル4にも気づけないくらいのとんでもない耐性を持ってる、雪穂ちゃんだよ?」

ことり「あの子なら、レベル5ですら、普段の穂乃果ちゃんの匂いとの区別がつかなくても、不思議じゃないんじゃないかな?」

海未「……まさか」

海未「雪穂は、勘違いを……?」

ことり「そう。画面は『5』のままでも……きっと穂乃果ちゃんの体から出る匂いはもう、とっくにいつも通りの『レベル0』に、戻ってるんだよ」

ことり「雪穂ちゃんはその違いがわからなくて、勘違いをしていた……。もちろん、穂乃果ちゃん本人も、ね」

海未「……そんな」

海未「で、ではなぜ急に下ボタンを押しても、画面が変わらなくなってしまったのですか……?」

ことり「……そんなの理由は、一つしかないでしょ」



  

ことり「壊れたんだよ、あのスイッチは」
    


18: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/11(金) 22:48:51.24 ID:z2QY2eLFM.net

  
海未「……」

ことり「もちろんこの場合、『画面の表示が変わらなくなった』だけの故障じゃ、ないんだろうね」

ことり「だってさ、いつもなら下ボタンを押してスイッチのレベルをリセットしたら、それまで充満してたスメルも、一瞬で消えたでしょ?」

海未「……はい」

ことり「今回は、スメルが残ったままで……だんだん、薄まってきてる。こんなこと、今まではなかったよね」

ことり「もしもリセットでスメルが消えるのも、スイッチの機能の一つだったんだとして……それも故障で、壊れたんだとしたら」

ことり「この現象にも、説明がつくよね。学院に充満してるスメルは、この数時間で、開いた窓とかから外に出て……『自然』に消えていってるんだよ」

ことり「スメルがレベル0に戻ったことで、ね」

海未「……」

ことり「『下ボタンを押したから』、じゃなくて……。『スイッチが壊れたから』、レベルが戻ったんだよ」

海未「壊れた……あの、スイッチが……」

海未「……にわかには、信じがたいですが。まさかこんなタイミングで、スイッチが壊れるなんて」

ことり「別に不自然じゃないでしょ? タイミングって言うならきっと、『レベル5を押したタイミング』だよ」

海未「あのスイッチは、『レベル5を押したら二度とレベルが下げられなくなる仕組み』、だったのではなく……」

海未「『レベル5を押したら強制的に壊れる仕組み』、だったと……?」

ことり「……まあ、そればっかりは作った人に聞かないと、分からないけどね」

ことり「スイッチは壊れて、レベルが戻って……。学院のほのスメルも、薄れつつある……分かる? 海未ちゃん」

海未「……」

ことり「楽しい時間もそろそろ、『終わり』が近づいてきてるってことだよ」
   


19: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/11(金) 22:55:52.86 ID:z2QY2eLFM.net

  
海未「……やけに冷静ではないですか。あなたの大好きなスイッチが、壊れてしまったんですよ?」

ことり「……そうだね」

海未「まさかスイッチの故障も、再起動すれば直るなどと思っているわけでは、ないですよね?」

ことり「あはっ、そうだったらいいんだけど……。それは流石に、無理そうかなー」

ことり「だってあのスイッチには、小さなボタンが二つ……上ボタンと下ボタンが、ついてるだけで――」

ピッ

ことり「『電源ボタン』は、ついてないもんね」

ゴソゴソ

海未(……持っていた携帯を、しまった?)

ことり「スイッチが壊れたことは、海未ちゃんにとっては、希望の光が見えたって感じなんだろうけど……」

ことり「ほのキチの私とっては、絶望の闇に叩き落とされたって感じだよ。冷静に見えるかもしれないけど、これでも結構、堪えてるんだよ」

ことり「はぁー、そっか。もう二度と私は、レベル5を……」

ことり「レベル4を、レベル3を、レベル2を、レベル1を……嗅げないん、だね」


ことり「……でもだったら、レベル0を、嗅げばいい」

ことり「だって別に、穂乃果ちゃんがこの世からいなくなっちゃったわけじゃないんだから」

ことり「そうだ、あんなスイッチなんて、本当はいらなかったんだ……。私が欲しかったのは、初めから……」


ことり「『穂乃果ちゃん』だけ、だったんだから」
  


20: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/11(金) 22:59:17.99 ID:z2QY2eLFM.net

 
ピョン

海未(教卓から降りた……)

ことり「元のことりは自分に絶望して、自分を消して、後のことを全部私に投げた……」

ことり「……だったら後は、私の思う存分、自由にやらせてもらうことにするよ」

バラッ

海未「っ! なっ……」


海未「縄っ……!?」

ことり「ふふっ……」ギギッ

海未(制服に仕込んでいたのですか……っ!? しかし縄なんて、どこから調達して……)

ことり「……見覚えない? これ、私が穂乃果ちゃんをいつでも縛れるように、いつもバッグに入れてた縄だよ」

海未「……っ!」

ことり「これのせいで、前に海未ちゃんにあらぬ疑いをかけられちゃったこともあったけど……それでも懲りずに私はこれを、バッグに入れて、持ち続けてたんだ」

ことり「この縄が、私の代名詞みたいなとこあるしね。ことりの『三種の神器』の一つとでも、言っておこうかな」

海未「勝手に変な物を加えないでください。ことりの三種の神器は多分、ミシンとかです」

ことり「……うん。だから『元のことり』がこれを持ち続けてくれるとは限らなかった。元に戻った私が、バッグに入ってるこれに気づいたら、きっと処分しちゃうかもしれないから」

ことり「だから私はこれをバッグから取り出して、『予め部室に隠しておいた』んだ。もう一度ほのキチになった時に、またこれを手にするために」

海未「予め、隠しておいた……?」

海未(ことりが例の計画を思いついたのは、私と一緒に部室から屋上に戻った後のはず。ということは――)

海未「……『メールを打つためにトイレに行った時』、ですか」

ことり「そっ。あの後私はもう一度、部室に寄ってたんだよ」

海未「そうですか……。となると、あなたが先ほど部室に戻ったと言っていたのも……『隠しておいた縄を回収するため』、ですか」

ことり「まあ、『着替えるため』って言うのも嘘じゃないけどね。汗が気持ち悪かったのは本当だし……」

ことり「何より練習着のままじゃ、縄をしまいにくいしね」

海未「……」

ことり「……海未ちゃん、私ね」


ことり「ずっと、ムカついてたんだ」
    


23: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/11(金) 23:08:39.71 ID:z2QY2eLFM.net

 
ことり「ことりも、海未ちゃんも……穂乃果ちゃんも」

ことり「『恋』なんてくだらないものにグダグダ時間をかけて、何を青春みたいなことしちゃってるのかな、って」

ことり「それでお互いに傷つけあって、悲しむことになるくらいなら……やめちゃえばいいんだ、そんなの」

ことり「私が全部、壊してあげる」

ことり「今までの物語を、ぜーんぶ、台無しにしてあげるよ。まずは海未ちゃんをこの縄で縛りつけて、動けなくして――」

ことり「目の前で穂乃果ちゃんを、ぐちゃぐちゃになるまで嗅ぎ尽くしてあげるよ。あははっ……っ!」

ことり「そうすればもう、恋なんてどうでもよくなっちゃうでしょっ!? 青春なんて、バカみたいに思えてきちゃうんじゃないかなっ!?」

ことり「ダメなことりの失敗も、ぜんぶ無かったことになる……っ! なにが……なにが『ずっと海未ちゃんのことが好きでした』、だっ!」

ことり「ことりが好きなのはいつだって、穂乃果ちゃんだけなんだっ!! 何が恋だっ! 何が告白だっ! くだらないくだらないくだらない――っ!!」

ことり「私の穂乃果ちゃんに対する『愛』に比べたら、ぜんっぜんくだらないよっ!!」


ザッ

海未「だったら決めましょう。私とあなた、どちらがより穂乃果のことを、愛しているのか……」

ことり「……望むところだよ」

海未「……あなたとは本当に、色々なことがありましたね。対立したり、手を組んだり、裏切られたり、追いかけたり――」

海未「――ですがこれが、最後の戦いです。私はあなたを元に戻し、あなたを救います」

ことり「『最後』か……。そうだね、これが多分、本当に最後だ……でも……」

ことり「……私は元に戻る気も、救われる気もないけどねっ!」

海未「……でしょうね。それが、あなたです」

ことり「ふふっ。それじゃあ――」



ことり「始めよっか、海未ちゃん」

海未「終わらせましょう、ミナリンスキー」


ダッ!
   


53: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 20:58:00.82 ID:OlruV/VEM.net

   
――――――


ガッ!


海未「はぁ……っ!」ググッ

ことり「……ふふっ。海未ちゃん、まさかほのキチの私と、力比べするつもり?」グッ

海未「く、ぅ……っ!」ジリ

ことり「そりゃ海未ちゃんは女の子にしては、強いほうだけど……それに元が元だから、ことりもほのキチの中じゃそんなに強いほうじゃないけど……」

ことり「……流石に今の海未ちゃんが相手だったら、力で負けることはないよっ!」グッ!

ドタァンッ!

海未「うぁ……っ!」

ことり「あはっ……」ガバッ

ことり「さーて、じゃあじっとしててね。今、縄で縛っちゃうから」

海未「う、ぐぅぅぅっ!!」ググッ

ことり「っ! なんて、素直におとなしくしてくれるわけないよねー……っ!」グッ

ことり「でもさ、海未ちゃん……。あんまり抵抗されると私、手加減できないよ?」

海未「くっ……!」

ことり「ケガとかさ、したくないでしょ……? ふふっ。なんていうか、前の廃墟の時とは、立場が逆転しちゃったね……っ!」

海未「そうですね……。はぁ、はぁ……」

スゥゥゥ……ッ!

ことり「……? なにして……」

海未「はぁ……っ!」

グググッ……!

ことり(っ!? な、なに、この力……押し返され――)


ドタァンッ!
  


54: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 21:03:26.73 ID:OlruV/VEM.net

 
ガバッ

ことり「うっ……!」

海未「これでまた、立場が逆転ですね……っ!」

ことり「うそ……。ほのキチでもないのに、どこにこんな力が……」

海未「ええ、自分でも驚きですよ……。ふっ、それしても……」スンスン

海未「ことり……あなたの匂いはいつ嗅いでもやっぱり、素敵ですね」

ことり「っ! 海未ちゃん……っ!?」

海未「……今の私はきっと、あなたたちほのキチと同じような顔をしているのでしょうね」

海未「そう、私は元々、ほのキチとの境界が曖昧な人間……。つまり私とあなたたちの性質は、ほとんど同じなんです」

海未「あなたたちがほのスメルを嗅ぐことで、普段出せないような力が出せるというのなら……私だってそれは、同じなんです」

海未「ただし、私とあなたたちとでは、決定的な違いが一つあります。それは――」

海未「私は『ことりの匂い』も、大好きだという点ですっ!!」

ことり「……はっ」

ことり「なにそれ……っ! 要するにそれって、海未ちゃんは今、私の匂いを嗅いで興奮してるってだけの話でしょっ……!?」

ことり「ほんっとうにどうしようもないね、海未ちゃんは……っ! こんな姿、穂乃果ちゃんやみんなには、とても見せられないよっ!」

海未「なんとでも言いなさい……っ! これが、『私』なんですからっ!!」

ことり「く……っ」

海未「私の変態性の全てを賭けて、あなたを倒します……っ! ミナリンスキーっ!!」


ググッ!
   


56: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 21:18:40.81 ID:OlruV/VEM.net

  
海未「さぁ……っ!」モゾッ

ことり「うっ……」

海未「もっと匂いを嗅がせてください……っ!」スンスン

ことり「ぁ……っ!」

ことり(ほ、ほのキチの私が、匂いを嗅がれるなんて……っ!)

ことり「あ……あああぁ、もうっ!」グッ!

海未「……うっ!」

ゴロンッ!

ことり「はぁ、はぁ……。この、変態……っ! 変態変態変態変態変態変態変態っ!! あなたみたいな変態に、穂乃果ちゃんは絶対渡さないんだから……っ!」

ゴロンッ!

海未「人のことを言えた立場ですかっ!? あなたなんか穂乃果を縄で拘束して、動けない彼女の匂いを好き放題嗅いでたではないですかっ!」

海未「あなたの性癖は危険すぎますっ! むしろあなたのほうが変態ではないですかっ!?」

ゴロンッ!

ことり「それはないねっ! 私のは『愛のある拘束』だもんっ! 海未ちゃんのほうがよっぽど変態だっ!」

海未「くっ……」

ゴロンッ!

ことり「あぅ……っ!」

海未「穂乃果への愛なら、私のほうが上ですっ! あなたに穂乃果は、渡しませんっ!!」

ことり「……っ!! あ、っそう……っ!」

ググッ……!

海未「っ!? ぐっ……」

ことり「じゃあもう、いいよ……手加減するのは、これで終わり……っ!」

ことり「私を本気にさせたこと、後悔させてあげるよ、海未ちゃん……っ!!」
   


57: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 21:23:23.17 ID:OlruV/VEM.net

  
グッ……!

海未「う、ぐぅ……っ!」

海未(押し倒した状態から、持ち上げられるなんて……っ! こ、これが、ほのキチの――)

ことり「これが私の本気だよ、海未ちゃん」

ブンッ


ガタァンッ!

海未「う、あぁ……っ!」ドサァ

ことり「……別に痛めつける気はなかったけど、もう仕方ないよね」

ことり「まあ、そっちで何とかケガしないように、頑張ってよ。私の方はもう遠慮とか、しないから――」

ビュンッ!

海未(っ! 縄――っ!?)

ダンッ!

海未「はぁ、はぁ……っ!」

ことり「……へえ、よく避けたね」

海未「な、縄というか、それではもう、鞭ではないですか……っ!」

ことり「鞭……? あ、なんだか、穂乃果ちゃんとの遊びの幅が広がりそう」

海未「広げなくて結構ですっ!」ダッ

海未(まずはあの縄を、取り上げなくては……っ!)

ことり「……流石だね、海未ちゃん。まだ私に、向かってくるんだ」

ことり「でも――」
   


58: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 21:34:23.55 ID:OlruV/VEM.net

  
ガタァンッ!

海未「う、ぁ……っ!」

海未「あ、あぁ、ぅ……いっ、たぁ……っ!」

ことり「……痛い? 痛いよね。二回も机に向かって、投げ飛ばされたら」

海未「うぅ……」

海未(か、勝てない……)

海未(力じゃもう、とても敵わない……っ! 今の、彼女には……)

ことり「当然だよ。変態性がどうとか言ってたけど、そんなのただ、興奮状態でいつもより力が増してただけに過ぎないんだから」

ことり「別にそんなの、普通の理屈だし……。普通でも理屈でもないほのキチには、勝てないよ」

海未「はぁ、はぁ……」ズリ、ズリ

ことり「……あはっ」

ことり「流石にここまですれば海未ちゃんも、逃げようとするんだ」

海未「う、くぅ……っ!」

ことり「なんかこうしてみると、海未ちゃんもやっぱり、普通の女の子だったね」

ことり「女の子にしてはちょっと強くて、ちょっと性癖がおかしいだけで……海未ちゃんもやっぱり、『普通の女の子』なんだ」

海未「……ぅ」モゾモゾ

海未(散らかった机の中に、うまく身を隠せば……)

ことり「今の私には海未ちゃんが、つい守ってあげたくなっちゃうような、か弱い女の子にしか見えないな」

ガタァンッ!

海未「うぐっ!」

ことり「隠れようとしたって無駄だよ。逃げる場所なんて海未ちゃんにはもう、どこにもないんだから」
   


59: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 21:38:30.26 ID:OlruV/VEM.net

  
ゴロ……

ことり「……あれ?」

海未「あっ……」

ことり「ペットボトル……。この教室に入ってくるときに、持ってたヤツかな?」

ことり「そういえばちょうど喉乾いてたんだよね。ちょっと貰っていい?」ヒョイ

海未「だ、だめ……です、それは……」

ことり「別にいいじゃん。ちょっとくらい……なんでそんな必死なの?」

海未「か、かえして、ください……それは――」

ことり「……あっ、分かっちゃった。これ、穂乃果ちゃんの飲みかけでしょ」

海未「っ!!」

ことり「当たり、みたいだね。ふふっ、顔に書いてあるよ」

ことり「そっか……。じゃあこれに口をつけたら、穂乃果ちゃんと間接キスだ……。あはっ」

海未「や、やめ……っ!」

グビッ

海未「っ! あっ……」

ことり「ん、んくっ、んぅ……」

ことり「ん、んく、ちゅぱ、ちゅるる……」

海未「あぁぁあぁ……」

ことり「ぷはぁ……。あはは、穂乃果ちゃんと間接キスしちゃった~♪」
     


61: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 21:44:48.60 ID:OlruV/VEM.net

  
ことり「んっ……。あ、ごめんごめん。全部飲んじゃった」

カラン

海未「あぁ、なんてことを……」

ことり「ふふっ、そんなにショックを受けるくらいなら、力ずくで取り返せばよかったのに」

海未「くっ、うぅ……っ!」

ダッ!

ことり「……あれ、やっぱり逃げるの?」

海未「はぁ……っ!」

ことり「なぁんだ。ペットボトルを勝手に飲まれた怒りで、特別な力に目覚めたりとか……別にそういうのは、ないんだね」

海未「はぁ、はぁ……」フラ

ことり「動きが鈍ってるよ、海未ちゃん」

ビュン! バチィン!

海未「あぅっ!?」

海未(縄が、足に……っ!)ドサッ

ことり「ふあぁ……。潮時かな……」スタスタ

ガシッ

海未「うぅっ!」

ことり「ごめんね、海未ちゃん……。せっかく自分の気持ちに気づけたところなのに、申し訳ないけど……」

ことり「穂乃果ちゃんは、私が貰っちゃうね」ググッ

海未「うっ、こ、ことり……っ!」

ことり「大丈夫。海未ちゃんの代わりに、私が必ず穂乃果ちゃんを幸せにしてあげるからね」
  


63: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 21:52:41.50 ID:OlruV/VEM.net

  
海未「ことり……」

ことり「海未ちゃん、あんまり動かないでね。つい腕とか、折っちゃうかもしれないから」

海未「……ことり、わ、私の」

ことり「うん、なに?」

海未「私の、話を……き、聞いて、ください……」

ことり「……ははっ、なに。もしかして海未ちゃん、この期に及んで、まだ何か企んでる?」

海未「はぁ、はぁ……」

ことり「『言葉』で私の気持ちを、揺さぶろうとしてる? あはは、まだ逆転できると思ってるんだ」

海未「こと、り……先ほど、あなたは――」

ガッ

海未「――むぐっ!?」

ことり「残念だったね、海未ちゃん。こうやって手で口を塞いじゃえば、もう何もできないでしょ?」ググッ

ことり「一体私にどんな話をしてくれるつもりだったのか、気になるけど……まあ、念には念を入れとかないとね」

海未「む、ぐ……っ!」

ことり「万策尽きたって感じかな、海未ちゃん」

海未「ぅ……」
   


64: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 22:04:32.35 ID:OlruV/VEM.net

ことり「それじゃあ……って、あれ」

ことり「しまった。これだと、海未ちゃんを縛れないな……どうしよう」

海未「……」

ことり「あーもう、めんどくさいな……ふあぁ」

ことり「んー……」

ことり「……」

 
ことり(……んー、それにしても、なんだか――)

 

ドンッ


  
ことり「……っ」ドサッ……



ことり(……?)


ことり(あれ? 今わたし、突き飛ばされ――)

海未「ことり」



   

  

海未「眠いですか?」


65: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 22:06:51.23 ID:OlruV/VEM.net

ダキッ

ことり「……?」

海未「……だとしたら、私の勝ちです」ギュゥ

ことり「……あれ、なんで海未ちゃんが、私に抱き着いて……」

ことり「そうだ。私、油断して、突き飛ばされて……」

ことり「……油断? 私が……?」

ことり「……うぅん」

海未「……『三種の神器』と言いましたね」

ことり「えっ……?」

海未「一つはあなたが今持っている、『縄』……。となればもう一つは、考えるまでもなく、あの『スイッチ』でしょう」

海未「……では、あと一つは?」

ことり「……」

海未「あなたが愛用する『道具』は……確かもう一つ、ありましたよね?」

ことり「……はは、なるほどね。やられた――」



ことり「――私の『睡眠薬』を、使ったね? 海未ちゃん……」

海未「ええ。そもそも私は最初から、あなたに力で勝つ気なんてなかったのですよ」

海未「最初から、これが狙いでした。あなたが愛用している縄を、部室に予め隠しておいた、という話を聞いた時点で……」

海未「もう一つの愛用品である『睡眠薬』も、同じように部室に隠していたであろうことは、容易に予測できましたから」

海未「ですから、先ほど部室で縄と一緒に回収したであろう睡眠薬も、あなたは制服のどこかに隠し持っているはずだと、私は読んだのですよ」

ことり「……さっきの、取っ組み合いの時かな」

海未「ええ。その時に、あなたの制服のポケットから拝借しました」

ことり「それで……私に投げ飛ばされたときに……」

海未「はい。散らかった机の陰に隠れて、ペットボトルに薬を投入しました」

ことり「はは……」


67: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 22:18:46.85 ID:OlruV/VEM.net

ことり「穂乃果ちゃんに盛るための薬を、自分が盛られるなんてね……。最後の最後で自滅なんて、ことりらしいや……」

海未「……しかし、そんなに多く入れたつもりはないのですが……すごい効き目ですね。いったいどこで手に入れたんですか、こんな薬……」

ことり「普通にネット通販だよ……。それよりいいのかな、海未ちゃん……?」

ことり「私がこのまま、寝ちゃったら……。海未ちゃんの目的を果たすことは、できないんじゃないかな……?」

海未「寝かせたりなんてしませんよ。私があなたの目を、覚まさせてあげます」

海未「……二つの意味で」

ことり「……」

海未「……ことり。先ほどは聞きそびれてしまったので、もう一度お聞きします」

海未「さっきの話の中で一つ、不自然な点がありましたよね?」

ことり「さっきの話……元のことりの、話のことだっけ」

ことり「……不自然なところなんて、あったかな」

海未「ええ。明らかに、おかしな点がありました……。あなたはこう言いましたね。元のことりは『穂乃果のために』、私に告白したのだと」

ことり「……うん」

海未「穂乃果を勇気づけるために、私に告白をしたと……。自分の恋は最初から、諦めていたと」

ことり「言ったけど……それが、なに?」

海未「……もし本当にそれが、真実なら」

海未「おかしいですよね? だって――」


68: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 22:27:43.05 ID:OlruV/VEM.net

『ことりは穂乃果ちゃんに、宣戦布告をした……』

『どうやらことりはね、そうやって穂乃果ちゃんに、勇気を与えたかったみたいだよ』

『ことりらしくない、キツイ言い方だったけど……。あの時の言葉は全部、穂乃果ちゃんに対するエールだったんだ』


『私は海未ちゃんに告白したよ。今度は、穂乃果ちゃんの番。だから勇気を出して、頑張ってっ』


海未「……なら、そう言えば、良かったじゃないですか」

ことり「……」

海未「どうして『キツイ言い方』をする必要があったのですか? あれが最初から、『穂乃果のためだけの告白』だったのなら……」

海未「宣戦布告なんてする必要、ないじゃないですか。そんな遠回しなことせずに……真正面からちゃんと、応援してあげればよかったじゃないですか」

海未「少なくとも、私の知ってることりなら、そうしたはずです……」

ことり「……っ」

海未「……どうしてことりはらしくもなく、穂乃果に対して厳しく当たったのか」

海未「答えは、簡単です。あの告白は、『穂乃果のための告白』などではなかったからです」

ことり「はは……。なに言って」

海未「ことり、本当は、あなたは……」

 
『別に元のことりは、穂乃果ちゃんだけじゃなく自分も海未ちゃんに匂いを嗅がれてたことを知って、もしかしたらと思ったとか……』

『諦めきれなくなったとか、気持ちを抑えきれなくなったとか、穂乃果ちゃんと戦う決意をしたとか――そんな理由で告白したわけじゃ、ないんだよ?』


海未「そんな理由で、告白してくれたんでしょう……?」

ことり「……っ!」

海未「本当は、そうなんでしょう? もしかしたらと思って、諦めきれなくて、気持ちを抑えきれなくて――」

海未「あなたは穂乃果と、『戦う決意』をしたんでしょう?」


69: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 22:30:03.95 ID:OlruV/VEM.net

ことり「うっ……」

海未「あなたは、穂乃果のためなどではなく……ちゃんと『自分のため』に、私に告白してくれたんですよね……?」

海未「もちろん、自分が先に告白することで穂乃果を勇気づけようという思惑も、彼女を応援してあげたいという気持ちも、本当なのでしょう」

海未「だけど穂乃果はあなたにとって、『敵』で……『ライバル』だったから」

海未「たとえ親友でも……応援してあげたくても、『ライバルに対して応援の言葉を贈ることはできなかった』、から……」

海未「だからあなたは、らしくもない厳しい言い方で、穂乃果に宣戦布告をしたのでしょう……?」

ことり「……違う」

海未「ことり……」

ことり「ことりはそんなこと、してない……。ことりはそんなことできるような、女の子じゃない……だってっ!」

ことり「『ことりはダメな子だから』っ!!」

ことり「いつも穂乃果ちゃんに甘えてばかりの、ことりが……穂乃果ちゃんと敵対なんて、できるわけないよ……っ!」

海未「……ええ。きっと、相当な覚悟が必要だったことでしょう……でも、あなたは……っ!」

ことり「違うもんっ! ことりは、自分のためになんか動いてない……っ! だって、ことりは……」

ことり「だってことりは、穂乃果ちゃんと海未ちゃんが結ばれることを、望んでたんだから……二人の幸せが、私の幸せなんだから……っ!!」

海未「他人の幸せのために自分の気持ちを抑え込むことを、幸せとは言いませんっ!!」

ことり「――っ!!」

海未「……そのことに、あなた自身も、気づき始めていたんですよね」

海未「だからあなたは『穂乃果のため』ではなく、『自分のため』に動いた。必死に『自分の幸せ』を、勝ち取ろうとしたんです……」


70: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 22:38:57.27 ID:OlruV/VEM.net

海未「……そう考えると、あの時の、あの言葉も――」


『いいよ、海未ちゃん。返事、今すぐじゃなくても』

『ことり、待ってるから。いつまででも、待ってるから……だからいつかことりに、海未ちゃんの――』

『本当の気持ちを、聞かせて?』


海未「――本当は、『穂乃果の告白を待っていた』、ということなのでしょう?」

海未「あの場ですぐに返事を求められていたら私は、あなたにとって良い返事がお返しできたかもしれないのに」

海未「その気持ちが、例え『勘違い』なのだとしても……そこから発展していく可能性だって、あったのに」

海未「あなたは、そうしなかった。私には、『穂乃果からの告白も聞いて』、その上で改めて考えて、決めてほしかったから」

海未「あなたは私の『勘違い』になど、期待せず……対等な条件で、正々堂々と、穂乃果と戦おうとしたんですよね」

ことり「……」

海未「……もちろんこれらは全て、私の推測です。もしかしたら私は、とんでもなく的外れなことを、言ってしまってるのかもしれません」

海未「それでも……私はあなたが『自分のため』に動いたのだと、信じたい。例えあなた自身がそれを、否定したとしても――」

ことり「どうしてっ!!」

海未「えっ……?」

ことり「どうして、そんなこと言うの……? 酷いよ、海未ちゃん……っ!」

海未「……酷い?」


71: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 22:42:44.20 ID:OlruV/VEM.net

   
ことり「だって……だってことりは、『失敗』したんだよ……っ!?」

ことり「『穂乃果ちゃんのために行動して』、それで失敗したんだったら、まだ言い訳できるのに……っ!」 

ことり「『自分のために行動して』、失敗しちゃったんなら……それで穂乃果ちゃんやみんなに、迷惑かけちゃったって言うんなら……っ!」

ことり「ことりはもう、みんなに合わせる顔がないよぉ……っ!!」

海未「ことり……」

ことり「そうだ……。厳しい言い方なんてせずに、いつも通り優しく、穂乃果ちゃんを応援してあげてれば……」

ことり「『穂乃果ちゃんのため』に動いてれば、こんなことには、ならなかったのに……っ!!」

ことり「『自分のため』に、動いたばっかりに……っ! ことりは、取り返しのつかない失敗を、しちゃったんだぁ……っ!!」

海未「……なるほど。そういうことですか」

海未「自分に絶望したというのは、それが理由ですか……。そのことを悔やんで、ずっと苦しんでたんですね、ことり……」

ことり「うぅっ、ぅ……っ!」

海未「……だけど、ことり。そんな言い方をされると、私も胸が苦しいです」

ことり「う、っ、えっ……?」

海未「例えそれが、悲劇を生む結果を招いてしまったのだとしても――」

海未「私に告白してくれたことを、『失敗』だなんて言わないでください。ことり……」

ことり「……」
   


72: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 22:44:39.72 ID:OlruV/VEM.net

  
ことり「……私、は」

ことり「私は二人と違って、『普通』だから……。何も持ってない、平凡な女の子だから……」

ことり「いつだって、『特別』だった二人の後ろに、ついてくだけだった……」

ことり「いつも私は、穂乃果ちゃんと海未ちゃんに、甘えてばかりで……」

ことり「二人に頼ってばかりで……。一人じゃなにも、できなくて……」

ことり「やっぱりことりは、ダメな子だ」

ことり「いつまでたっても、穂乃果ちゃんと海未ちゃんの後についてくだけの、ダメな女の子……」

海未「あなたはダメな子なんかではありません、ことり」ギュッ

ことり「……」

海未「だってあなたは勇気を出して、私に告白をしてくれたではないですか」

海未「穂乃果という一番の親友と、戦う決意をしたではないですか」

海未「あなたは、私たち二人ができなかったことを、やってのけたのです。ですから……」

海未「ことり。あなたは私たちに『追いついて』、『追い越して』いったのです」

ことり「うっ、ぅ……うみ、ちゃん……」

海未「失敗なんかじゃない。ダメな子なんかじゃない。負けてなんかいない……」

海未「あなたは立派に、羽ばたいたのですよ、ことり」
  


73: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 22:49:11.05 ID:OlruV/VEM.net

     
ことり「うぅ……」

海未「すごいです、ことり……。あなた、いつの間にこんなに、すごい女の子になってしまっていたのですか?」

ことり「う、うぅ……っ!」

海未「あなたは先ほど私にこう、問いかけましたよね」

海未「『南ことりとは、何か』。そんなの、分かりきったことです」

海未「『南ことり』とは――」


海未「――私が知る中で、『最も勇敢な女の子』です」


ことり「……」

海未「そんなあなたに、敬意を表して……」


海未「今この場で、『返事』をさせてください、ことり……」

ことり「っ! ぅ……」

海未「本当に、9日間もお待たせしてしまい、申し訳ありませんでした……」

ことり「……」



ことり「うみ、ちゃん……」

海未「ことり――」



 

海未「私はあなたを親友として、心から尊敬します」

海未「ですが私には既に、心に決めた人がいます」

海未「なので……あなたとお付き合いすることは、できません」

  



海未「ごめんなさい……っ!!」

 


75: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 22:52:03.39 ID:OlruV/VEM.net

              
フワァ……


ことり「……」

海未「……」



ことり「……ありがとう、海未ちゃん」

海未「……ことり?」

ことり「返事を聞かせてくれて、ありがとう……。私……私ね――」


ポロッポロッ……


ことり「海未ちゃんを好きになれて、幸せだった……」

ことり「海未ちゃんに恋をしてた、この10年間……ずっとずっと、幸せだった……っ!」

ことり「ありがとう、うみ、ちゃん……っ! ひぐっ、うっ、うぅ……っ!」

ことり「わたしに恋をおしえてくれて……ありがとう……っ!」

海未「……っ!! ことりっ!」ギュッ

ことり「うっ、わ、わたし、うみちゃんに、こくはくできて……」

ことり「ひうっ、えぐっ、ほんとうに、よかっ、うっうぅ……っ!」

ことり「うっ、うぅ、あぁぁああぁ……っ!」

海未「ことり……っ。本当に、ごめんなさ――」

海未「……」

海未「……いえ」


海未「ありがとうございました……。こんな私のことを、好きになってくれて……」

海未「あなたのような素敵な女の子に、想ってもらえたことは……私の一生の、誇りです……っ!」

ことり「う、ん……っ、うんっ……う、うぅ」

ことり「うぅっ、えぐっ、うぅ……っ!」ポロッポロッ

ことり「うわあああぁあぁあん……っ!!」

海未「ことり……」


ギュゥ……

 


83: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 23:07:32.58 ID:OlruV/VEM.net

       
……


ことり「……」

海未「……」

  

ことり「……海未ちゃん」

海未「ことり……。もう、大丈夫ですか?」

ことり「うん……。それより、海未ちゃん」

海未「はい……?」

ことり「いつまで私の匂い、嗅いでるの……?」

海未「っ!? ば、バレてましたっ!?」ガーンッ!

ことり「あっ、やっぱり嗅いでたんだ……」

海未「カマをかけられてましたっ!?」ガガーンッ!

ことり「す、すごいね、海未ちゃん……。こんな時でも、匂いはちゃんと嗅ぐんだ……」

海未「ち、違うんですっ! こうしてことりと密着していると、つい癖で……っ!」

ことり「……いいよ、許してあげる」

海未「……本当ですか?」

ことり「うん……だけどもう、これで最後だよ」

海未「えっ……?」

ことり「海未ちゃんが私の匂いを嗅ぐのは、これで最後。だって海未ちゃんは、これから穂乃果ちゃんと、恋人同士になるんだから」

海未「……」

ことり「だから、これからは……私じゃなくて――」


ことり「穂乃果ちゃんの匂いを、いっぱい嗅いであげてねっ」
   


85: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 23:10:49.10 ID:OlruV/VEM.net

  
海未「……なるほど、そうきましたか」

海未「分かりました。名残惜しいですが……今日で私は、『ことスメル』から卒業します」

スクッ

ことり「……うんっ」

海未「えっと、その……。今日まで匂いを嗅がせてくださって、ありがとうございました」

ことり「嗅がせてたつもりはないんだけどな……」

海未「あっ! ご、ごめんなさい、この場合はお礼ではなくて、謝罪でしたね……っ!」

ことり「……ううん。こちらこそ、今まで匂いを嗅いでくれて、ありがとうございました」ペコッ

海未「い、いじわる言わないでくださいよ、ことり……」

ことり「……あはは、いじわるじゃないよ。本心だもん」

海未「えっ……?」

ことり「ふふっ……」


ことり(だってことりの方も、海未ちゃんに匂いを嗅がれてたことが、嬉しかったんだから……)

ことり(海未ちゃんに良い匂いって言ってもらえて、舞い上がっちゃうくらい、嬉しかったんだから)

ことり(もしも『ことりの匂いが強くなるスイッチ』があったら、海未ちゃんは押してくれる――そのことが嬉しくて嬉しくて、胸がいっぱいだったんだから……)

ことり(だから私、忘れないよ)

ことり(海未ちゃんに、匂いを嗅がれてたこと……ずっと、忘れない)

ことり(ありがとう、海未ちゃん……今まで私の匂いを、嗅いでくれて――)
  


91: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ (フリッテル MMe4-/IJb) 2015/12/14(月) 23:15:41.66 ID:OlruV/VEM.net

  
海未「……ことり」

ことり「なぁに?」

海未「この事件が全部終わったら、私……穂乃果に、告白しようと思います」

ことり「……うんっ」

海未「……では」

ことり「うん……行こっか、海未ちゃん」


ことり「穂乃果ちゃんたちのところへっ!」

海未「ええ……っ!」


ことり(……あはは、なんだろ)

ことり(さっきまですごく眠かったのに……今は体も心も、すごく元気だ)

ことり(今ならどんな困難にも、立ち向かっていけそう……っ! 早く穂乃果ちゃんに、会いに行かなきゃっ!)

ことり(だってことりはもう、ダメな子なんかじゃないんだから――)


ことり(私はやっと二人に、追いつけたんだから……っ!)


