郷原信郎さんは、元検事の弁護士さんです。企業のコンプライアンスを、ただ法律を守るだけでなく、社会的な道義責任を果たすこととより広くより重く定義づけて、多くの企業から厚い信頼を集めています。

その郷原さんが、去年の暮れに開かれた大久保さんの政治資金規正法違反初公判について語っていることを、ぜひ聞いていただきたいのです。去年、ご紹介するつもりが、取り紛れてしまいました。

しろうと目には、まるでアメリカの司法取引のようなことが西松側の裁判で行われ、しかもそこで否定されたことまでもが、大久保さん側の罪状として挙げられています。メディアがさかんにあげつらっているのはその部分です。司法の立場からすると、これは犯罪を構成し得ないということを、郷原さんがわかりやすく語っています。以前このブログで取り上げた佐藤元福島県知事の「
無形の犯罪」に限りなく近いケースだと思います。

そのときに引用したのと同じ、ビデオニュース・ドットコムがことの重大性にかんがみ無料配信している11分のインタビューです。
こちらからどうぞ。時間の許す方は、大久保さんが逮捕された去年3月の郷原さんのインタビューもぜひ。こちらは17分です。

今はもう、西松事件は公判中にもかかわらず既成の犯罪とされて、小沢一郎さんをめぐる話題は、これを踏まえたかたちで、土地購入疑惑に移っています。ある政治家をひきずり降ろそうとする、典型的な筋書きです。

でも、10日の「サンデープロジェクト」(テレビ朝日系列)では、出演した郷原さんが、小沢さんからの借り入れ4億円が記載されている民主党の2004年の収支報告の官報を示し、司会者が「ええっ!」とあわてる、という一幕がありました。「収支報告書に記載なし」と繰り返し報じてきたメディアは、官報すら確認していなかったことがバレてしまいました。

官報、ネットにちゃんとありました。このページのいちばん右の欄が陸山会で、10数行目の「借入金」のところに「小澤 一郎 400,000,000」って。そして陸山会は、05年と06年に2億円ずつ小沢さんに返しているんですよね。家を買う時、親からつなぎに借りて、融資が出たらすぐ返す、ということはよくありますが、そんなことなのかな、と思いました。

「重要なのは、あの4億円の中にはゼネコンからの1億円が入っていたに決まってる、と無責任な当て推量をすることではなく、どういう4億円なのか、政治家小沢一郎にたいし有権者に納得のいく説明を求めることだ」という、郷原さん、渡部恒雄さん、弁護士でもある枝野新首相補佐官の意見に、新聞社所属のコメンテーターたちはたじたじでした(渡部さんは、中継で出演していたお父さまの恒三さんが、「小沢さんは政治家としてけじめをつけ、役職を降りるべき」と主張するのにたいし、政治とお金の関係は永遠不滅です、みたいなニヒリズムというかリアリズムを主張して、対照的で面白い親子だなあと思いました)。

10日の東京新聞は、「4億円は小沢さんの相続遺産」と、石川知裕議員が東京地検特捜部に説明している、と報じました(web版には載っていません)。同じことを共同通信は「小沢さんのたんす預金」とし、ゼネコンとのつながりを併記して疑惑を深める書き方をしています。いずれも検察リークと見てよく、それ自体は感心したことではありませんが、それにしても、同じ材料をここまで違うニュアンスに仕立てることができるのですね。取材、材を取るとはよく言ったものです。「自然はガチョウだ、問題はこれをどう料理するかだ」(ゲーテ)……すみません、独文やってるもので。

他のメディアがどう報じているのか、ネットでは確認できませんが、これまでマスメディアが「記載されず」と、まるで逆の情報を洪水のように流してきたこの「記載はあった」という事実、これからメディアでどう扱われていくのか、注視したいと思います。

とにかく、これらの郷原さんのインタビューをご覧になれば、民主党連立政権をなんとしても阻もうとし、政権成立後もその政治力を殺(そ)ごうとしている勢力が東京地検特捜部に存在して、公務員としてしてはならないリークを連発し、マスメディアは官報で裏もとらずにそればかり報道してきた、という図式がきわめて鮮明に浮きあがると思います。
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