1: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:40:28.47 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「だって、色も形も大きさもばらばらじゃん」

海未「私が言いたいのは、本質として同じものということです」

穂乃果「どういうこと?」

海未「つまり、人間みんなに『他人と違う』という共通点がある、ということです」

穂乃果「えー?なんだかズルいよー……」

海未「ズルいでしょうか」

穂乃果「それに、共通点があるってことが、一緒ってことにはならないんじゃないの?」

海未「そうですか。じゃあ逆に、穂乃果は『一緒』をどう定義するのですか?」

穂乃果「えっと、それは……」

海未「ほら」



2: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:41:05.62 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「うーん、そうだ!違う部分もあれば、一緒の部分もある!それが人間なんだよ!」

海未「ええ?」

穂乃果「だからこんな議論は無意味だよ!」

海未「穂乃果が言い出したのではありませんか。『人間はみんな違うもん!』と」

穂乃果「海未ちゃん、今のかわいい」

海未「あなたの真似をしただけです!」

穂乃果「照れてるー」

海未「そんなことありません!」

穂乃果「海未ちゃんはねー、もっと素直にならないと」

海未「私は普段から正直に話しているつもりですが……」

穂乃果「いやいや、素直と正直は違うんだよ」

海未「よくわかりません……」


3: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:41:33.73 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「私も言葉の意味の違いはよく知らないよ。でもなんとなく違うんだ。ね、ことりちゃん」

海未「ことりはいません」

穂乃果「だよねー……」

海未「……まったく、この大事な時期に風邪とは……」

穂乃果「『風邪とは……』?」

海未「いえ、別になんでもありません」

穂乃果「海未ちゃん、もし風邪ひいたのが私だったら『たるんでいます』って言うんでしょ」

海未「言いませんよ。流石に理不尽でしょう」

穂乃果「いいや。わかるもん」

海未「言いません」

穂乃果「絶対言う!」

海未「言いません!」


4: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:42:07.58 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「まあいいや」

海未「いいんですか」

穂乃果「大事なのは気持ちだからね!」

海未「それはこのタイミングで使うべき言葉ではないと思います」

穂乃果「そっかあ」

海未「ええ」

穂乃果「でも、こんな時期に風邪ひくものなの?」

海未「季節の変わり目ですから」

穂乃果「春と夏の間だよ?一番ひかなそうじゃない?」

海未「夏風邪のちょっと早めのかもしれません」

穂乃果「へー」

海未「真に受けないでください。私だって風邪に関する知識はあなたと同程度ですから」

穂乃果「そっかあ……」


5: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:42:37.81 ID:WFn0mQvf.net

海未「ええ」

穂乃果「ねえ海未ちゃん、『風邪をひく』の『ひく』ってどう書くの?」

海未「漢字で、ってことですか?」

穂乃果「うん」

海未「わかりません。そもそも漢字なんてあるんでしょうか」

穂乃果「海未ちゃんにもわからないことあるんだね」

海未「もちろん」

穂乃果「じゃあじゃあ、『風邪をうつす』の『うつす』は?」

海未「……わかりません」

穂乃果「うーん、謎の多い病気だね」

海未「確かにそうですね。すごくありふれた病気なのに、変な話です」

穂乃果「世界中の学者さんは風邪の謎から解き明かしていくべきだね」

海未「その通りです。身近なところから積み上げていくのが大切ですよ」


6: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:43:04.54 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「口だけは達者だね」

海未「ええ、あなたが」

穂乃果「そうそう」

海未「ちゃんと主語をつけて話すようにしてください」

穂乃果「いちいちそんな細かいところまで気にしてると、ふけちゃうよ。夜が」

海未「そうかもしれませんが……」

穂乃果「それに、話の流れからなんとなくわかるでしょう?」

海未「わかりにくいから問題にしているのではありませんか」

穂乃果「わからないのは海未ちゃんにコミュニケーション能力が足りないからだよ」

海未「足りないのは主語です」

穂乃果「うまくないよー、海未ちゃん」

海未「そうですか」


7: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:43:32.03 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「はーあ、やっぱり雨が降ってると退屈だね」

海未「すみません」

穂乃果「別に海未ちゃんの冗談がつまらないわけじゃないよ!」

海未「それならいいです」

穂乃果「雨が止んだらひとっ走りしたいね」

海未「凛みたいなことを言いますね」

穂乃果「凛ちゃんは元気いっぱいだよね」

海未「あなたもじゅうぶん元気いっぱいではありませんか」

穂乃果「そうかもしれないけど……私と比べての話はしてないよ」

海未「でも、もし私が誰かに対して『真面目ですね』って言ったら、『いや、海未ちゃんも真面目でしょ』って言うでしょう?」


8: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:43:58.20 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「誰が?」