 


タッタッタッ……


海未「……ことり」

ことり「えっ?」

海未「……」






 
海未「一日一回だけとかはダメですか?」

ことり「ダメです」

海未「はい」
  


251: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 21:14:12.90 ID:Z9/CDdet.net

      
   
――――最終部、『恋のスメル』(後編)


保健室


ガラッ


「西木野さん、新しい『患者さん』だよー」

「あ、あのぉ……」


「……ふふっ、ようこそ――」



真姫「――『西木野総合病院出張診療所、ほのキチ科』へ……今日は、どうされましたか?」

「その……なんだか頭がフワフワして、体が熱くて、ムズムズするんですぅ///」

真姫「あら、大変……」

「た、多分、匂いなんです……。今学院中に広がってる、すごく良い匂い……アレを嗅いでから、なんですぅ……っ!」

真姫「……」

「こわい、怖いよぉ……。私、どうなっちゃったんですか……? 先生、教えてください……っ!」

真姫「……典型的な、ほのキチの症例ですね。あなたは『ほのスメル』を嗅いで、『ほのキチ』になってしまったんです」

「ほのキチ……?」
  


253: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 21:19:40.01 ID:Z9/CDdet.net

    
真姫「でも安心して。これは病気なんかじゃない……。やるべきことさえやれば、あなたはすぐに幸せになれるわ」

「え、っと……」

真姫「2年○組の高坂穂乃果さんを探しなさい」

「っ!? ど、どうして……?」

真姫「あなたが嗅いだのは、彼女の匂いよ。彼女の体を求めることで、あなたの欲求は満たされるわ」

「そ、そうなんですか……? でも、そんなこと……」

真姫「いいのよ。ほのキチはみんな、そうしてるの……。それにあなただって、もう我慢できないはずでしょう?」

「うっ……///」

真姫「行ってきなさい。そして見つけたら、ここに連れてくること。いいわね?」

「はいっ! 高坂さん……。高坂さんっ!」

ガラッ


「また患者が一人、救われましたね、先生……」

真姫「ふふっ……」

真姫(レベル5……素晴らしいわ、穂乃果。早く私のところに来なさい……)

真姫(もはやμ'sだけじゃない……。あなたのほのスメルがあれば、世界中の意思を統一することさえ、可能……っ!)

真姫(『人類ほのキチ化計画』が、今こそ始まるのよ……。ふふ、ふふふ……)
  


255: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 21:26:38.75 ID:Z9/CDdet.net

  
――――――

部室


委員長「はぁ、はぁ……やっぱり高坂さんの制服の匂いは、素晴らしいですわ////」スンスン

「あのぉ、委員長……」

委員長「あら、どうしたのかしら。高坂さんを探しに行ったはずでは?」

「えっと、すいません。高坂さんは見つからなかったんですけど、その代わり……」

「うえぇ~ん……」

「あ、泣かないで……。さ、さっきからずっと、この調子なんですよ」

委員長「……ちょっと」


委員長「あなた、矢澤さんではなくて?」

にこ「うえぇえん……っ! おねえちゃぁん……」

委員長「お姉ちゃん……?」

にこ「グスッ、ほのかおねえちゃぁんは、どこぉ……?」

委員長「……ねえ、矢澤さんって、こんな方でしたっけ?」

「いや、あんまり喋ったことないんで分からないですけど……」

にこ「ほのかおねえちゃぁん……にこ、いいこでいるからぁ……。におい、かがせてぇ……っ!」

委員長「あの、矢澤さん?」

にこ「ふぇ? おねえちゃんたち、だあれ……?」

委員長「い、一応、クラスメイトなのだけど……。しかもお姉ちゃんって、私たち同い年よ?」

にこ「?? でもにこ、まだななさいだよぉ?」

委員長「……は?」
  


257: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 21:29:24.82 ID:Z9/CDdet.net

  
にこ「おないどしってね、おなじとしっていみなんだよぉー。ふふっ」

委員長「あなた、何をふざけてるの?」

にこ「えっ? う、ぅ」ビクッ

「ちょ、ちょっと委員長、怖がらせないでくださいよっ!」

委員長「えっ、あ、あぁ、ごめんなさい」

にこ「う、うぅ、ふぅ……」グスッ

「あーあ、また泣いちゃったじゃないですかぁっ!」

「委員長が、矢澤さん泣かしたーっ!」

委員長「っ!? ご、ごめんなさい、矢澤さんっ! もしよかったらこれ、高坂さんのだけど、嗅ぐっ!?」スッ

にこ「っ! いいの……?」

委員長「え、ええ……」

にこ「わぁっ!」パァ

にこ「えへへっ、ありがとぉ~! おねえちゃん、やさしいねっ!」ニコッ

委員長「――っ!!////」ズギュン

委員長(え、なにこれ、妹に欲しい……////)

「あの、委員長……?」

委員長「なにをしてるのっ! 矢澤さ……にこちゃんのためにも早く、高坂さんを探してきなさいっ!」

「「は、はいっ!」」

にこ「えへへぇ……ほのかおねえちゃぁん……」スンスン
   


258: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 21:32:12.52 ID:Z9/CDdet.net

   
――――――

体育館


「ね、ねえ、すごくない……?」

「うん……うわぁ、きれい……」

タァン、タァン


「ていうか、穂乃果ちゃんは……?」

「い、いいよもう。それより、もうちょっと見てこうよ……」


(体が、軽い……)

(私の体じゃ、ないみたい……)

(こんなの、子供のとき以来……ううん、あの時以上だわ)

(これなら私、世界でも、戦っていける……っ!)


タン

「ふぅ……」


絵里「これが、『覚醒』なのね……。穂乃果……」

絵里「ありがとう。あなたのおかげで、私は一度挫折した夢を、もう一度追いかけることができるわ」

絵里「これだけ動ければ、今からでも十分間に合う……。おばあさま、私は再び、バレエの道に進みます――」

パチパチパチ


絵里「……?」

「す、すごいです、絵里先輩っ!」

「私、感動しちゃいましたっ! あ、あの、すごくかっこよかったですっ!」


絵里「……」

絵里「ふふっ、ありがとう……」

絵里(これが私の求めていた、『やりたいこと』……)

絵里(やっと見つけた……あぁ、本当に――)



絵里「本当に……どうして私、アイドルなんてくだらないことを、やっていたのかしら?」
   


259: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 21:46:30.36 ID:Z9/CDdet.net

   
――――

講堂、入り口


スンスン……


「……おっ、きたね」


海未「……」

ことり「……えっ」

海未「どうして、あなたがここに……?」



海未「ヒデコ……」

ヒデコ「ん? んー、どうしてって言われてもなぁ」スンスン

海未「……あなたもほのキチになって――」

海未「――っ!? ちょ、ちょっと待ってください。あなたが持っている、それ……」

ヒデコ「あぁ、これ? ふふっ、いいでしょ」クルクル

ことり「あっ、ぁ……」

海未「どうして……どうして、あなたが……っ!」


海未「穂乃果のリボンを、持っているのですかっ!?」

ヒデコ「……あはっ」

海未「穂乃果は……っ!? 穂乃果に一体、何をしたのですかっ!? ヒデコっ!!」

ヒデコ「あっははははは……っ!」
  


260: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 21:53:45.61 ID:Z9/CDdet.net

    
ヒデコ「はははっ。いや別に、何もしてないし」

海未「……えっ?」

ヒデコ「そんなにマジになんないでよ。安心して、『私たち』はあなたたちの、味方だから」

ことり「ヒデコちゃん……?」

ヒデコ「さぁ、入って。お姫さまが、お待ちかねだよ」

ギィ……

バタン

海未(……誰も、いない?)

ヒデコ「こっちこっち」

スタスタ……


海未「……っ!」

ことり「……あっ」

「っ! よかった……」


海未「……雪穂?」

雪穂「海未ちゃん……。無事だったんだ」

雪穂「それに……」

ことり「……雪穂ちゃん」

雪穂「ことりちゃん……っ!」タッタッ……

ダキッ

雪穂「よかった。元に戻れたんだ……っ!」

ことり「うん……。ごめんね、私たちの問題なのに、雪穂ちゃんまで巻き込んじゃって」

雪穂「いいよ、そんなの。本当によかったぁ……」ギュゥ

ことり「心配してくれてたんだね……ありがとう、雪穂ちゃん」ナデナデ

海未「……」

海未(えっ。雪穂って、ことりが相手だと自分から抱きついたりするんですか?)
   


261: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 21:59:09.65 ID:Z9/CDdet.net

   
海未「……」ズーン

雪穂「どうしたの、海未ちゃん」

海未「な、なんでもありません……それより、穂乃果は?」

雪穂「ステージ袖の方にいるよ。いこっ」

ことり「うんっ」

雪穂「ヒデコさん、ありがとうねっ!」

ヒデコ「ん、どういたしましてー」


スタスタ……

海未「……雪穂。どういうことですか? なぜヒデコが……」

雪穂「ヒデコさんは、海未ちゃんたちが来るまでここにほのキチが入ってこないように、入り口で見張っててくれたんだ」

ことり「えっ……? ヒデコちゃんは、ほのキチじゃないの?」

雪穂「ほのキチだよ。だからお姉ちゃんのリボンを、嗅いでたでしょ?」

海未「……そもそもなぜヒデコが、あのリボンを?」

雪穂「お姉ちゃんが渡したんだよ。まあ、詳しくはお姉ちゃんから聞いてよ」

海未「……」


ザッ

海未(この扉の向こうに、穂乃果が……)

海未(……くっ、なぜまた緊張しているのですか、私は。さっき電話で、話したばかりではないですか)

海未(大丈夫、いつも通り話せばいいんです。何も気まずいことなんてありません……)

海未(穂乃果……)

ギィ……
  


262: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 22:07:19.92 ID:Z9/CDdet.net

  
雪穂「お姉ちゃん。二人とも来たよー」


「あっ、海未ちゃん……」

海未「……」

海未「穂乃果……」

「ことりちゃんも……。よかった、元に戻れたんだね……?」

ことり「う、うん……。あの、穂乃果ちゃん……?」

「あのね、二人とも……私……」

海未「……話の前に、一ついいですか、穂乃果?」

「えっ、なにかな……?」


海未「……どうして――」



海未「どうして下着姿なのですかっ!? 穂乃果っ!!」

穂乃果「えっ、あっ」

海未「こ、こっちはずっと、あなたともう一度会った時、どう接するべきか……そのことばかり、考えていたのにっ!」

海未「あなたときたら、何ですかその恰好はっ! どんな再会ですか、これっ!?」

穂乃果「え、えっと、これには、事情があって」

海未「この状況で半裸になる事情がどこにあるんですかっ! 私の緊張を返してくださいよっ!」

穂乃果「そんなこと言われてもぉ……」

ことり「あ、あはは……」

雪穂(うわ、なんか急に、ビックリするくらい見慣れた光景……)
   


263: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 22:08:43.80 ID:Z9/CDdet.net

  
フミコ「あ、二人とも、来たんだ」スンスン

ミカ「あれ? どうしたの海未ちゃん、そんな怖い顔して」スンスン

ことり「っ! フミコちゃん、ミカちゃんも……っ!?」

海未「……って、あなたたちっ!! 今嗅いでるそれ、穂乃果の練習着ですよねっ!?」

海未「まさかあの二人に襲われて、服を脱がされたのですか、穂乃果っ!?」

穂乃果「ううん、違うよ……?」

海未「じゃあもう分かりませんっ!!」

雪穂「だから海未ちゃん、これから説明するって……」

穂乃果「……海未ちゃん、ことりちゃん」

海未「なんですかっ! こっちは混乱してるんです、早く説明してくださいっ!」

ことり「う、海未ちゃん、落ち着いて――」


穂乃果「――ごめんなさいっ!!」


海未「……」

ことり「……穂乃果ちゃん?」

穂乃果「本当に、ごめんなさい……っ! 私、二人になんて謝ったらいいか……っ!」

穂乃果「自分勝手にスイッチを押して、ことりちゃんをまた、ほのキチにしちゃって……っ!」

穂乃果「ううん、ことりちゃんだけじゃない……。みんな、みんな、私のせいで、ほのキチになっちゃった……っ!」

穂乃果「う、うぅ、うぅ……っ!」ポロッポロッ

穂乃果「私、大変なことしちゃった……っ! みんなにどうやって償えばいいか、分かんないよぉ……っ!」

穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃぁん……。二人は私を、止めようとしてくれてたのに……っ! ごめんなさいっ! ごめんなさぁい……っ!」
       


265: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 22:13:10.97 ID:Z9/CDdet.net

  
雪穂「お姉ちゃん……」

雪穂(ちゃんと着替えてから、謝ればいいのに……。よっぽど二人に早く、謝りたかったんだ……)

ことり「……穂乃果ちゃんっ!!」

ダキッ

穂乃果「っ! うっ……」

ことり「違う、違うの……。穂乃果ちゃんだけじゃないの……。穂乃果ちゃんだけで、そんなに背負わないで……っ!」

ことり「私たちにも、責任はあるから……っ! だって、穂乃果ちゃんを追いつめたのは、私たちなんだから……っ!」

穂乃果「そ、そんな……。二人は、なにも……」

ことり「ううん……お願い、謝らせて。ごめん、ごめんね、穂乃果ちゃん……」

ことり「辛かったよね、苦しかったよね……。ごめんなさい、穂乃果ちゃんの気持ち、考えてあげられなくて……っ!」ギュゥ

穂乃果「ことりちゃん……」

海未「……」ザッ

雪穂「……海未ちゃん?」

海未「ことりの言う通りです、穂乃果。今回の件の責任は、私たち三人にあります……」

海未「……ならばここで、立ち止まっている場合ではありません。私たちは、この件に巻き込んでしまった他のみんなに、償いをしなければなりませんから」

穂乃果「……っ!」

雪穂「ちょっと海未ちゃん、もっと優しい言い方で……っ!」

海未「私たちができる、償いは……。みんなを元に戻して、この音ノ木坂を元通りにすること。それしかありません」

海未「……その、方法を――」


 
  
海未「――あなたはもう既に、見つけてるんですよね?」
   


266: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 22:18:03.51 ID:Z9/CDdet.net

  
ことり「……えっ?」

穂乃果「……グスッ」

穂乃果「ん……」コクン

ことり「っ!! ほ、穂乃果ちゃん、本当に……!?」

海未「やはり、そうですか。ことりを連れてきてほしいと言ったのは、その方法にどうしても、ことりの力が必要だから……」

海未「……でもこのままじゃ、その方法は試せない。そうですね?」

穂乃果「……分かってるの」

穂乃果「立ち止まってる場合じゃないってことも……。ウジウジしてる暇なんて、ないってことも……」

穂乃果「でも、ダメなの……っ! 私、どうしても、自分が許せなくて……。最低なことをした、自分が……」

穂乃果「いつまでもウジウジしてる自分が、嫌だ……っ! こんな気持ちじゃ、私もう、前へ進めないよぉ……っ!!」

ことり「……穂乃果ちゃん」

ことり(優しい言葉をかけるだけじゃ……。罪を一緒に背負ってあげるだけじゃ、ダメなんだ……。今の穂乃果ちゃんに、必要なのは――)

海未「ことり」

ことり「えっ?」

海未「ありがとうございます。後は私に、任せてください」

ことり「……」

ことり「……うん。お願い、海未ちゃん」スッ

海未「穂乃果……」

穂乃果「うっ、うっ……。うみ、ちゃ――」

パシィン!

  


267: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 22:20:16.26 ID:Z9/CDdet.net

  
穂乃果「――っ!!」

雪穂「はぁっ!?」


穂乃果「……うっ、ぇ……?」

海未「……」

雪穂「なにやってんのさ、海未ちゃんっ! なにも、引っ叩くことないでしょっ!!」ガーッ

ことり「ゆ、雪穂ちゃんっ!」ガシッ

雪穂「いくらなんでもやりすぎだよっ! お姉ちゃんは、半裸なんだぞっ!!」

ことり「落ち着いて、雪穂ちゃんっ! 半裸はこの場合、関係ないっ!」

穂乃果「うみ、ちゃん……?」

海未「痛いですか、穂乃果」

穂乃果「うん、いたい……」

海未「ならその痛みが、あなたへの『罰』です」

穂乃果「……ばつ」

海未「これからほのキチを一人見るたびに、その痛みを思い出しなさい。いいですね」

穂乃果「……」
  


268: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/07(木) 22:23:12.90 ID:Z9/CDdet.net

  
穂乃果「ことりちゃん、海未ちゃん……」

海未「……なんですか?」

ことり「な、なに――うわ、暴れないで、雪穂ちゃんっ!」

穂乃果「……ありがとう」


穂乃果「いつも私に優しくしてくれる、ことりちゃんと……いつも私に厳しくしてくれる、海未ちゃん――」

穂乃果「二人がいつも傍にいてくれたから、いつだって私は安心して、前を向いて走ってこれたんだよ……」

ことり「……穂乃果ちゃん?」

海未「……」

穂乃果「……二人とも――」

  


 
穂乃果「――ライブを、しよう」
   
 


280: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 20:43:10.01 ID:xtVXfcMB.net

  
――――――


穂乃果「えっとね、雪穂から聞いたんだけど……。ほのキチを元に戻すには、私以外の『匂い』と、気持ちを揺さぶる『言葉』が必要なんだよね?」

穂乃果「だけど友達とかならともかく、他にたくさんいる、『話したこともないような子たちを元に戻すことが難しい』、だっけ」

穂乃果「それを聞いたとき、私思ったんだ……。それって、ライブと同じだな、って」

穂乃果「えっ、その発想が分からない? し、仕方ないじゃん。そう思っちゃったんだから」

穂乃果「だってさ、ほら……。私たちって別に、友達や知ってる人にだけ向けて、歌を歌って、踊ってきたわけじゃないでしょ?」

穂乃果「どんな人たちにも……私たちが知らない人にも、私たちを知らない人たちにも。たくさんの人たちに向けて、私たちは歌ってきた」

穂乃果「そして私たちの歌は、いつだって、みんなの心を動かしてきた。私はそう、信じてる――」

穂乃果「――だったら、ほのキチになったみんなの心にも、きっと届けることができるはず。知ってる人も知らない人も、関係なく……」

穂乃果「『歌』っていう、『言葉』で――みんなの気持ちを動かすことが、できるはずなんだ」
  


281: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 20:43:59.24 ID:xtVXfcMB.net

  
穂乃果「そして……『匂い』」

穂乃果「私以外の匂いが必要らしいけど……でも『誰のどんな匂いでもいいわけじゃない』、んだよね?」

穂乃果「凛ちゃんは花陽ちゃんの匂いで戻って、真姫ちゃんは希ちゃんの匂い、海未ちゃんは、ことりちゃんの匂いだった――」

穂乃果「――つまりきっと、その人にとってはかげがえのない、大切な……そんな『特別な匂い』が、必要なんだよね」

穂乃果「……私たちには、見ず知らずの人の特別になれるような、匂いはないけれど」

穂乃果「だけど……。もしも私たちの歌がみんなの心に響いて、私たちのライブを、みんなが心から楽しんでくれたら……」

穂乃果「みんなも私たちも、思いっきり声を出して、手を振って、ジャンプして、踊って……そうやって熱くなって、お互いにたっぷり、汗をかいたら――」

穂乃果「その時に生まれる『ライブの匂い』は、きっと、みんなにとってかげがえのない大切なものになるはず」

穂乃果「……こんな状況で、いきなりライブを始めるなんて、バカみたいだけれど」

穂乃果「でも、こんな状況でも『いきなり歌い始める』のが、私たちらしさなのかな、って――」


穂乃果「――だからバカみたいでも、『やるったら、やる』」


穂乃果「それじゃ、えっと……。私、衣装に着替える途中だったから。二人も準備、お願いねっ」
   


282: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 20:54:24.02 ID:xtVXfcMB.net

 
――――――

舞台袖


雪穂「――じゃあ本当にもう、お姉ちゃんの匂いは、元に戻ってるんだね……?」

海未「間違いありません。念のためにことりやヒデコたちにも確認してもらいましたが、彼女の匂いはいつも通りに戻っていました」

雪穂「そ、そっか……。よかったぁ……」

海未「そして、このスイッチも……」スッ

海未「何度も押して、試してみましたが……。匂いが強くなる様子はありませんでした」

雪穂「……あれ。そういえばいつの間にか、液晶画面の表示が消えてる」

海未「ええ。画面は、使用してない時も常に『0』と表示されていました。その表示も消えて、今はもう真っ暗です……」

雪穂「はは……。そっか、本当に、壊れたんだ……」

海未「……これでようやく一つ、問題が消えました」

海未「ですがもう一つ、大きな問題が残っている……。それに今から私たちは、立ち向かわなくてはならないわけですが」

雪穂「……まあ、私も最初お姉ちゃんから聞いた時は、ビックリしたけどさ」

海未「『ライブでほのキチを元に戻す』……本当にそんなことが可能なのか、正直まだ半信半疑なのですが……」

雪穂「お姉ちゃんはずっと、考えてたんだ……。自分を責めて泣きながら、膝を抱えながら、それでも考え続けてたんだ。みんなを元に戻す、方法を……」

海未「そして彼女は、私たちの誰もが思いもよらなかった方法を考えついた……。きっとμ'sをずっと引っ張ってきた彼女だからこそ、辿り着けた考えでしょう」

海未「……ですがこの方法を試すには、今から『全てのほのキチ』を集めなければなりません」

海未「全校生徒――『お客さん』と、μ'sのメンバー――『演者』を」

雪穂「……うん」

海未「まずはこの学院のどこかにいるμ'sのメンバーを、この場に集めます」

海未「私たち三人による……『最初のライブ』で」
  


284: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 20:58:59.17 ID:xtVXfcMB.net

  
ヒデコ「そのための準備は全部、私たちがやっておいたからさ」

海未「……三人とも」

フミコ「衣装も音源も、部室にあったのは全部持ってきたし……ステージもセットしてある」

ミカ「音声設備も色々いじって、マイクの音を校内中のスピーカーから出力できるようにしておいたからっ! これで、校内全域にあなたたちの歌が届くってわけっ!」

海未「あ、相変わらずの手際の良さに、感服致します……。しかし穂乃果の頼みとはいえ、ほのキチのあなたたちが、よくこんなことを引き受けてくれましたね?」

ミカ「その代わり、こうして『お礼』を貰ったからねー。ふぅ~///」スンスン

海未「なるほど。それで練習着ですか……」

海未(しかし、ほのキチになっても私たちをサポートしてくれるとは……三人には、本当に感謝しなくてはなりませんね)

海未「それでは、二人が待っていますので、私もステージに」

ヒデコ「あっ。これ、穂乃果に返しといて」スッ

海未「……リボンですか。もう良いのですか?」

ヒデコ「んー、正直もうちょい嗅いでたいけど……。やっぱりそれ付けてた方が、穂乃果って感じするしね」

海未「……ふふっ、そうですね」
  


286: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 21:00:27.50 ID:xtVXfcMB.net

   
ヒデコ「ていうか、『他の人の匂いを嗅ぎながら、元に戻りたいと願う』ことでも、ほのキチから戻れるんだっけ?」

海未「ええ。その方法なら確実です」

フミコ「じゃ、私らもこの辺で戻っとこうか」

ミカ「そだね。なんかいつまでも練習着嗅いでるのも、穂乃果に悪いし」

ヒデコ「よし、じゃあくっついてー」ギュゥ

海未(他のほのキチもあなたたちの様であれば、どれだけ楽か……)ホロリ

雪穂「……海未ちゃん」

海未「はい?」

雪穂「本当にこの方法で、みんな元に戻せるのかな……? もしこの方法が、失敗したら……」

海未「……」

雪穂「あっ、ご、ごめんっ。水を差すようなこと言って……」

海未「雪穂、安心してください。この事件はもう、解決したも同然ですから」

雪穂「……へっ? そ、それは流石に言いすぎじゃ……」

海未「いいえ? そんなことありませんよ。なぜなら――」


海未「穂乃果が『いつもの穂乃果』に戻りました。それだけで――私たちの勝利は、確定です」

雪穂「……はは」

海未「では、行ってきます」

ザッ……
  


287: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 21:08:48.88 ID:xtVXfcMB.net

  
――――――

ステージ


海未「お待たせしました」

穂乃果「よし、じゃあやろっか」

ことり「えっと……まずは私たち三人だけでライブをして、μ'sのみんなをここに集めるんだったよね」

穂乃果「うん。ヒデコたちのおかげで、私たちの歌は学校中に届くようになってるから」

穂乃果「みんながどこかで私たちの歌を、聞いてくれていたら……きっとみんな、ここに来てくれるはず」

海未「しかし彼女たちは今、正気ではありません……。記憶を失ってるメンバーも、います。それでも、来てくれるでしょうか?」

穂乃果「来てくれるよ、きっと。『あの時』みたいに……」

穂乃果「だってみんなは、μ'sのメンバーの前に、μ'sの『最初のお客さん』でもあったんだから」

穂乃果「だから今回だって、一番に、駆けつけてくれるはずだよ」

海未「……ふっ、なんですかそれ。根拠になってませんよ」

穂乃果「そ、そうかな……」

海未「これを」スッ

穂乃果「あっ、リボン……?」

海未「……あなたの考えに付き合わされるのはもう、慣れっこですからね。どこまででもついていきますよ」

ことり「ふふっ。少なくとも……それで後悔したことなんて、一度もないもんっ」

穂乃果「……へへ」

ギュッ


穂乃果「ありがとう、二人とも。それじゃ――」


バッ


穂乃果「――ここからもう一度、μ'sを始めよう」

ことり「うんっ!」

海未「ええ……っ!」
   


290: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 21:15:02.94 ID:xtVXfcMB.net

   
穂乃果「いちっ!」

ことり「にぃっ!」

海未「さんっ!」


私たちは手をつなぎ、頷きあう――


そして、幕が開く。

その先に広がるのは、前にも一度、見た景色。

私たちの、『初ライブ』――

あの時、幕が開いた瞬間、ステージからいくら見渡しても、お客さんは一人も確認できなくて……それがとても、ショックで。

今はまた、状況が違うけれど……あの時と同じことが、二つある。


一つは、あの時も私たちは、『諦めなかった』ということ。

心が折れてしまいそうなほどの、絶望的な状況でも……最後まで、踊りきったということ。

それは今もきっと、同じだった。


照明が落ち――曲が始まる。

もう一つ、今とあの時とで、同じこと。それは――


歌う曲もまた、あの時と同じであるということ。


「「I say……Hey、hey、hey――」」


誰もいない観客席に向けて、私たちは歌う。

今はここにいない彼女たちが、どこかでこの歌を聴いてくれていることを、信じて――


「「――START:DASH!!」」
  


291: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 21:27:36.92 ID:xtVXfcMB.net

  
♪~START:DASH!! / 高坂穂乃果、南ことり、園田海未



「「諦めちゃダメなんだ――その日が絶対来る――」」

「「君も感じてるよね――始まりの鼓動――」」


ことり(お願い、私たちの歌を聴いて、みんな……っ!)

海未(思い出してください……っ! μ'sというアイドルグループで、共に歩んできた日々を……っ!)


「「悲しみに閉ざされて――泣くだけの君じゃない――」」

「「熱い胸、きっと未来を――切り開く筈さ――っ!」」


穂乃果(……あの日、この講堂に、私たちは集まった……)

穂乃果(あの時はまだ、μ'sがこの9人で活動することになるなんて、思いもしてなかったけど……でも今ならはっきり、思えるよ……っ!)


「「きっと――君の――チカラ――動かすチカラ――っ!」」


穂乃果(μ'sは私たち9人で、μ'sなんだってことを――っ!)


「「信じてるよ……だからSTART――」」


「「Hey、hey、hey――START:DASH!!」」
    


292: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 21:34:51.68 ID:xtVXfcMB.net

   
……


ことり「はぁ、はぁ……っ!」

海未「……っ」

海未(やった……やりきった……)

穂乃果「はぁ、はぁ……」

海未(……でも)


シーン……


海未「くっ……」

ことり「うぅ……」

海未(……流石に、そんな簡単には――)

穂乃果「……――」スウウゥ



穂乃果「――入っておいでよーっ!!」

海未「っ!?」

ことり「穂乃果ちゃん……っ!?」

穂乃果「そこにいるんでしょーっ!? こっちに、おいでよーっ!!」


「……」

ギィ……
  


293: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 21:40:01.89 ID:xtVXfcMB.net

  
海未「っ!! あれは――」


ヨロッ

凛「うにゃぁ~……」

海未「――凛っ!?」

ことり「っ! 待って、後ろにも――」


真姫「はぁ……」

ことり「――真姫ちゃんだっ! そっか、あの二人は……っ!」

海未「一度ほのキチになっていて、他のメンバーよりも耐性があった……だからまだ僅かに自我が、残っていたのでは……っ!?」

穂乃果「……はは」

穂乃果「よかった……。二人とも、来てくれた……」


凛「にゃぁ~、なんなの、さっきの歌……頭が痛いにゃぁ~……」

凛「てゆーかなんで凛、講堂なんかに来てるんだろ……うぅ~ん……」

凛「……って、あれっ!? あれは、穂乃果ちゃん……っ!?」

真姫「こんなとこにいたのね……。くっ、それにしても……」

真姫「何考えてんのよ、こんな時に、ライブを始めるなんて……」


穂乃果「二人とも、お願いっ!」

海未「任せてください――ことりっ!」

ことり「うんっ!」

バッ スタッ


海未「真姫を頼みますっ! 私は凛をっ!」

ことり「わかったっ!」

ダダッ!
    


294: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 21:44:59.93 ID:xtVXfcMB.net

  
凛「穂乃果ちゃん……。やっと見つけた……やっと直接穂乃果ちゃんの匂いを、嗅げるにゃ……っ!」

凛「でも……うぅ、頭が痛い……っ! なんなの、これぇ……っ!」

海未「凛っ!!」ザッ

凛「っ! うみちゃん……?」

海未「……凛。頭が痛みますか」

凛「う、うん……うみちゃん、原因分かるの……?」

海未「それはきっと、私たちの歌を聴いたことで、あなたの中の『μ'sの記憶』が刺激されているのでしょう」

凛「……は、ぁ?」

海未「μ'sのことを、あなたは思い出しつつある。だからあなたは自然とこの場所に、辿り着いたのです……」

凛「あぁ、もう……っ!」ギリッ

凛「またそれ……っ!? みゅーずがなんとかって……っ! もう、いい加減にしてよっ!!」

海未「っ! 凛……」

凛「分からないんだよ、もうっ! イライラするなぁ……っ! たまには凛にも分かる話、してよっ!!」

凛「凛をからかってるの……っ!? 凛がバカなの知ってて、わざと難しい話してるのっ!? ねえっ!」

海未「……では分かりやすく、言って差し上げますよ」

海未「凛、あなたは今から、元に戻るんです。私があなたを、戻します」

凛「……だから」

凛「分からないって、言ってるでしょっ!? 元に戻るって、なにがっ!?」

海未「っ! ですから、ほのキチのあなたを、いつもの凛に……っ!」
 
凛「戻るも何も、凛は凛だよっ! 凛は別に今も、いつも通りじゃんっ!!」 

海未「凛、あなた、まさか……」
   


295: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 21:49:24.57 ID:xtVXfcMB.net

    
凛「はぁ、はぁ……っ!」

海未「……そうですか。いえ、薄々気づいてはいましたが……」

海未「凛……今のあなたは、元の自分の記憶を失ってしまっています。故に――」

海未「『ほのキチのあなた』という存在は、元の自分とはもう、完全に独立してしまっているのですね」

海未「どちらも凛でありながら、どちらも別々の思い出を持った、さながら別人のように……」

凛「う、うぅぅっ! ぜんっぜん分かんない……うみちゃんのせいで、もっと頭痛くなってきた……っ!」

海未「……ほのキチを元に戻すということは、『ほのキチという人格を消す』ということです」

海未「つまりあなたを『元に戻す』ということは……『今のあなた』という存在を、消すことと同じなんです……」

凛「……よく、分かんないけど」

凛「それってうみちゃんは凛のことを、『消そうとしてる』ってこと……?」

海未「……ごめんなさい。でも、仕方がないんです」

海未「元の凛を取り戻すためには、どうしても今のあなたを、犠牲にしなくてはならないのですから……」

凛「だから、何言ってるの……っ!? なんで、凛が消えなくちゃいけないのっ!!」

海未「……そう、ですよね。分かりませんよね」

海未「だってあなたにとっては、今の自分が『元の凛』で……『いつも通りの自分』なんですから」

凛「なん、で……。く、うぅ……っ!」

海未「あなたとっては、理不尽な話にしか思えないでしょう……。私を恨んで頂いても、構いません」

海未「しかし、それでも――」


凛「……かって、るんだよ……」

海未「えっ……?」


 
凛「自分が『元の凛』じゃないことくらい、分かってるっ!!」
   


296: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 21:55:01.71 ID:xtVXfcMB.net

   
海未「……っ!?」

凛「凛の中にはもう一人、凛がいて……そっちの凛が、『元の凛』なんでしょ……っ!?」

凛「凛だって、それくらいのことはもう、気づいてるんだよっ!!」

海未「り、凛……」

凛「『元の凛』はきっと、穂乃果ちゃんの匂いを嗅いだりなんてしなくて……。3メートルもジャンプしたり、壁を走ったりもしなくて――」

凛「だけどそっちの凛が、正しいんだってことくらい……っ! 自分が『間違った凛』なんだってことくらい、分かってるの……っ!!」

海未「……」

凛「この体は『元の凛』のもので、今の凛は、それを借りてるだけ……」

凛「だからいつかは元の凛に、返してあげなくちゃいけない……。凛は、消えなくちゃいけないんだ……っ! 分かってるよっ!」

凛「でも、でも……っ! 早すぎるよっ! もう、終わりなのっ!?」

凛「凛だって、もっともっと、したいことがたくさんあるのに……っ! まだ全然、何もしてないのにっ!」

海未「……凛」

凛「――かよちゃんと、お友達になりたかったのにっ!!」

海未「っ!! 凛、あなた……」


海未「泣いて……?」

凛「う、ぅ、うぅ……っ!」ポロッポロッ

凛「せっかくかよちゃんとお友達になれると、おもったのに……ひぐっ、なかよしになれると、おもったのにぃ……っ!」

凛「一緒にいっぱい、遊びたかったのに……っ! かよちゃんのこと、もっともっと知りたかったのに……」

凛「もうおわりなんて、やだよぉ……っ! うっ、うぅぅ~……っ!」グスッ

海未「……凛」

凛「なんで……? なんで凛が、きえなくちゃいけないの……? 間違ってたって、別にいいじゃん……っ!」

凛「凛はただ、かよちゃんとおともだちになりたいだけなのにぃ……っ!」
  


297: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 21:57:02.94 ID:xtVXfcMB.net

  
海未「……『花陽と友達になりたいだけ』、ですか」

凛「う、うぅぅ、えぐっ……」

海未「まったく……それではほのキチ失格ですよ、凛」

凛「ふっ、うぇ……?」

海未「『ただ穂乃果の匂いを嗅ぎたいだけ』だったはずのあなたが……そんなことを言うなんて」

海未「あなたの中ではもう、穂乃果の匂いを嗅ぐことよりも、花陽と友達になることの方が、大事になってしまったんですね」

凛「……ぅ」グスッ

海未「すごいですね、凛……。あなたは記憶を失っても、またこうして花陽と、友達になろうとしている――」

海未「きっとあなたは、何度記憶を失っても、何度生まれ変わっても、花陽のことを好きになるのでしょうね……」

凛「……」

海未「……そうでした。あなたは『元の自分と花陽との関係』も、覚えていないのでしたね」

凛「……お友達、だったの?」

海未「違いますよ」

凛「えっ?」

海未「友達は友達でも、あなたの想像しているような関係とは、全然違います。花陽とあなたは、『親友同士』だったんですから」

凛「しんゆう……」

海未「ええ。それも昔から、ずっと……。お二人は、仲が良いなんて言葉では言い表せないほどに、仲良しだったのですよ」

凛「……」
  


298: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 22:02:43.00 ID:xtVXfcMB.net

  
『私は……昔からいつだって、凛ちゃんの、一番の親友の――』


凛「……なんだ、そうだったんだ」

凛「あはは……。『お友達になりたい』とか、凛はほんとにバカだ。とっくの昔から凛は、かよちゃんと、お友達だったんだね……」

凛「そっか……そっか。えへへ、へへっ……」ポロッポロッ

凛「うれしいなぁ……。凛はかよちゃんの、『一番の親友』だったんだね……っ!」

海未「……凛」

凛「グスッ、うみちゃん……。凛、元に戻るよ」

海未「っ! 良いのですか……?」

凛「うん。だってかよちゃんと仲良しなのは、『元の凛』の方なんだから……今の凛には、かよちゃんとの思い出は、何もないんだから」

凛「そんなの、凛が良くても……かよちゃんが、可哀想だにゃ」ニヘッ

海未「……」

海未「……花陽の、タオルです」スッ

凛「……」

海未「先ほど彼女と会った時に、手に入れました。これを嗅ぎながら、『元に戻りたい』と強く願うことで、あなたは元に戻れます」

凛「……わかった」スッ

海未「凛、その……」

凛「……これで最後だから言うけど、うみちゃんのことも、割と嫌いじゃなかったよ」

海未「えっ……?」

凛「前やった追いかけっこ、楽しかったにゃ。凛と遊んでくれて、ありがとうねっ」

海未「……あなたにとってはあれが、『遊び』ですか。こっちは、死に物狂いだったというのに……」

海未「本当に、あなたたちほのキチは、厄介ですね」クスッ

凛「……ふふっ、あははっ。あはははははっ! はぁ、はぁ……」

凛「はは……。ふぅ……。それじゃ、うみちゃん――」


凛「――ばいばいっ」

海未「……ええ。さようなら、『凛』――」
  


299: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 22:09:31.73 ID:xtVXfcMB.net

  
スン……

凛(かよちゃんのにおい……)

凛(あぁ……どうしてかよちゃんの匂いを嗅ぐと、こんなに安心するんだろう……)

凛(……かよちゃんと一緒に、色々なことをして遊びたかったけど――)

凛(――元に戻ったらきっとそんなこと、いくらでもできるよね……)

凛(だって凛と、かよちゃんは……親友、だったんだから)

凛(元に戻った凛は、かよちゃんとどんなお話をして、どんなことをして遊ぶんだろう……)

凛(楽しみだね、かよちゃん……いっぱい、いーっぱい、遊ぼうね……)


フワァ……



……凛ちゃんっ


凛(……かよちゃん?)


