5月15日は、もちろん78年前の515事件の日ですが、62年前にイスラエルが建国を宣言した日であり、そして38年前に沖縄が「返還」された日です。

沖縄「返還」なんて、沖縄の現状をすこしでも考えたらちゃんちゃらおかしい、それを言うなら「なんちゃって返還」でしょう、と思っていたのが、政権交代で返還交渉の外交機密が明らかになった今、「沖縄なんちゃって返還、みたいな?」と言い換える必要が出てきました。ここで普天間をはじめとする基地問題の解決がその一歩を踏み出さなかったら、ますます虚偽性が強まり、「『沖縄なんちゃって返還、みたいな?』ってか?」となって、ドイツ語なら非現実を表す接続法第二式を三重につかわなくてはならず、そんな使用法こそ非現実で、頭がこんがらがってまさにルーピー状態になります(かつてドイツ語の単位で苦しめられた方、悪夢を思い出させてごめんなさい)。

もうこうなったら、沖縄米軍基地問題は、これを政治問題にした鳩山さんにけりをつけていただくしかありません。そのくらいのこと、中央メディアもそろそろわかってもよさそうなものです。

自民党の谷垣サンは、表向き、威勢よく鳩山さんが「5月末決着」という約束を破ったと糾弾していますが、もしも自分がこの交渉を引き継いだとしたら、と考えただけで輾転反側(てんてんはんそく)、眠れないのではないでしょうか。誠実な方のようですから。眠ってもはっと目が覚め、「落ち着け、安心しろ、オレはハトヤマじゃない」と自分に言い聞かせ……だって自民党は、今までどおり米軍基地をおもに沖縄に押しつける、という考えしかもってないのでしょう? そんなことを表明したら、沖縄でゼネストが起きます。

もはや日米関係は、自民党が生まれ変わらない限り担当できない、新しい局面に至っているのです。反基地の気運が、今や押しとどめようもなく高まってしまったからです。27日に鳩山さんの希望で開かれる全国知事会は、この流れを全国に氾濫させる、堤防決壊の破壊力を秘めています。そうだ、このタイミングで普天間基地存続を問う住民投票をなさってはいかがでしょう、宜野湾市の市長さん、近隣自治体の首長さん。

日本側は実務者協議に、射爆場としてつかわれている久米島・鳥島の返還をもりこみたい意向でした。それは叶わなかったようですが、代わりにホテル・ホテル訓練海域の一部返還と、日米地位協定への環境関係条項の新設を要求しています。

これはけっこう重要だと思います。このふざけた名前の海域は、沖縄本島の北東に広がる、本島が5、6個入るくらいの大きさで、漁船はここを避けて漁場に向かわねばならず、これまで莫大な燃料と時間をむだにしてきました。もちろん、本来なら漁場として沖縄の人びとを養うべき海域です。それが、いつ訓練につかうかもわからない、いつもは静かな海なのに、漁船は横切ることすらできません。沖縄の意をうけた日本側の要求はじつにつましいもので、漁船が通れるようにしてほしい、というものです。

地位協定の環境条項も、基地用地を劣化ウラン弾やジェット燃料その他の有害物質でどんなに汚染してもおかまいなしだったことを改めさせようということで、こんな大問題が今まで放置されてきたわけです。

普天間基地問題という、おいそれとはまとまりそうもないメインの協議事項に便乗するかのように、こうした切実な、でも一見地味な要求をもりこんだ、これは駆け引きとしてうまいと思います。アメリカには、日米関係を悪化させたくない事情があります。そうであるなら、暗礁に乗り上げた主要議題の脇で、とりあえず妥協できるところは妥協しておこう、という心理が働くのではないでしょうか。

アメリカの悪夢は、海兵隊という米軍の一部の軍隊の、そのまたごく一部の小部隊のための予備の基地である普天間問題がこじれて、日米関係そのものがゆらぐこと、ひいては日本を中国に接近させてしまうこと、その前兆として、11月償還予定の30兆円の米国債の借り換えを、それまで気前のよかった日本が財政難を理由に渋ることです。まさに、角を矯(た)めて牛を殺すということです。

11月には、オバマさんが来日します。そのときまでに、来年の春で切れるホストネーションサポート(駐留国支援)協定で両国が合意していなければなりません。私たち市民が、普天間基地だ、代替基地だとこだわるアメリカのやり方はあんまりだ、とうけとめたら、鳩山政権はこの米軍怨嗟の声をうけて、これまでどおりの「思いやり予算」をつけることに難色を示すことができるでしょう。今年に入ってすでに岡田外相はゲイツ国防長官に、「思いやり予算」見直しを通告して布石を打っています。ゲイツさんは去年さんざん岡田さんに、「外交機密をほじくるとろくなことはないゾ」と脅しをかけていましたが、岡田さんは屈しなかったどころか、こんな言い渡しもしているのです。きのうは、「クビ切れ四人組」に岡田さんも入れましたけど、これにかんしては剛胆なところを見せていると思います。さすが、原理主義者と呼ばれるだけのことはあります。

政府の粘り強い交渉に期待することが、今私たち市民がすべきことではないでしょうか、応援する、つまりお尻をひっぱたくことも含めて。いいかげんマスメディアも、この重要で困難な対外交渉をついに開始した勇気ある政府を後押ししたらどうですか。テレビのワイドショウは、政権末期モードに入っています。過去の首相も、末期になるほど「ぶらさがり取材」が短く、ぶっきらぼうになった、鳩山さんもそうだ、とか、鳩山さんの野党時代の政権批判を映像で紹介し、それは今の鳩山さんにあてはまる、「ブーメラン現象」だ、とか、嬉々としてやっています。「ルーピー騒ぎ」の時もそうでしたが、どこのくにのメディアかと思ってしまいます。

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