海未「誰かが」

穂乃果「まあ、そうだね。っていうか、海未ちゃん自分のこと真面目だって思ってたんだ」

海未「ええ、まあ、一応」

穂乃果「まあいいや。何の話してたんだっけ?」

海未「あなたは、走りたいと言っていましたが……」

穂乃果「ああ、そうだね。馬に乗って草原を走り回ったら楽しいだろうなー」

海未「そんな規模の話でしたっけ」

穂乃果「したっけしたっけ走り回りたいよ」

海未「なんですか……?その『したっけ』というのは」

穂乃果「馬が雨上がりの草原を走るときの効果音だよ」


9: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:44:30.79 ID:WFn0mQvf.net

海未「なるほど。的確ですね」

穂乃果「海未ちゃんが私の言うことに賛成するなんて、珍しい!」

海未「まあ、あなたがいつもおかしいというわけではありませんから」

穂乃果「それは当然だよ」

海未「そうですね」

穂乃果「……それにしても、みんな遅いねー。にこちゃんなんか、いつもまっさきに来るのに」

海未「あれ、知らなかったんですか?今日、三年生は来ませんよ」

穂乃果「そうなの?」

海未「ナントカ講演会とやらがあるそうです」

穂乃果「面白い名前の講演会だね」


10: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:44:58.18 ID:WFn0mQvf.net

海未「……ええ。そうですね」

穂乃果「もうー、拾ってよー!」

海未「なんと言えばいいのかわからなかったので……」

穂乃果「もう」

海未「次の機会に頑張ります」

穂乃果「次があるかどうかもわからないよ」

海未「きっとありますよ。可能性は無限大です」

穂乃果「おおっ、ロックっぽい!」

海未「まあ、私たちの寿命には限りがありますから、本当は無限ではないですが」

穂乃果「うわあ、現実っぽい……」


11: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:45:25.46 ID:WFn0mQvf.net

海未「……穂乃果、あなたは本当に表情豊かですね」

穂乃果「海未ちゃんが表情貧乏なだけだよ」

海未「謙遜しているようで私を貶さないでください」

穂乃果「別に表情貧乏は悪いことじゃないよー」

海未「言い方というものがあるでしょう」

穂乃果「例えば?」

海未「表情が……こう……真顔で、あまり……かわ、ら……ない……みたいな」

穂乃果「ダメダメだよ、海未ちゃん」

海未「はあ……」


12: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:45:58.72 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「海未ちゃんって無茶ぶりには弱いよね」

海未「自覚はあります」

穂乃果「まあ、そんなところもかわいいんだけどね!」

海未「えっ……」

穂乃果「あっ、照れてるー?」

海未「別に、照れてなんか……」

穂乃果「んー?」

海未「ないことも、ないですけど……」

穂乃果「うーん。素直になったね、海未ちゃん」

海未「もうこの話はおしまいにしましょう」

穂乃果「この話って、どの話?」

海未「さっきまで何の話をしていたか、もう忘れてしまいました」


13: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:46:27.04 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「じゃあ新しい話をしようよ」

海未「今朝、遊園地でメリーゴーラウンドが壊れる事件があったそうです」

穂乃果「最新のニュースの話じゃなくてもいいよ」

海未「最新のニュースの話でもいいじゃないですか」

穂乃果「私にはその話を膨らませられないよー」

海未「そうですか……」

穂乃果「そうだ!海未ちゃん、腕相撲しよう!」

海未「懐かしいですね」

穂乃果「ほら、いくよ」

海未「はいはい」


14: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:47:00.55 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「よーい、スタート!」

海未「うんっ……!」

穂乃果「えいっ……はにゃっ……ぐううっ……!」

海未「あっ」

穂乃果「やったー、久しぶりに海未ちゃんに勝った!」

海未「まあ、仕方ありません」

穂乃果「それにしても、海未ちゃんの手、大きいね」

海未「そうですか?」

穂乃果「ほらほら、合わせて」

海未「うーん、確かに私の方が少し大きいかもしれません」

穂乃果「手の大きい人って、なんだか安心しない?」


15: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:47:30.56 ID:WFn0mQvf.net

海未「気にしたこともありませんでした」

穂乃果「私、付き合うなら手の大きい人がいいなー」

海未「手の大きさだけで決めるんですか?」

穂乃果「そんなことはないよ。でも、色も形もおんなじだけど、手の大きさだけが違う二人の人がいたら、きっと大きい方を選ぶよ」

海未「それなら、私もそうするかもしれません」

穂乃果「でしょでしょ?」

海未「そういう二択が積み重なって、好きという感情は生まれるのかもしれませんね」

穂乃果「海未ちゃんって、好きな人はいるの?」

海未「ふふっ。どうでしょう」


16: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:48:05.53 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「何それ!いるの?」

海未「自分でもよくわかりません」

穂乃果「いつわかるようなるの?」

海未「わからないままでもいいんです」

穂乃果「私は、海未ちゃんの言うことがよくわからないよ」

海未「わからないことだらけですね」

穂乃果「そのフレーズ、聞いたことある」

海未「デジャヴ、でしょうか」

穂乃果「そうだねー……」

海未「……」

穂乃果「……」


17: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:48:35.45 ID:WFn0mQvf.net