凛ちゃん……っ!


凛(あぁ、かよちゃんだ……かよちゃんが、凛を呼んでる……)



( おーい、 かよちゃーんっ! )


  ねえ、かよちゃんっ! 凛はね、走ったり跳んだりすることが、だいすきなんだっ!

 
  かよちゃんは、なにが好きなの? 凛にいっぱい、おしえて……っ!

  ねえ、かよちゃん――



  凛といっしょに、あそぼうっ?

  


300: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/11(月) 22:11:03.53 ID:xtVXfcMB.net

  
「……」


凛「……海未、ちゃん?」

海未「凛……っ!?」

凛「あれ……凛、なにしてたんだっけ……ここ、講堂……?」

海未「よ、よかった……元に戻ってくれたんですね……」

凛「……そっか。凛、またほのキチになっちゃってたんだ」

海未「あなただけではありません。今度は全校生徒のみんなが、ほのキチになってしまったんです」

凛「えっ……?」

海未「今、私たちはまず、μ'sのみんなを元に戻そうとしています」

海未「あなたは、花陽をお願いします。彼女を元に戻せるのは、きっとあなたしかいませんから」

凛「……」

凛「……分かった。かよちんは絶対、凛が元に戻すよ」

海未「そう言ってくれると思いました。それでは、こちらに……」

凛「うん……」グス


凛(……? あれ。凛、泣いてる……?)

凛(ううん、『泣いてた』……? でも、どうして……)

凛(……うぅん、思い出せないや)


ゴシゴシ


凛「……よしっ!」

凛(かよちん……っ! 今度は凛が、かよちんを……っ!)

タッタッタッ……
  


317: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/12(火) 21:50:16.29 ID:XshK0sb4.net

 
――――――

 
ことり「真姫ちゃん……」

真姫「ことり。どういうつもり? いきなりライブなんて始めて……しかもそれを、全校放送するなんて」

ことり「……それはあとで、話すよ。今は真姫ちゃんを元に戻すことが、先決だから」

真姫「……はっ、そういうこと。まんまと私はここに、おびき寄せられたってわけね」

真姫「迂闊だった……。『患者』を行かせるべきだったわ。どうして私、直接自分の足でここに来たりしたのかしら」

ことり「あの曲は、真姫ちゃんが初めてμ'sに作ってくれた、曲だもん。それがいきなり流れ始めたら、ここに来ないわけには行かないでしょう?」

真姫「……ふん、まあいいわ。おかげでようやく穂乃果を、見つけられたしね」スタスタ

ことり「……」バッ

真姫「どきなさいよ」

ことり「……やだ」

真姫「どいて。あなたなんかに構ってる暇はないの。私はこれから全人類のほのキチ化という、壮大な計画に取り掛からなくちゃいけないんだから」

ことり「ぜ、全人類っ!? そんなことできるわけ……」

真姫「不可能じゃないわ。あのスイッチさえあればね」

ことり「……ふふっ」

真姫「……何が可笑しいのよ」

ことり「残念だったね、真姫ちゃん……あのスイッチはもう、壊れちゃったらしいよ?」

真姫「……」
  


318: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/12(火) 22:01:42.42 ID:XshK0sb4.net

  
ことり「さぁ真姫ちゃんっ、観念して――」

真姫「あははっ」

ことり「っ! な、何が可笑しいのっ!?」

真姫「バカね……あのスイッチを持ってきた張本人が誰だったのか、忘れたの?」

ことり「えっ……?」

真姫「壊れたのなら、ママに頼んで直してもらうだけよ」

ことり「ええーっ!? そ、そんなの、ずるいっ!」

真姫「今更何言ってるのよ……」

ことり「うぅ……っ! まさかそんな手があったなんて……」

真姫「分かったらもう、私の邪魔をしないで。ほのキチになれば、みんなが幸せになれるんだから」

ことり「そ、そんなの、間違ってるよ……」

真姫「間違ってない。ほのキチになることで救われる人が、この世界にはたくさんいるの」

真姫「人々が抱える悩みも、問題も、過去のトラウマも……ほのスメルを嗅げば、全部どうでもよくなる。それって、素敵なことじゃない?」

ことり「……」

真姫「それだけじゃない……。『覚醒』によって人々はこれから、超人的な能力に目覚めることになる――」

真姫「分かる? 誕生から、数百万年……。人類は生物として、もう一段階進化するのよ」

真姫「それはとても、素晴らしいこと……。ほのスメルによる理想の世界は、すぐそこまで迫ってきている」

真姫「そんな世界できっと穂乃果は、神様として、未来永劫崇められることになるでしょうね」
  


319: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/12(火) 22:11:27.09 ID:XshK0sb4.net

  
ことり「ごめん、真姫ちゃん。ことりには、よく分かんないよ」

真姫「……」

ことり「でもこれだけは、言えるよ……穂乃果ちゃんは神様になんかならない。ずっとずっと、私たちの友達だよ」

真姫「……ならあんたももう一度、ほのキチになるといいわ。そうすればきっと、理解できるから」

ことり「……ううん」

真姫「ほのキチになったあんたには、突出した発想力とカリスマ性がある。前に一度手を組んだとき、はっきりと感じたわ」

真姫「理想の世界で、あんたはほのキチの長として、他のほのキチたちを従えるの。素敵でしょ?」

ことり「……」フルフル

真姫「なんで……」

ことり「真姫ちゃん。私ね、一度自分から望んで、ほのキチになってるの」

真姫「……えっ?」

ことり「そんな私が今こうしてまた、元に戻ってるってことは……分かる、よね?」

真姫「……っ! くっ……」

ことり「だからごめんね、真姫ちゃん。真姫ちゃんに何を言われても、私の気持ちはもう、変わらないよ」

真姫「なんでよ……っ! なんで分からないのっ!? 私の計画の、素晴らしさが……っ!」

ことり「……どうして、そこまで」

真姫「『間違ってる』なんて、言わないでよ……。私はあのスイッチの『正しさ』を、証明しなきゃいけないのに――」

ことり「真姫ちゃん……?」

真姫「だってあのスイッチを持ってきた張本人は、私なんだから……」
  


320: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/12(火) 22:16:26.71 ID:XshK0sb4.net

  
ことり「……」

真姫「……この一か月間、私たちはずっと、あのスイッチに苛まれてきた。遂には、学校全体を巻き込む大事件にまで――」

真姫「――私があのスイッチを持ってこなければ、こんなことにはならなかった」

真姫「だから『あのスイッチがあれば、理想の世界が作れる』。『ほのキチになれば、みんなが幸せになれる』――」

真姫「そう思わなきゃ、やってられないのよ……。そうやって、あのスイッチは『正しい物なんだ』って、信じなきゃ……」

真姫「どうしても、考えちゃうのよ。この一か月間は、『間違ってた』んじゃないかって。本当はもっと、『正しい一か月間』があったんじゃないか、って――」

ことり「……真姫ちゃんは、私だね」

真姫「……は?」

ことり「少し前の、私だ……。自分のしたことをずっと後悔して、潰れそうになるまで自分を責め続けてる――」

ことり「でも……そんな真姫ちゃんだからこそ、私が必ず元に戻すんだ」ザッ

真姫「な、なによ。ほのキチ相手に、やる気……っ!? 言っとくけど、手加減なんてしないわよっ!」

ことり「……うん、いいよ」スタスタ

真姫「来ないでっ! 私が本気で抵抗したら、ケガじゃすまないのよっ!?」

ことり「真姫ちゃん……っ!」ガバッ

真姫「――っ!!」


ギュゥ……
   


322: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/12(火) 22:21:01.46 ID:XshK0sb4.net

 
真姫「……くっ」

ことり「……抵抗、しないの?」

真姫「……」

真姫「……勘違いしないでよね。別にあんたのことを気遣ってるわけじゃないんだから」

真姫「単純に、私にその力がないだけ……だって今の私の身体能力は、元の自分とさほど変わらないから」

ことり「えっ……?」

真姫「別に、ほのキチがみんな怪力ってわけじゃない……症状が一人一人違うように、覚醒にも個人差があるの」

真姫「……前にあんたを逃がそうとした時も、海未たちの足止めはほとんど凛が、一人でやってたしね」

真姫「だから口で、あんたを従わせられないのなら……もう私に、勝ち目はなかったのよ」

ことり「……」

真姫「……全く、驚きよ。私の言葉に惑わされず、しかもほのキチに対して真正面から挑もうとするなんて……」

真姫「正直、見くびってたわ。ことり、あんたって、そんな子だったっけ……?」

ことり「……ふふっ。確かに少し前の私だったら、こんなことする勇気はなかったよ」

ことり「でも、この一か月間の中で……私は、強くなれた。『ほのキチ』が、私を変えてくれたんだ」

ことり「だから私はこの一か月間を、『間違ってた』なんて思わない。私たちが辿ってきた道は、『正しい』んだよ」

真姫「……本当に、変わったわね、ことり」

真姫「今のあんたを見てると……。この一か月間の苦難が、なんだか報われた気がするわ」

ことり「……」
  


323: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/12(火) 22:30:14.69 ID:XshK0sb4.net

   
真姫「そうね……。ほのキチになって『やりたいこと』はやれたし、悔いはない。『私』はもう、消えるわ……」

真姫「……ことり。やり遂げなさいよ、『最後』まで」

ことり「……うん。必ず音ノ木坂を、元に戻すよ」

真姫「ふふっ、違うわよ……」

ことり「……えっ?」

真姫「私の大好きな、『μ's』を、よ……」

フワァ……


真姫「……」


真姫「うぅ……はぁ……。ごめん、ことり。もう大丈夫だから……」

ことり「っ! 元に戻ったのっ!?」

真姫「あぁ……迷惑かけたわ。まさかまた、ほのキチになっちゃうなんてね……」

ことり「い、いいよ。そんなことより、よかったぁ……」

真姫「……ことり。スイッチのことは、私に任せて」

真姫「今度こそ、ママに頼んで処分してもらうから。もう二度と、こんなことが起きないように」

ことり「……うん。でも、あのスイッチ……」

真姫「なによ?」

ことり「えっと、すごく今更なんだけど……あのスイッチって、いったい誰が何のために作ったんだろう?」

真姫「本当に、今更ね……」

ことり「一番の謎だもん……。真姫ちゃんのお母さんに聞けば、何か分かるのかな?」

真姫「ママは、知り合いの兄が所属している研究機関のあるチームが進めていた研究の最中で起きたちょっとした事故で生まれた産物だって言ってたわ」

ことり「よし。あまり気にしないことにしよう」

真姫「そうね」
   


324: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/12(火) 22:31:17.65 ID:XshK0sb4.net

  
――――――


海未「真姫っ! どうやら、元に戻れたようですねっ!」

真姫「海未……。ええ、なんとか」

ことり「あ、海未ちゃん……っ! 凛ちゃんもっ、元に戻れたんだね?」

凛「うんっ。それで、えっと……」

真姫「全校生徒のほのキチたちを戻す方法が、見つかったらしいじゃない。説明してくれる?」

海未「ええ……。ですがその方法を試すには、μ'sのメンバーが全員揃わなくてはならないんです」

ことり「みんなを集めるために、まずは私たち三人で、ライブを始めたの」

凛「そっか、まずはみんなを、元に戻さなきゃいけないんだね。えっと、今来てるのは……」

ことり「来てくれたのはまだ、凛ちゃんと真姫ちゃんだけなんだ」

凛「……うにゃぁ」

真姫「……あとの四人は私たちに比べて、耐性がなかったメンバーなのよね」

真姫「となると、特に症状の重いほのキチになっている可能性が高い……。さっきの歌の効果は、期待できないかもしれないわね」

海未「いいえ、そんなことありませんよ」

真姫「えっ……?」

海未「もちろん本来なら、ほのキチとなり正気を失ったみんなを、一度にここに集めることなど、不可能に近かったでしょう」

海未「あなたたち二人だけでもここに来てくれたのは、奇跡としか言いようがありません……しかし――」

海未「『あの二人』なら、きっと……」

海未「アイドルのことが何よりも大好きだった、あの二人ならきっと、ほのキチとなった今でも、その情熱を忘れずにいてくれているかも――」

海未「もしそうなら、きっと……奇跡はもう一度、起きるはずです」
   


325: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/12(火) 22:35:25.39 ID:XshK0sb4.net

  
ギィ……


真姫「っ!?」

凛「あっ……!」


ヨロヨロ

花陽「ごはん~……」

にこ「……?? ここ、どこぉ?」キョロキョロ


凛「か、かよちんっ!?」

真姫「にこちゃんもいるわっ!」

ことり「あ、あはは……本当に、来てくれたね」

海未「ふっ、当然です。生粋のアイドルオタクであるあの二人が、私たちのライブに来ないはずがありません」

凛「かよちん……今、凛が元に戻してあげるからねっ!」ダダッ

海未「あっ、凛っ!?」

真姫「……ってことはまあ、私がにこちゃんの方よね」

ことり「あ、私たちも……」

真姫「あんたたちは休んどきなさいよ。私たちがあの二人を、必ず戻すから」

ことり「真姫ちゃん……」

海未「……分かりました。では、お願いします」

真姫「ん……」スタスタ


ことり「……なんだか味方が増えて、心強いね、海未ちゃん」

海未「ええ。この感覚も、結成当初以来ですね……」
   


338: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/17(日) 20:56:42.03 ID:eKMQ+NpB.net

――――――


凛「かよちんっ!!」バッ

花陽「穂乃果ちゃんの髪の毛ふりかけごはん、たべたいぃ~……」

凛「っ! えっ、なに言ってるの、かよちん……?」

花陽「穂乃果ちゃんのよだれかけごはん、たべたいですぅ~……」

凛「っ!? そ、そんなのダメだよ、変だよ、かよちんっ!!」

花陽「うるさいですねぇ……。なんなんですか、あなたはぁ……?」

凛「えっ……。凛のことが、分からないの……?」

花陽「りん~? なんですかそれ、ごはんにかけたらおいしいですかぁ?」

凛「かけないでよぉっ! なんで……かよちん、凛のこと忘れちゃったの……っ!?」

花陽「かよちんはごはんに乗せたらおいしいですかぁ?」

凛「いくらごはんが好きだからって、自分がごはんに乗っちゃうのっ!?」

花陽「はぁ~??」

凛「か、かよちん、思い出してよ、凛のこと……」

花陽「何のことか知りませんが、どうでもいいです。ごはんに合わないものなんて、この世に必要ないんですから」

凛「そ、そんな……」

花陽「というかそこ、どいてくれますぅ?」

凛「えっ……」

花陽「邪魔なんですよぉ……っ! おにぎりの具にされたいんですかぁ……っ!?」ギロッ

凛「ひっ!」ビクッ

凛(凛はどんなかよちんも、好きだけど……このかよちんはちょっと、怖いかも……)


339: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/17(日) 21:09:26.70 ID:eKMQ+NpB.net

 
凛「か、かよちん……」

花陽「あぁ、穂乃果ちゃんが咀嚼したごはんを、口移しで食べたいぃ~……」

凛「かよちん、待ってっ!」ギュッ

花陽「っ! あぁもう、鬱陶しいですっ!!」

ドンッ!

凛「いたっ……!」ドタァン

花陽「はぁ~……ごはん……」

凛「う、うぅ……っ」

花陽「ごはん、たべたいぃ……」

凛「……ねえ、かよちん――」


『凛ちゃん、どうしちゃったの……?』

『早く出てってよっ! 凛は、穂乃果ちゃんの体から出る匂いしか嗅ぎたくないのっ!!』

『なに、何なのこれ、何の匂いっ!? 出てけっ! 凛の鼻から出てけえっ!!』

『……っ!!』


凛「――かよちんも、こんな気持ちだったの……?」

凛「ほのキチになった凛が、かよちんのことを忘れちゃった時……かよちんもこんなに、辛い思いをしていたの……?」

花陽「あぁ~……」

凛「ごめん……ごめんね、かよちん。凛はかよちんに、とっても酷いことをしてたんだね……」
   


340: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/17(日) 21:18:31.43 ID:eKMQ+NpB.net

    
凛「……でも、凛は」


凛「かよちんの匂いで、元に戻れた。かよちんのおかげで、凛は凛に戻れたんだ……」

凛「だから今度は、凛の番……。凛がかよちんを、元に戻してあげるの」

花陽「穂乃果ちゃんの匂いをオカズに、ごはん食べたいぃ……」

凛「……でもね、正直、不安なんだ」

凛「凛はかよちんの匂いで元に戻れたけど、かよちんは凛の匂いで戻ってくれるのかな、って――」

凛「だって凛はかよちんに、酷いことをしちゃったから……もしかしたらかよちんは凛のこと、嫌いになっちゃったかもしれないよね」

凛「もしも凛の匂いで、かよちんが戻れなかったら……そういう、ことだよね」

凛「それを確かめるのが、凛は、怖くて……」

凛「う、ぅ……かよちん、ごめんね……本当に、ごめんなさい……っ!」

花陽「……」


花陽「……いい加減にしてくださいよ」

凛「……えっ?」
  


341: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/17(日) 21:23:25.58 ID:eKMQ+NpB.net

    
ガシィッ!

花陽「ごちゃごちゃうるさいんですよぉっ! さっきからぁっ!!」

凛「ひぅっ!」ビクッ

花陽「なにをずっと分けのわからないことを、言ってるんですかぁっ!? これ以上花陽を、怒らせないでくれますぅぅぅっ!!?」

凛「ご、ごめん、ごめんね……っ!」

花陽「ほんっとうに、バカなんですか、あなたはぁ……っ!?」グイッ

凛「うっ……っ!」


 
花陽「あなたの匂いでダメなら、私は一体誰の匂いで、元に戻れるって言うんですかぁっ!!!」



凛「……えっ?」

花陽「……」

花陽「あれ、私、何を言って……」

凛「かよちん……」

ダキッ

花陽「っ!? な、なにして」

凛「……あはは、そうだね。凛はやっぱり、バカだ……」

凛「だって前にかよちんは、凛に言ってくれたもんね。やっと、思い出したよ――」


『私は……昔からいつだって、凛ちゃんの、一番の親友の――』


凛「『かよちんだ』、って……言ってくれたよね」

花陽「……」

凛「かよちんは、自分が『凛の一番の親友』だって、当たり前みたいに、信じてくれてた」

凛「だったら凛も、信じなきゃ。かよちんの気持ちを……」

凛「凛も、『かよちんの一番の親友は、凛なんだ』、って………胸を張って、言えるように」
  


342: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/17(日) 21:28:38.33 ID:eKMQ+NpB.net

 
フワァ……


花陽「……そうだよ、凛ちゃん」

凛「……かよ、ちん?」

花陽「『不安だ』なんて、言わないで……。そんな悲しいこと、お願いだから言わないで」

花陽「私たちの友情を、疑わないで。私が凛ちゃんのことを、嫌いになるわけないでしょう?」

凛「……あはは」

凛「そうだね……不安になることなんて、一つもなかったよ。凛はかよちんのことが、大好きだけど……」

凛「かよちんだって、凛のことが、大好きなんだもんね」

花陽「……うん。そうやって、お互いがお互いを好きだって、信じ合えるから……『親友』なんだよ、凛ちゃん」

凛「かよちん……」

花陽「凛ちゃん……これからもずっと、私のことを好きでいてね」

凛「かよちんも、もっともっと、凛のこと好きになってよ」

花陽「私のこと、もう忘れないでね」

凛「かよちんの方こそね……」

花陽「……ふふっ」

凛「あははっ……」


花陽「ずっと親友同士でいようね、凛ちゃん……っ!」

凛「ずっとずっと、大好き同士でいよう、かよちんっ!」

ギュゥ……



凛「……そういえば、昔からずっと一緒だったけど、今日初めて知ったよ」

花陽「うん……?」


凛「かよちんって、怒ると物凄く怖いんだね……」

花陽「それは今すぐ、忘れて……」
  


344: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/17(日) 21:43:21.67 ID:eKMQ+NpB.net

  
――――――


にこ「うぅ~ん、にこ、どうしてこんなとこにいるんだろ……」

にこ「……あっ! ほのかおねえちゃんだぁ、わーいっ」タタタ

真姫「ちょ、ちょっと、にこちゃん?」

にこ「……? おねえちゃん、だぁれ?」 

真姫「お姉ちゃん……? ていうかにこちゃん、その喋り方……」

にこ「えっ? おねえちゃん、にこのおなまえ、どーしてしってるのぉ?」

真姫「……っ!?」

真姫(なによこれ……。『記憶障害』どころじゃない……『幼児退行』……っ!?)

真姫(今までのほのキチの中でも、特に重症だわ……っ! 早く元に戻してあげなきゃ……っ!)


『次にあんたがほのキチになるようなことがあったら、絶対、にこの匂いで戻ってもらうんだからっ!』


真姫「にこちゃんの、嘘つき。これじゃ立場が逆じゃない……」ボソッ

にこ「……??」

真姫「……待ってなさい、今、元に戻してあげるわ」

にこ「あっ。もしかしておねえちゃん、ほのかおねえちゃんのおともだち?」

真姫「えっ? まあ……」

にこ「そうなんだぁっ! じゃあにことも、おともだちだねっ!」

真姫「……え、えっと」

にこ「えへへっ」ニコッ

真姫「――っ!!////」ズギュン

にこ「へへー。わーい、おともだちがふえたぁーっ!」ピョンピョン

真姫「……」



真姫(……あれ。なんか別に、このままでもよくない?)
   


346: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/17(日) 21:53:12.40 ID:eKMQ+NpB.net

  
真姫(――っていやいや、ダメよっ! 何考えてるのよ、私っ!)

真姫(にこちゃんを元に戻すのが、私の役目なんだから……っ! 負けちゃだめよ、私っ!)

にこ「おねえちゃんの、おなまえは?」

真姫「ま、真姫よ……」

にこ「まき……? まきおねえちゃんっ! よろしくね、まきおねえちゃんっ!」ニコッ

真姫「うぐっ……///」

真姫(くっ、元々の幼い見た目と相まって、殺人的に可愛い……っ! ある意味、最強のほのキチだわ……っ!)

にこ「ねえねえ、まきおねえちゃんっ!」

真姫「な、なに?」

にこ「にこね、ほのかおねえちゃんのにおい、くんくんしたいのぉっ! ほのかおねえちゃん、すっごくいいにおいなんだよぉっ!」

真姫「……そう」

真姫(こういうとこはちゃんと、ほのキチなのね……)
   


347: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/17(日) 21:55:30.50 ID:eKMQ+NpB.net

  
にこ「……あれぇ?」

真姫「……?」

にこ「ほのかおねえちゃん、すっごくかわいいおようふくきてるーっ! なんだか、アイドルみたいっ!」

真姫「あぁ……。あの子、アイドルよ」

にこ「ええっ!? ほのかおねえちゃんって、アイドルだったのっ!? すごぉいっ!」

真姫「……」

真姫「ち、ちなみに私も、アイドルよ」

にこ「ええーっ!? ほんとっ!? すごいすごいすごぉいっ!!」キラキラ

真姫(やばい、どんどん戻したくなくなる……////)

にこ「うわぁー……。すごいなぁ……っ!」

にこ「に、にこもねっ、アイドルになりたいのっ! にこ、アイドルになるのが、ゆめなんだぁっ!」

真姫「……あら、そうなの?」

にこ「うん……っ! いつもテレビでみてて、かわいくてきらきらしてて、すてきだなぁ、って……っ! にこもいつかあんなふうに、なりたいなぁってっ!」

真姫「ふふっ、そう……」

にこ「……」

真姫「……どうしたの?」

にこ「……でもね。にこ、アイドルにはなれないんだ……」
  


348: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/17(日) 21:59:25.62 ID:eKMQ+NpB.net

  
にこ「クラスのおとこのこがね、にこがアイドルなんかに、なれるわけないって……」

真姫「……えっ?」

にこ「アイドルになるのって、すっごくむずかしくて、すっごくたいへんなんだって……にこなんかがいくらがんばっても、なれるわけないって」

にこ「なきむしのにこなんかじゃ、むりだってぇ……うっ、ぅ……」ポロッポロッ

真姫「……」

真姫(……泣き虫、ね。少なくとも私の知ってるにこちゃんは、滅多にこんな風に泣いたりしないわよ)


真姫「にこちゃんは、難しくて大変なのは、嫌?」

にこ「うっ……」グスッ

フルフル

真姫「……」

にこ「アイドルになるためだったら、ぜんぜんいやじゃない……」

真姫「……ふふっ、そう」

ダキッ

にこ「……おねえちゃん?」

真姫「なら周りの言うことなんて、気にしなくていいわ。あなたはあなたの道を行けばいい……自分の夢に向かってまっすぐ、進みなさい」

にこ「まっすぐ……」

真姫「確かにアイドルは難しくて、大変だわ。本気で目指すなら……きっとこれからあなたには、辛いことがたくさん待ってると思う」

真姫「時には周りに誰もいなくなって、一人になる時もあるかもしれない。寂しい思いをすることもあるかもしれない」

真姫「それでも、絶対に諦めないで。辛い時も泣きたい時も、諦めずに夢を追い続けて。そしたらきっと、いつか……」

真姫「あなたのことを認めてくれる『仲間』が、迎えに来てくれるはずだから」
   


349: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/17(日) 22:01:41.12 ID:eKMQ+NpB.net

  
にこ「……??」

真姫「……にこちゃん。いつまでも、アイドルへの情熱を忘れないでね」

真姫「あなたの努力は必ず、報われるから……『まきおねえちゃん』が、保証してあげる」

にこ「……」

にこ「……えへへっ、わかった」

にこ「にこ、がんばる……っ! キラキラしたアイドルになれるように、ずっとずっと、がんばるっ!」

真姫「ふふっ。その意気よ、にこちゃん……」

にこ「グスッ、えへへ……」

真姫「……そうね。じゃあ先輩アイドルとして、これからアイドルを目指すにこちゃんに一つ、アドバイス」

にこ「へっ……?」

真姫「『キャラ作り』とか、してみるといいらしいわよ」

にこ「きゃらづくり……?」

真姫「アイドルにとって一番大切なことは、『キャラ作り』なんだって。まあ正直、意味わかんないけど……」

真姫「……『私の尊敬してる人』がね、そう言ってたの。だから、試してみる価値はあると思うわよ」

にこ「きゃら、づくり……」

にこ「……じゃあにこは、みんなにえがおをとどけられるような、まほうつかいになるっ!」

真姫「……魔法使い?」

にこ「うんっ! このまえおとうさんに、おそわったんだ……っ! みんなをえがおにする、まほうっ!」

真姫「……ふふっ、素敵じゃない。私にも、教えてくれる?」

にこ「うん、いいよっ! えっとね、こうやるの……っ!」



にこ「にっこにっこにー……っ!」
   


351: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/17(日) 22:08:50.93 ID:eKMQ+NpB.net

 
フワァ……


にこ「……」

真姫「……」



真姫「……にこちゃん?」

にこ「のわぁっ!? ち、近いわねっ! 離れなさいよっ!」ドンッ

真姫「うわっ! ちょ、なにすんのよっ!?」

にこ「あー、ビックリした。もー、やめてよね。いくらにこが可愛いからって、ちょっと近づきすぎにこ」

真姫「な、何よその言いぐさっ! こっちはさっきまでにこちゃんが子供みたいになっちゃって、大変だったのにっ!」

にこ「はぁ? なによそれ……」

真姫「私のこと、『まきおねえちゃん』なんて呼んじゃってたくせにっ! ほんとに、かわ……き、きもちわるかったわっ!」

にこ「はあぁぁっ!!? 嘘つきなさいよっ! 私がそんなこと言うわけないじゃないっ!///」

真姫「言ってたの。とにかく私に、感謝してよね。にこちゃんは私の匂いで、元に戻れたんだから」クルクル

にこ「じょ、冗談じゃないわっ!! なんであんたなんかに感謝しなきゃいけないのよっ!」

真姫「なんですってっ!?」

にこ「あ、あっちにことりとかいるじゃないっ! 別にことりの匂いでもよかったし、全然っ!!」

真姫「なに言ってんのよっ! にこちゃんは私の匂いじゃなきゃ絶対、戻れなかったわっ!!」

にこ「あー、わかったっ! 真姫ちゃんってばぁ、そんなこと言って、実はにこの匂いが嗅ぎたかっただけなんでしょーっ!?」

真姫「はぁーっ!? なにそれ、意味わかんないっ!!」

にこ「ぷぷっ、本当に真姫ちゃんは、変態にこーっ」

真姫「やっぱり戻さなきゃよかったっ!!」
       


368: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/24(日) 21:40:34.59 ID:m1GYnAsA.net

 
――――――

……


穂乃果「……凛ちゃん、真姫ちゃん、花陽ちゃん、にこちゃん」

凛「あっ、穂乃果ちゃん……」

真姫「……穂乃果」

穂乃果「よかった……みんな、元に戻れたんだね」

穂乃果「みんな……本当に、ごめんなさい……っ! 私、わたし――」

真姫「待った」グッ

穂乃果「むぐっ!?」

真姫「そういうのは、全員揃ってからでいいわ。いちいち湿っぽくなられても、面倒だし」

穂乃果「ぅ……」

にこ「とりあえず、話は聞いたわよ。生徒がみんな、ほのキチになっちゃったのよね?」

花陽「それで、みんなを元に戻す方法が、ライブをすることだと……」

穂乃果「……うん」

にこ「……無茶苦茶ね」

ことり「で、でも、他に方法はまだ、見つかってなくて……」

海未「可能性が少しでもあるのなら、やるしかないんです。それで、穂乃果……」

穂乃果「うん……。これから、グラウンドに出ようと思うの」

凛「グラウンド……?」
 


370: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/24(日) 21:41:56.39 ID:m1GYnAsA.net

    
穂乃果「ここじゃちょっと狭いし、グラウンドに生徒のみんなを集めるの。グラウンドでライブを、しよう」

真姫「……ふぅん」

穂乃果「……協力、してくれるかな」

真姫「衣装と音源は用意してあるのね?」

穂乃果「えっ、うん……」

にこ「じゃ、着替えにいくわよ」

花陽「急ぎましょうっ!」

凛「よーし、ライブだにゃーっ!」

タッタッタッ……


穂乃果「あっ……」

ことり「ふふっ。みんな、全然迷いがなかったね」

海未「ええ。穂乃果の決断を、心から信じているからこそでしょう」

穂乃果「みんな……」


「海未ちゃーんっ!」


穂乃果「……あれ、雪穂?」

海未「……私を呼んでいるようですね。ちょっと行ってきます」
  


371: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/24(日) 21:55:47.68 ID:m1GYnAsA.net

 
海未「どうしました、雪穂?」

雪穂「えっと……海未ちゃんに、渡しそびれてた物があって」

海未「……? なんです?」

雪穂「これ」スッ

海未「ハンカチ……?」

雪穂「一応役に立つかなと思って、ここに来る前に借りといたんだ」

海未「……なるほど、そういうことですか。ありがとうございます、雪穂」

雪穂「私の役目はこれで終わりかな。あとはμ'sのみんなに、任せるね」

海未「あなたには感謝しかありません……。あなたがいなければ今ごろ、どうなっていたか……」

雪穂「あはは。海未ちゃんたちの役に少しでも立てたなら、私も嬉しいよ」

海未「雪穂……」

雪穂「私の方こそ、ありがとうね、海未ちゃん」

海未「……えっ?」

雪穂「私のことを守ってくれて……私の手を引いてくれて、ありがとう」

海未「そ、そんな、お礼を言うのは、こちらの方で……」

雪穂「ううん、海未ちゃんがそうやって勇気をくれたおかげで、私もほのキチに立ち向かうことができたよ」

雪穂「海未ちゃんのおかげで私、なんか変われた気がする。だから、ありがとうっ」

海未「……」
 


372: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/24(日) 22:02:31.44 ID:m1GYnAsA.net

    
海未「……その、雪穂って私のこと、嫌ってます……よね?」

雪穂「えっ……なんで?」

海未「だ、だって、前に私、あなたにとても酷いことをして……」

雪穂「……ああ、あの時のこと、まだ気にしてたんだ」

雪穂「別に、もういいよ。やっぱり私、海未ちゃんのこと嫌いになんてなれそうもないし」

海未「ゆ、雪穂ぉ……」ウルウル

雪穂「な、なんでウルウルしてんのさ……」

海未「ごめんなさい、嬉しくて……。よかった……よかったです……」グスッ

雪穂「……」

雪穂(どんなに苦しい時でも涙一つ見せなかったのに、こんなことであっさり泣くんだ……)

雪穂「……ふふっ」

海未「雪穂……?」

雪穂「私ね……『もうダメだ』ってなって、泣いちゃったときに……海未ちゃんに、ぎゅってされて、すごく安心したの」

雪穂「だから、これからもしお姉ちゃんが泣いちゃうようなことがあったら、海未ちゃんがぎゅってして、安心させてあげてね」

海未「……」

雪穂「……海未ちゃん?」

海未「いや、雪穂って意外と『抱きしめる』ことを、『ぎゅっ』て言ったりするんですね」

雪穂「っ!! べっ、別にいいじゃんっ! もぉーっ!!////」

海未「……ふふっ。穂乃果のことは、任せてください。私が必ず、守りますから」

雪穂「……うん」

雪穂「頑張ってね、海未ちゃん……。みんなを必ず元に戻して……音ノ木坂を、救ってっ!」

海未「はい……っ!」
  


373: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/24(日) 22:17:39.53 ID:m1GYnAsA.net

   
――――――


ことり「ふぅ。ひとまず四人とも元に戻ってくれて、良かったね」

穂乃果「……ことりちゃん」

ことり「うん?」

穂乃果「私ね、ことりちゃんに、もう一つ謝らなきゃいけないことがあるの……」

ことり「……えっ?」

穂乃果「『あのままでもよかった』なんて言って、ごめんね、ことりちゃん」

ことり「……」

穂乃果「せっかくことりちゃんが頑張って、海未ちゃんを元に戻してくれたのに……それを台無しにするようなこと言って、ごめん」

穂乃果「私、自信がなかったんだ……。ほのキチの海未ちゃんは私のことを好きって言ってくれたけど、元の海未ちゃんは私のことをどう思ってるのか、分からなかったから」

穂乃果「だからスイッチを使ってまた、海未ちゃんにほのキチになってもらおうとしたの……。また私に『好き』って、言ってほしかったから」

穂乃果「……でもそんなの、『ズル』だよね。そんなの、無理やり好きって言わせてるのと、変わらないもん」

ことり「……穂乃果ちゃん」

穂乃果「『あのままでもよかった』なんて、そんなわけない。だって私はやっぱり、あの時の海未ちゃんじゃなくて、いつもの海未ちゃんを、好きになったんだから」

ことり「……」

穂乃果「……だけどもう、好きって言って貰うのを待ってるだけじゃ、ダメなんだ。私は……」

穂乃果「私は『ことりちゃんみたいに』、勇気を出してちゃんと、海未ちゃんに想いを伝えたい」

ことり「っ!! ほ、穂乃果ちゃん……っ!?」


穂乃果「私……これが全部終わったら、海未ちゃんに告白するんだ」
   


374: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/24(日) 22:20:24.95 ID:m1GYnAsA.net

    
ことり「……」

穂乃果「だから……友達同士だけど、戦おう、ことりちゃん」

穂乃果「私、絶対に負けないから。ことりちゃんに、絶対、勝って見せるから――」

穂乃果「海未ちゃんは……海未ちゃんは渡さないよ、ことりちゃんっ!」ビシッ

ことり「……あはは」


ことり(……間違ってなんか、なかった)

ことり(ことりは失敗なんて、してなかったんだ。だって穂乃果ちゃんは、今、こうして……)

ことり(勇気を出して……私と戦うって、言ってくれた。あぁ、なんだろう……)

ことり(なんだろう、すごく……嬉しい……)

ことり(ことりの、らしくない行動は……。やっと、報われたんだ――)


ことり「……でもね、穂乃果ちゃん」

穂乃果「えっ?」

ことり「私さっき海未ちゃんに、振られちゃったんだ……」

穂乃果「……」


穂乃果「えええぇええぇっ!!?」

ことり「ごめんね、せっかく穂乃果ちゃん、決心してくれたのに……」

穂乃果「えっ、いや、あの、そんなことより……っ」

ことり「……あっ、私は大丈夫だよ。気持ちの整理はもう、できてるから」

穂乃果「そ、そう、なの……? でも……」

ことり「むしろ、海未ちゃんがちゃんと振ってくれたおかげで、今はとってもスッキリしてるんだ」

穂乃果「……そう、なんだ」

ことり「うんっ」
  


375: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/24(日) 22:23:39.88 ID:m1GYnAsA.net

    
穂乃果「あの……ご、ごめんっ、こういう時、なんて言ったらいいか、分からなくて……っ!」

ことり「うん、私も逆の立場だったら、何も言えないと思う……」

穂乃果「でも、ことりちゃんみたいな素敵な女の子の告白を、断るなんて……」

穂乃果「う、海未ちゃん、やっぱり女の子同士はダメだって、思ってるんじゃ……」

ことり(……ふふっ、そういう風に考えるんだ。穂乃果ちゃんも、大概だなぁ)

ことり(せっかくつけた決心が、揺らいじゃったかな……。でも、そうだな。今なら――)


ことり「海未ちゃんは、『既に心に決めた人がいる』って、言ってたんだ」

穂乃果「えっ……?」

ことり「『その人』はもしかしたら、穂乃果ちゃんのことかもしれないから……だから諦めるのはまだ早いよ」

穂乃果「……」

ことり「ねえ、穂乃果ちゃん――」


ことり(私はもう、穂乃果ちゃんの『敵』じゃなくなっちゃったから……私たちはもう、敵同士じゃないから)

ことり(だから今なら私は、親友として真正面から、穂乃果ちゃんを応援してあげられる――)


ことり「私は海未ちゃんに告白したよ。今度は、穂乃果ちゃんの番。だから勇気を出して、頑張ってっ」


穂乃果「……っ!!」

穂乃果「う、うん……っ! 私、やるよ……っ!」

穂乃果「ことりちゃんが応援してくれるなら、私、できそうだよ……っ! 頑張って、告白してみるっ!」

ことり「……ふふっ」

ことり(ずいぶん、遠回りしちゃったな……。恋愛のことになると私たち、本当にダメダメだ……)

ことり(……でも、ちょっとくらい不器用なのは、仕方ないよね。私たち三人とも、これが初めての恋だったんだから――)
 


377: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/24(日) 22:30:21.04 ID:m1GYnAsA.net

  
――――――


にこ「……ちょっと、雪穂ちゃんじゃないの」

花陽「あれ……。ど、どうしてここに……?」

雪穂「あっ、みなさん……。えっと私、海未ちゃんに協力を頼まれて……」

真姫「……そういえば、あなたはスメルが効かないんだったかしら」

凛「で、でも雪穂ちゃんは何も、関係ないにゃ。なのに……」

雪穂「あっ、いえ、私にも責任はあるんですっ! 実はお姉ちゃんにスイッチを渡したのは、私で……」

にこ「だけど元々は私たちの問題だし……私たちの中だけで、解決しなきゃいけなかったのに」

真姫「そうよね……。まさか中学生のあなたまで巻き込んでしまうことになるなんて……」

花陽「ごめんね、雪穂ちゃん……」 

雪穂「うっ、えっと……」

雪穂「あっ、そうだっ! みなさんはこれから、ライブをされるんですよねっ?」

真姫「……? そうだけど……」

雪穂「ふふっ。だったらむしろ、ここに来れて良かったですよっ!」

にこ「良かった……?」

雪穂「はい。学校サボってμ'sのライブ見れるなんて、最高ですっ」ニコッ

にこ「っ!!?」

真姫「なっ……!?」

凛「そんなっ!!」

花陽「あ、あぁ……」ジーン



((雪穂ちゃんって、いい子だ……っ!))

