中国が世界市場をほぼ独占しているレアアースを、尖閣騒動へのいやがらせの一環として、日本向けは禁輸状態にした、まだ禁輸が解けないと、連日、政府が発表し、メディアが報じています。ところがこれ、とんだ言いがかりかも知れません……いえ、言いがかりです。

たしかに中国はレアアースでは「世界シェアの95%を占め……日本は世界の需要量の半分を占めるが、ほぼ100%を中国に頼っている。だが、今年は、中国の輸出政策の転換からなのか、その4分の1にも満たない3万8000トン程度しか輸出されない見込み」という現実があります(中国ニュース通信社 「Record China」、もとはこちら)。

ところが、ここで「今年」と言っているのは2009年、去年のことなのです。輸出政策の転換には、環境問題が影響しているそうです。レアアースは山に酸性の薬品を流して採取する、無許可の業者による違法採掘があとを絶たず、深刻な環境破壊が進行している、世界市場で圧倒的な優位を確保した今、ひと息ついて生産体制を見直そう、ということのようです。国内生産に回したい、また国際的な戦略商品としてよりしっかりと位置づけたい、という意図もあるとのことです。

中国は、7月に輸出枠を減らすことを通告してきました。日本は、8月に北京でひらかれた日中ハイレベル経済対話で、なんとかならないかと持ちかけたものの、話がまとまらないうちに、9月、尖閣での漁船と海保の警備船の衝突が起こってしまった、そういう流れのようです。

レアアース「禁輸」は、尖閣の一件とはなんの関係もありません。これは尖閣の事件をうけてと考えていいのでしょう、中国が日本向け輸出品全般の検査をのろのろやっていた時期がありました。そこに、もともとごくわずかしか入ってこないレアアースも含まれていた、そういうことなのでしょう。そのことを、8月に北京で日本側の議長をつとめた岡田外相(当時)は、重々知っていたはずです。なのに、岡田サンはなぜこのような、中国からすれば濡れ衣的な文脈でこのことが語られるのを、ほうっておくのでしょう。北京対話に参加したほかの人びともです。わけがわかりません。中国を貶めて印象を悪くしようとしている日本のレアアース「禁輸」報道を、中国は苦々しく見ていることでしょう。日本は中国から、なんと姑息な芝居を打つ国だろう、と思われていることでしょう。なにしろ、この「禁輸」騒動では、WTOに提訴できるとかできないとかの議論すら起きたのです。

なんだか恥ずかしくなる私は、けっこう愛国的です。どうせバレる嘘など、政府はなぜつくのでしょう。いつか恥をかくのは、私たちです。情報を握り、それを歪曲して私たちの耳に流し込んだ人びと、つまり政治家、官僚、マスメディアのために、私たちこのくにの市民は赤っ恥をかかされるのです。事情に通じているビジネス界の人びとや、中国経済の専門家は、もっと発信していただきたい。これらほんとうのことを知っている人びとに、発信の機会がもっとあたえられるべきです。

恥をかかされるだけならまだいいのです。その時に、デマに踊らされていたと気づくわけですから。怖いのは、政府やメディアが意図して流す間違った情報が積み重なって、人びとのあいだに他国への警戒心が生まれ、それが敵意や蔑視に変わっていった時です。それは、戦争への道の地ならしにほかなりません。

「Record China」には、違法採掘の写真も多数、載っています。酸性の泥水のなか、防護服どころか靴もはかずに働いている人びと、健康にいいわけはありません。中国政府が、一時、輸出できなくなっても取り締まることにしたのは、じゅうぶん理解できます。ハイブリッド車やEV車のモーター、省エネディスプレイなど、さまざまな最先端技術に欠かせない資源が、このようにして採取されていることを、私たちは知る必要があります。それは、レアメタルにも言えます。採取方法が人のいのちを脅かすだけでなく、その豊富な埋蔵量のために、コンゴは内戦が絶えず、おびただしい人が命を奪われました。

レアアースやレアメタルなど、現代生活に欠かせない資源をほぼすべて輸入に頼る以上、外国とケンカなどしていられないはずです。それが、資源安全保障というものでしょう。政府はしっかりしていただきたいものです。そして、輸入依存度を低めるために、廃棄物に含まれるレアメタル・レアアースをリサイクルする体制を、一刻も早く確立すべきです。これはもう、ひとえにやる気にかかっています。もう一度、政府はしっかりしていただきたい、と言いたいと思います。

メディアったらほんとにもう、と思っていたら、「しんぶん赤旗」がこのことをきちんと報じている、と教えていただきました。ウェブでは見られないようなので、その記事を以下に貼りつけます。


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外交関係・解説記事【『赤旗』本紙'10/10/14】
================経済面
◆《清流濁流》レアアース騒動の真相

尖閣諸島での中国漁船衝突事件をきっかけに、「中国脅威論」が勢いを増しています。とくに、日本が輸入するレアアース(希土類)の97%を占める中国産品が、事件を機に突然に禁輸措置が取られたかのような報道が展開されました。大手紙の論説責任者まで「対日報復外交に経済をからめた」と論難する始末です。

事実はかなり違います。対日輸出など需要増大に伴い、中国国内では乱開発が蔓延。環境破壊や環境汚染が広がり、“にわか開発業者”を閉め出す必要に迫られたのが、事の発端です。
 
9月の「衝突事故」のはるか以前、日本の会計年度の「4月出荷分から40%程度削減したい」というのが、中国側の意向でした。「それは困る」という日本側との交渉が長引いているうちに9月に至ったというのが、事実経過であり、〈闇討ち〉のような話ではありません。この件は、9月の日中経済界・経団連訪中ミッションでも議題として取り上げられました。

中国では、レアアースは主に鉄鉱石の副産物として採取されます。折からの鉄鋼大増産のあおりで、鉄鉱山そのものの乱開発が問題視されています。岩石に含有するレアアースを硫酸液など使用して抽出するわけですが、その岩石を奪い合い、採掘跡をきちんと整地もできない。また、廃液を適正に処理せず、川に流す事態が広がっているようです。

訪中団との協議では、環境処理技術の移転などが議論され、友好裏に解決することで一致しています。いたずらに日中対立をあおる議論は、百害あって一利なしです。
(丘民)

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