海未「……凛も花陽も真姫も、遅いですね」

穂乃果「何かあったのかな?」

海未「わかりません」

穂乃果「……あー、百万円ほしいー」

海未「唐突ですね」

穂乃果「海未ちゃんは、百万円あったら何に使う?」

海未「百万円があってみないとわかりません」

穂乃果「うーん。あいにく私は持ってないからなー」

海未「さっき欲しがっていたくらいですから、そうなのでしょうね」

穂乃果「海未ちゃんは欲しいと思わないの?」

海未「別段無くても困らないので」


18: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:49:03.11 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「欲しいって気持ちは、困るとか困らないとかそういうのとは違うんじゃない?」

海未「百万円の話においては、ですよ」

穂乃果「ふーん」

海未「穂乃果は、何か欲しいものがあるんですか?」

穂乃果「そうだねー……馬が欲しい!」

海未「馬って百万円もするんでしょうか」

穂乃果「わからないよ。でも、何匹いても困らないから」

海未「そうですか」

穂乃果「馬に囲まれて生活して、馬と一緒にご飯食べて、馬と一緒に結婚して、馬と一緒に亡くなりたいね」

海未「なんだか、馬と結婚する人みたいです」

穂乃果「流れでなんとなくわかるでしょ?」

海未「まあ、わかりますけど……」


19: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:49:33.76 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「……はあー……」

海未「ため息をつくと幸運が逃げてしまいますよ」

穂乃果「じゃあ海未ちゃん吸っといて、私の幸運」

海未「すうー……」

穂乃果「気分はどう?」

海未「うーん、あまり変わった気はしませんね。でも、これでいいことがあるかもしれません」

穂乃果「長生きできるかもね」

海未「穂乃果のいない余生を過ごすのは寂しいです」

穂乃果「そんな先のことは考えなくていいんだよ」

海未「そうですね」

穂乃果「でも、どうなのかな」

海未「何がですか?」


20: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:50:00.57 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「もしかしたら、五十年後とか百年後には、不老不死になれる薬とか発明されるかもしれないよ」

海未「そうかもしれませんね。でも、私は不老不死にならない方がいいと思いますよ」

穂乃果「なんで?」

海未「限りある人生だからこそ、今をよりよくしようと努力するのです。それを怠っては、健全に生きられないでしょう」

穂乃果「そっか……」

海未「不老不死になれる薬を飲むかどうかは穂乃果の自由ですが、くれぐれも気を付けてください」

穂乃果「うん、わかった」

海未「……」

穂乃果「……希ちゃんだったら、不老不死になれる方法くらい知ってるかな?」

海未「知っていても教えてくれないんじゃないでしょうか」

穂乃果「なんで?」


21: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:50:48.61 ID:WFn0mQvf.net

海未「希は意外と寂しがり屋ですから」

穂乃果「……そっか。不老不死になったら、みんなが死んじゃった後も生き続けないといけないもんね」

海未「独りぼっちになったときの気持ちは、希が一番よく分かっていると思います」

穂乃果「……」

海未「……」

穂乃果「……なんだか、暗い話になっちゃったね」

海未「ええ。もっと明るい話題にしましょう」

穂乃果「明るい話……うーん……何か……」

海未「考えてみると、意外と無いものですね」

穂乃果「いや、きっとたくさんあるんだよ」

海未「え?」


22: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:51:17.96 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「たくさんありすぎて、どれを取ればいいのかわからないけど……でも多分、そこら中にあるよ」

海未「……そうですか」

穂乃果「私たちは、一つ一つ確実に、それを見つけていけばいいんだよ」

海未「そうですね」

穂乃果「はあー……」

海未「あっ、また幸運が」

穂乃果「海未ちゃん吸って!」

海未「すうーっ……けほっ、けほっ!」

穂乃果「あっ!大丈夫?」

海未「え、ええ」


23: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:51:44.50 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「風邪ひいてるんだから、無理しないでね」

海未「ええ、気をつけます」

穂乃果「ことりちゃんも、家の用事で帰っちゃうし……今日はもう練習中止かな?」

海未「一年生は来ますよ」

穂乃果「真姫ちゃんと花陽ちゃんだけで、私と凛ちゃんがふざけるのを止められる自信がないよ」

海未「そうかもしれませんね」

穂乃果「ねえ」

海未「なんですか?」

穂乃果「……やっぱり、主語は大事だね」

海未「ええ。そんな気がしますね」


24: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:52:13.70 ID:WFn0mQvf.net

穂乃果「……」

海未「……」

穂乃果「……あっ、見て。晴れたよ」

海未「そうですね」

穂乃果「私、ちょっと走ってくるよ」

海未「ええ。行ってらっしゃい」

穂乃果「うん!」



25: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:52:41.76 ID:WFn0mQvf.net

おわり




26: 名無しで叶える物語(やわらか銀行) 2018/06/03(日) 21:53:21.35 ID:WFn0mQvf.net

山なしオチなし、そんなほのうみが好きです



29: 名無しで叶える物語(たこやき) 2018/06/03(日) 22:11:11.25 ID:t1H3y+01.net

私もほのうみが好きです






元スレ:http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1528029628/