  


387: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/25(月) 20:39:18.64 ID:3C1/rFDE.net

 
――――――


凛「準備できたにゃー」

花陽「えっと……グラウンドに出るんだよね?」

にこ「ていうかそもそも、どうやってグラウンドに全校生徒を集めるのよ?」

穂乃果「それは大丈夫だよ。えっと、マイクをオンにして……」カチッ


穂乃果「みんなーっ! 穂乃果はこれから、グラウンドにいくからーっ! みんなもおいでよーっ!!」


穂乃果「……これで、よし」カチッ

海未「よしじゃありませんよっ! あなた今、自分がどれだけ危険なことをしたか、分かってるんですかっ!?」

穂乃果「えっ、でもこれでみんな、グラウンドに出てきてくれると思うよ?」

海未「そ、そうかもしれませんが、もう少し自分の身を案じてくださいよ……っ!」

真姫「穂乃果って、たまに平気で大胆なことするわよね……。それで、エリーと希は?」

ことり「二人とも、結局ここには来てくれなかったね……。やっぱり学校を探し回るしか、ないのかなぁ?」

穂乃果「うん……。でも二人を見つけ出すにはやっぱり、μ'sの歌が必要だと思うの」

穂乃果「だから、歌いながら探そうよっ」

にこ「……まーた分けわかんないこと言い出し始めたわね」

凛「それって、学校中、歩き回りながら歌うってこと?」

穂乃果「うんっ! だってほら、前にも学校の廊下とか階段で、動き回りながら、歌った曲あるでしょ?」

花陽「……あっ」

にこ「いや、だからって」

海未「ふふっ、もう無駄ですよ。こうなった穂乃果は、止められません」

にこ「……まあ、知ってるけど」


バンッ!

穂乃果「さぁ、行こうっ! 二人を探しに……っ!」
    


388: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/25(月) 20:43:21.52 ID:3C1/rFDE.net

  
♪~これからのSomeday / 高坂穂乃果、南ことり、園田海未、星空凛、西木野真姫、小泉花陽、矢澤にこ



「「Someday いつの日か――叶うよ 願いが――っ!」」



「えっ、この歌……っ!?」

「あ、ほ、穂乃果ちゃんっ!?」

「う、うぅ……っ!」ジリ


海未(っ! ほのキチたちです……。し、しかし――)

ことり(穂乃果ちゃんを、襲おうとしない……?)


「この歌は……う、ぅ……」

「みゅーずの……私の大好きな、μ'sの……っ!」


花陽(私たちの歌を聴いて、何か変化が……?)

凛(もしかして、元に戻ってくれるの……っ!?)


「はぁ、はぁ、うぅ、だめぇ……っ!」

「うぐっ、ぅぅ……っ!」


にこ(っ! まずい……っ!)

真姫(歌が終わる……っ!)



「「楽しみはまだまだ まだまだこれから――っ!」」



「……」
    


389: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/25(月) 20:51:14.57 ID:3C1/rFDE.net

 
穂乃果「はぁ、はぁ……」


「……うへへ」

「穂乃果ちゃん……へへ、穂乃果ちゃんだぁ」

「やっと見つけた……高坂さん……あはははは」


穂乃果「っ!!」

海未「だ、ダメですっ! やはり……っ」

ことり「みんな、走ってっ!」

凛「う、わわっ」

タッタッタッ……


にこ「くっ、失敗ね……っ!」

花陽「でもみんな、反応してくれてたよねっ!?」

真姫「やっぱり、ただ歌を聴かせるだけじゃダメなのよっ! ほのキチを元に戻すためには、匂いが必要……っ!」

穂乃果「はぁ、はぁ……っ!」ギリッ

海未「穂乃果、大丈夫ですか……っ!?」

穂乃果「さ、三年生……っ!」

海未「えっ……!?」

穂乃果「三年生の、教室……っ! 絵里ちゃんたちの、クラス……っ!! そこに、もしかしたら……っ!」

海未「っ! わ、わかりました……っ!」


タッタッタッ……
    


390: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/25(月) 21:11:15.70 ID:3C1/rFDE.net

 
――――――


三年生の教室(絵里、希のクラス)


ガラッ

穂乃果「はぁ、はぁ……」

海未「……あっ」




海未「え、絵里……」

絵里「……」

ことり「絵里ちゃん……?」

絵里「……あら」

絵里「どうしたのかしら、みんな。そんなに血相抱えて」

凛「ど、どうしたの、って……」

花陽「……あれ? 絵里ちゃん、一人……?」

絵里「他のほのキチたちならみんな、グラウンドに出て行ったわよ」

にこ「……そう。で、あんたはここで、なにしてるわけ?」

絵里「別に何も? 部室で制服に着替えて、教室に戻ってきて、とりあえず授業が再開されるまで退屈だから、自分の席でボーっと、窓の外を眺めてただけ」

真姫(……妙に落ち着いてるわね。これがほのキチになった、エリー……?)

穂乃果「……絵里ちゃん」

絵里「なにかしら?」

穂乃果「私たちのこと、覚えてるの……?」

海未「っ! そ、そういえば……」

絵里「ふふっ、なに言ってるのよ。忘れるわけないじゃない」

穂乃果「……歌、聴いてくれてたんだよね? どうして講堂に、来てくれなかったの?」

絵里「どうしてって、決まってるでしょう?」

穂乃果「えっ……?」


絵里「アイドルなんてくだらないものに、もう興味がなくなったからよ」
   


391: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/25(月) 21:20:27.50 ID:3C1/rFDE.net

    
ことり「っ!! えっ……」

凛「え、絵里ちゃん……? あのね、これからみんなでライブをして、ほのキチのみんなを元に戻すんだけど……」

花陽「えっと、絵里ちゃんも、一緒に来てくれるよね……?」

絵里「……ごめんなさいね。私、もうアイドルなんてやらないから」

にこ「ちょ、ちょっと、冗談やめてよ……」

絵里「冗談なんかじゃないわ。私はμ'sを辞めるし、スクールアイドルも辞める」

海未「なっ……え、絵里っ! どうしてそんなこと……っ!」

絵里「バレエ、また始めることにしたの」

海未「はい……?」

絵里「さっき軽く試してみたんだけど、自分でも驚くくらいの動きができてね……今の実力ならきっと、最前線でもすぐに通用するわ」

絵里「だからプロのバレリーナを目指して、これから頑張るつもり」

真姫「……っ! でもそれは、ほのスメルによる覚醒のおかげでしょ……?」

絵里「そうよ。だから穂乃果には、感謝しなきゃね」チラッ

穂乃果「えっ……?」

絵里「ねえ、穂乃果……」ジッ

穂乃果「な、なに……?」

絵里「……私にはこれからも、あなたが必要なの。あなたの匂いを嗅ぎ続けることが、私のコンディションを保つ唯一の方法なのだから」

絵里「いずれ私は、世界に向けて羽ばたくことになる……。その時にあなたにも、傍にいてほしいのよ」

穂乃果「……」

絵里「だから……穂乃果」



絵里「私と結婚を前提に、お付き合いしてくれないかしら」
   


392: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/25(月) 21:25:47.82 ID:3C1/rFDE.net

  
にこ「ぶっ!!」

海未「はいっ!!?」

凛「えっ!? えっ!?」

花陽「えっ、えぇ……っ!///」

ことり「え、えええ、絵里ちゃん……?///」

真姫「ば、バカじゃないの……っ!? 結婚とか……っ!」

絵里「あら、知らないの? ずっと一緒にいて欲しい人とは、結婚するのが普通なのよ?」

海未「……っ!?」

海未(な、なんですかこの展開は……っ!? なんで絵里が穂乃果に、告白してるんですかっ!?)

海未(ちょっと待ってください、美人で頭もよくて運動神経抜群でスタイルも良くて良い匂いな絵里から、告白なんてされたら……っ!)

海未(されたら、穂乃果は――)チラッ

穂乃果「えっ、あ、うぅ……///」

海未(ですよねっ!!)

海未「ひ、卑怯ですよ、絵里っ!!」

絵里「……? なにがよ?」

海未「あなたみたいな人から交際を求められて、断る人なんているわけないじゃないですかっ! それを知ってて、あなたは……っ!」

絵里「?? 言ってる意味が分からないのだけど……」

海未「天然ですかっ! 余計に性質が悪いっ!」

海未(ああぁあ、なんてことでしょう、穂乃果が絵里に奪われてしまいます……っ!)

海未(……こうなったら一か八か、今ここで私も――)
   


394: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/25(月) 21:30:28.89 ID:3C1/rFDE.net

   
穂乃果「ごめんなさい」

絵里「……」

海未「……えっ?」

穂乃果「気持ちは嬉しいけど……。絵里ちゃんとはお付き合い、できないや」

絵里「……どうして?」

穂乃果「私、好きな人がいるの。だから……ごめん」

ことり「穂乃果ちゃん……」

絵里「……あなたがいれば、私は世界一のバレリーナになれるの。賞金もたくさん貰えるし、あなたに何不自由ない生活を送らせてあげることができる」

絵里「絶対にその人よりも、あなたを幸せにできる自信があるわ。それでも?」

穂乃果「うん」コクン

絵里「……そう」

海未「穂乃果……」

ことり「……ふふっ。穂乃果ちゃんは『勘違い』、しなかったみたいだね」ボソボソ

海未「……そのようですね。はは……」

凛(穂乃果ちゃんって、好きな人とかいたんだにゃ……)

花陽(い、意外かも……)

絵里「……」

穂乃果「絵里ちゃん。アイドル、辞めないでよ」

絵里「……えっ?」

穂乃果「お付き合いは、できないけど……アイドルとしての絵里ちゃんは、私、大好きなの……尊敬してるの」

穂乃果「だから、お願い。一緒にアイドル、続けよう?」

絵里「……」
  


396: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/25(月) 21:41:36.32 ID:3C1/rFDE.net

  
絵里「嫌よ」

穂乃果「っ!! そんな……どうして、絵里ちゃんっ!?」

絵里「言ったでしょう? アイドルなんてくだらないことはもう、やめたの。あんなレベルの低い世界に私は、戻るつもりはないわ」

にこ「っ! いい加減にしなさいよ、あんた……っ!」ガシッ

絵里「……っ」

にこ「今のあんたは、いつもの絵里じゃない……。そんなことくらいは、分かってるけど……っ!」

にこ「それでもアイドルを目の前で馬鹿にされて、冷静でいられる私じゃないわっ!」

真姫「……これ以上話をしていても、時間の無駄だわ。早く元に戻しちゃいましょう」

絵里「私を、戻すの?」

真姫「だから、そう言ってるでしょ」

絵里「そう……。あなたたちは私から、『夢』を奪おうと言うのね」

真姫「っ! なっ……そ、それは」

絵里「あなたたちのしようとしてることは、そういうことでしょう? せっかく私はほのキチになったことで、もう一度バレエの道を志すことができたのに……」

真姫「くっ……!」

穂乃果「……」
  


397: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/25(月) 21:51:01.39 ID:3C1/rFDE.net

    
穂乃果「……本当に、アイドルやらないの?」

絵里「そうね」

穂乃果「じゃあ絵里ちゃんは、どうしてここにいるの?」

絵里「……それは私に、存在意義を問うているの? アイドルをやることが、私の存在意義だとでも?」

穂乃果「……??」

海未「なっ! 今度は難しい話で、穂乃果を混乱させようという魂胆ですかっ! なんて卑怯な……っ!」

絵里「いや、話を振ってきたのはそっちでしょう……」

穂乃果「あの、よく分かんないけど、そうじゃなくて……どうして絵里ちゃんは、この教室にいてくれたのかなって」

絵里「……どうして、って。私が自分の教室にいることが、そんなにおかしい?」

穂乃果「おかしくはないよ。でも、ここは……」

穂乃果「絵里ちゃんの教室、だけど……私たちが初めて、絵里ちゃんをμ'sに誘った場所でもあるんだ」

凛「っ! た、確かに……」

穂乃果「本当は絵里ちゃんは、もう一度ここで私たちに、『μ'sに誘ってほしくて』……。だからここで私たちを待ってたんじゃないの?」

絵里「……」

穂乃果「だって絵里ちゃんは、全部覚えてるんでしょう……っ? 私たちのことも……μ'sのことも――」

穂乃果「だったら、今までアイドル活動を楽しんでた『自分』のことも、覚えてるはずだよね……っ!?」

絵里「……っ!」

穂乃果「本当は……『アイドルをやりたい』って気持ちも、まだ残ってるんじゃないのっ!? 絵里ちゃんっ!!」
   


398: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/25(月) 21:53:47.80 ID:3C1/rFDE.net

  
海未「絵里……っ!?」

絵里「……っ。お、覚えてるわよ……確かに、全部……」

穂乃果「だったら……っ!」

絵里「でも、無理なのよ……もう、無理なのよっ!」

花陽「無理……?」

絵里「確かに前の私は、アイドル活動を楽しんでたかもしれない……だけどっ!」

絵里「急にこんな、すごい力が手に入っちゃったら……。今までやってきたことが、どうしても、お遊びにしか思えなくなっちゃったのよ……っ!」

にこ「……お遊び、ですって?」

絵里「だって、そうでしょうっ!? スクールアイドルなんて、プロの世界から見たら、ただの学生のお遊びじゃないっ!」

にこ「絵里っ!! それ以上言ったら――」

絵里「お遊びよ……。なによ、デスメタルのコスプレしたりとか、モノマネ大会したりとか……本当に、バカみたいっ!」

にこ「っ!! ぐっ……」

真姫(……まあ、あれは確かにお遊びだったし、本当にバカみたいだったから、何も言い返せないわね)

凛(流石のにこちゃんも、黙ったにゃ……)

絵里「わ、分からない……なぜ私はあんなことを、していたの……。なぜ私はらしくもなく、あんなに、はしゃいでいたの……?」

絵里「どうして……っ!? どうして『アイドル』は私の中で、こんなにも『楽しかった思い出』として、残ってるの……っ!?」

ことり「……絵里ちゃん?」

絵里「私は……私は自分の気持ちがもう、分からないのよっ!」

絵里「ねえ、教えてよ……っ! アイドルって、そんなに素晴らしいものだったっけ……っ!?」

海未(……なるほど、そういうことですか)

海未(元の自分の記憶があるからこそ、今の自分の気持ちとの矛盾に、絵里は悩んでいた……。だから彼女はここで、私たちを待っていたんですね)

海未(『初めてμ'sに誘われた場所』で……私たちにもう一度、『アイドルの素晴らしさ』を教えてもらうために――)
   


399: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/25(月) 21:56:32.18 ID:3C1/rFDE.net

    
海未「……少なくとも」スッ

絵里「……っ!? これは……」

海未「少なくとも、あなたがアイドルをやっている姿を見て、喜ぶ人はたくさんいるはずですよ」

海未「例えば、そう……あなたの、家族とか」

絵里「……」


『えっと……海未ちゃんに、渡しそびれてた物があって』

『一応役に立つかなと思って、ここに来る前に借りといたんだ』


海未(雪穂……本当に、ありがとうございます)

海未「その、『亜里沙のハンカチ』で……元に戻ってくれませんか、絵里」

絵里「……亜里沙」

海未「彼女、明日のラブライブを、すごく楽しみにしていたそうですね」

絵里「ええ、そうね……。もう何日も前から、その話ばっかり」

海未「『自分の大切な人の喜ぶ顔が、見られる』。アイドルの素晴らしさを説明するのに、これ以上の何かが要りますか?」

絵里「……明日のラブライブのために、将来の夢を諦めろと言うの?」

海未「それは、あなた次第です。どちらにしろハンカチ程度の匂いで戻るには、あなたの意志がどうしても必要不可欠なんですから」

絵里「自分で選べってわけね……。はぁ……」

絵里「……」


絵里「……いいわよ」

絵里「やってやるわよ……。本当に、この力全てを賭ける価値が、あるって言うのなら……っ!」

絵里「エリーチカは……っ! もう一度アイドルに、なってやるわよっ!!」


スゥゥゥ……
    


400: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/25(月) 22:07:41.24 ID:3C1/rFDE.net

   
海未「……絵里」

穂乃果「絵里ちゃん……だ、大丈夫?」

絵里「……」


絵里「……にこ」クルッ

にこ「……へっ、私?」

ダキッ

にこ「わっ!?」

絵里「ごめんね、にこぉ……っ!」

にこ「はっ!? な、なにがよっ!」

絵里「『アイドルなんてくだらない』とか言って……わ、私、そんなこと思ってないからねっ!?」

にこ「あ、あぁ……分かってるわよ」

絵里「な、なんで私、あんなこと言ったのかしら……全然分からない……っ!」

絵里「穂乃果も、ごめんなさいっ! いきなり結婚とか言われて、困ったわよね……っ!」

穂乃果「えっ? あ、えっと……」

絵里「全く、後輩に対して私、何言ってるのかしらね。あは、ははは……」

絵里「あはは……ああぁあぁ、ばかばかばかわたしのばかぁっ! なにやってるのよぉ……っ!!////」


凛(……そういえばさっきの絵里ちゃん、なんか懐かしい感じがすると思ったら……)

花陽(冷たい雰囲気が、μ'sに入る前の絵里ちゃんに、そっくりだったんだ……)

ことり(うーん、でも、こうして見ると、やっぱり……)


絵里「ごめん、ごめんねぇ……」ムギュウ

にこ「は、離れなさいよーっ!」


((変わったなぁ、絵里ちゃん……))
   


401: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/25(月) 22:12:03.29 ID:3C1/rFDE.net

     
海未(……でもきっとそれが、彼女がアイドル活動を心から楽しんでいることの、何よりの証明ですね)

海未「とにかく、絵里も元に戻れたようで、良かったです」

絵里「なってみると、恐ろしいわね、ほのキチって……。あんなのが自分だなんて、信じられない……」

ことり「絵里ちゃん……その気持ち、すごく分かるよ」

にこ「にしても、うろたえ過ぎよ。涙目になってたじゃない」

凛「まあまあ、優しい絵里ちゃんに戻ってくれて、よかったにゃー」

真姫(『ほのキチ時の記憶がない組』は、幸せね……)

花陽「えっと、これで、あとは……」

海未「ええ……あと一人ですね」

ことり「希ちゃん……ここにもいないってことは、希ちゃんもグラウンドに出たのかな?」

真姫「かもね……それじゃ、私たちも」

穂乃果「待って」

真姫「えっ?」

穂乃果「……誰か、来る」

海未「……っ!」

ことり「えっ……!?」



スタ、スタ……




ガラッ!




「……わぁ。なんか声が聞こえると思ったら、やっぱり――」


 


希「こんなところにいたんだ、みんな。探したよぉ?」ニコッ
    


425: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/31(日) 22:04:17.05 ID:UVQeqQU3.net

     
――――――


希「よかったぁ、みんないてくれて。うぅー、怖かったよぉー……」

希「なんか、周りの人みんな、おかしくなっちゃったみたいで……でも、みんなは大丈夫そうだねっ! あははっ」

花陽「希ちゃん……?」

にこ「ちょっとあんた、何よその喋り方……気持ち悪いわね」

希「えーっ!? 私はいつもこんな喋り方だよぉーっ! 酷いよにこちゃんっ!」

にこ「に、にこちゃんっ!?」

海未「……こ、これも、『記憶障害』の症状でしょうか?」

真姫「いやでも、私たちのことは覚えてるみたいだし……」

穂乃果「の、希ちゃん? あの……」

希「……? あなた、だあれ?」

穂乃果「……えっ? 穂乃果だよ?」

希「えっ。穂乃果は、私だよ?」

穂乃果「ええっ?」

希「私、高坂穂乃果っていうの。あなたの、お名前は?」

穂乃果「えーっ!? 違うよっ! 穂乃果は私だよぉーっ!」

希「あなたも穂乃果っていうの? 同じ名前だなんて、偶然だねっ!」

穂乃果「違うってばぁっ! あなたは穂乃果じゃなくて、希ちゃんでしょうっ!?」

希「『のぞみ』……?? 違うよっ! だって私、穂乃果だもんっ!」

海未「……」

ことり「う、えっと……」

凛「なにこれ……?」
 


427: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/31(日) 22:16:08.41 ID:UVQeqQU3.net

  
穂乃果「穂乃果は、私だよっ!」

希「違うよ、私が穂乃果なのーっ!」

穂乃果「だから希ちゃんは、穂乃果じゃないよっ!」

希「のぞみってだれっ!? 私は、穂乃果だってばっ!」

穂乃果「うぅ、なんでぇ……?」

海未「ほ、穂乃果、とりあえずこちらに来てください」

穂乃果、希「「わかった……」」テクテク

海未「ああああぁ、そうじゃなくてですねっ!」

ことり「えっと、穂乃果ちゃん?」トントン

希「えっ?」

ことり「こっちでことりと、お話ししよっか」

希「うん、いいよぉー」テクテク

海未(ナイスです、ことりっ!)



海未「ことりがうまく彼女を引き離してくれました……とりあえず、作戦会議をしましょう」

花陽「穂乃果ちゃん、大丈夫……?」

穂乃果「うぅ……希ちゃん、どうしちゃったの……?」

真姫「……どうやら希は自分のことを、本気で『穂乃果』だと思い込んでるようね」

穂乃果「ええっ!?」

絵里「それがほのキチになった希の、症状なのね?」

真姫「ええ……。随分特殊なパターンだけどね」
   


428: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/31(日) 22:24:38.67 ID:UVQeqQU3.net

 
花陽「自分を穂乃果ちゃんだと、思い込んで……?」

にこ「……もうなんか、ほのスメル中毒とかじゃなくなってきてるじゃない」

真姫「そうね……今までとは明らかに違う。あれがきっとほのキチの、『最終形』なのよ」

海未「かつて自身を『ほのキチのなり損ない』と称していた彼女は、人一倍ほのキチに対する想いも強かった……」

海未「そんな彼女だったからこそ、ここまでのほのキチになってしまったのでしょう」

穂乃果「そういえば前にも希ちゃん、私の真似してたなぁ」

凛「でもあの時は遊びみたいな感じだったけど、今回はちょっと生々しすぎて、不気味だにゃ……」

真姫「……ちょっと想定外だわ。ここまでいくと、今まで通りの方法で戻せるのかどうかも……」

絵里「みんな」

海未「……絵里?」

絵里「私に、考えがあるのだけど――」



希「ねえねえことりちゃん、雪穂、見なかった?」

ことり「えっ、雪穂ちゃん?」

希「うん、さっき会ったんだけどね、はぐれちゃったんだー」

ことり「う、うーん、ごめん、分かんないかな」

希「そっかー。もぉ、しょうがないなぁ雪穂は。こういう抜けてるところは、やっぱり私の妹って感じだよねー。あははっ」

ことり「そ、そうだね……」ダラダラ

ことり(うぅ……っ! 希ちゃんと話してるのに、穂乃果ちゃんと話してるみたいだよぉ……っ!)

ことり(なんか変な汗出てきた……っ! ごめんみんな、これ以上は――)


ザッ

ことり「あっ……」

絵里「ありがとう、ことり。私が代わるわ」
  


429: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/31(日) 22:39:52.10 ID:UVQeqQU3.net

  
ことり「う、うん、お願い……」ササッ

絵里「……希」

希「あっ、絵里ちゃん――」

ダキッ

希「っ! え、絵里ちゃん? どうしたの……?」

絵里「……あなたに『絵里ちゃん』なんて呼ばれると、違和感がすごいわね」

希「えっ、なんで? 私いつも、絵里ちゃんのこと絵里ちゃんって……」

絵里「ごめんなさい」ギュッ

希「……絵里ちゃん?」

絵里「さっき体育館で、運動してきたばかりだから、その……ちょっと匂い、きついかも」

フワァ……

希「……」

希「えへへ……そんなことないよ。絵里ちゃん、すっごく良い匂いがする……」

絵里「……ありがとう、希」

希「どうして?」

絵里「えっ?」

希「どうしてみんな私のこと、『のぞみ』って言うの? 私は、穂乃果なのに……」

絵里「……そうよね。じゃあ、穂乃果」

絵里「『さっきの歌』、聴いてたわよね……? あなたは覚えてるかしら、あの歌を」

希「さっきの歌……覚えてるよ、もちろん。あれはμ'sがまだ、7人だった頃に、歌った曲で……」

絵里「そう、『7人だった頃』……じゃあ今は、μ'sのメンバーって、何人なのかしら?」

希「えっ、それは、もちろん……」

希「……」


希「……あれ?」

絵里「……」


430: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/31(日) 22:48:09.26 ID:UVQeqQU3.net

  
希「μ'sは……私とことりちゃんと海未ちゃんの、『3人』から始まって――」

希「花陽ちゃんと凛ちゃんと真姫ちゃんと、にこちゃんが入ってくれて、『7人』になって――」

希「それで絵里ちゃんが入ってくれて、『8人』に……μ'sは……」

ズキン

希「う、ぅ……?」

絵里「そう――『これからのSomeday』は、私が入る前の、μ'sが7人だった頃の歌……。あの歌って、AメロBメロで7人が、順番に一人ずつ歌っていくのよね」

絵里「海未、ことり、花陽、凛、真姫、にこ、穂乃果――7人が歌うことで、初めて完成する歌……私も大好きな歌だわ」

絵里「でも……おかしいわよね? あなたは今ここに来たばかりで、さっきの歌には、参加していなかったのだから」

希「……っ! あれ、でも……」

ギュッ

希「っ! 海未ちゃん……?」

海未「……Bメロの最後、穂乃果のパートに向かって……私たちは順番に、バトンを繋いでいく」

ことり「それで穂乃果ちゃんの掛け声で、あの歌はサビに入っていくんだよね」ギュッ

フワァ……

希「こ、ことりちゃん。どうしたの? 二人まで、私に抱きついて……」
   


431: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/31(日) 22:51:08.36 ID:UVQeqQU3.net

  
花陽「穂乃果ちゃんがいなきゃ、完成しない歌……。だけどさっきの歌に、あなたはいなかった」ギュッ

凛「それでも凛たちは、最後まで歌い切ったっ」ギュッ

フワァ……

希「花陽ちゃん……凛ちゃん?」

真姫「私たちのバトンを、受け取ってくれる人がいた……。じゃあそれは一体、誰だったのかしら?」ギュッ

にこ「そんなの、決まってるじゃない。穂乃果のパートなんだから……穂乃果以外、誰が歌うのよ」ギュッ

フワァ……

希「うっ……真姫ちゃん、にこちゃん……」

希「あ、あはは。みんなして、どうしたの……? 苦しいよ……」


ザッ


穂乃果「だいじょうぶー、かざらーずーにー♪ すーなーおなこーえーで――」

穂乃果「――わんつーすりーふぉー、みんなこっちですっ♪」

希「……」

穂乃果「……えいっ」ギュッ

フワァ……

希「……っ!! あっ……」





希「ほ、ほのか……」

希「穂乃果、ちゃん……?」
   


432: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/31(日) 22:56:44.59 ID:UVQeqQU3.net

  
穂乃果「うんっ、穂乃果だよっ!」

希「あ、れ……?」

海未「思い出しましたか? 彼女が本物の穂乃果だということを」

ことり「あなたは穂乃果ちゃんじゃ、ないんだよ……」

希「……じゃあ、わたしはいったい、だれなの……?」

希「わたしは、μ'sのメンバーじゃ、ないの……っ!?」

花陽「……希ちゃんは、希ちゃんだよ。いつも温かくて、私たちの大好きな……希ちゃん」

凛「μ'sって名前を付けてくれたのも、希ちゃんだったよね……っ!」

希「のぞ……み……」

真姫「悪戯好きで、飄々としてるとこもあるけど……実は結構、真剣にμ'sのことを考えてくれてたりするのよね」

にこ「普段はそういうとこ見せないけど、意外と部屋に、μ'sの写真とか飾ってたりしてねー?」

希「っ! う、ぁ……」

穂乃果「希ちゃん……っ! 私たち『8人』の匂いで、思い出して……っ!」

穂乃果「希ちゃんの中にある、μ'sの思い出を……っ! 私たちと一緒に、歩んできた日々をっ!」

希「――っ!!」


フワワァ……ッ!
   


433: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/31(日) 22:57:52.75 ID:UVQeqQU3.net

   
希「……」

絵里「……思い出せたかしら? 自分が一体、誰なのか」

希「……ん」

絵里「じゃあもう一度、聞くわね……」

絵里「μ'sのメンバーは、全部で何人かしら?」

希「……」

  

希「……μ'sは――」






希「――『9人』や。ウチを入れて……っ!」
 


435: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/31(日) 23:09:38.82 ID:UVQeqQU3.net

  
――――――


海未(私たち『8人』の匂いを嗅いでもらうことで、彼女の中にある『μ'sの記憶』を刺激して、μ'sは『9人』であることを思い出させた……)

海未(まさかほのキチを、ほのスメルで元に戻そうとするとは……流石の発想力ですね、絵里)


希「着替えてきたでっ!」

絵里「ありがとう。私たちの衣装、届けてくれて」

ミカ「んっ! 頑張ってね、みんなっ!」


凛「……これでやっと、みんな揃ったねっ」

花陽「うんっ……」

海未「……穂乃果」

穂乃果「うん……」

穂乃果「みんな、改めて、ごめんなさい……っ! 私がスイッチを押したせいで、こんなことになっちゃって……」

にこ「……」

花陽「穂乃果ちゃん……」

海未「……今回の件、責任があるのは、穂乃果だけではありません。私とことりも、同罪なんです」

ことり「本当は、私たち三人の問題だったの……。だから私たちにも、謝らせて」

海未「ごめんなさい、みんなを、巻き込んでしまって……」

ことり「ごめんなさい……っ!」


「「……」」
  


436: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/31(日) 23:11:13.52 ID:UVQeqQU3.net

   
絵里「あなたたち三人の問題っていうのは、もう解決したの?」

ことり「……えっ?」

絵里「ここ最近ずっと様子がおかしかったのは、そのせいなんでしょう? ちゃんと決着は、ついたのかしら?」

海未「は、はい、それはもう……」

にこ「じゃあ……あんたたち三人はもう、大丈夫なのね?」

穂乃果「……うん、大丈夫だよ」

希「……そっか。だったら――」


希「よかったなぁ……これで今度こそ本当にみんな、『元通り』や」

にこ「っとに、どれだけ心配したと思ってんのよ……まったく」

絵里「ふふっ、そうね……でも本当に、良かった」

穂乃果「三人とも……」

凛「……そっか。穂乃果ちゃんたちはずっと、凛の知らないところで、悩んでたんだね」

真姫「ん……。ていうか別に、私たちを巻き込むのは、当然なんじゃない?」

花陽「うんっ! だって私たちは、仲間だもんっ!」

ことり「……みんな」

海未「ありがとうございます……」

絵里「穂乃果」

穂乃果「絵里ちゃん……」

絵里「もう、迷いはないわね?」

穂乃果「……」コクン

絵里「……それでこそ、私たちが認めたμ'sのリーダー、『高坂穂乃果』だわ」

穂乃果「……えへへっ」



穂乃果「――みんなっ!」
   


437: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/31(日) 23:14:43.09 ID:UVQeqQU3.net

  
穂乃果「本当に、大変なことになっちゃったけど……こんなのもう、どうしようもないんじゃないかって、思ったりもしたけど……っ!」

穂乃果「だけど……スイッチが壊れて、学院の中の匂いも薄れて、μ'sのみんなも、元に戻れた……っ!」

穂乃果「やっと、希望が見えてきた……っ! あとは生徒のみんなを、元に戻すだけなんだっ!」

穂乃果「でも……正直私が思いついた方法で、本当にみんなが元に戻れるのかは、分かんない……」

穂乃果「分かんないけど……それでも、やるっ! やるったら、やるっ!」

穂乃果「だからみんな――力を、貸してっ!!」

絵里「了解、リーダーっ!」

凛「全力でいっくにゃーっ!」

希「よし、やろかっ!」

花陽「やりましょうっ!」

にこ「にこの笑顔でー、みんなの目を覚まさせてあげるにこっ♪」

真姫「ま、やるだけやってみましょ」

ことり「頑張ろうっ!」

海未「最高のライブにしましょう……っ!」

穂乃果「……それじゃいくよ、みんな――」
  


438: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/01/31(日) 23:15:33.58 ID:UVQeqQU3.net

 

穂乃果「いちっ!」

ことり「にっ!」

海未「さんっ!」

真姫「よんっ!」

凛「ごっ!」

花陽「ろくっ!」

にこ「ななっ!」

希「はちっ!」

絵里「きゅーっ!」




「「μ's……っ! ミュージック、スタートっ!!」」
  


456: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 20:36:29.03 ID:3O/hkJaI.net

   
――――――

グラウンド


ザワザワ……


「穂乃果ちゃんっ! 穂乃果ちゃぁんっ!」「高坂さん、いないじゃんっ!!」「もういいよっ! 教室戻ろうよっ!」

「でも確かにさっきの、穂乃果ちゃんの声だったよっ!?」「ていうかどうせ戻っても、もうほとんど匂い残ってないし……」

「やっぱり、直接嗅ぎたいよぉ……っ!」「うぅ~、穂乃果ちゃぁん……」「あぁああぁ、もう我慢できないっ!!」


ザッ


海未(全校生徒のほのキチ……どうやらみんな、集まってくれたようです)

ことり(このたくさんほのキチたちを、これから私たちは……)


穂乃果「生徒のみなさん、こんにちはっ!!」


「「μ'sですっ!!」」


ザワッ


「えっ……?」

「みゅーず……穂乃果ちゃん?」

「高坂さん……っ!? どこっ!?」


穂乃果「今日はμ'sの――『ラブライブ最終予選直前、校内スペシャルライブ』にお越しいただき、ありがとうございますっ!」

穂乃果「まずは、2曲聞いて頂きました……『START:DASH!!』、『これからのSomeday』でしたっ!」


「ら、ライブ……っ!?」「なに、スペシャルライブって……っ!」「穂乃果ちゃん、どこぉ……っ!?」

「μ's……っ! μ'sが、どこかにいるのっ!?」「じゃあさっきの歌も、本当にμ'sが……っ!?」

「っ!! まって、あそこに……っ!」「あっ……!?」「み、みゅーず……」



「「「μ's……穂乃果ちゃんだっ!!」」」
    


457: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 20:39:18.62 ID:3O/hkJaI.net

    
絵里(っ! ほのキチたちが、こちらに気づいた……)

花陽(うっ、怖い……。でも……っ!)

