11月1日、ようやく祝島に行ってきました。この日は月曜日、運よく週1回の定例デモの日でした。

日もとっぷりと暮れた6時半、港に三々五々、人びとが集まってきます。はちまきの白が闇に浮かびます。総勢50人ほどでしょうか。高齢の女性が5分の3、あとは壮年の男性か。なにしろ暗いので、よくわかりません。大きな犬もいて、しきりにしっぽを振っています。トラメガで男性が簡単な挨拶をして、すぐに歩き始めました。

「原発、はんたーい!」「きれいな海を守ろー!」「きれいなふるさとを守ろー!」

シュプレヒコールはこの3種類だけ。最後のがいちばん多く繰り返されたでしょうか。のべつ叫んでいるのではなく、なんだかおっとりとした間があって、時どき先頭としんがりのトラメガのどちらかが叫ぶと、リラックスした声がばらばらと呼応します。そしてそのつど「えいえいおー!」がくっつきます。デモで「えいえいおー!」は初めての経験です。なかなか発声できません。島の人びとは、海風に鍛えられた喉で、どなるでもなく、だけどかっこいい「えいえいおー!」です。

斜面にびっしりと蝟集した漁村の家並みは、丸い石を積みあげた練り壁がみごとです。人がすれ違うのがやっとの狭い路地をくねくねと、ちょっと行っては曲がり、ちょっと行っては曲がって、デモ隊は歩きます。ところどころ街灯が灯っているとは言え、真っ暗な場所のほうが多く、軒を見上げれば、カシオペヤもオリオンも、星という星が今にも雪崩落ちそうにぺかぺかと輝いています。

30分ほど歩いて出発点の海辺に戻り、2列に並んだおばあさんたちがぱちぱち手を叩き、「原発反対、がんばろー!」の雄叫びを3回。デモはお開きになりました。こんな月曜の夜のデモを、祝島の人びとはおよそ29年間、続けているのです。雨がふったり、不幸事があったりしない限り、毎週毎週。今回は1078回目か1079回目だそうで、回数があいまいなところが祝島らしいということでしょうか。

机上の空論は、どんなに科学や経済や政治といった現代の権威が裏書きするものであっても、うのみにしない。ふるさとのためなら、どんな大きな力にたいしても立ち上がる。たとえそれが国家であろうと、大企業であろうと。そして、過去と未来への責任を、今果たす。それが、祝島の人びとがやっていることです。これぞ保守主義です。その真髄を見せていただきました。

デモのあと、祝島島民の会は会議を開いていました。中国電力の台船を追い払って初めてのデモだったこともあり、会議は長引きました。そのあと、鎌仲ひとみさんの映画「ミツバチの羽音と地球の回転」の中でヒジキやびわ茶をつくっていたたかしさんが、宿まで来てくださいました。厳しかった9、10月の記録(A410枚の冊子)には、先日、広河隆一さんが呼びかけたジャーナリスト・言論文化人の会の賛同者リストも、タイのNGOネットワークの声明もありました。島の人びとが黙々と自信をもって続けていることが、広く深く共感を呼ぶのでしょう。

たかしさん、なんてやわらかい笑顔だろう、これが、この困難なたたかいを持続させているのか、と心からうれしくなりました。2時間も引き止めてしまい、ごめんなさい。

 
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