凛(怖がってなんか、いられない……っ! 凛たちはこれからほのキチと、戦うんだっ!)


穂乃果「次に歌う曲は……私たちμ'sが、初めて9人揃った時に、このグラウンドで歌った曲です……っ!」

穂乃果「私たちにとって、とても大切な曲で……きっとみんなも大好きな曲だと、思いますっ! なので……」

穂乃果「一緒に歌って、踊って、盛り上がってくださいっ!! みんなっ!!」


「えっ……! 本当に今から、歌うの……?」「あ、あの曲だよね……っ!?」「うそ……マジ!?」

「どうでもいいよ歌なんてっ! 早く穂乃果ちゃんの匂いを……っ!」「高坂さん、やっと、見つけたよぉっ!」

「私が最初に嗅ぐっ!!」「きゃっ! お、押さないでよっ!」「はぁ、はぁ、うへへへ……」


希(200人のほのキチが、こっちに向かってくる……)

にこ(いいわ……。一人残らず、かかってきなさいよ)

真姫(こっちはたった9人……だけど今は、全然負ける気なんかしない――)



((私たちには、『歌』があるからっ!!))



穂乃果「それでは、聴いてください――」




「「『僕らのLIVE 君とのLIFE』っ!!」」

  


458: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 20:52:36.02 ID:3O/hkJaI.net

    

♪~僕らのLIVE 君とのLIFE / μ's



「「確かな今よりも――新しい夢つかまえたい――」」

「「大胆に――飛び出せば、O.K.マイライフ――」」


海未(9人の歌声が、ダンスが、綺麗に揃っている――コンディションは、万全です……っ!)

ことり(お願い……みんなに届いて、私たちの歌――っ!)


「「まぶしいあした――抱きしめに行こう――」」

「「全部、叶えよう――っ!」」


「っ! こ、この歌は……」「私の大好きな歌……うっ、でも……」

「穂乃果ちゃん……穂乃果ちゃん……」「うぐっ……」「あ、あぁぁ……」



「「そうだよ、信じるだけで――」」

「「ぐんぐん前に進むよ、君が――っ!」」


凛(さぁいくよ、みんなっ!)

花陽(μ'sのライブを……全力で、楽しんでくださいっ!)
    


459: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 20:59:46.20 ID:3O/hkJaI.net

 
「「答えなくていいんだ、分かるから――」」

「「胸にえがく、場所は同じ――」」


「みゅーず……」「う、ぁ……」「μ'sだ……っ!」

「μ'sっ!」「……♪」「はいっ! はいっ!」


真姫(そう……。一緒に歌ったり、手を挙げたり、コールを入れたり……ただリズムをとるだけでも、いい――)

にこ(ライブの楽しみ方は、自由……っ! 他のことなんて考えてたら、追いてっちゃうわよ――っ!)


「「何度でも、諦めずに――」」

「「探す、ことが、僕らの挑戦――っ!」」



「「はいっ! はいっ!」」「「はいっ! はいっ!」」


絵里(みんなが動いて踊って、熱くなっていく――)

希(『ライブの匂い』が、広がっていく――っ!)



「「元気の温度は下がらない――熱いままで羽ばたいてく――」」



穂乃果(みんな……っ! これが私たちの、ライブだよっ!)



「「あこがれを語る、君の――」」


「「ゆずらない、瞳が――」」



  

「「――ダイスキっ♪」」
   


460: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 21:11:53.02 ID:3O/hkJaI.net

  
シン……


穂乃果「はぁ、はぁ……」

海未「はっ、はっ……」

ことり「はぁ……っ」


ワァッ


「みゅーずーっ!! さいこーっ!!」「海未ちゃんっ! ことりちゃぁんっ!!」

「真姫ちゃんかわいいーっ!!」「花陽ちゃーんっ! 凛ちゃーんっ!!」

「絵里先輩、素敵すぎますーっ!!」「にこにー、こっち向いてーっ!」「希先輩ーっ!!」


「μ'sっ! μ'sっ! μ'sっ!!」


穂乃果「……」

凛「みんな……」

花陽「す、すごい声援ですっ!」

真姫「……これって」

にこ「やった……? ねえ、やったんじゃないっ!?」

絵里「みんな、元に戻ってくれた……。私たちの、歌で……っ!」  

希「大成功や……っ! やったで、穂乃果ちゃんっ!」

穂乃果「……あはは」


「穂乃果ーっ!」「穂乃果ちゃーんっ!!」「穂乃果先輩ーっ!!」

「穂乃果ちゃんっ!」「穂乃果ちゃーんっ!」「匂い、嗅がせてーっ!」

「はぁ、はぁっ! 穂乃果ちゃぁんっ!」「うひゃひゃひゃっ!」「あぁああぁ、足りないぃぃぃっ!!」


海未「……っ!?」
  


461: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 21:16:47.76 ID:3O/hkJaI.net

  
「うわぁ、穂乃果ちゃん、汗ビッショリだよぉ……」「今嗅いだら、すごそう……うへへへへ///」

「嗅がせろーっ!」「どいてよ、私が先に嗅ぐんだからっ!」「きゃぁっ!?」


にこ「ちょ……なによ、戻ってないじゃないっ!?」

絵里「うそ……じゃあもしかして、失敗……?」

花陽「そんな……」

海未(選曲は、間違っていないはず……。パフォーマンスの方も、問題なかった……っ!)

海未(確かにみんな、盛り上がってくれていたはずなのに……。何が、足りないのですか……っ!?)

穂乃果「……っ! 海未ちゃんことりちゃん、あそこっ!」

海未「っ!?」

ことり「……っ! あれは……」


女子A「ちょっとみんな、どうしちゃったのっ!?」

女子B「おかしいよっ! 穂乃果ちゃんの匂いを嗅ぎたいなんてっ!」

女子C「……あれ。なんで私、こんなところに……?」

女子D「はわわぁ~……。なんかすごいことになってるよぉ……」

女子E「さ、下がってくださいっ! 高坂さんに手を出すことは、私が許しませんっ!」


海未「私たちの、クラスメイトです……」

真姫「……っ! 待って、他にも……」
  


462: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 21:20:28.62 ID:3O/hkJaI.net

    
「……??」「……なんで私、高坂さんの匂いを嗅ぎたいとか思ってたんだろ」「よく分かんないけど、μ's頑張ってーっ!」


凛「……元に、戻ってる?」

希「あの子たちは……せや、ライブによく来てくれてる子たちやでっ!」

花陽「あっ、あっちにも……あっちにもっ!」

ことり「私たちの、『ファン』……?」

絵里「……μ'sをずっと好きでいて、応援してくれていた人たち……。彼女たちは今、私たちのライブを聴いて――」


絵里「――ほのキチから元に、戻ったのよっ! 成功よ、穂乃果っ!」

穂乃果「っ! ほ、本当に……」

凛「やったにゃーっ!!」

真姫「……方法は、合ってるってことね。でも元に戻ったのは、まだ半分くらい……」

海未「元に戻ったのは、いつもライブに来てくれるような、熱心なファンの方たちだけです」

海未「だけどここにいるのは、全校生徒……中には私たちの、ファンじゃない人たちだっています……っ!」

にこ「っ! それじゃ……」

絵里「このライブでは、『そういう人たち』も惹きつけなくてはならないということね……」

ことり「い、今までファンじゃなかった人たちを……っ?」

花陽「惹きつける、ライブ……」

穂乃果「……」
  


463: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 21:42:42.01 ID:3O/hkJaI.net

     
「ねえこれ、どういう状況っ!?」「はぁ~、穂乃果ちゃぁん……」「次の曲まだー?」


穂乃果「――新曲を、やろう」

「「……えっ?」」

穂乃果「どうせならさ、今の私たちができる最高の音楽を、みんなに届けようよ」

穂乃果「それに……まだ誰も知らない曲なら、ファンの人もそうじゃない人も、同じ条件で聴けるでしょ?」

海未「……『最高の音楽』、ですか。そうですね」

花陽「私は、賛成ですっ!」

にこ「ちょ、ちょっと待ってよ。『あの曲』は明日、A-RISEと戦う時に、初披露する予定の曲でしょっ!?」

真姫「今は出し惜しみしてる場合じゃないわ……私も賛成」

にこ「でも……っ!」

希「まあまあ。今回は正式なライブとはちゃうし、ノーカウントやろ」

にこ「ぬ、ぐぐ……っ! 分かったわよっ!」

穂乃果「よし、それじゃ……っ!」


ミカ「もしもし、ヒデコっ! 次の曲は――」


穂乃果「みんな、次の曲は……μ'sの新曲ですっ!」


「えっ……」「新曲……?」「そんなのあるの……っ!?」

「聞きたい聞きたいっ!」「歌なんかどうでもいいよっ! 早く嗅がせてよぉーっ!」


穂乃果「……この曲は、μ'sで初めての、『ラブソング』です」

穂乃果「本当は、明日のラブライブで初披露する予定だったんですけど……。一足先に、ここで披露しちゃいますっ!」


ワァァ


穂乃果「聴いてください……『新曲』――」



「「――『Snow halation』……っ!」」
    


464: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 21:48:11.85 ID:3O/hkJaI.net

  

♪~Snow halation(新曲) / μ's



「「……不思議だね、今の気持ち……空から、降ってきたみたい――」」


「「特別な季節の色が――ときめきを見せるよ――」」


真姫(この曲を作り上げたとき、私は確信した――この曲なら、『A-RISEにも負けない』、って)

海未(そう……常に成長を続ける私たちにとって、新曲はいつだって、『最高傑作』――)

ことり(この曲が、今の私たちの、『最高の音楽』なんだ……っ!)



「「初めて出会った時から……予感に騒ぐ心のMelody――」」


「「とめられないとまらない――な・ぜ――っ!」」


花陽(ファンの人に喜んでもらうことは、大切だけど……それだけじゃまだまだ、すごいアイドルとは言えないよね……っ!)

にこ(ファン以外の大勢の人も巻き込むからこそ、スーパーアイドルなのよっ!!)



「「届けて、切なさには――名前を、つけようか――」」



「「――『Snow halation』っ!!」」



「「想いが、重なるまで――」」
  


465: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 21:52:13.53 ID:3O/hkJaI.net

  
ザワッ


「なに、この曲……すごい……」「私、好きかも……」「これが、μ's……?」


凛(っ! さっきダメだった人たちも、少しずつ反応してくれてる……っ!)


「「飛び込む勇気に、賛成――まもなくStart……っ!」」


「……っ♪」「わぁ……っ!」「すごいよ、μ's……っ!」


希(……ふふっ。でもこの曲は、ここからやで? みんな――)


~♪


「……っ!」「あっ……」「もしかして、ここから……?」



穂乃果「……」ザッ



絵里(ラストのサビ部分……『穂乃果のソロパート』。ここから曲の盛り上がりは、最高潮に達する――)




((さぁ……っ!!))




穂乃果「……」スゥゥゥ




   


   



穂乃果「……とどけて――」

 
 
「「「「「「「――曲を止めなさいっ!!!!」」」」」」」

   


466: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 21:57:59.06 ID:3O/hkJaI.net

 
キィィン……


穂乃果「――っ!!? あっ、ぅ……」

凛「うわわっ!?」ビクッ!

花陽「ひぅっ!」ドテッ

ことり「えっ……!?」

海未「……っ!!」


突如グラウンドに、拡声器を通した、大音量の怒声が響いた――


「えっ……」「な、なに……っ!?」「びっくりした……」

「……あっ?」「っ! 見て、あそこ……」「うわ、わわっ……」


私たちの耳をつんざいた、その『声』は……熱くなっていたこの場を、一瞬にして凍らせた。


――もちろん可能性として、考えていなかったわけではない。

別に私が『全校生徒』という言葉を選んで使っていたのも、それが一番短く分かり易い言葉だったからであり……

何も本気で、『ほのキチになったのは生徒だけ』だなんて、思っていたわけではない。


絵里「うそ、でしょ……?」

にこ「なんでよ……あと、ちょっとだったのに……」

希「こんな、こんなことって……」


だけど心のどこかで、私は……私たちは、考え始めていたのだ。

一度、どうしもない絶望を味わって、だけどようやく、希望が見えて。

あとはもう、その希望に向かって進むだけ……それでこの事件は、このまま何事もなく、終わりを迎えるのだと。

ここまで順調に進んできたことで、私たちはそんな風に、どこか楽観的に構えてしまっていたのだ。

甘かった。

絶望はまだ、終わってなどいないのに――
   


467: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 22:08:13.82 ID:3O/hkJaI.net

   
ザッ、ザッ


教師A「ん~、いやはや、とんでもないことになってますねえ」

教師B「どうします、これ? 全校生徒による授業のボイコットなんて、前代未聞ですよ」

教師C「全く、これだから最近の若者はいけませんわ……っ!」

教師D「あぁ、これって私たちの責任になるんですかねえ……。やだなぁ……」


海未(……音ノ木坂学院、『教師陣』――)


「うわ、先生じゃん……っ!」「ちょ、や、やばくない?」「えっ、これ、どうなるの……?」

ザワザワ


海未(さ、最悪のタイミングです……。ここからが、盛り上がるところだったのに……っ!)

絵里「まさか先生方が出てくるなんて……いえ、授業時間に生徒を集めてこんなことしてれば、当然かしら……」

にこ「じゅ、授業時間って言ったって、今はそれどころじゃ……っ!」

真姫「何とか事情を説明して、分かってもらうしかないわね……」

穂乃果「……あ、あのっ! せんせ――」


「「「「「「「――高坂ぁっ!!!!」」」」」」」


穂乃果「ひっ!」ビクッ


キィン……

凛「うわ、また……っ!」

海未「……っ! ちょっと待ってください、やはり、この声……」

ことり「あっ……」
   


468: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 22:11:59.37 ID:3O/hkJaI.net

   
「……あー、ちょっとそこ、どいてくれるかな」

「は、はいっ」「ど、どうぞ……」ササッ

「悪いね……ふぅ」


ザッ

山田「よぉ、高坂ぁ……」

穂乃果「や、山田せんせぇ……」

山田「それに、園田と……南もいるな?」

ことり「うっ……は、はぁい……」

真姫「……もしかして、担任の?」

海未「え、ええ……山田博子先生です。普段は気さくで親しみやすい先生ですが、怒ると物凄く怖いです……」

真姫「いや、見れば分かるけど……」

山田「園田ぁっ!! 返事ぃっ!!」

海未「は、はいっ!」ビクッ

山田「よーしお前ら、こんなことして、覚悟はできてんだろうなぁ……ああん?」パキパキ

海未「ちょ、ちょっと待ってください、先生っ!!」

ことり「これには、深い事情がぁ……っ!」

山田「私に対しての言い訳は逆効果にしかならないって、いつも教えてるよなぁ?」

穂乃果「う、うぅ……」

凛(穂乃果ちゃんたち、いつもそんなこと教えられてるんだ……)
 


469: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 22:18:55.87 ID:3O/hkJaI.net

  
山田「さて、どうしてくれようかな、このバカどもは……」

海未「せ、先生、話を……」

ザッ

「……相変わらず厳しくされてるんですね、山田先生」

絵里「あ……っ!」

山田「笹原先生……いいんですよ。素行の悪い生徒には徹底的に厳しくして、道を正してやるべきなんです」

笹原「ふふっ、そうですか。先生の教育者としての在り方には、いつも感心させられます。私も見習いたいですね……」

にこ「……ちょっと、あんたたちのとこの担任じゃない」

希「う、うん……笹原京子先生、やね」

凛(うわぁ、あんな綺麗な人が担任なんて、いいなぁ、絵里ちゃんたち……)

笹原「……絢瀬さん、東條さん?」

絵里「はい……」

笹原「優秀なあなたたちが、何の理由もなくこんなことをするとは思えません。何か事情があるのでしょう?」

絵里「っ! は、はいっ! そうなんですっ!」

希「えっと、何から説明したらいいか……っ!」

笹原「落ち着いて。いつも教えてるように、筋道を立てて、論理的に説明してください」

凛(やっぱり、担任じゃなくてよかったにゃ)プシュー
  


470: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 22:22:05.94 ID:3O/hkJaI.net

   
「うおおおおっ!! 私の愛する、生徒たちよぉーっ!!」

絵里「――っ!?」

深山「なんで……なんでこんなことしたんだぁ……っ! 先生は、悲しいぞーっ!」ボロッボロッ

凛「ふ、深山先生っ!?」

深山「星空ぁ……小泉、西木野ぉっ! 私はお前たちを、そんな風に育てた覚えはないぞぉーっ!」

真姫「あぁ……暑苦しいのが来た」

花陽「せ、先生、あの」

深山「まさか授業をサボって、グラウンドでコンサートとは……っ! くぅ~っ!」ゴシゴシ

深山「青春だなぁっ!! 先生はそういうの、好きだぞぉっ!!」グッ

真姫(どっちよ……)

「あのぉ~……、ちょっとよろしいでしょうかぁ……」

にこ「……」

深山「おお、山内先生っ! どうされましたかっ!」

山内「え、えっと、私は、μ'sのライブ見てみたいなー、なんて……」

山田「おいおいっ! 何言ってんだあんたっ! それでも教師かっ!?」

山内「ひぃっ! でも、自分の生徒の晴れ姿ですよ? 見たいじゃないですかぁ~……」

山内「あっ、矢澤さんっ。衣装、とてもよく似合ってますよぉ~。えへへ」フリフリ

にこ「……どうも」

凛(この学校の先生って、個性強いなぁ……)
  


471: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 22:23:44.50 ID:3O/hkJaI.net

   
凛「……ていうか先生たちはほのキチに、なってないのかな?」ヒソヒソ

絵里「今のところは分からないわね。もしかしたら大人は、ほのキチにならないのかも……?」

希「だとしても、ピンチなのには変わらんよ……」


山田「とにかくっ! ライブは中止だ。全員、すぐに教室に戻るように」


「えー、そんなー……」「なんか、不完全燃焼ー」「まあ、しょうがないよね……」

 
海未(っ! ま、まずいです、このままでは……っ!)

深山、山内「「えー」」

山田「あんたらねえっ!!」

笹原「そうお怒りにならずに……」

山田「くっ……おい。とにかくお前たちも、早く着替えてこい。15分後に、授業再開だ」

海未「……っ!」

穂乃果「せ、先生……っ! 待ってくださ――」

山田「……あぁ、そうそう」

山田「高坂、お前はこの後、すぐに職員室に来るように」

穂乃果「……えっ?」

深山「うおおぉぉ、たぎってきたぁっ!」

笹原「心ゆくまで、嗅がせていただきましょう」

山内「えへへぇ……楽しみですぅ……」

海未「……」

絵里「ま、まさか……」

穂乃果「先生……? あの、どうして私だけ……?」

山田「高坂……。お前だけは、今日一日『特別授業』だ。思う存分可愛がってやるからな……」

穂乃果「……」ゾッ


山田「……もちろん先生の言うことに、逆らうわけないよな?」
   


472: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 22:27:50.67 ID:3O/hkJaI.net

   
海未「っ!! ほ、ほのキチ……やはり……っ!」

凛「そんな、先生まで……っ!?」

教師A「それにしても、不思議です。目が覚めた時から、なんだか体の調子がすこぶる良いんですよねえ」

教師B「ええ、なんでしょう……まるで若い頃に、戻った気分です」

教師C「私も心なしか、肌の艶が良くなった気がしますよ。おほほほ」

教師D「高坂穂乃果さん……。実験室で、是非あなたの匂いの成分を解明したい……」


「えぇー、先生ばっかりずるいですよー」「私も高坂さんの匂い嗅ぎたい……」

 
海未(――『大人のほのキチ』……っ! 考えてみれば、初めてのパターンです……)

海未(……いえ、そんなことは関係ありませんっ! どんなほのキチが相手でも、私は穂乃果を守るだけ……っ!)

深山「うおおおお、早く彼女を熱く抱きしめながら、匂いを嗅ぎたいっ!」

山内「私はほっぺたをスリスリしながら、嗅ぎたいですぅ♪」

笹原「私、今まで生徒の匂いを嗅ぎたいなんて思ったことなかったので、ちょっとドキドキしてます」

山田「そりゃそうでしょうね……。しっかし担任としては、複雑な気持ちだよなぁ……」

穂乃果「あ、あと一曲だけっ!!」

海未「っ!?」

山田「……ああん?」

穂乃果「あと一曲だけ、やらせてください……お願いします、先生……っ!」

山田「……」

穂乃果「それで、できれば、先生も……」

穂乃果「先生たちも一緒に、ここで私たちの歌、聴いていってくれませんか……っ!?」
  


473: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 22:30:24.74 ID:3O/hkJaI.net

  
絵里(っ! 穂乃果……っ!?)

海未(先生方もまとめて、元に戻そうというわけですか……っ! し、しかし……)

山田「……あのなぁ、高坂。教師に生徒の問題行動を、黙って見てろって言うのか?」

穂乃果「だ、黙ってじゃないです。できれば一緒に歌ったり、踊ったりしてほしいです……」

山田「あぁ、そうじゃなくてだな……」

笹原「ふふっ、面白い子ですね。高坂さんって」

山田「バカなだけですよ……」

海未「……わ、私たちからも、お願いしますっ!」

ことり「歌わせてください、先生っ!!」


「わ、私たちも、もっと聴きたい……」「うん……あと一曲くらい、別に良くない?」「ねえ……」


山田「……お前ら」

穂乃果「先生……っ!」

山田「……」ハァァ


山田「……早く教室に戻れ」

穂乃果「っ! で、でも――」

山田「いいから早くっ!!」

穂乃果「っ!?」



山田「これ以上、厄介なことになる前に……っ!!」
     


474: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 22:33:44.12 ID:3O/hkJaI.net

 
カツ、カツ……


ギャルA「……前の方、どうなってんの? 見えねえー」

ギャルB「せんせー来ちゃったし、もうライブは中止っしょ……」


「――道をあけてくれるかしら?」


ギャルA「……えっ?」

ギャルB「あっ! す、すいません……」ササッ


「ふふっ、ありがとう……」


カツ、カツ……



海未「『厄介』……?」

深山「はっ、そうだ、忘れてた……。お前たち、早く教室に戻るんだぁっ!」

山内「い、急いでくださいぃ~っ!」

笹原「……山田先生」

山田「ええ……。お前ら、いい加減にしとけよ。自分たちが何やってるのか、分かってるのか?」

山田「『校則違反』だぞ……っ! この学院において、絶対に破ってはいけない『ルール』を、お前らは破ってしまったんだっ!」

絵里「……っ! それは……」

山田「いいか。よく聞けよ、お前ら……。まだ、間に合うんだ」

希「……えっ?」

山田「『彼女』はまだ、このことを知らない……。どうやら仕事でお疲れだったようで、目を覚ましてすぐに、二度寝してしまったからな……」

山田「……だから『彼女』がまた目を覚ます前に、早く教室に戻れ。これ以上、話がややこしくなる前にな……」

にこ「……」

花陽「……うっ」

凛「で、でもぉ……」





「だってー、かのうせーかんじたんだー♪」
   


475: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 22:37:16.24 ID:3O/hkJaI.net

    

「「「――っ!!?」」」


「そうだー、すすーめー♪」


カツ、カツ……


「えっ、なに……?」「この歌……」「どこから……」



海未「……」

ことり「えっ……」

山田「……」フゥ


「こーかいしたくない、めーのまえに――」




   

カツン





    

理事長「ぼくらの、みちがある~♪」

穂乃果「り、理事長……?」
   


476: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 22:46:39.43 ID:3O/hkJaI.net

   
理事長「――っていう歌が私、好きなのだけど……。まだやってないのかしら?」

穂乃果「えっ……?」

理事長「ふふっ……。私が眠っている間に、とても楽しそうなことになってるじゃない?」

山田「……理事長」

理事長「……あら? あらあらあらあら? みなさんおそろいで、おはようございます。あれ、ご苦労様です?」

山内「あ、あの、えっとぉ……」

深山「理事長ぉーっ! これは全部、私たちの責任なんだーっ! どうか生徒を、責めないでやってくれーっ!」

笹原「……申し訳ありません。我々の、管理不行き届きでした」

理事長「いえいえそんなぁ、どうかお気になさらず。うふふふふふふふふふふ」

理事「ふふふふふふふふ。さてっ、リフレッシュもできましたし、ここからは私に任せてください。えっと、まずは」

笹原「理事長、鏡を……」サッ

理事長「えっ?」

笹原「お顔に、腕の跡が」

理事長「……まあっ、本当だわっ! 私ったら、なんてはしたない……」フキフキ

理事長「むぅ~、消えないわぁ。ん、んん……」フキッ

理事長「あらあら、よく見たら、髪の毛もボサボサじゃない……どなたか、櫛を持っている方はいませんか?」

深山「私のでよければっ!」

理事長「ありがとうございます。もうっ、これじゃ理事長失格ね……」サッサッ

理事長「あ、ごめんなさいね、みなさん。少しお待ちいただける? うん~……」サッサッ


「「……」」
   


477: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 22:50:27.72 ID:3O/hkJaI.net

   
凛「……り、理事長って、あんな人だったかにゃ?」

真姫「そんなわけないでしょ……。ほのキチになってテンションがおかしくなる人は、他にもたくさんいたわ」

希「じゃあやっぱり、理事長もほのキチに……?」

絵里「そう思った方がよさそうね……」

海未「……」ゴク

海未(元の性格から大きく歪んだほのキチは、行動が読めず非常に危険です……ミナリンスキーしかり、花陽しかり……)

海未(……しかし逆に言えば、理事長さえなんとかしてしまえば、他の先生方も――)


理事長「んー、よし、完璧っ!」グッ

理事長「さてと、えっとぉ……?」キョロキョロ

理事長「……んっ。どうやら全校生徒、揃ってるみたいね」

山田「……分かるのですか?」

理事長「当たり前じゃないですかぁ。私、理事長ですよ? 全校生徒の顔くらい、ちゃーんと覚えてます」

山田(こんな一瞬で、全校生徒の顔を確認したってのかよ……)

理事長「でもまあ、ひとまずこっちは、置いといて……」クルッ

理事長「……うーん。μ'sのみなさん?」

穂乃果「っ!」

海未「うっ……」

理事長「授業時間中での、ライブ活動……及び、グラウンド、音声設備の無断使用――」

理事長「理事長として、この事態を見逃すわけにはいきませんわ。あなたたちにはそれ相応の、罰を受けてもらいます」
  


478: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/11(木) 22:55:41.79 ID:3O/hkJaI.net

  
にこ「ば、罰……っ!?」

絵里「ちょっと待ってくださいっ! 私たちは――」

山田「……理事長、よろしいですか?」

理事長「はぁい?」

山田「彼女たちには、今までの功績があります。本校への入学希望者が増えたのも、彼女たちの活躍のおかげです」

理事長「ええ、もちろん、分かっていますよ」

山田「それに明日は……ラブライブ? という大会もあるらしいですし、彼女たちはきっとその練習のために、こんなことをしたのでしょう」

海未(山田先生……?)

山田「ですので、理事長……」

理事長「ふふっ、大丈夫ですよ。それも全て考慮した上で、μ'sの処遇は検討しますから」

山田「……そうですか、失礼しました」

凛(μ'sの、処遇……)

真姫(ってそんなの、どうでもいいのよ……っ! どっちにしたって私たちに、ライブを続ける意外の選択肢は――)

理事長「……では、そうですね」



理事長「μ'sには、『無期限活動停止』を、言い渡します」

穂乃果「……」

真姫「……えっ?」

にこ「ちょ……」

理事長「あら、聞こえませんでしたか? ではもう一度……」


理事長「『無期限活動停止』です。μ'sのみなさん、これまでの活動お疲れ様でした」

理事長「それでは大至急、マイクを外して、衣装を脱いでください。あなたたちはもう、アイドルなどではないのですから――」
   


501: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/20(土) 20:58:15.15 ID:oVwNzdgz.net

   
――――――


ザッ……


雪穂「ふぅ……」

雪穂「……わ、すごい。みんな集まってる……あれで全員かな?」

雪穂「んー、にしてもなんで曲、止めちゃったんだろ。もしかして全員、元に戻せたのかな?」

雪穂「だったら良いけど……ライブ見たかったな。ちぇ、もっと早く来ればよかった……」


「どういうことですか、理事長っ!?」


雪穂「……? 海未ちゃんの声? どうしたんだろ……」

雪穂「ちょっと近づいてみようかな……大丈夫、だよね……?」



海未「無期限活動停止って……。そんなの、横暴ですっ!」

理事長「横暴……? あなたたちのしたことを考えれば、これくらいの罰は当然でしょう?」

海未「た、確かに私たちのしたことは、校則違反かもしれませんが……でも今は、それどころじゃないんですっ!」

理事長「いいえ。いかなる理由があろうと、校則違反は認められません。おとなしく、罰を受けてください」

海未「くっ……!」

真姫「ダメよ、海未っ! 今の理事長に、何を言っても……」

海未「し、しかし、このまま引き下がるわけにも……っ!」

理事長「……教師のみなさん」

理事長「どうしても彼女たちが従わないようでしたら、やむを得ません。力づくで彼女たちを取り押さえてください」

真姫「っ!?」

海未「なっ……」

笹原「……理事長、しかしそれは、体罰に当たるのでは?」

理事長「あら、そうですか? では理事長権限で今から特別に、体罰を全面的に許可します」

花陽「……っ!?」ゾッ

凛「な、なに言ってるの、あの人……?」
    


502: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/20(土) 21:05:31.34 ID:oVwNzdgz.net

    
山田「……ですってよ」

深山「むぅ……、理事長の命令とあらば、仕方ありませんなっ!」

山内「かわいそうですけど、これも生徒のためですよねっ!」


にこ「ちょっと待ってよ……っ! なんであの人たち、やる気満々なのよっ!?」

海未(しかも相手は、『大人のほのキチ』……力ずくで来られたら、ケガではすみません……っ!)

穂乃果「り、理事長……」

理事長「さて、μ'sも無事に終わったことですしぃ……」

理事長「……高坂さん?」

穂乃果「……えっ?」

理事長「うふふっ……」

理事長「高坂さん……いえ、穂乃果さん。うふふふふ」

理事長「あぁ、穂乃果さん……。可愛い可愛い穂乃果さん……」

理事長「はぁ、はぁ……。突然なんだけど、私ね、私――」



理事長「あなたの匂いが、大好きになっちゃったのぉ……」ウットリ

理事長「もう、耐えられないのよ……。こうしてる間にも、体が火照って仕方がないのよ……」

理事長「こんなに気持ちが昂ったのは、いつ以来かしら……。はぁ、はぁ……っ!」

理事長「ああん……っ。穂乃果さぁん、愛し合いましょう? お互い、ドロドロになるまで……」

理事長「ねえ、おねがぁい……うふふふふふ……」
   


503: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/20(土) 21:32:19.07 ID:oVwNzdgz.net

 
理事長「んふっ……♪」チュパッ

穂乃果「うぅ……」

海未(……な、なるほど。これが、『大人のほのキチ』……)

真姫(指を加えて……体をくねらせて……な、なんか……)

にこ(なんかエロい……っ!? うわ、うわぁ……)

凛「あぁ、理事長のイメージが、どんどん崩れていくにゃぁ……」

花陽「……///」

絵里「ほ、穂乃果……大丈夫よ。大丈夫だから……」

希「……いや、えりち。穂乃果ちゃんよりも、もっとダメージを受けてる人が……」チラッ

絵里「……えっ?」


ことり「……ぅ」

ことり「ううぅぁぁあぁあぁ~……/////」ガクッ

絵里「あっ……」

にこ(まあ、自分の母親のあんな姿を見ちゃったら、ねえ……)

真姫(ほんとほのキチ関係で、ロクな目に合わないわね、ことり……)
   


504: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/20(土) 21:36:09.13 ID:oVwNzdgz.net

  
ザッ

「待ってください」


理事長「……?」

海未「――っ!!」


女子A「穂乃果ちゃんを連れて行かないでください、理事長」

女子B「μ'sの無期活動停止なんて……私たち、絶対納得できませんっ!」


クラスメイト「「そうだそうだーっ!!」」


理事長「……あらあら」

海未「あ、あなたたち……」

山田「おいおい、お前ら」ザッ

理事長「ふふっ。構いませんわ、山田先生」

山田「……はい?」

理事長「流石、山田先生のクラスの生徒さんたちです……。なかなか肝が据わっていますね」

女子A「理事長っ!!」

理事長「えーっと、あなた」ビッ

女子A「っ!?」

理事長「2年○組の、女子Aさんですね?」

女子A「……なんですか」


理事長「退学です」ニコッ

女子A「……」


女子A「は……?」
   


505: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/20(土) 21:38:46.76 ID:oVwNzdgz.net

   
海未「っ!!」

凛「た、たいがく……っ!?」

理事長「彼女の退学手続きを進めます。山田先生、書類を作成しておいてください」

山田「はい、理事長……」

女子A「ちょ、ちょっと待ってください。こんなことで、退学なんて……っ!」

理事長「理事長に逆らったら、退学になるのは当然じゃない。そんなの、校則で決まってることでしょう?」

笹原「理事長、そんな校則はありません」

理事長「あら、そうでしたっけ。では今、決まったということで」

女子A「……」

女子B「……っ! ふざけんなよっ! あんたそれでも、理事長っ!?」グイッ

理事長「……っ」

女子B「取り消しなさいよ……っ! こんなこと、許されるわけ――」

理事長「2年○組、女子Bさん、退学です」

山田「はい、理事長」グイッ

女子B「きゃ……っ!」ドサッ

女子A「せ、先生、どうして……っ!」

山田「……だから再三、警告したろうがよ」

山田「悪いが先生にも、立場ってものがあるんだ。これ以上は、お前らを庇ってやれん」

女子A「そんな……っ!」
   


506: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/20(土) 21:39:58.13 ID:oVwNzdgz.net

  
女子C「……っ!?」

女子D「う、うそぉ……」

女子E「こんなの認められるわけありませんっ! 理事長っ!!」 

理事長「……んー、なんかもう面倒くさいんで、お友達もみんな退学にしちゃいましょう」

クラスメイト「「――っ!!」」

山田「女子C、女子D、女子E……それと……あぁ、今日は残業かな」

女子A「……っ」ペタン

理事長「分かるかしら? 私には、あなたたち一人一人の人生を滅茶苦茶にできる力があるのよ」

理事長「ここでは私が、『ルール』なの。『校則』なの。私こそが――『音ノ木坂学院』なのよ」


真姫「……なによ、これ」

海未(これが、『権力を持ったほのキチ』の、恐ろしさ……)

海未(こんな人を相手に一体、どうすれば……)
   


507: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/20(土) 21:49:07.97 ID:oVwNzdgz.net

 
絵里「……」ギリッ


絵里「理事長っ!!」

理事長「……?」

絵里「私たちの話を、聞いてください……っ! あなたは今、おかしくなってしまってるんですっ!」

理事長「なによ、失礼しちゃうわ。私は何も、おかしくなんてないわよ」

希「理事長……っ! 私たちが必ず、あなたを元に戻しますっ! ですから――」

にこ「だ、ダメよ、絵里、希っ!」

理事長「……せっかく三年生まで頑張ったのに、残念ね」

絵里「……えっ」

希「まさか……」

理事長「絢瀬絵里さん、東條希さん、退学です。笹原先生」

笹原「……はい」

絵里、希「「……っ!!」」

にこ「く……っ!」

海未「む、無茶苦茶です、こんなの……」

理事長「……これでもう、私の邪魔をする悪い子は、いませんね?」

「「……」」


 
「もう……」

理事長「……? まだなにか――」


ことり「もう、やめてよ……っ! お母さん……っ!!」
   


508: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/20(土) 21:55:28.22 ID:oVwNzdgz.net

 
海未「ことり……」

理事長「……あらぁっ!」

理事長「私の愛する娘じゃないっ! 穂乃果さんに夢中過ぎて、完全に存在を忘れていたわっ!!」

ことり「お、お母さん……」

理事長「可愛い可愛い、私の子……うふふふふ。えっと、私はあなたに、なんて名前を付けたのだったかしら?」

理事長「そう、『ことり』っ! ひらがなで『ことり』よ、『ことり』っ!」

理事長「良い名前よねー。ねえ、なんで『ことり』って名前にしたんだと思う? 聞きたい? 聞きたい?」

ことり「お願いだからもうやめてぇっ! なんかもう、色々とっ!!」

理事長「えっ? な、なによ急に」

ことり「はぁ、はぁ……」

ことり(あ、危なかった……。全校生徒の前で、自分の名前の由来を発表されるところだった……)

理事長「あっ! 生徒のみなさん、見て見てっ! あれ、私の娘よっ! 可愛いでしょ、ねえっ!」

ことり「やめてって言ってるでしょっ!? もぉーっ!!」

理事長「っ! そ、そんなに怒ることないじゃない……反抗期かしら?」 

ことり「ぜぇ、ぜぇ……。うぅ~っ!!////」

凛(こんなに怒ってることりちゃん、初めて見たにゃ……)

真姫(……というかもしかして理事長、娘には弱い……?)
  


509: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/20(土) 21:59:03.28 ID:oVwNzdgz.net

 
ことり「みんなっ! お母さ……理事長は、私が元に戻すよ……っ!」

海未「えっ……?」

にこ「で、でも……」

ことり「理事長一人だけなら、わざわざ歌う必要もないでしょ? 待ってて、みんなっ!」タタッ

海未「あっ、ことり――」


タッタッタッ……

ことり「お母さんっ!」ダキッ

理事長「あらあら、今度は急に甘えてきたりして……どうしたの、ことり?」

ことり「っ! べ、別に、甘えてるわけじゃ……」

理事長「ふふっ、昔からあなたは本当に、甘えん坊さんだったわよね……。何か悲しいことがあると、いつもお母さんに抱き着いてきて」

ことり「えっ……?」 

理事長「確か一人で眠れるようになったのは、小6くらいのときだったかしら……? でもお風呂には、中1くらいまで一緒に入ってたわよね」

ことり「っ!! ちょ、待って、お母さんっ!?」

理事長「ふふっ、周りの子と比べて、乳離れも遅かったしね?」

ことり「っ!? や、やめて……や……」

理事長「赤ん坊の頃なんか、大変だったのよ? オムツ代えるのとか……ほらあなた、よくお漏らし――」

ことり「やああぁぁあぁあぁああぁっ!!/////」

ガクッ

理事長「……あら?」

海未「こ……ことりぃぃぃぃっ!!!」
   


510: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/20(土) 22:00:18.68 ID:oVwNzdgz.net

  
穂乃果「ことりちゃんっ!!」

凛「だ、大丈夫、凛は何も聞いてないにゃーっ!」

花陽「わ、私もっ!」

真姫(でも全校生徒には聞かれたわね……)


理事長「あ、そうそう」

理事長「ことり、あなた子供の頃、妹が欲しいって言ってたわよね」

ことり「……」

理事長「遅くなっちゃったけど……私、頑張るから。必ず元気な女の子、生むわね。うふふふ……」ウットリ

カツカツ……


にこ「……えっ、なに、どういうことっ!? 『穂乃果と』、ってことっ!?」

真姫「いや、できないわよっ! きっと、その、だから……ええっ、だとしても、なんでこのタイミングでっ!?」

にこ「分からないわっ! ぜんっぜん分からないっ! でもなんか、すごく怖い……っ!」ガタガタ

海未「く、ぅ……」

理事長「さぁ、穂乃果さん……」ザッ

穂乃果「……っ!」

理事長「私が、大人の世界を教えてあげるわ。理事長室で、じっくりと……」

理事長「あなたはもう、私の物……。ずっと私の傍にいなさい。勉強も部活動も、もう何もする必要はないわ」

理事長「ただずっと、私に匂いを嗅がせてくれるだけでいい……そうやってあなたは理事長室で、永遠に『留年』を繰り返すのよ」

穂乃果「うっ……」ジリッ
  


511: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/20(土) 22:04:24.52 ID:oVwNzdgz.net

 
海未(っ! 穂乃果を、守らなくては……っ! しかし――)

山田「……」

海未(そのためにはまず、先生方を突破しなくては……っ!)

真姫(う、海未、気持ちは分かるけど……相手はほのキチで、しかも大人よっ!? 下手に動いたら――)


「ね、ねえ、流石に酷くない……?」「だよね、退学って……」「いくら理事長だからって、こんなこと許されるの……?」

ザワザワ

海未「……っ?」

真姫「えっ……」


「そうだよ、絶対おかしいよ……」「μ'sの活動停止なんて、絶対認めないんだからっ!」「う、うん、そうだよねっ!」

「ていうか理事長だけ穂乃果ちゃんを独り占めなんて、ずるいっ!」「私だって嗅ぎたいのにっ!」「そうだそうだっ!」

「μ'sの活動、続けさせてあげてくださいっ! 理事長っ!」「彼女たちはこの学院の、救世主ですよっ!?」

「その子たちの退学も、取り消しにしてあげてくださいっ!」「穂乃果ちゃんから離れろぉっ!」「ことりちゃんも、元気出してっ!」

「先生っ!!」「理事長っ!!」


ことり「あっ……」

穂乃果「み、みんな……」

海未(元に戻った生徒も、ほのキチも……。みんな、一つになって……)
   


512: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/20(土) 22:07:40.65 ID:oVwNzdgz.net

  
教師C「あ、あなたたち、静かになさいっ! 理事長に向かって、なんて口のきき方ですかっ!」


「うっせーっ! おばさんっ!」「あんたは引っ込んでろーっ!」


教師C「っ! んなっ……」

教師C「ちょっと、あの子たち、あなたのクラスの生徒さんでしょっ!? 一体どういう教育をしてらっしゃるのっ!?」グイッ

教師D「うえっ、わ、私のせいじゃないですよぉ……」


「理事長失格だーっ!」「穂乃果ちゃんは私のものだーっ!」「ライブを続けさせろーっ!」


ギャーギャー


理事長「……」

山内「た、大変な騒ぎになっちゃいましたねえ……」

笹原「どうされます、理事長……?」

理事長「はぁ~……」
   


513: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/20(土) 22:11:40.67 ID:oVwNzdgz.net

 
理事長「もう、なんなのかしら、みんなして……。私、理事長なのよ? なんで反抗するのかしら……」

理事長「本当、いくらキャリアを重ねても、教育って難しいわ……」


理事長「……まあ、それがこの仕事の、楽しいところでもあるのだけどね」

山田「……理事長?」

理事長「拡声器、貸してくださる?」

山田「いいですけど……」

理事長「……えー、全校生徒のみなさん、よく聞いてください」


「……?」「なんですかっ!?」「考え直してくれましたか、理事長っ!」



理事長「全員、退学です」



「「……えっ?」」


山田「……」

教師A「ちょ、理事長……?」

教師B「冗談はやめてくださいよ。生徒みんな退学にして、どうするんですか」

理事長「……あっ、本当ですね。勢いで、やっちゃいました」

教師C「やっちゃいましたって、あなた……」

理事長「こうなっては仕方ありませんね。ここは学院の理事長として、正式に発表しておきましょう――」



理事長「生徒が一人もいなくなってしまったので――今日この日をもちまして、国立音ノ木坂学院は、廃校とします」
   


524: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/21(日) 21:17:27.94 ID:1w8H1aZw.net

   
――――――

ザワ……



「は、廃校……?」「今、廃校って言った、あの人?」「なに言ってんの……?」


理事長「……さて」

理事長「これで、一件落着ね。最初からこうすればよかったわぁ~、うふふっ」

教師B「り、理事長、流石に廃校はまずいですって……」

教師D「そうですよぉ……私たちの仕事、なくなっちゃいますよぉ……」

理事長「まあまあ。これで思う存分穂乃果さんの匂いを嗅げますし、ていうか後のことなんてどうでもいいじゃないですかっ♪」

教師C「あ、あなたね、いい加減になさいっ!!」

理事長「……なんですかぁ?」

教師C「いくらなんでも、お転婆が過ぎますわよっ! 私たちのことも考えてくださるっ!?」

教師C「家庭がある教員もいるんですよっ! 私たちに、路頭に迷えとっ!?」

理事長「そんなこと言われましても……先生だって、嗅ぎたいんでしょう?」

教師C「それとこれとは話が別ですっ! さっきの話、取り消しなさいっ!」

理事長「えぇ~、嫌ですぅ」

教師C「っ!! なんですかその態度は……っ! 私はあなたよりも、年上なんですよっ!!」

理事長「……おかしなことを言いますねえ、先生」ズイッ

教師C「っ!?」

理事長「その『年上』っていうのは、『理事長』よりも偉いんですかぁ?」

教師C「……なっ」
   


525: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/21(日) 21:33:53.95 ID:1w8H1aZw.net

  
理事長「……うふっ、なーんて」

理事長「冗談ですよ。先生方の次の勤務先については、私が保証して差し上げます」ニコッ

教師C「はぁ、はぁ……」

理事長「……まあ、『校則違反』で退学するみなさんの、今後の人生については、知りませんけどね?」


「……」「……そんな」「うそでしょ……?」

「私たち、これからどうなるの……?」「じょ、冗談に決まってるじゃん、廃校なんて」「本当に……?」

「だ、大丈夫だよ、教育委員会とかに言えば、ほら……」「そうだよね、よく分かんないけど、大丈夫だよねっ」「でも……」

「問題を起こしたのは、私たちの方だよ……?」「だからって退学は、おかしいってっ!」「でも、理事長が言ってるんだよ……?」

「あぁ、どうしよう……」「パパとママに、なんて言おう……ここまで頑張ったのに、中退なんて……」「やめてよ、そういうこと言うの……っ!」

「こんなの、おかしいよ……」「ねえ、全員で理事長に、謝らない? 今ならまだ、間に合うよ……」「うぅ……」


海未「……」


恐怖と不安と焦燥が、伝染し……いつしか私たちμ'sを含め、約200人の生徒の心が、折れかけていた。

既に誰もが、感じていた……200人の子供がいくら力を合わせたところで、たった1人の大人には勝てないということを。

私たちにはもう、どうすることもできない。

『学校』という、狭い世界で生きる、私たちにとって――この学校のトップを敵に回すということは、すなわち神に抗うことに、等しいのだから。
   


526: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/21(日) 21:38:15.78 ID:1w8H1aZw.net

   
理事長「では行きましょうか、穂乃果さん」

理事長「今日からこの学院は、私とあなたの二人きり……音ノ木坂学院は、私たちが愛し合い、営むためだけの、お城となったのよ」

理事長「……私を楽しませて頂戴ね、穂乃果さん」ガシッ

穂乃果「……理事長、私たちの、歌を」

理事長「歌なら後でたっぷりと聞かせてもらうわ……。『嬌声』という名のね」グイッ

穂乃果「……っ! いやぁっ!」ジタバタ

理事長「ふふっ、それは何をしてるの? いちいち動作が可愛いわね、穂乃果さんは……」ググッ

穂乃果「なっ、なんで……っ!? 全然振りほどけない……っ!」 

海未(ほのキチ特有の、怪力……私が、助けなければ……っ!)


海未「……穂乃果っ!!」ダッ


ガシィッ!

海未「うっ!?」ドサァ

山田「動くな」ググッ

海未「せ、先生……っ! うっ……」

海未(強い……。力だけでいえば、今まで戦ってきたほのキチの中で、一番……)
  


527: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/21(日) 21:41:26.18 ID:1w8H1aZw.net

   
ことり「海未ちゃん……っ!」

笹原「あなたたちも、動かないでくださいね?」

希「うっ……」

花陽「……っ!」

真姫(まさか教師全員、『戦えるタイプ』のほのキチなの……っ!? こんなの私たちが束になったって、勝てっこないじゃない……っ!)

山内「今回は残念でしたけど……でもでも、そんなに落ち込まないでくださいねっ?」

深山「若いうちは、失敗の連続だっ! そうやってみんな、大人になっていくんだぞっ!」

凛「先生……」

にこ「くぅ……」


教師A「ほら、道を空けなさい」

教師B「理事長が通りますからね」


「……」「……はい」「うぅ……」


カツカツ……


海未(もう誰も、理事長を止めようとしない……)

海未(穂乃果が、行ってしまう……っ!)


海未(穂乃果……ほのかぁっ!)
  


528: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/21(日) 21:43:08.68 ID:1w8H1aZw.net

    
ググッ!

海未「う、あぁあぁ……っ!」

山田「……おい、動くなって言ったろうが」

海未「はぁ、はぁ、あぁあぁ……っ!」

山田「園田、分かってるのか? 私たち教師は今、いかなる体罰も、許可されているんだぞ?」

海未「うっ、ぁ……」

山田「つまりだな……お前のこの細い腕も、いくら折ったって、構わないってことなんだ」

海未「はぁ、はぁ……」


海未「……なら、やればいいじゃないですか」

山田「怖くないのか?」

海未「怖いに決まってるじゃないですか……っ! ただ、それでも私はっ!」

海未「『それくらいの犠牲も、払わずに』……このまま諦めることが、嫌なだけですっ!!」

山田「……お前本当に、女子高生かよ」

ことり「う、海未ちゃんっ!?」

真姫(な、なに言ってるのよ、海未……っ! 相手は、正気じゃないのよ……っ!?)

山田「そうか、じゃあ望み通り、やってやるよ。こっちの腕でいいか?」グイッ

海未「うぐっ……っ!」

絵里「やだっ、海未っ!?」

ことり「いやあぁっ!!」



グッ――
   


529: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/21(日) 21:58:55.31 ID:1w8H1aZw.net

  
理事長「――なぁに、あなた?」


ピタッ

山田「……ああん?」

海未(……り、理事長?)



穂乃果「……っ!!」

理事長「音ノ木坂の生徒ではありませんね……。しかし、どこかで……」

「あ、あの……。さっき、この学校が廃校になるって聞こえたんですけど、本当ですか?」

理事長「……ええ、そうよ。ついさっき、決まったの」

「でもμ'sのおかげで、その話はなかったことになったんじゃ……?」

理事長「聞いてなかったのかしら? そのμ'sのせいで、この廃校が再び決定したのよ」

「ええっ。ちょっとそれ、困るんですけど……」

理事長「……なんなの、あなた」

穂乃果「雪穂……」

理事長「ゆきほ?」


「……わ、私は――」





雪穂「――この学院の、『入学希望者』です」
  


530: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/21(日) 22:04:30.62 ID:1w8H1aZw.net

  
理事長「入学希望者……?」

理事長「……あぁっ! 思い出したわ。確かあなた、穂乃果さんの……」

雪穂「……妹の、雪穂です」

理事長「雪穂ちゃんっ! そう~、あなたも高校受験をするような歳になったのねえ」

理事長「でも、残念ねえ……。音ノ木坂はもう、入学希望者の募集はしてないの。ごめんなさいね?」

雪穂「だ、だから困りますって、いきなりそんな……」

理事長「そうは言っても、もう決めてしまったことですしねえ……。あっ、そうだわ――」

理事長「こんなちっぽけな学院より、『UTX学院』を受験してみてはいかがかしら? 倍率は高いけど、いいわよぉ、あそこは」

雪穂「……そっちはもう、やめたんです」

理事長「えっ?」


山田「……? なんだあいつは……」

海未(ゆ、雪穂……っ!? 何をしてるのですかっ!?)

海未(相手は体罰を平気で許可するような、凶悪なほのキチ……。き、危険です……っ!)
   


531: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/21(日) 22:13:45.00 ID:1w8H1aZw.net

 
雪穂「り、理事長先生。あの、ですね……」

理事長「……あなた震えてるけど、大丈夫?」

雪穂「っ!!」ビク

穂乃果「お、お願いです、理事長っ! 雪穂には何もしないでっ!」

理事長「あらやだ。私があなたの大事な妹さんに、何をするっていうの?」

雪穂「……ぅ」

雪穂「その……。μ'sを見て、惹かれて、この学院に入りがっている中学生が、たくさんいるんですよ」

雪穂「私も、その一人です。だから困るんです、今更廃校とか言われても……」

理事長「でも、理事長の私が決めたことですからねぇ」

雪穂「……私、この学院に入学したら、やりたいことがたくさんあるんです」

理事長「はぁ?」

雪穂「知らないことを色々勉強して、新しい友達を作っていっぱい遊んで、スクールアイドルだってやりたい……」

雪穂「私はこの音ノ木坂で……っ! 『高校生』がしたいんですっ!!」

理事長「……」

穂乃果「雪穂……」


雪穂「そんな私の、『未来』を――大人の都合で、勝手に奪わないでよっ!!!」
  


532: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/21(日) 22:22:20.26 ID:1w8H1aZw.net

 
理事長「……」

雪穂「はぁ、はぁ……」

理事長「ふぅん……そうね。貴重な意見、ありがとう」

理事長「……ところであなた、校門に貼ってあった張り紙を、見なかったのかしら?」

雪穂「……えっ?」

理事長「『関係者以外の学院敷地内への立ち入りを禁ずる』――妹でも入学希望者でも、あなたが『部外者』なことに、変わりはないわ」

理事長「どうやらあなたにも、罰を与える必要がありそうね……っ!!」ゴォッ

雪穂「っ!! ひぅっ――」



ガシッ



理事長「……っ!?」

雪穂「……あっ」



 
 

女子A「……よく言った、雪穂ちゃん。かっこよかったよ」

女子B「あはは。私やっぱりあなたのこと、好きだなぁ」

雪穂「あ、あの時、廊下で会った……」
   


533: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/21(日) 22:26:07.17 ID:1w8H1aZw.net

 
理事長「……離してくれるかしら?」

女子A「あんたの方こそ、穂乃果ちゃんを離してよ」

理事長「あらあら、まだ罪を重ねる気なの? 退学の次は、いよいよ除籍かしらね」

女子B「退学でも除籍でも、好きにすればいいじゃんっ!!」

理事長「……っ」

女子A「ねえ、みんなもさ……っ! 中学生にここまで言わせておいて、いつまで黙って見てるのっ!!?」


「……っ!」「うっ……」


女子B「この子が入りたがってる、音ノ木坂の……私たちは、生徒でしょっ!? だったら見せてやろうよ、みんな……っ!」


女子A、B「「音ノ木坂に通う生徒の、底力をっ!!」」


ザワッ……


「……はは、情けないな、私たち」「そうだ……そうだよね」「退学なんて、恐れてちゃ……何も、始まらないよっ!」

「みんな一緒なら、怖くないっ!」「いや、やっぱり退学は嫌だよ……」「だったら力ずくで、取り消しにさせてやればいいだろっ!」

「だからそんなのどうでもいいんだってっ!」「私は、高坂さんの匂いが嗅ぎたいだけなのっ!!」


女子A「……なんでもいいよ。みんな目的は、一緒なんだから――」


「「「先生たちと、戦おうっ!!」」」
 


534: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/21(日) 22:29:42.61 ID:1w8H1aZw.net

  
「よっしゃーっ!!」「μ'sを離せーっ!」「穂乃果ちゃんを返せーっ!!」「廃校なんて認めないんだからぁっ!」


理事長「……っ!?」ジリ


海未(……『世界の外』からやってきた、雪穂の言葉によって、みんなの心が再び燃え上がった……)

海未(全校生徒たちが、教師陣と戦うことを、決意した……っ!)


ワァァ


理事長「……」

女子A「さぁ、どうするの、理事長……っ!」

女子B「どんな罰を、受けようが……私たちはもう、止まらないよっ!!」

理事長「……そのようですね」

理事長「あなたたちを従わせるにはやはり、『体罰』しかないようです……。こんな前時代的な指導方法は、あまり好みではないのですが」

女子A「なっ……この人数を相手に、やる気っ!? 200人だよっ!?」

理事長「穂乃果さん、少し離れててくださいね。必ず後で迎えに来ますから」ニコッ

パッ

穂乃果「あっ……」

理事長「……私が教職についてから、一体どれだけの人数の生徒を相手取ってきたと思っているんです?」

理事長「200人程度の子供たちの、喚き声を鎮めることくらい――私にとっては、造作もないことです」
   


535: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/21(日) 22:34:47.85 ID:1w8H1aZw.net

   
山田「……どうやら今度こそ本気で、やる気らしいな。くっ、ははっ」

海未「っ!?」


ザッ


山田「上等だ、高校生。この先どうなっても、知らんぞ」パキパキ

笹原「ふふっ。生徒たちと向き合う、良い機会ですね」

深山「よーし、お前たちの熱い想いをぶつけてみろっ! 私も、全力でいくぞっ!」

山内「み、みなさーん、お静かにっ! いい子だから、落ち着いてーっ!」 


ジリ、ジリ……


真姫(これは……教師と生徒の、全面戦争っ!?)

海未(ほのキチ同士の、力のぶつかり合い……。そんなことになれば、どれだけの怪我人が出るか分かりませんっ!)

希(違う……こんなの、ウチらは望んでない……っ!)

絵里(ど、どうすれば……どうやってみんなを、止めれば――)



穂乃果「――お願いしますっ!!!」



理事長「……」ピク

「「えっ……?」」


穂乃果「はぁ、はぁ……一曲だけ……」

穂乃果「一曲だけで、いいんです……っ」

穂乃果「あと一曲だけ、歌わせてくれたら……先生の言うこと、聞きます。だから……」

「……」

穂乃果「みんなも、お願い……私たちを、信じて……」

「穂乃果……」「穂乃果ちゃん……」「……高坂さん」


穂乃果「一曲だけ、私たちにください……っ!」
    


536: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/21(日) 22:35:26.00 ID:1w8H1aZw.net

 
海未「……」

にこ「一曲……」

凛「……みんな」

絵里「ええ……っ!」

ことり「……私たちからも――」


μ's「「お願いします……っ!」」


「ちょっと待ってよ。こんな状況で、まだ歌うつもりなの?」「でも、何か考えがあるのかも……」「なによ、考えって……」


教師A「り、理事長……」

理事長「……」フゥ


理事長「このままでは埒があきません……いいでしょう。それであなたたちが、納得するというのなら……」

理事長「本来なら校則違反ですが――今から数分間のμ'sの活動を、特別に認めます」


「「――っ!!」」


理事長「ライブ終了後、μ'sの皆さんも含めた全校生徒の、退学手続きを速やかに行います。よろしいですね?」

穂乃果「……はい」

理事長「……では」


カツカツ……



理事長「じっくり聞かせてもらいますよ。あなたたちμ'sが歌う、『最後の歌』を――」
    


537: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/21(日) 22:43:46.55 ID:1w8H1aZw.net

  
――――――


「穂乃果ちゃんたちのおかげで、ひとまずこの場は落ち着いたね……」

「でも、今更μ'sがライブを続けたって、何の意味があるの……?」

「バカっ! μ'sは次の歌で理事長の気持ちを動かして、廃校を取り消しにさせるつもりなのよっ!」

「はぁ? なにそれ、くだらない……」「だとしてもそんなことできるの? あの理事長を、感動させることなんて……」

「うっ……」「……信じようよ。私たちの大好きな、μ'sを――」


にこ「なっ……」


にこ「なんで、あと一曲だけなのよ……っ!? どうせなら三曲くらいはやらせてもらえるように、頼みなさいよっ!」

穂乃果「だ、だって……一曲じゃなきゃ理事長、絶対納得してくれなかったもん……」

海未「……そうですね。私たちの決意を示すには、やはり次の一曲に全てを賭けるしかないでしょう」

にこ「にしても、一曲って……っ! 絞りきれないわよ、そんなの……」

真姫「時間はないわ。理事長の気が変わる前に、早く決めなきゃ」

真姫「その『一曲』……。一体、何の曲を、歌うのか」

ことり「うっ……」

ミカ「きょ、曲が決まったら言ってっ! 私がヒデコたちに伝えるからっ!」

絵里「……曲の終盤で止められてしまった以上、『Snow halation』をもう一度歌うわけにはいかないわよね……」

凛「うわあぁあ~、どうしようっ!?」
    


538: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/21(日) 22:53:15.60 ID:1w8H1aZw.net

  
真姫「やっぱりライブで一番盛り上がる、『No brand girls』かしら……?」

海未「いえ、ここは理事長が好きだという、『ススメ→トゥモロウ』でしょう……っ!」

凛「り、凛は『愛してるばんざーい!』が好きだにゃっ!」

ことり「ゲリラライブでμ'sの知名度を上げた、『Wonder zone』とか……っ?」

希「ハロウィンイベントで踊った、『Dancing stars on me!』も評判はええでっ!」

花陽「A-RISEとも渡り合った、『ユメノトビラ』がいいと思いますっ!」

にこ「やっぱりにこにーの、『まほうつかいはじめました!』じゃないっ!?」

絵里「『START:DASH!!』を、もう一度9人で歌い直すっていうのも……っ!」

ミカ「もうっ! どれにするの~っ!?」

海未(ダメです、全然決まりません……っ!)

海未(し、しかし一曲を選ぶとしたら、やはり『No brand girls』でしょうか……っ!?)

海未「ほ、穂乃果……っ!」

穂乃果「……」

海未「穂乃果っ! あなたの意見を、聞かせてくださいっ!」

穂乃果「……私は――」
  


550: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 20:43:53.59 ID:V2pPHtQf.net

  
穂乃果「――が、良いと思う」

海未「……えっ」

真姫「っ!!」

ことり「えっと……」

絵里「……それって――」


『そういえば結局、曲の方はどっちでいくのかにゃ?』

『最終的な判断はあなたに任せるって、言っておいたと思うけど。曲、どっちにするか決めた?』

『う、海未ちゃんは、どう思う……?』

『私は、最初に決めていた方にすべきだと思います』

『じゃあ明日私たちが踊るのは――Snow halationで、決まりね』


絵里「明日のラブライブで歌う予定だった、『もう一つの方』の曲……?」

にこ「……いや、確かに私も、頭に浮かんではいたわよ。でも……」

にこ「でもあれは結局、時間がなくて、ほとんど練習できなかったじゃない。だから、『Snow halation』の方に決めたんでしょ?」

海未「ええ。『人前で披露できる完成度に達していない』……確かに今朝、私はそう判断しました」

海未「しかし……」チラッ

穂乃果「大丈夫。今ならきっと、踊れるよ」

にこ「な、なによそれ……」

穂乃果「……私、思うの。きっと『この曲』じゃなきゃ、ダメなんだ……。この曲は今ここで、歌わなきゃいけないんだよ」

穂乃果「根拠はないけど……。そう、思うの」
   


551: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 20:50:14.09 ID:V2pPHtQf.net

  
真姫「……」

凛「でも……確かにあの曲は、なんだか……」

花陽「他の曲とは何か違うような……不思議な感じというか……うぅん、なんだろ?」

希「……スピリチュアルな曲、なんは確かやけど」

ことり「やって、みる……?」

海未「……そうですね」

絵里「穂乃果を……私たちのリーダーを、信じましょう」

穂乃果「……ありがとう、みんな」



教師A「理事長、こちらに椅子を用意しました」

理事長「ありがとうございます」ストン

教師C「ふん、あなたも甘いですね。結局ライブの続行を許してしまうなんて」

理事長「あらぁ、まだ怒ってらっしゃるんですか? 軽いジョークでしたのに」クスクス

教師C「その態度が気に食わないんですよっ! もうっ!」

教師B「お、落ち着いてください……。でも本当にこれでよかったんですか?」

理事長「はい。まあなんだかんだ言って、私も彼女たちのファンの一人ですしね」

理事長「今日で活動終了ですから……最後に一曲くらい、生で聴いてみたくなっただけですよ」

教師B(終わらせたのはあんたでしょうに……)

理事長「ふふっ、楽しみだわぁ。一体何の曲をやるのかしら? あの曲かしら? それともあの曲? もしかして――」
    


552: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 20:55:31.28 ID:V2pPHtQf.net

  
ミカ「――了解っ! もしもし、ヒデコっ!? 次の曲だけど――」


穂乃果「……ねえ、みんな」

ことり「どうしたの、穂乃果ちゃん?」

穂乃果「私……スクールアイドルで、よかった」

にこ「……なによ急に」

真姫「ちょっと、まさか本当にここで、μ'sを終わらせる気じゃないでしょうね?」

穂乃果「違うよ。私たちはこの場面を乗り越えて、まだまだ続いていくんだ」

穂乃果「……だけどμ'sが『普通のアイドルグループ』だったら、私たちはきっと今、この舞台には立ててなかったと思うの」

穂乃果「私たちが今こうして、音ノ木坂のために戦えるのは……。μ'sが、『スクールアイドル』だからなんだよね」

花陽「……どういうことですか?」

穂乃果「だって、スクールアイドルは――『学校のために活動するから』、スクールアイドルなんだもんっ」

希「穂乃果ちゃん……」

絵里「……ふふっ、そうね」

穂乃果「『音ノ木坂を守ること』。いつだってそれが、μ'sの活動なんだ……っ!」

凛「あはは……っ!」

海未「ええ、その通りですっ!」

穂乃果「それじゃあみんな、いつも通り――『アイドル活動』を、始めようっ!!」


「「おーっ!!」」
   


553: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 20:55:59.01 ID:V2pPHtQf.net

   
穂乃果「――お待たせしましたっ! 今日のスペシャルライブ、最後の曲は――また、新曲ですっ!」

穂乃果「これが本当に最後なんで……私たちも、全力で歌って、踊るんでっ!」

穂乃果「先生も、みんなも、全力で楽しんでいってくださいっ! いきますっ!」 


シン……




スゥ……ハァ……



穂乃果「……『新曲』――」
    


554: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 21:12:48.45 ID:V2pPHtQf.net

  
――――――――――
――――――――
――――――
――――


『8日前』……


海未「……真姫、少しよろしいですか?」

真姫「どうしたの?」

海未「昨日、あなたから渡された――」


『昨日、家に帰って、部屋に戻ったらね……。私の机の上に、置いてあったの』

『だけどね、私はこんな物、知らない。なんで机の上に置いてあったのかも、分からない。正直、どうしたらいいのかも分からない……』

『だから――あんたに、託すわ』


『もちろんこれをどうするかは、あんたの自由よ。責任は全部、私が負うわ』


海未「――『音源』、なのですが……」

真姫「ああ……ごめん、急に渡されて、困ったわよね」

真姫「……聴いた?」

海未「ええ……」

真姫「どう……だった?」

海未「……なんというか、もちろん、とても良い曲ではあったのですが……」

海未「それ以上に、なんだか……不思議な感じがする、曲でしたね」

真姫「……うん。私もまったく、同じ感想よ」

海未「それで……一応これ、歌詞なのですが」スッ

真姫「えっ! い、一日で書き上げたのっ!?」

海未「はい。確認してもらえますか?」

真姫「……わ、分かったわ」ペラ
  


555: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 21:15:50.23 ID:V2pPHtQf.net

    
……

真姫「……」

海未「……どうです?」

真姫「……あんた、本気?」

海未「はい?」

真姫「本気で、こんな歌詞を……たった一日で、書き上げたって言うの?」

海未「……そうですが」

真姫「だとしたら、ちょっとビックリね……。あんた、ひょっとして天才なんじゃないの?」

海未「いいえ、きっとすごいのは私じゃなくて、この曲ですよ」

海未「この曲を聴いていたら、自然と頭の中に、歌詞が湧いてきたんです。メロディにぴったり当てはまるような、歌詞が……」

海未「まるで、『既に決められていたかのように』、自然に……こんなこと、今まではありませんでした」

真姫「……やっぱり、何かあるわね、この曲には」

海未「ええ……本当に、不思議な曲です」

真姫「……」

海未「……真姫。本当に、覚えていないのですか?」

真姫「昨日、言った通りよ。私はこんな物、知らない」

海未「でもあなたの机の上に、置いてあったのでしょう?」

真姫「そうだけど……私じゃないわよ」

海未「……」

真姫「この曲を作ったのは、私じゃない……。悔しいけど、今の私じゃこんな曲、作れっこないもの……」
 


556: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 21:18:48.57 ID:V2pPHtQf.net

  
海未「……作れっこないというのは、技術的に、ですか?」

真姫「ううん、そうじゃない……。今の私に足りないのはきっと、『経験』――」

海未「経験……?」

真姫「ええ。私ね……この曲を最初に聞いた時、思っちゃったのよ」

真姫「この曲なら――」


真姫「この曲なら、『μ'sの最後の曲』に、ふさわしいな、って……」


海未「……どういうことですか? 最後って……」

真姫「分からないわよ。『μ'sの最後』なんて、今まで考えたこともなかったのに……なぜかそう、思っちゃったのよ」

真姫「でもきっと、これからたくさんの経験を通して、『μ'sを最後までやり遂げた』とき……ようやく私はこの曲を、作れると思うの」

真姫「だから、今の私じゃ作れるわけがない。今の私程度の、『経験値』じゃ……」

海未「……」

海未「……今のあなたじゃ、作れないとしても――」

海未「『もう一人のあなた』なら、どうですか?」

真姫「……えっ?」

海未「私、思うんです。もしかして、この曲は……」

海未「もう一人のあなた……つまり、『ほのキチのあなた』が、作曲したのではないかと」
   


557: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 21:25:22.90 ID:V2pPHtQf.net

 
真姫「……なっ。なんで、そうなるのよ」

海未「……にこから聞いたんです。ほのキチになったあなたは、凛と違い、すぐに捕まえることができて……なんというか、『チョロかった』と」

真姫「チョロいって言わないでっ!!」

海未「ご、ごめんなさい……。とにかくほのキチになったあなたは、運動能力においてはさほど、元のあなたと変化がなかったようです」

真姫「……まあ、それは私自身もなんとなく、覚えてるけど」

海未「では、ほのキチになったあなたは、一体何が変わっていたのでしょう?」

真姫「……」

海未「……ほのキチのあなたは以前、こんなことを言っていました――」


『やっぱりなってみないと分からないことって、あるわよね』

『ほのキチになってから、色々なことを考えるようになった。目が覚めたように頭がスッキリして――』


海未「――『曲作りも捗るようになった』、と」

真姫「……っ!」

海未「『作曲能力の進化』。それが、あなたの覚醒だったのではないですか?」

海未「覚醒により、作曲の才能が限界まで引き起こされた、あなたは……これから体験するはずだった様々な経験を『通り越して』、この曲を作ってしまったんです」

真姫「そんな……そんなことが……」

海未「μ'sの最後――いつか訪れる未来で、あなたが作るはずだった曲を……ほのキチのあなたが先に、作ってしまったのですよ」
   


558: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 21:28:35.81 ID:V2pPHtQf.net

  
真姫「……そんなの」

真姫「そんなの、無理よ。いくら覚醒したほのキチでも、『未来の曲』を作るなんて……」

海未「無理、かもしれませんね。ほのキチのあなたが、もしも『平常時』だったのなら」

真姫「は……?」

海未「……あの時のあなたは、『穂乃果の練習着』を持っていました」

真姫「っ! まさか――」


『これにはほのスメルが、たっぷり詰まってる……。補充には十分なほどにね』

『ど、どうしてあなたが、それを……』

『ことりから借りたのよ』


海未「――そう。あの練習着を使い『ほのスメルを補充して』、あなたは『最高のパフォーマンスを発揮した』んです」

真姫「っ!!」

海未「……今思い返してみれば、あれも本来は『作曲に使う』つもりで、ことりから借りていたのでしょう。この曲の作曲に、全力を注ぐために……」

真姫「……わ、分からないわ」

真姫「なんで私は、そんなことを……? ほのキチなんて、穂乃果の匂いが嗅ぎたいだけの存在なはずなのに……」

海未「あなたがもう一度ほのキチになるようなことがあれば、その答えも見つかるかもしれませんね」

真姫「な、ならないわよ……もう、二度と」

海未「冗談です。とにかくこの曲の正体は、『μ'sの最後の曲』で……それを、ほのキチのあなたが作った。そういうことです」
  


559: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 21:32:52.62 ID:V2pPHtQf.net

  
真姫「……どうする? この曲」

海未「一応振付も、イメージとしてはあります」

真姫「ちょっと……まさかこの曲を、ラブライブでやるつもり?」

海未「あと一週間ちょっとあります。全力で練習に取り組めば、あるいは……」

真姫「……うぅん」

真姫「とりあえず、みんなにも相談しましょう。本命は一応、『Snow halation』のつもりで練習してきたんだし」

海未「……そうですね。しかしみんなにはこの曲の正体については、伏せておいたほうがよさそうですね」

真姫「ん……確かに。そこら辺の話はラブライブが終わって、落ち着いてからね」

真姫「って、そういえばこの曲、タイトルはあるの?」

海未「……浮かんではいます」

海未「しかし本来ならばこれは、まだこの世に存在しないはずの曲です。そんな曲にタイトルをつけても、いいものでしょうか」

真姫「そうね……。でも新曲として披露するなら、一応つけておいた方がいいんじゃない?」

海未「分かりました。では、『仮に』ということで……」

真姫「……聞かせてくれる?」

海未「……この曲の、タイトルは――」
  


560: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 21:34:27.24 ID:V2pPHtQf.net

  
――――――――――
――――――――
――――――
――――




真姫「……まさか、この曲をこんな場面で歌うことになるとはね、海未」ボソ

海未「ええ……。きっと穂乃果もみんなも、薄々気づいていたのでしょう」

海未「私たちにとってこの曲が、特別なものであることを――」





 
(まだ存在するはずのない……『未来から逆輸入した』、新曲――)


 



「「『僕たちはひとつの光』」」

 


561: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 21:58:21.23 ID:V2pPHtQf.net

   

♪~僕たちはひとつの光(仮)(新曲) / μ's



穂乃果「Ah! ほのかな予感から始まり……」


希「Ah! 希望が――」 凛「星空駆けて――っ!」

花陽「花を咲かせる――」 にこ「にっこり笑顔は――っ」


海未、絵里「ずっと、同じさ――」

ことり、真姫「――友情の笑顔っ♪」


海未(今朝の時点では、とても人前で披露できる完成度ではなかった、この曲……)

海未(……それもそのはずです。あの時はまだ、私、穂乃果、ことりの三人は、全く本調子ではなかったのだから)

海未(私たち三人が足を引っ張った状態では、練習を前々から行っていた『Snow halation』ならともかく、この曲はとても歌えなかった――)


絵里、希「忘れない、いつまでも忘れない――」

凛、にこ「こんなにも心が一つになる――っ!」

海未、真姫「世界を見つけた――っ♪」


海未(――でも今は、違う)

海未(穂乃果は自信を取り戻し、ことりは気持ちを新たにし、私は迷いを断ち切った――)

海未(……そして今、μ'sは一つになったのです)

海未(今の私たちなら、少しくらいの練習不足など、吹きとばして――この曲を完璧に歌い、踊りきれるっ!!)


穂乃果、凛「よろこび――っ」 希、花陽「ともに――」


ことり、にこ「歌おう、最後まで――」


  
μ's「「――僕たちはひとつっ!」」
   


562: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 22:04:01.74 ID:V2pPHtQf.net

  

「「小鳥の翼がついに大きくなって――」」

「「――旅立ちの日だよっ♪」」


「「遠くへと広がる海の色暖かく――」」


「「夢の中で、描いた――」」

「「絵のようなんだ切なくてっ♪」」


「「時をまきもどして――みるかい……?」」



「「……No no no、いまが最高っ!」」


~♪


「ね、ねえ……」「うん……」「あははっ。すごいよ、やっぱり……」

「グスッ……うんっ」「μ'sはやっぱり、最高だっ!」「……♪」



(私たちの歌を聴いて、みんなの心が浄化されていく……)

(私たちと一緒に踊って、みんなの匂いが広がっていく……)


(みんなが私たちのライブを、心から楽しんでくれて……)

(みんなにとってこの時間が、この空間が、『大切な思い出』になっていく――)
  


563: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 22:05:44.71 ID:V2pPHtQf.net

   
フワァ……ッ!


(……そしてみんな、あるべき姿に戻っていく)



女子M「穂乃果ーっ! ことり、海未ーっ!」

女子N「あんたたち、サイコーっ!」


同じクラスの、友人たちも……


ギャルA「μ'sーっ! いえーいっ!」

ギャルB「ライブって、楽しいな……っ!」


隣のクラスの、同級生たちも……


部長「いいねー、μ'sっ! ははっ」

部員「なんだ、アイドルの方もちゃんとやれてるじゃん、園田……」


同じ部活の、先輩たちも……


一年生A「μ's、かっこいいなぁ……。すごいなぁ、先輩たち……っ!」

一年生B「花陽ちゃんたちも、すごいねっ! キラキラしてる……っ!」


数少ない、後輩たちも……


委員長「ちょっと、いいじゃないμ'sっ! どうして今まで教えてくださらなかったのっ!?」

部下「委員長が全然興味持ってくれなかったからですよっ!」


どこかのクラスの、委員長も……
  


564: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 22:07:33.53 ID:V2pPHtQf.net

  

――園田さん……っ!



海未(……?)チラッ

海未(っ! あっ……)


『彼女は、辿り着けなかった者です』

『たすけて……そのだ、さぁん……っ』


海未(あの時の……私が救えなかった、女子生徒……。こちらに、手を振って……?)


ブンブン



――ありがとうっ!



海未(……)



海未(……いいえ、こちらの方こそ)


海未(ありがとうございます。元に戻ってくれて……私たちのライブを、楽しんでくれて――)


名前もクラスも知らない、生徒も……
  


565: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 22:09:33.37 ID:V2pPHtQf.net

  
理事長「……なに、この曲」

山内「わぁ……すごいです、みなさぁん……っ!」ウルッ

深山「な、なんて素敵な曲なんだーっ! うおおおっ!」ボロッボロッ

深山「お前たち、私も混ぜろーっ!」ダダッ

山内「もう我慢できませんっ! もっと近くで見たいですっ!」ダッ

山田「おいおい……」


「山田先生ーっ!」「こっちに来て、一緒に楽しもうよーっ!」


山田「……」

笹原「……生徒が呼んでますよ、先生。行かれては?」

山田「教師として、それはできませんね」

笹原「そうですか? 私の敬愛する山田先生なら、きっと真っ先に生徒の輪の中に飛び込んでいくと思ったのですが」

山田「……あぁー、もう」

山田「あなたの方こそ、いつまでも澄ました顔してないで、素直になったらどうなんですか?」

笹原「……ふふっ、バレてました?」

タッタッタッ……


教師A「いいですね、μ's……」

教師B「今度家族も連れて、ライブに行ってみようかしら……」

教師C「と、年をとると、涙腺が緩んでいけませんわ……っ!」グスッ

教師D「ん……♪」


いつも私たちを指導してくれる、先生方も……
   


566: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 22:14:54.79 ID:V2pPHtQf.net

  
理事長「……」


理事長(これがμ'sの、彼女たちの、新曲……?)

理事長(歌詞もメロディも、とても素敵……だけど)

理事長(なにかしら、この不思議な感覚は……)

理事長(この言葉にできない、気持ちは……)

理事長(浮かんでくる、この情景は……)

理事長(……)


理事長(……それに、この違和感は、なに?)

理事長(今の彼女たちの歌とダンスからは、どこか『ぎこちなさ』を感じる……)

理事長(新曲だから……練習不足だから? あるいはライブ終盤の、疲労からくるものなのか――)

理事長(いいえ、そんなはっきりとしたものじゃない……。これはきっと、彼女たちをずっと見てきた人間にしか、分からないくらいの……)

理事長(そんな些細な、『ぎこちなさ』……そう、例えるなら――)


理事長(まるで『未来の自分たちに追いつくために、必死に背伸びをしている』かのような――)


理事長(そんな、彼女たちの姿が……どうしてこんなにも、心に響くの……?)
  


567: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 22:16:54.37 ID:V2pPHtQf.net

    
「理事長ーっ!」


理事長「……えっ?」


「ほら、理事長も、いつまでも座ってないでっ!」「私たちと一緒に、踊りましょうよっ! ねっ?」

スッ


理事長「……」


理事長「『未来』、か……」


理事長(μ'sだけじゃない……。この場所には『未来』が、溢れている――)

理事長(そんなたくさんの『未来』を、導いて、見守るのが、私たちの役目……)

ギュッ

理事長(……全く、どうしてそんな大事なことを私は、忘れてしまっていたのかしらね)


「こっちですよ、理事長っ!」「行きましょうっ!」


理事長「ふふっ、もう、押さないで……」


いつもμ'sを見守ってくれていた、理事長も。


みんなみんな、戻っていく。

歪んでいた世界が、元の形に戻っていく。

私たちの大好きな音ノ木坂が、戻ってくる――
   


569: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 22:17:51.20 ID:V2pPHtQf.net

  
「「小鳥の翼がついに大きくなって――」」

「「――旅立ちの日だよっ♪」」


「「遠くへと広がる海の色暖かく――」」


「「夢の中で、描いた――」」

「「絵のようなんだ切なくてっ♪」」


「「時をまきもどして――みるかい……?」」



「「……No no no、いまが最高っ!」」



「「だって……だって――」」




「「――いまが、最高っ!」」



~♪



穂乃果「……Ah! ほのかな予感から始まり――」



μ's「「Ah! 光を追いかけてきたんだよ……――」」
    


571: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 22:24:39.85 ID:V2pPHtQf.net

   
……

ワアァァ……


「にこにーっ!」「凛ちゃんっ!」「絵里先輩ーっ!」「真姫ちゃーんっ!」「海未ーっ!」

「希せんぱーいっ!」「ことりちゃんっ!」「花陽ちゃーんっ!」「穂乃果ちゃぁーんっ!」

「μ'sーっ! ありがとーっ!」「さいっこーだったっ!」「明日のラブライブ、絶対応援行くからっ!」

「これからも、頑張ってねーっ!」「めっちゃ楽しかったーっ!」「ありがとぉーっ!」「μ'sーっ!」



穂乃果「……」

海未「はぁ、はぁ……」

ことり「はぁ……あははっ」

凛「やった……やったよ……」

花陽「うん、うん……っ」グスッ

真姫「……で、どうするの。一人一人戻ったかどうか、確認してくの?」

希「ふふっ。その必要はないと思うで?」

絵里「ええ。少なくとも、ここから見えるみんなの笑顔を、見る限りは……」

にこ「……にしても、いい気なもんね。さっきまであいつら、穂乃果穂乃果言ってたくせに――」


ザッ


にこ「あんたたち、今度からは、このにこにーだけを見なさいよねーっ!!」

ことり「今日は本当に、ありがとーっ!」

凛「これからも応援、よろしくにゃーっ!」

花陽「明日、ラブライブの最終予選に出るんで、よかったら来て下さいっ!」

真姫「ていうか、絶対みんな来なさいっ!」

希「今日のことは、他の人たちには内緒やでーっ!」

絵里「先生方も、ありがとうございましたっ!」


ワアァァ……
   


572: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 22:26:29.34 ID:V2pPHtQf.net

    
穂乃果「はぁ、ふぅ……」フラッ

海未「ほ、穂乃果……」

穂乃果「……あはは。流石に、疲れちゃった――」

ダキッ!

穂乃果「わっ……」ドサッ

海未「やりました……やりましたよ、穂乃果っ! すごいですっ!!」ギュッ

海未「μ'sは……っ! 私たちは二度、この学院を廃校から救ったんですっ!!」

穂乃果「そうだね……はは……」

海未「穂乃果……っ! 穂乃果ぁっ!」ギュゥ

穂乃果「海未ちゃん、くるしい……」

海未「あなたは本当に、すごいです……っ! 穂乃果っ!」

穂乃果「私じゃないよ……みんなの、力だよ」

海未「みんな、あなたを信じてたんです……っ!」

海未「よかったぁ……っ! あなたを信じて、本当によかったですっ!」グスッ

穂乃果「……」
    


574: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 22:27:59.26 ID:V2pPHtQf.net

     
穂乃果「ねえ、海未ちゃん……?」

海未「な、なんですか、穂乃果……っ!?」

穂乃果「私……私ね――」


  



ことり「……?」チラッ

  

 


ことり「――っ!? ちょ、ちょっと待って、穂乃果ちゃんっ!!」


ことり「マイクまだ、入ったまま――」






穂乃果「――海未ちゃんのことが、好き……」

穂乃果「……です」

穂乃果「私と、お付き合いしてください。海未ちゃん……っ」
    


577: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 22:31:07.04 ID:V2pPHtQf.net

  
海未「……」


シン……


「「「……」」」




「「「ええええええぇえぇぇぇぇ――っ!!?」」」




「えっ、えっ、好きって……?」「うそ、今のって……」「こ、告白、だよね……?」

「いや、なんでこのタイミングでっ!?」「す、すごい、全校生徒の前で……」「きゃーっ!!」


凛「……お、おぉ」

花陽「わぁ~////」

にこ「……」パクパク

真姫「何してんのよ、ばか……っ!///」

希「くくっ、大胆やなぁー」

絵里「さ、流石、穂乃果ね……///」



ことり「……」


『私……これが全部終わったら、海未ちゃんに告白するんだ――』


ことり(だからって何も、終わった『直後』じゃなくても……)


ことり「……あははっ。やっぱり敵わないなぁ、穂乃果ちゃんには」
     


579: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 22:35:26.95 ID:V2pPHtQf.net

  
海未「全く本当に、あなたという人は……」

穂乃果「……へへ」

海未「こっちの身にもなってください……顔から火が出そうです」

穂乃果「うん、私も……」

海未「……先に、言わないでくださいよ」ボソッ

穂乃果「えっ?」

海未「ですからっ」



海未「『私もあなたのことが好き』だと、言ってるんです……っ!」

穂乃果「……」

海未「『不束ものですが、どうぞよろしくお願いします』、と――私はそう、言ってるんですよっ!」

穂乃果「……そっか」

穂乃果「はは……」



穂乃果「いちばん、かも……」

海未「……はい?」

穂乃果「今まで生きてきた中で……いちばん、うれしい」

海未「……」


海未「……だから、先に言わないで下さいよ」
   


581: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 22:39:54.11 ID:V2pPHtQf.net

  
ワァッ


「きゃあああああああああぁああぁっ!!/////」「いいねいいね、熱いねーっ!!」「ひゅーひゅーっ!」

「くぅ~~っ! あんたたち、さいこーっ!!」「穂乃果ちゃん、海未ちゃん……っ!!」「二人とも――っ!!」



「「「末永く、お幸せにーっ!!」」」



真姫「もう全員揃って、ばっかじゃないのっ!///」

凛「穂乃果ちゃんの好きな人って、海未ちゃんのことだったんだにゃぁーっ!」

花陽「わわぁ~っ///」

絵里「希、あなた多分、知ってたわよね……?」

希「ん? まあ、なんとなくなー」

にこ「あ、アイドルは恋愛禁止なのよっ! ちょっとぉっ!!」


ことり「……二人とも」


ことり「本当に、おめでとう……っ!」



穂乃果「……えへへ」

海未「……」クスッ
    


583: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 22:42:55.21 ID:V2pPHtQf.net

  
穂乃果「大好きだよ、海未ちゃん……っ」

海未「私もです、穂乃果……っ!」


ギュゥ……



――こうして。


全校生徒に加え、教師陣も含めた、実に200人を超えるほのキチたちが、μ'sのライブにより正気に戻った。

学院を包み込んでいた『ほのスメル レベル5』は、この時点でレベル2に満たないほどにまで薄まっていたが――更に数時間を経て、完全に消失した。

こうして、音ノ木坂学院全体を巻き込んだこの事件は、収束を見せた。


その後、μ'sのメンバーは悩んだ末に、理事長にだけ、全ての事情を説明した。

彼女たちの真剣な言葉を信じた理事長は、生徒たちに、事件の詳細は伏せつつ、『今回起きたことを決して外では話さないように』と、呼び掛けた。


しかし、それでもメンバーの不安は、消えなかった。

生徒たちから説明を求められたら、どう話すべきか……。もしも事件のことが世間に知れ渡ってしまったら、どうなるか。

事件の規模、関係者の人数からして、その不安はとても拭いきれるものではなかった。
     


584: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/24(水) 22:45:29.19 ID:V2pPHtQf.net

  
――ただ、結果から言えば、それは全くの杞憂だった。

なぜなら生徒の中で、事件について語る者、真相を追及しようとする者は、たったの一人もいなかったのだから。

200人超の生徒の中で、『一人も』、である。

音ノ木坂は、驚くべきスピードで、普段の日常に戻っていった。


……ちなみに。

生徒たちの間には、この事件に関して一つだけ、共通した思いがあった。



『自分が同じ学校に通う女子生徒の匂いを必死に嗅ごうとしていたことなんて、早く忘れてしまいたい』。



多くの生徒にとって消し去りたい過去となった『悲劇』と、スクールアイドルμ's、幻の『校内スペシャルライブ』。

これらの出来事はきっと、これから先も、誰の口からも語られることはない――
     


608: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 19:23:41.57 ID:0HhIdLSM.net

  
――――――――――
――――――――
――――――
――――


翌日……


ラブライブ最終予選、当日――


ワァァァ


「『A-RISE』のみなさんでしたっ! ありがとうございましたっ!」


「きゃーっ! ツバサーっ!!」「英玲奈、あんじゅーっ!」「A-RISE、かっこよすぎーっ!!」



スタスタ……


英玲奈「ふぅ……やりきったな。ツバサ、あんじゅ」

あんじゅ「ええっ。練習の時以上のパワーが、出せた気がするわっ!」

ツバサ「そうね。恐らく、今までで一番良いパフォーマンスができたんじゃないかしら」

あんじゅ「ふふっ、予選は問題なく、通過できそうね」

ツバサ「……」

あんじゅ「ツバサ?」

ツバサ「……いえ、それはどうかしら」

英玲奈「なんだって?」

ツバサ「次は確か、彼女たちだったわよね?」

英玲奈「……あぁ。μ'sだな」

あんじゅ「あっ……」



「続いては、『μ's』のパフォーマンスですっ!!」

ワァァ……
    


609: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 19:25:01.02 ID:0HhIdLSM.net

   
あんじゅ「そっか。まだあの子たちが残ってた……」

英玲奈「確かに私たちの勝利を脅かす存在がいるとすれば、彼女たちしかいないだろうな」

あんじゅ「前に一緒にライブしたときも、すごかったしね。でも……」

あんじゅ「……確かにすごかったけど、正直『あのくらい』なら、私たちには及ばないと思うんだけど」

英玲奈「……そうだな。実力でいえば、まだ私たちの方が上だ。少なくとも、あの時点では……」

ツバサ「ええ。あの時点ではまだ、A-RISEとμ'sの実力には、大きな差があった……」

ツバサ「それに、あれからも私たちは死に物狂いで練習を続けてきた。その甲斐もあって、今日は最高のパフォーマンスができたと思う」

ツバサ「普通に考えれば、私たちに負ける要素はない。でも……」

ツバサ「……ここから先、何が起こるのかは、私でも予想がつかないわ」

あんじゅ「な、なにそれ……」

英玲奈「この数週間で、彼女たちはそこまで急成長したというのか……?」

ツバサ「ええ。何があったかは知らないけど……どうやら彼女たち、とんでもない『修羅場』をくぐってきたみたいね」

あんじゅ「修羅場……?」

英玲奈「……なぁ、ツバサ。どうしてそんなことが、分かるんだ?」

ツバサ「ふふっ、そうね……。なんていうか、こういうのは――」


ツバサ「――ニオイで、分かるのよ」




「――それでは、聴いてください……っ! 私たちの、新曲っ!」




「「『Snow halation』っ!」」
    


610: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 19:32:06.19 ID:0HhIdLSM.net

  
――――――――――
――――――――
――――――
――――

夜……


スタスタ


「ん~……っ」



にこ「……ふぅー。疲れたわねー」

希「あはは……。なんか体よりも、精神的に疲れたって感じやな」

絵里「みんな、すごく緊張してたものね。昨日も大変だったけど、やっぱりラブライブは特別だわ……」

にこ「そりゃそうよ。にしても本当、とんでもない二日間だったわね……。はぁ~」

希「でもこれでようやく、一息つけそうやん?」

絵里「そうね……。ゆっくり体を休めましょう」

にこ「……おっ、見なさいっ! ネットでのμ'sの評判、すごいわよっ」ピッピッ

希「ん……おお、めっちゃ褒められてるやんっ」

絵里「ふふっ、やっぱりこうして評価されると、嬉しいわね」

にこ「しかしラブライブの影響力って、すごいわ。今、A-RISEと並んで、μ'sもめちゃくちゃ話題になってる……」

にこ「今日のステージで、μ'sの未来は大きく変わったわっ! このまま超有名スクールアイドルになっちゃったりっ!?」

希「……」

希「なぁ、二人とも……」

にこ「ん? なによ」

絵里「どうかしたの、希?」

希「……μ'sって、これからどうなるんやろな?」

にこ「だから言ってるでしょ? これからもっともっと有名になって」

希「あっ、そうやなくて……ほら、ウチら三人とも、あと少しで卒業やん?」

絵里「……」

希「ウチらが卒業した後……μ'sはどうなるんかな、って」
   


611: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 19:36:49.77 ID:0HhIdLSM.net

  
にこ「……そんなの」

にこ「続けるに決まってるでしょ。6人で……。それか、新メンバーも加えて」

希「でもそれを決めるのは、ウチらやないやん?」

にこ「……」

絵里「そうね。私たちはただ、あの子たちがいつかすることになる『選択』を、見守るだけ……」

にこ「……そっか、卒業か。そういえばそうよね」

にこ「んー、じゃあその前にちゃんと、後輩たちに引き継がなきゃね」

希「引き継ぐ……? あぁ、にこっちは、部長やもんね」

にこ「それもだけどさ……これよ、これ」

にこ「『にっこにっこにーっ!』」

にこ「……あれだけ練習させたのに、未だにみんな下手なのよねえ」

絵里「引き継がせるのね、それ……」

にこ「全く、みんな全然なってないわ。アイドルにとって一番大事なのは、キャラ作りだってのに」

希「……そういえば、なんでにこっちは、キャラ作りをしようと思ったん? 誰かの影響だったりするん?」

にこ「ん? あーそれは、子供の頃、お姉ちゃんに……」

絵里「お姉ちゃん? えっ、にこが長女でしょ?」

にこ「……」

にこ「……あれ、なんでだっけ。思い出せない……」

希「……?」

絵里「……きっと、好きだったアイドルの影響とかなんじゃない?」

にこ「まあ、そんな感じかしらね。じゃ、私こっちだから」

希「うんっ」

絵里「それじゃ……」


「「またあとでっ!」」
   


612: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 19:48:12.10 ID:0HhIdLSM.net

    
――――

スタスタ……

凛「今日は緊張したけど、楽しかったにゃぁ」

花陽「ふふっ、そうだね」

凛「この一か月間は本当に、大変だったね」

花陽「うん。でも、私はこの一か月間を過ごせて、良かったと思うよっ」

凛「凛も、そう思うっ! かよちんの意外な一面も、見れたしねっ!」

花陽「……わ、忘れてって、言ったのに」グスッ

凛「わーっ! 違う違うっ! ほのキチのかよちんのことじゃなくてっ!」

凛「その……凛を必死に元に戻そうとしてくれた、かよちんのことだよ……」

花陽「えっ……? でも凛ちゃん、ほのキチの時のことは、覚えてないんじゃ……?」

凛「ううん、かよちんのことはね、ちょっとだけ覚えてるの。凛はそれを、夢だと思ってたんだけど……」

花陽「あっ……」


『思い出せない……。なんだかすごく長い、夢を見ていたような……』

『覚えてるのは、夢の中に、かよちんがいて……。かよちんの匂いがして……。かよちんが凛を、抱きしめてくれて……』


凛「夢の中でかよちんは、泥だらけになって……泣きながら、凛の名前を呼んでた」

凛「転んだり、突き飛ばされても、かよちんは何度も何度も、凛に向かってきて……」

凛「でもあれは、夢じゃなくて……。かよちんは、凛のことを元に戻そうとして、頑張ってくれてたんでしょ?」

花陽「……うん」
   


613: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 19:48:29.24 ID:0HhIdLSM.net

  
凛「凛、ビックリしちゃった。もちろん、かよちんがすごく頑張り屋さんなんだってことくらい、凛は知ってたけど――」

凛「それでも……あんなかよちんは、今まで見たことなかったから」

花陽「……」

凛「あの時のかよちん、すごくかっこよかったっ。凛のために頑張ってくれて、嬉しかったよっ!」

花陽「……凛ちゃん」

凛「凛、かよちんと親友で、本当によかった……。こんなにすごい女の子と親友だなんて、凛は幸せ者にゃっ!」

花陽「い、言い過ぎだよぉ……」

凛「もぉー、だからいつも言ってるでしょ? かよちんは本当はすごい女の子なんだから、自信を持っていいんだよっ!」

花陽「……きっとそれは、凛ちゃんだったからだよ」

凛「えっ?」

花陽「確かに、凛ちゃんを元に戻せたときの時のことは、私の中でもすごく自信につながってるの」

花陽「凛ちゃんのためだったら……私はこんなにも頑張れるんだ、って」

凛「かよちん……」

花陽「だから私も、凛ちゃんと親友でよかった。凛ちゃん、これからもずっと、親友同士でいてねっ」

凛「あはは、それ、昨日も言ったよー?」

花陽「そ、そうだったね……」
   


614: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 19:52:15.60 ID:0HhIdLSM.net

  
凛「あっ、それじゃあ凛、こっちだから……」

花陽「うんっ、また……」

花陽「……」


『これが全部、終わったらさ……。かよちゃん、凛と……』

『おっ、お友達に、なって――』


花陽「……ねえ、凛ちゃんっ」

凛「……? なぁに?」

花陽「凛ちゃんは……凛ちゃんだから」

凛「えっ?」

花陽「例えば、だけど……。凛ちゃんの中に、色々な『別の凛ちゃん』がいたとして、それでもみんな私にとって『凛ちゃん』なのに、変わりはないから」

花陽「だからどんな凛ちゃんだって、関係ないから……。みんなみんな、私の親友だよ」

凛「……?? ごめん、よく分かんないにゃ」

花陽「私はどんな凛ちゃんでも、大好きだってことっ」

凛「……ぷっ。なにそれ」

凛「そんなの、凛だって一緒だよっ。凛も、どんなかよちんだって……大好きにゃっ!」

花陽「ふふっ、ありがとう、凛ちゃんっ!」

凛「それじゃあね、かよちんっ!」

花陽「うん……また後でねっ!」


タッタッタッ……
  


615: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 19:52:48.12 ID:0HhIdLSM.net

  
凛「……」



『みんなみんな、私の親友だよ』

『どんな凛ちゃんでも――』



凛「……」クスッ








凛「……ありがとう、かよちゃん――」






凛「……」

凛「あれ? 凛、今なんか変だった……?」

凛「うぅん……」

凛「……ま、いっかっ!」

タッタッタッ……
 


617: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 20:06:12.64 ID:0HhIdLSM.net

  
――――――――

西木野家


真姫「ママ、ちょっといい?」

真姫ママ「どうしたの?」

真姫「これ……覚えてる?」スッ

真姫ママ「……あら、ちょっと前に私があげた、『ほのスメルを増幅させるスイッチ』じゃない」

真姫「うん。これね、実は壊れちゃったみたいなんだけど……」

真姫ママ「そうなの? じゃあすぐに直すわね」

真姫「な、直さないでっ! 絶対にっ!!」

真姫ママ「えぇっ?」

真姫「その……。それ、もういらないから、ママに処分してもらおうと思って」

真姫ママ「いらないの? せっかくあげたのに……。じゃあ、処分しとくわね?」

真姫「……ありがとう」

真姫ママ「えっと、確か明日は、燃えないゴミの日だったわねえ……」

真姫「待って待ってっ!! そうじゃなくて、もっと慎重な手順で処分してっ!?」

真姫ママ「えっ、でももう、壊れちゃったんでしょう?」

真姫「そうなんだけど、なんか怖いのっ!」

真姫ママ「……?? 何をそんなに怯えてるのか知らないけど、分かったわ」

真姫「……」ホッ
   


618: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 20:11:45.38 ID:0HhIdLSM.net

  
真姫ママ「そういえば……」

真姫「うん?」

真姫ママ「結局、『ほのスメル』ってなんだったの?」

真姫「あぁ、うーん……」


真姫「……秘密っ」

真姫ママ「あらあら……」


――――――

真姫の部屋

バフッ

真姫「はぁー、やっと終わった……」

真姫「……」




真姫「……」ペラッ


真姫(『僕たちはひとつの光』……)
   


619: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 20:12:24.52 ID:0HhIdLSM.net

  
真姫(ほのキチの私が、作った曲……。『未来の新曲』、か……)

真姫(元々は『私』が、作るはずの曲だったのに……本当、勝手なことしてくれたわ)

真姫(……でも、仕方ないわよね)

真姫(結局私はほのキチになったって、『μ'sが大好き』なのは、変わらなかったってことなんだから)

真姫(μ'sの集大成ともいえる、本当に素敵な曲……。こんな曲を作るなんて、やるじゃない、ほのキチの私……)

真姫(……だけどこの曲はまだ、この世に存在しないはずの曲)

真姫(だからしばらくこの曲には、ここで眠っていてもらうわ……)



真姫(……でも、きっといつかまた、もう一度この曲を歌う時が、来るはず)

真姫(これから先も、色々なことを経験して……『μ'sを最後までやり遂げた』、その時に――)



ピンポーン


「真姫ちゃーんっ! お友達が、迎えに来てくれたわよーっ!」



真姫「……」


真姫(でもまあ、『最後』のことなんて考えるのは……もう少し先でも、いいわよね?)
   


620: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 20:32:17.06 ID:0HhIdLSM.net

  
――――――――

穂乃果の部屋


海未「どうして負けるのです……っ!!」グシャッ

ことり「う、うみちゃぁん……」

穂乃果「海未ちゃん、顔怖い……」

雪穂「あっははははっ! 海未ちゃん、弱すぎっ!」

海未「くっ、もう一度ですっ!」

穂乃果「ま、まだやるのぉ……?」

ことり「さっきからずっと、トランプばっかりだよぉ……」

海未「当然ですっ! まだまだこれからですよっ!」

雪穂「はぁー、笑った笑った。じゃあ私、そろそろ自分の部屋に戻るね」

海未「待ちなさい雪穂っ! 勝ち逃げは許しませんよっ!」

雪穂「いや、もう何度やっても同じでしょ……」

海未「いいえ、そんなことはありません……っ! 私は絶対に、諦めませんっ!!」

雪穂「……海未ちゃんの諦めの悪さって、昨日は格好良く思えたけど、日常に戻ると一気に面倒臭く感じるね」

海未「っ!?」ガーン

ことり(海未ちゃんに口で勝てちゃう雪穂ちゃんって、すごいなぁ……)
   


621: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 20:39:52.79 ID:0HhIdLSM.net

  
雪穂「それじゃ、ごゆっくり~」

バタン

海未「……うぅ、雪穂にまた、嫌われてしまいました……」

穂乃果「いやぁ、嫌われてはいないと思うよ?」

ことり(むしろ、すごく仲良しになってるように見えるけど……)

穂乃果「……えっと、三人になっちゃったけど」

海未「そうですね……。人数が減ったことで、駆け引きもまた変わってくるでしょう」

ことり(まだ続ける気なんだっ!?)

ことり「ね、ねえ海未ちゃん、せっかくのお泊り会なんだから、もっと他のこともしようよ」

海未「他のことと、言いますと?」

ことり「うーん……」

穂乃果「じゃあさ、眠くなるまで、適当におしゃべりしようよっ!」

海未「ふっ。それこそ、いつでもできるではないですか」

穂乃果「いいじゃんっ。それにしてもさ、こうして夜遅くまで一緒にいるのって、なんかワクワクしちゃうよねー」

ことり「お泊り会なんて、久しぶりだもんね。子供の頃以来かな?」

海未「ええ。そういえば、昔は――」
   


622: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 20:44:16.39 ID:0HhIdLSM.net

  
……

ことり(……)チラッ

ことり(……よし)

ことり(そろそろ穂乃果ちゃんと海未ちゃんを、二人きりに――)


穂乃果「――ほんと、あの時は大変だったよねえー」

海未「そうですね。でも今はこうして……ことり?」

ことり「あっ。ごめん、私、今すぐ帰らなきゃっ!」

穂乃果「えっ!?」

ことり「ちょっと、急用を思い出しちゃって……」

海未「こ、こんな時間にですか……?」

ことり「あー……えっと、明日までに仕上げなきゃいけない、衣装が……」

穂乃果「ええっ、大変っ! それじゃ私たちも、手伝うよっ!」

ことり「っ!? あ、いや……」

海未「そうですねっ! すぐにことりの家へと向かいましょうっ!」

ことり「えっと、ことりは大丈夫だから、二人はこのままお泊り会を……」

穂乃果「ことりちゃんが大変な思いをしてるのに、お泊り会なんてできないよっ!」

海未「水くさいですよ、ことりっ! 私たちを頼ってくださいっ!」 

ことり「そ、そうじゃなくて……」

ことり(お願い二人とも、察してっ!)
   


623: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 20:46:55.02 ID:0HhIdLSM.net

  
ことり「あ、あのっ、私は本当に、大丈夫だからっ!」

海未「遠慮しないでください、ことり。お泊り会なんて、これからいつでもできますから」

穂乃果「また三人の予定が合う日に、やり直そうよっ!」

ことり「でもほら、私が抜ければ、ちょうど二人きりになれ――」

穂乃果「ことりちゃんがいなくなっちゃったら、二人だけになっちゃうじゃんっ! そんなの寂しいよっ!」

海未「全くですっ!」

ことり「いやいやいやいや……」

海未「そもそも、このお泊り会はあなたが企画したものなのに、そんな大切な用事を忘れてたなんて……」

穂乃果「ことりちゃんって、意外とドジだねえ~」

ことり「私は穂乃果ちゃんと海未ちゃんを、二人きりにさせてあげたいのぉっ!」

海未「はい?」

穂乃果「えっ?」

ことり「急用っていうのは、ウソだよぉっ! このお泊り会も、もともと二人のために企画してて、私は途中で抜けるつもりだったの……っ!」

ことり「わ、分かるでしょ? だってほら、二人は昨日……」

穂乃果「……あっ」

海未「な、なるほど……」

ことり「はぁ……」

穂乃果「そっか、そういうことだったんだ……」

海未「……しかし、ことり。そういうことは、あまり本人の前で言うべきではないのでは?」

ことり「二人が気づいてくれないからでしょっ!」
  


624: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 20:49:59.11 ID:0HhIdLSM.net

  
ことり「もう……っ!」

穂乃果「ことりちゃん、気を遣ってくれてたんだ。ごめんね、気づかなくて……」

ことり「私も、まさか全部説明することになるとは思わなかったよ……」

海未「……ことり。本当に、良いのですか?」

ことり「もちろんだよ。今日はそのための、お泊り会なんだから……二人でゆっくり、過ごしてほしいな」

海未「で、では、お言葉に甘えましょうか。穂乃果……」

穂乃果「う、うん……そうだね」

ことり「それじゃ、私はこれで……途中までだったけど、楽しかったよっ!」

穂乃果「うんっ! ことりちゃん、ありがとうねっ!」

海未「感謝します、ことり……っ!」

ことり「あっ、穂乃果ちゃん」

穂乃果「えっ?」

ことり「……」ゴニョゴニュ

穂乃果「……」

穂乃果「っ! え、ええっ……///」

海未「……?」

ことり「……ふふっ、それじゃ、頑張ってねっ!」

バタン
   


625: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 20:55:53.43 ID:0HhIdLSM.net

 
……

海未「……」

穂乃果「……」


穂乃果「……そういえば私たち、恋人同士になったんだよね」

海未「え、ええ、そうでしたね……」

穂乃果「あはは……。なんか、恥ずかしいね」

海未「……」



海未「……私、ずっとあなたに、謝りたいことがあったんです」

穂乃果「えっ……?」


『……穂乃果』

『えっ……?』

『私が、あなたを――』



『海未ちゃんが言ってくれた言葉が、私、本当に嬉しくて……っ!』

『ねえ海未ちゃん、あの時、言ってくれたよね……? お、覚えてるよね……っ!? あの時のこと――』

 
海未「ごめんなさい、穂乃果……。結局私は、今でもあの時のことを、思い出すことができていません」

海未「これまで何度も思い出そうとしました……。でも、どうしても思い出せないんです。あの時私が、あなたになんと言ったのか……」

穂乃果「……あっ」

穂乃果「い、いいよ、無理に思い出そうとしなくて……。忘れちゃったんなら、仕方ないよ」

海未「でも……」

穂乃果「私はほら、もう全然気にしてないから……だからそんなに思いつめないで、ねっ?」

海未「……」
   


626: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 20:56:47.32 ID:0HhIdLSM.net

  
海未「……では改めて、言い直させてもらってもよろしいですか?」

穂乃果「……言い直す?」

海未「はい。ほのキチの私が、一体何を言ったのか……それとは関係なく、今の私の気持ちを率直に、あなたに伝えたいのです」

海未「あの時のは、『ほのキチの言葉』でした。ですから今度は、『私の言葉』で、言い直させてください」

穂乃果「……うん」

穂乃果「聞きたい。私、今の海未ちゃんの気持ちを……いつもの海未ちゃんの言葉で、聞きたい」

海未「……ありがとうございます」

海未「では……」コホン


海未「昔からずっと、あなたのことをお慕いしていました。穂乃果――」


海未「私があなたを、守り続けます」

海未「必ずあなたを、幸せにして見せます」


海未「ですから、どうか私と恋人同士になってください。穂乃果……っ!」
   


627: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 20:57:16.96 ID:0HhIdLSM.net

  
穂乃果「……」


穂乃果「……ぷっ」

海未「っ!? えっ!?」

穂乃果「ふふっ、はは、あははっ……っ!」

海未「ちょ、なんで笑うんですかっ!?」

穂乃果「ご、ごめんね……っ! ふふっ、そっか。うん、うん……っ!」

穂乃果「こちらこそ、よろしくね、海未ちゃんっ!」

海未「は、はい……」


海未(ど、どうして笑われてしまったのですか……? 何か、変だったのでしょうか……っ!?)

海未(ああぁ、真剣な顔で言ってしまった手前、ものすごく恥ずかしいです……っ!)
   


628: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 21:04:58.43 ID:0HhIdLSM.net

   
穂乃果「ふふっ……。とにかく私と海未ちゃんは、これで本当に、『恋人同士』だねっ」

海未「ええ……。あまり実感が湧きませんが……」

穂乃果「……えへへ。なんていうか、この一か月間はずっと、そんな感じだったよね」

海未「そうですね。色々なことがありましたが……今となっては、まるで全てが夢だったかのような……」

穂乃果「……うん」

海未「しかし冷静に考えると、おかしな話ですよね。私たちは一か月間ずっと、あなたの『匂い』を巡って、奮闘していたというのですから」

海未「昨日までは、真剣でいられましたが……終わってみると、なんだか笑っちゃいますよね」

穂乃果「私はそれ以上に、恥ずかしいかな……」

海未「えっ?」

穂乃果「この一か月間のことが全部、自分の匂いが原因だなんて……。考えるだけで、もう……」

海未「あ、ああ……」

穂乃果「みんな、私の匂いのことで、ずっと必死になってたんだよね……はは……」

海未「……えっと」

穂乃果「し、しかも、最後には、全校生徒のみんなに……先生にまで、匂いを嗅がれちゃうっていう……」

海未「穂乃果……?」

穂乃果「あぁー……もう」

ガバッ



穂乃果「はっっっずかしいぃぃぃぃ~~~~~~~~~……////////」
     


629: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 21:10:06.98 ID:0HhIdLSM.net

  
海未(一か月分の『恥ずかしい』が、出ましたね……)

穂乃果「う、うぅぅー……////」

海未(しかし、昨日も考えたことですが……。きっと穂乃果の精神は、もう限界だったはずです)

海未(本当によく、立ち直ってくれました。彼女の強い精神のおかげで、私たちは――)

穂乃果「ど、どうしよう、うみちゃぁん……」

海未「は、はい?」

穂乃果「私もう、お嫁にいけないよぉ……///」

海未「……」


海未(……なんて、そんなにすぐに立ち直れるわけありませんよね)

海未(穂乃果だって、『普通の女の子』なんですから……日常に戻ってしまえば、この通りです)

海未(……ならば、そんな彼女を支えてあげるのが、『恋人』たる私の役目というものです――)


海未「――『あのスイッチ』は、押すたびにあなたの匂いを、『増幅させる』というものでした」

穂乃果「えっ……?」

海未「あなたの匂いを、『そのまま』、増幅させるだけのスイッチ――逆に言えば、『それだけ』のスイッチでした」

海未「それだけなのに……この一か月間で、実に多くの人が、あなたの匂いの虜になってしまいました」

海未「……それはつまり、あなたの匂いがそれだけ、『魅力的だった』、ということなんです」

穂乃果「……」

海未「200人中200人が、あなたの匂いを好きになったんです」

海未「『女の子』として……それはとても、喜ばしいことだと思いませんか?」
   


630: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 21:10:55.14 ID:0HhIdLSM.net

  
穂乃果「……ん」

海未「……」

穂乃果「海未ちゃん……」

海未「はい?」

穂乃果「私の匂いって、どんな匂いなの……? 自分じゃよく、分かんないの……」

穂乃果「ねえ、海未ちゃん。『ほのスメル』って、何なのかな?」

海未「……そうですね」

海未「では、あなたの恋人として……あなたを最も愛する者として、答えさせていただきます」

穂乃果「……うん」

海未「私はこの気持ちの正体に、10年近く、全く気づくことができませんでした」

海未「……『あるほのキチ』から、教えられるまでは」

穂乃果「……?」

海未「私は昔からずっと、『ほのスメル』を嗅いできました」

海未「堂々と嗅いだり、こっそり嗅いだり……色々な形で、何度も、嗅いできました」

海未「そして……そんなあなたの匂いを嗅ぐたびに、私はいつも、ドキドキしていました」

海未「……今思えば、きっとそれが、その気持ちが、『恋』だったのですね」

穂乃果「……」

海未「ほのスメルとはつまり、『恋の匂い』、なのではないでしょうか」

穂乃果「恋の、匂い……?」

海未「ええ。その匂いを嗅ぐと、ドキドキして、顔が熱くなって……大好きな気持ちで、いっぱいになって……」

海未「私は、この気持ちに気づく前から……まだ恋なんて、何も知らなかった時から、嗅いでいたんです――」



海未「――『恋のスメル』を……」
   


632: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 21:15:43.02 ID:0HhIdLSM.net

  
穂乃果「……」

海未「……といった感じで、どうでしょうか?」

穂乃果「……うん」

穂乃果「ありがとう。真剣に、考えてくれて……うん、うん」

穂乃果「じゃあ私にとっての『恋のスメル』は、海未ちゃんの匂い、だねっ!」

海未「ふふっ、そうかもしれませんね」

穂乃果「えへへ……」

海未「……」





海未(や……)



海未(やりました……っ! 昔からこっそり匂いを嗅いでいたことを、実にさり気なく、穂乃果にカミングアウトできましたっ!)

海未(正直途中から、自分でも何を言ってるのか分からなくなってましたが……。なんですか、『恋のスメル』って……)
    


633: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 21:17:27.08 ID:0HhIdLSM.net

    
穂乃果「海未ちゃん?」

海未「あっ、えっと……とにかく」

海未「忘れないでください、穂乃果。あの時グラウンドに集まった、200人のほのキチは――」

海未「みんなあなたの匂いが大好きで、全員があなたのことを、愛していたのですよ」

穂乃果「そっか、みんな、私のことを……」

穂乃果「……よく考えてみたらさ、この一か月間は私にとって、とんでもないモテ期だったんだねっ!」

海未「……それはいくら何でも、ポジティブに捉えすぎでしょう」

穂乃果「あはははっ!」

海未「……」クスッ


海未(……私も、忘れずにいましょう)

海未(私が好きになった人は、全校生徒を虜にしたほのスメルを、その身に宿す少女……)

海未(およそ200人から、愛された少女であるということを――)
   


634: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 21:21:00.76 ID:0HhIdLSM.net

  
『凛はただ、穂乃果ちゃんの匂いが嗅ぎたいだけなんだ』『あんたもなってみればいい。こっち側にくればいい。そしたら、理解できるわ』

『穂乃果ちゃんの汗で炊いたごはんが、食べたいって言ってんですよぉぉっ!!!』『にこね、ほのかおねえちゃんのにおい、くんくんしたいのぉっ!』

『穂乃果。私と結婚を前提に、お付き合いしてくれないかしら』『違うよ、私が穂乃果なのーっ!』

『はぁ、あぁあ~、穂乃果ちゃぁんー』『穂乃果ちゃんの匂い、サイッコーっ!!』『高坂さん高坂さん高坂さん高坂さん』

『穂乃果ちゃんを、ぐちゃぐちゃにしたいぃ……』『穂乃果ちゃんと、一つになりたいぃぃっ!!』『えへへ、穂乃果ちゃんに罵倒されたい……』

『お前だけは、今日一日特別授業だ。思う存分可愛がってやるからな……』『穂乃果さぁん、愛し合いましょう? お互い、ドロドロになるまで……』



『私が欲しかったのは、初めから……穂乃果ちゃんだけ、だったんだから』



海未(『彼女たち』の分まで私、園田海未は、精一杯、穂乃果を愛しましょう)

海未(同じ人を好きになった、『ライバル』たち……)

海未(あるいは、同じ匂いを好きになった、『同志』たちの分まで――)
   


635: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 21:27:45.12 ID:0HhIdLSM.net

  
穂乃果「……」

海未「……」

海未(会話が途切れてしまいましたね……)

海未(……しかし穂乃果と二人きりで、お泊り会ですか)

海未(二人きり……そうなると……)



穂乃果「……」チラッ

海未「……? 穂乃果?」

穂乃果「あっ、えっ?」

海未「どうしてさっきから、時計を気にしているのですか?」

穂乃果「っ! う、ううん、なんでもないよ」

海未「そうですか……?」

穂乃果「……」ソワソワ

海未「……?」

穂乃果「う、海未ちゃんっ」

海未「はい?」

穂乃果「……あのね」

穂乃果「私ね、海未ちゃんと……」

海未「……はい」

穂乃果「き……」

海未「き?」




穂乃果「きす、したいなー……」




穂乃果「……なんて」

海未「……」
   


638: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 21:31:43.05 ID:0HhIdLSM.net

 
海未「……な、なにを言い出すのですか、いきなり」

穂乃果「ご、ごめん……」

海未「キスって……私たち、女の子同士ですよ?」

穂乃果「うん……でも、恋人同士だし」

海未「そうですが……」

穂乃果「……嫌?」

海未「……」

海未「いえ、そんなことはありませんよ。私も、してみたいです」

穂乃果「そ、そっか……。じゃあ……」

海未「はい……」

穂乃果「……」

海未「……」


フゥ……



海未(――そうですよねっ!!? 二人きりの、お泊り会ですもんねっ!? こういう展開になっても、おかしくありませんよねえっ!?)

海未(しかし、き、キス、キスですか……っ! まさか穂乃果の方から、言い出してくれるとは……っ!)

海未(うわぁ……今から穂乃果とキスができるんですかっ!? 私、明日死ぬんじゃないですかっ!?)

海未(いえ、この一か月間、散々苦労してきたんです……っ! これくらいのご褒美は、あってしかるべきですっ!)

海未(あぁ、でも、キス……っ!? キスですかぁ……っ! あぁああぁぁ~~//////)
   


639: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 21:39:25.73 ID:0HhIdLSM.net

  
海未(い、一旦、落ち着きましょう……)

穂乃果「……」

海未(……穂乃果はもう目を閉じて、私を待ってくれています)

海未(こうなればもう、いくしかありません……っ! 勢いで……)

海未「はぁ……」

ゴク……


海未(……穂乃果――)


海未(――いざっ!)



~♪

ヴーヴー


穂乃果、海未「「――っ!!」」ビックゥ



穂乃果「あっ、メール……?」

海未「私の方もです……」

海未(な、なんてタイミングの悪い……っ! 一体誰が……)


ピッピッ

穂乃果「……あっ、ことりちゃんからだ――」



穂乃果「――って、えっ?」

海未「……」


海未「これは……」
   


641: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 21:52:52.45 ID:0HhIdLSM.net

  
――――――――




テクテク

ことり「うぅ~、寒い……」

ことり(二人とも、うまくやれてるかな。大丈夫だよね、あの二人だもん……)

ことり(……あそこのベンチ、空いてる。ちょっと座ってみようかな)

ことり「ふぅ……」ポスッ

ことり「……なんか、ようやく落ち着けたって感じかな」

ことり「この一か月間、色々なことがあったなぁ……」


ことり「穂乃果ちゃんの匂いが強くなる『スイッチ』で……私が、『ほのキチ』になっちゃったり」

ことり「希ちゃんと真姫ちゃんが思いついた、『計画』を……私と海未ちゃんで、暴いたり」

ことり「今度は海未ちゃんがほのキチになっちゃって……私が元に戻したり」

ことり「海未ちゃんに、『告白』したり……穂乃果ちゃんに、『宣戦布告』をしたり」

ことり「『レベル5』で、全校生徒がほのキチになっちゃったり……『ライブ』で音ノ木坂を、救ったり」

ことり「『ラブライブ』で、『A-RISE』と戦ったり……あはは。本当に、色々あったなぁ」

ことり「ことりの人生の中で、間違いなく一番、濃い一か月間だったよ……」

ことり「でも……そうだな。この中で特に一番、ビックリしたことは……やっぱり――」


ことり「私が海未ちゃんに、告白したこと……かな」
   


643: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 21:54:49.97 ID:0HhIdLSM.net

 
ことり(昔からずっと、隠してた気持ちを……。このままずっと、隠しておくつもりだった想いを……)


『そんな海未ちゃんのことが、ずっと好きでした』


ことり(あの日ことりは海未ちゃんに、伝えたんだ)

ことり(しかもその次の日に……)


『海未ちゃんは、渡さないんだからぁ……っ!』


ことり(穂乃果ちゃんに、そんなことを言ったんだ……はは、我ながら、本当にビックリだ)

ことり(……自分でも、信じられないよ。私が海未ちゃんに、告白する日が来るなんて)

ことり(結局、振られちゃったけどね……。でもこれだけは絶対に、胸を張って、言えるよ――)


ことり「勇気を出して、告白して……本当に、良かったっ」

ことり「……」

ことり(……少し前の私だったら、海未ちゃんに告白なんて、できなかった)

ことり(ましてや、穂乃果ちゃんと戦おうとするなんて……)

ことり(……私がここまで、変われたのは――)


『そうだ、あんなスイッチなんて、本当はいらなかったんだ……。私が欲しかったのは、初めから……』

『穂乃果ちゃんだけ、だったんだから』


ことり(……)

ことり(『ほのキチ』、かぁ……)
 


644: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:01:03.91 ID:0HhIdLSM.net

   
『私はあの時、レベル4まで嗅いだんだよ』

『おかげで……グスッ……。はぁ……今は、すっごく良い気持ちだよぉ……』


ことり(……ほのキチになった、ことり)

ことり(穂乃果ちゃんを襲ったり、海未ちゃんを裏切ったり、みんなを欺いたり……怖くて狡賢くて厄介な、ほのキチのことり)


『っはぁぁあぁああんっ! 穂乃果ちゃん穂乃果ちゃんほのかちゃんっ! 可愛いよぉ可愛いよぉいい匂いだよぉっ!』


ことり(っ! うわわっ、やっぱり辛いなぁ、思い出すのは……///)

ことり(……そうそう)スッ

ピッ、ピッ

ことり(この、『メール』――)

 

名前:ミナリンスキー

件名:ピュアピュアでダメダメなことりちゃんへ


本文:やっほー、私だよ♪ お困りのようだね!

   海未ちゃんは多分、↓のどこかにいると思うよ!

   ……
    


645: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:02:38.64 ID:0HhIdLSM.net

   
ことり(……海未ちゃんの逃げ場所の候補が、ずらっと書かれてて――)


   ……こんなところかな。あ、私のことはナイショでお願いね!


ことり(……って、書かれてたんだよね)

ことり(あの時はビックリしたなぁ。まさか『自分』から、メールが送られてくるなんて)

ことり(でもこれ、本当は私にレベル5を嗅がせるために、送ったメールだったんだよね……)

ことり(自分まで騙そうとするなんて、本当にとんでもない子だな……私だけど)

ことり(とにかくこのメールが送られてきたおかげで、私は海未ちゃんの逃げ場所にたどり着けたんだけど……)

ことり(……でも、このメール、『続き』があるんだよね)

ことり(下にスクロールしていくと……)ピッピッ

ことり(……)

   
    
    私はことりで、あなたもことり。
    
    だから、だいじょーぶ。
    
    頑張れ、南ことり!

    


646: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:04:38.11 ID:0HhIdLSM.net

  
ことり(……ねえ、『私』)

ことり(ううん、『ミナリンスキー』ちゃん……あなたはどうしてこんなことを、書いたの?)

ことり(あなたは私を、利用しようとしていたんだよね……? なのに、どうして……)

ことり(……自分のことなのに、何度考えても分からないよ。あなたの考えてることは)

ことり(でも、私は……)

ことり(このメールを読んだおかげで、海未ちゃんに告白する決心ができたんだ)

ことり(これを読んだら、なんだかすごく勇気が、湧いてきて……。海未ちゃんに告白しようって、穂乃果ちゃんと戦おうって、思えたんだ)


ことり(私はずっと、あなたのことが苦手で……思い出したくもないくらい、苦手で)

ことり(だけど実はちょっとだけ、憧れてたんだ)

ことり(いつも積極的で、賢くて、強かったあなたのことを……)

ことり(そんなあなたみたいに、私はなりたかった。だから私も頑張ってみようって、思ったんだよ――)


ことり「でも……私はやっぱり、弱かった」

ことり「あなたみたいに、積極的にはなれても……強くは、なれなかった」
  


647: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:06:28.46 ID:0HhIdLSM.net

 
『どうしてほのキチじゃなくなっちゃったの、海未ちゃんっ!!』

『っ! ほ、穂乃果ちゃん……』

『もう一度私のことを好きになってよっ!! 海未ちゃん――っ!!』


ことり(自分のしたことを、失敗だと思い込んで……自分を責めて)

ことり(『ことりなんて消えちゃえばいいのに』なんて、バカなことを考えて……)

ことり(そして私は自分から、ほのキチに……『あなた』に、なろうとした)

ことり(もうこのままの私じゃ、ダメだと思ったから……だからあなたに全部、託そうと思って)

ことり(強かったあなたに、後のことは全部、任せようって思った)

ことり(あなたと違って、私は自分がほのキチになった後の行動なんて、全く読めなかったけど……)

ことり(……どんなことになっても、あなたが選んだ行動なら、後悔しないって決めてたんだ)


『こんなどうしようもない女の子を、海未ちゃんは一体どうやって、元に戻すつもりなのかな?』

『あんなのが自分だなんて、思いたくないよ。同じことりとして、恥ずかしい』


ことり(そうだね……私は本当にどうしようもない女の子だった。あなたにそうやって責められるのも、仕方ないよ……)
  


648: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:08:04.46 ID:0HhIdLSM.net

  
ことり(……でも、あなたは、そんな私を――)


『ことりは穂乃果ちゃんのために、告白したんだよ』


ことり(そんな風に海未ちゃんに、『嘘』をついて……私を、庇ってくれた)


『穂乃果ちゃんのために行動して、それで失敗したんだったら、まだ言い訳できるのに……っ!』


ことり(……それだけじゃない)


『海未ちゃんが好きなのは、穂乃果ちゃんなんだよ。昔からずっと……今も変わらず、ね』

『それが、この問題の答えだよ』


ことり(海未ちゃんの気持ちをはっきりさせて、私と穂乃果ちゃんの戦いを、終わらせてくれた)

ことり(そのおかげで、私はちゃんと、海未ちゃんに振られることができた……)

ことり(これ以上ないくらい最高な形で、失恋できたんだ。全部、あなたのおかげだよ)

ことり(ねえ、ミナリンスキーちゃん。私はあなたのことを、恥ずかしくて、必死に思い出さないようにしてたけど)

ことり(でも今なら、はっきりと、思い出すことができるよ。あなたが私の代わりにしてくれた、たくさんのことを)

ことり(こんな私の想いを、汲んでくれて……本当に、ありがとう――)


ズキン

ことり「……」
  


649: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:09:55.70 ID:0HhIdLSM.net

   
ことり(……おかしいな)

ことり(私はもうとっくに、失恋を受け入れることができたはずなんだけど)

ことり(気持ちもスッキリできたはずなんだけど……なんだろう? この、『胸の痛み』……)

ことり(……あぁ、そっか)

ことり(そうだ、思い出した。そういえばあなたは、こんなことも言ってたんだね――)


『ことりが好きなのはいつだって、穂乃果ちゃんだけなんだっ!! 何が恋だっ! 何が告白だっ! くだらないくだらないくだらない――っ!!』

『私の穂乃果ちゃんに対する愛に比べたら、ぜんっぜんくだらないよっ!!』


ことり(って、うわっ、海未ちゃんの前で、こんなこと言ってたんだ、私……あんな声出したの、生まれて初めてだよ……///)

ことり(……それにしても、『くだらない』、か)

ことり(『何が恋だ』、『何が告白だ』……あなたはそんなことを、言っていたけれど)

ことり(でも、この胸の痛みはきっと、『あなたの』だよね?)

ことり(ミナリンスキーちゃん。きっと、あなたも――)



ことり(穂乃果ちゃんに――『恋』を、していたんだよね?)
   


650: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:17:26.45 ID:0HhIdLSM.net

 
『その、昨日はちゃんと言えなかったけど……私、ことりちゃんのことも、大好きだよ』

『ことりちゃんは、私の一番の親友だから……そう思ってるから。だから――』


『これからもよろしくね、ことりちゃんっ』


ことり(多分、あの時かな)

ことり(例のメールを送る、直前――屋上での練習の合間に、あなたは穂乃果ちゃんに、そんなことを言われたんだよね)

ことり(あの日のあなたは、何か調子がおかしかった……それをあなたは、『不具合』だって、『故障』だって、言っていたけれど)

ことり(……多分それは、恋の前兆みたいなものだったんだね)

ことり(それであの時、穂乃果ちゃんの笑顔を見て――あなたははっきりと、恋に堕ちちゃったんだ)

ことり(怖くて狡猾で厄介な、あなたが……青春みたいに、恋をしちゃったんだ)

ことり(だとしたら、あなたが『自分から元に戻った』のも、全部……)


ことり(穂乃果ちゃんが望んでた『いつもの日常』を、取り戻すためだったんだとしたら――)


ことり(……なんて、それは流石に、考え過ぎかな)

ことり(でも、あなたはいつも過激なことばかりして、穂乃果ちゃんや周りを、怯えさせてたけど……)


ことり(本当はもしかしたらあなたも、穂乃果ちゃんと普通に手をつないで、デートしたりとか、したかったのかな)
   


651: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:18:08.87 ID:0HhIdLSM.net

 
ことり(……そっか)

ことり(なぁんだ、そうだったんだね……)

ことり(『ことり』は結局、幼馴染二人ともに、恋をしちゃってたんだね……)

ことり(あはは……。ほんと、笑っちゃう。ことりはどれだけあの二人のことが、好きなんだろ……)

ことり(……でも結局、『私たち二人とも』振られちゃったね、ミナリンスキーちゃん)

ことり(私はもう、それを受け入れられたけど……。あなたはまだ、受け入れられていないのかな)

ことり(あなたはまだ、スッキリできてないのかな……。だからこんなに、胸が痛いのかな)

ことり(……でもきっと、大丈夫)


ことり(あなたが書いた、『もう一つのメール』――)


ことり(それがもうすぐ二人に、届く頃だから)

ことり(そうしたら、あなたもスッキリできる……の、かな?)

ことり(私にはよく、分かんないけど……あなたがどんな思惑で『もう一つのメール』を送ったのかは、やっぱり私には分からないけど)

ことり(それに『協力してあげる』ことで、私は少しでもあなたに恩返し、できたのかな)

ことり(そうだったら、いいな……)
   


652: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:20:15.95 ID:0HhIdLSM.net

  
ことり(……『ミナリンスキーちゃん』)

ことり(ほのキチの、ことり……私とは正反対の、もう一人の、『私』)

ことり(穂乃果ちゃんのことが、大好きな……ちょっぴり危険な、女の子)

ことり(私に勇気をくれて、私を動かしてくれた……。本当に、不思議な女の子だったなぁ……)

ことり(……さようなら)

ことり(じゃ、ないよね……きっと)

ことり(あなたはきっと今でも、私の中に、この胸の中に、いてくれてるんだよね)

ことり(ちょっと怖いところもあるけど……。積極的で、賢くて、強いあなたが、心の裏側にいてくれるのなら……私はとても、心強いから)



ことり「だからこれからも一緒に、『ことり』を続けていこうね、ミナリンちゃんっ」



ことり(あっ、略しちゃった……。ま、いっか)

ことり(……さてと、メールも届いた時間だし)ピッ

スクッ

ことり(これで、終わりかな。私の長かった恋は……それか、短かった恋は)

ことり(『両方とも』、終わり……)

ことり(これからは――)

ヒュゥ……

ことり(……)


ことり(……ていうかこれから、どうしよう)
  


653: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:24:25.63 ID:0HhIdLSM.net

 
ことり(って、帰るしかないよね……)

ことり(……あれ、なんか急に、寂しくなってきた。どうしよう、やっぱり戻ろうかな)

ことり(いやいやダメダメっ! それじゃ、何の意味もないでしょっ!)

ことり(うぅーん……)

プルルル

ことり(っ! 電話……?)

ピッ

『ことりっ! 何してんのよ、早く来なさいっ!』

ことり(……この声)

ことり「にこちゃん……? ど、どうしたの? こんな時間に……」

『どうしたのじゃないわよっ! ラブライブの打ち上げやるって、さっき話したじゃないっ!』

ことり「あっ……あれ? でも私たち三人はお泊り会するからって、断ったはずじゃ」

『ゆーても、どうせことりちゃん、今一人やろ?』

ことり「……希ちゃん?」

『ことりちゃんのことやから、あの二人を二人きりにさせるために、一人で抜けてきたんやないの?』

ことり「うっ……」
  


654: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:26:28.18 ID:0HhIdLSM.net

  
『暇ならこっち、こーへん? 今、みんなでカラオケにきとるんやけど――うわっ、えりちっ!?』

『あ、ことりっ!? カラオケ、カラオケに来てるのっ! あははっ、楽しいわねー、カラオケってっ!』

ことり「えっ? あ、うん……」

『すごいのよっ! なんとね、25万曲の歌が歌い放題らしいのっ! すごいわよね、25万曲ってっ! この世に歌ってそんなにいっぱいあったのねっ!』

『エリー、あなたテンション高すぎ……。もしもし、ことり?』

ことり「あっ、真姫ちゃん……」

『料理とかお菓子とか、頼みすぎちゃってね。とても私たちだけじゃ食べきれないのよ。だからまあ、来れば?』

ことり「……」

『あの、ことりちゃんっ!』

ことり「……花陽ちゃん」

『私、どうしてもことりちゃんに、歌ってほしい曲があってっ! 最近人気上昇中のアイドルなんですけど、わかりますかねっ!?』

ことり「どうかな、スクールアイドル以外はあまり詳しくないから……」

『じゃあこっち来るまでに携帯で調べて、覚えてくださいっ! えっと、曲名なんですけどっ!』

ことり「え、えぇ……」
  


655: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:26:52.52 ID:0HhIdLSM.net

   
『あ、ことりちゃんっ! 凛だよーっ! 凛もね、ことりちゃんに歌って欲しいんだぁっ!』

ことり「そ、そうなの?」

『ていうかにこちゃんが徹夜とか言い出してさ、ことりちゃんの甘い歌声で癒されないと、やってけないのにゃっ!』

ことり「徹夜かぁ……」

『そう、徹夜カラオケよ、ことりっ! 駅前のとこだから、早く来なさいよ、いいわねっ!』

ことり「……あ、うん――」

プツン

ことり「……」

ことり「切れた……」

ことり「……んん」

スクッ


ことり「はぁ……。あはは……」

ことり「本当に、もう……」



ことり「ことりは、幸せ者だなぁ……っ!」


タッタッタッ……
    


656: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:35:26.47 ID:0HhIdLSM.net

  
――――――



穂乃果「――海未ちゃん、このメール……」

海未「ええ……」

穂乃果「……あ、あはは。なんていうか、珍しいね。ことりちゃんがこんなこと書くなんて」

海未「……ことりでは、ありません」

穂乃果「えっ?」

海未「……」

海未(いつですか……? まさか昨日の、『あの教室』で……?)


『久しぶりだね、海未ちゃん。待ってたよ』


海未(……っ!)

海未(そういえば、確かに『彼女』は、あの時……)

海未(神聖な教卓の上に座って、宙に浮かせた両足を組んで……)

海未(そうやって私と話をしながら、なぜか、ずっと――)


『例えばさ、海未ちゃん』

『携帯の調子がなんかおかしいなー、とか、あれ、故障かな?なんて思った時さ、海未ちゃんならどうする?』


海未(右手に『携帯電話』を、持っていた……)

海未「……やられました」ギリッ


『予約送信。知ってた? メールって、時間を指定して送ることもできるんだよ』


 
海未「――ミナリンスキーっ!!」
   


657: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:41:39.97 ID:0HhIdLSM.net

 
穂乃果「えっ、どうしたの、海未ちゃん……?」

海未「やられました……まさか今になって、こんなことが……っ!」

海未「し、しかし、『昨日』ですって……っ!? 『昨日のあの時点で』、このメールを……今日この時間、『この瞬間に向けて』――」

海未「『予約送信』したというのですかっ!? だとしたら彼女は一体、どこまで……っ!」

穂乃果「あの、海未ちゃん……?」

海未「ちょっと黙っていてくださいっ!! 今、パニック中なんですっ!」

穂乃果「あっ、ごめん……」

海未(待ってください……っ! とりあえず、整理しましょう……)

海未(もしもこのメールが、偶然ではなく……本当に『この瞬間を狙って』、あの時書かれたものなのだとしたら――)


『穂乃果ちゃんの匂いを嗅ぐと、頭が冴えるんだ』


海未(穂乃果を抱きしめながら匂いを嗅ぎ、犯人を当てたように……)

海未(部室で制服の匂いを嗅ぎ、まるで『未来を予見していたかのような』、例の計画を考え付いたように……っ!)


海未(あの時教室に充満していた、『ほのスメル レベル5』を嗅いで……彼女は再び、未来を予見した――)
   


658: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:43:09.48 ID:0HhIdLSM.net

  
海未(私との戦いの末に、自分が元に戻り、音ノ木坂が元に戻り、その後私と穂乃果が、恋人同士になることも……)

海未(……次の日のこの時間に、私たちがキスをすることさえ、『予見』して――)

海未(『キスの瞬間に』私たちの元に届くように、時間を設定し、メールを書いた……)


『私が全部、壊してあげる。今までの物語を、ぜーんぶ、台無しにしてあげるよ』


海未(この場の雰囲気を、『台無し』にするために……ただ、『それだけのために』っ!!)


海未「最悪です……あなたは最悪です、ミナリンスキー……っ!」


海未(結局最後まで私たちは、あなたの掌の上で、踊らされていただけだったのですね……)
   


660: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:48:07.61 ID:0HhIdLSM.net

  
穂乃果「……??」

海未「……ごめんなさい、穂乃果。取り乱してしまいました」

穂乃果「う、ううん」

海未「説明します……。このメールを送ったのは、ほのキチのことりです」

穂乃果「……えっ?」

海未「私は、ミナリンスキーと呼んでいますが……。彼女はほのキチの中でも、特に狡猾で……」

海未「……簡単に言えばこのメールは、そんな彼女が、私たちをからかうために送ったものだということです」

海未「『昨日』から……今、『この時間へ』と。メールを、予約送信したんです……」

穂乃果「……」

海未(あぁ、このメールから、私たちを嘲笑う彼女の顔が、思い浮かびます……)

海未(何より浮かんでくるのがことりの顔だから、怒りよりも可愛いと思ってしまうことが、余計に腹立たしいです……っ!)


穂乃果「……あ、あのね、海未ちゃん」

海未「……はい?」

穂乃果「恥ずかしいから、内緒にしておきたかったんだけど……さっき私、ことりちゃんに言われたの」

海未「……?」
  


661: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:49:14.36 ID:0HhIdLSM.net

   
海未「あぁ、そういえば先ほど、何か耳打ちをされていましたね。何を言われたのですか?」

穂乃果「……その」

穂乃果「『20時ちょうどに好きな人とキスをすると、二人は20年、幸せになれる』……そういうおまじないがある、って」

海未「……なんですか、その明らかな迷信は」

穂乃果「うっ……でも私、それを信じて、さっき……」

海未「あぁ、なるほど。それで時計を……」

海未「……えっ? 待ってください、ということは……」

穂乃果「……うん」


穂乃果「このメール……ことりちゃんも、読んでたんじゃないかな?」
   


662: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:51:20.03 ID:0HhIdLSM.net

   
海未「……」


海未(……ことりが穂乃果におまじないを教えたことで、私たちはこの時間にちょうど、キスをすることになった)

海未(そもそも、このお泊り会を企画したのも、ことりだった……)

海未(……確かに、いくらミナリンスキーといえど、ここまで詳細な未来の予見などできるはずありません)

海未(ですが、もしもことりが『送信ボックス』を見て、このメールに気づいていたのだとしたら……)

海未(そこに書かれた『未来の送信日時』を見て、『それに合わせて』、私と穂乃果がキスをするように『仕向けていた』のだとしたら――)


海未「……はは」

海未「つまり、『ミナリンスキーの悪戯』に、『ことりが乗った』と……。そういう、わけですか」

穂乃果「……あははっ。一本、取られちゃったね。海未ちゃん」

海未「ええ、全くです……。まさかことりが、そんなことをするなんて」

穂乃果「ことりちゃんさ、なんか変わったよね」

海未「そうですね。この一か月間で、一皮剥けたというか……積極的になりましたよね」

穂乃果「……私、今のことりちゃん、すごく好きだな」

海未「ふふっ。私もです……」
   


664: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:55:20.87 ID:0HhIdLSM.net

  
海未(……『私たちをからかう』という、ミナリンスキーが企んだ、『最後の計画』――)

海未(ただ一つ確かなのは……それは元のことりの協力無しには、成り立たなかったということ)


海未(ミナリンスキーは『ことり』に、計画の仕上げを託し……)

海未(ことりは『ミナリンスキー』に託された仕上げを、こなした……)

海未(お互いがお互いのことを恥じていたはずの、『彼女たち』が……この計画を果たすために、結託した――)


海未(――全く、どういう心境の変化があったのかは、知りませんが……こっちとしては、たまったものではありませんよ)

海未(……ふっ。次会った時はお説教ですからね、ことり――)
   


665: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 22:58:52.16 ID:0HhIdLSM.net

  
ピッ

海未「……今回は、私たちの負けですね。こんなことを書かれてしまっては、もうキスなんて――」

穂乃果「……あのね、海未ちゃん」


穂乃果「私、実は変態だったんだ」

海未「……」

海未「……はいっ!?」

穂乃果「みんなから匂いを嗅がれて……もちろん恥ずかしかったけど、怖かったけど、でもね――」

穂乃果「『ちょっと気持ち良いかも』、なんて、思っちゃったりもしてたんだ……」

穂乃果「匂いを嗅がれて、よろこんでたんだ、私……」

海未「……は、はぁ。そうだったのですか」

穂乃果「あ、あはは……言っちゃった……///」

海未「穂乃果……」
  


666: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 23:00:52.91 ID:0HhIdLSM.net

    
海未「……」フゥ


海未(……必死にごまかそうとしていた自分が、恥ずかしいですね)


海未「私も……」

穂乃果「えっ?」

海未「私も、変態です……どうしようもない、変態ですっ」

海未「だって私は――昔からずっと、あなたの匂いをこそこそと、嗅いでいたのですからっ!」

穂乃果「……はは」

穂乃果「そっか……海未ちゃんも、変態だったんだ……っ!」

海未「その通りですっ! 私たちは、二人とも……っ!」

穂乃果「だったら私たちもう、何も怖くないねっ!」ニコッ

海未「っ!!」

穂乃果「海未ちゃん……」

海未「穂乃果……」


穂乃果「……いつでも、いいよ」

海未「ええ……」

穂乃果「……」

海未「……」
  


667: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 23:01:26.99 ID:0HhIdLSM.net

  
海未(穂乃果が再び、目を閉じました……)

海未(さぁ、園田海未。今度こそ、女を見せる時ですよ……っ!)

海未(……)


海未(……なにをしてるのですか。早くしなさい。穂乃果を待たせてはいけませんよ)

海未(何も緊張することはありません……というか緊張なんて、していません……)

海未(大丈夫です。一度水を差されたことで、より緊張が増したりなんか、全然していません……っ!)


海未(……うぅ)モジモジ


海未(ちょっと、なにをしてるのですかっ!? いつまでモジモジしてるんですかっ!)

海未(今まで散々変態的な行為をしておいて、今更キスくらいのことで動揺しないでくださいよっ!)

海未(う、ぅ……っ! 顔が、熱い……///)

海未(どうしましょう……このままでは、このままでは――)
   


669: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 23:02:33.69 ID:0HhIdLSM.net

  

フワァ……



海未(――っ!!)


海未(これは……)


海未「……」



スン



海未(……『ほのスメル』――)



 
海未(あぁ……そうでした)

海未(ここは、穂乃果の部屋……ほのスメルの、聖地――)


海未(この部屋は、私の大好きな匂いで、溢れている……)
    


670: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 23:04:18.06 ID:0HhIdLSM.net

  
海未(……本当に、不思議です)

海未(この匂いを嗅ぐと、どうしてこんなにも、心が穏やかになるのでしょう)

海未(緊張なんか忘れてしまうほどの、心地の良い匂い……)

海未(昔から、嗅いでいた……今でも大好きな、この匂い……)


海未(しかし、最終的にレベル5まで嗅いだというのに、まだ飽きないんですね、私は……)

海未(……でも、きっとこれからも私は、変わらず、この匂いを好きでい続けるのでしょう)


海未(だって、ほのスメルは――)



――私の愛する人の、匂いだから。

    


671: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 23:07:38.17 ID:0HhIdLSM.net

     
そして……

ほのスメルをその身に宿す、少女は――



穂乃果「……」


 
私の目の前で、眠ったように、目を閉じていた。

可愛らしい顔は、少し上気して……頬は朱く染まっていた。

少し近くに、寄ってみると――



フワ……



ほんのり甘い香りが、私の鼻をかすめる。

ほのスメルという名の、『恋の匂い』を――私は、嗅ぐ。

それだけで私は、幸せな気持ちになってしまう――


  
……でもやっぱり、このままじゃ少し物足りませんね。

しかし、ボタン一つでほのスメルを増幅させるスイッチなんて、そんな物はもうどこにもありませんし……



……仕方ありません。


もう少しだけ彼女に、近づいてみるとしましょう――


   

チュッ……

    


672: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 23:09:09.54 ID:0HhIdLSM.net

         
――――――――――――――――――





名前:ことり

件名:無題



本文:女の子同士でキスしちゃうなんて、

   二人はやっぱり私以上の、変態さんだね~♪





――――――――――――――――――


「ほのスメルを増幅させるスイッチ」

最終部、『恋のスメル』、完。
     





675: 名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 23:10:33.31 ID:0HhIdLSM.net

※ほのスメルは用法用量を守り、正しく嗅ぎましょう
以上です。大変長らくお付き合い頂き、ありがとうございました!



676: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 23:11:15.07 ID:3BCYwVUm.net

ついに終わったのか
長い間乙でした


679: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/02/25(木) 23:15:45.06 ID:KzuU1ke3.net

なんという長編
おつかれさん


692: 名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/ 2016/02/26(金) 01:09:21.27 ID:bI/O9IlJ.net

完結おめでとう!そしてありがとう!
最初からずっと読ませて頂いておりました。
面白かった。本当に感謝です。


699: 名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/ 2016/02/26(金) 12:45:40.87 ID:iE/ItLSo.net

乙でした!


712: 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2016/02/28(日) 23:12:40.41 ID:ujMEk3Me.net

凄く良かったです











元スレ:http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1449836712/