祝島小学校のみなさん、

お見送りありがとう。みんなはちょうど室津から帰ってきたところだったんですね。また会えて、運がよかった。

前の日にいっしょに食べたカレー、これまでに食べた中で2番めにおいしかったです。じつは、民宿はまやのお母さんが、「きょうの給食はカレーだけど」とおっしゃったときには、なんのことかわかりませんでした。祝島小学校のみんなは去年まで、お昼ご飯はおうちに帰って食べていたんですね。それを、やっぱり給食を味わわせたいと、おとなのみなさんが知恵を絞って、はまやさんがひと肌脱いで、今年からみんなのお昼ご飯を作ってくださることになった。祝島小学校の「ランチサービス」の始まりです。はまやのお母さんは私に、いっしょに給食を食べなさい、と言ってくださったのです。

みんなは、午前中の勉強がおわると、坂の上の学校から港のはまやさんまでやってきて、お当番の2人はちゃんと白いかっぽう着を着て、頭には三角巾をかぶって、てきぱきとお皿を並べていましたね。お当番以外の人はあと2人、そして先生。校長先生ともうひとりの先生は、お昼の船でご用に行くとかで、私たちより一足先にカレーをかき込んでいましたね。外で出発の汽笛が鳴ると、「いってらっしゃーい」と食べながら言ってた子もいたっけ。

座卓の隅っこでは、郵便配達さんがお弁当を開いていました。はまやさんにお茶をいれてもらって。みんなはほんとうに楽しそうに、おいしそうにカレーを食べていました。おぎょうぎだって、たいしたものです。2人の男の子、たくさんおかわりしていましたね、びっくりしました。だって、3杯も食べるのですもの!

みんなの暮らしぶりは、私の目にはとても新鮮に映りました。おとなの人たちが、みんなのことをよく知っていて、みんなもおとなの人たちのことをよく知っていて、全員がお友だちなのですね。私が祝島に向かう船に乗っていたら、「鎌仲さんのお友だち?」と声をかけてくれたおばさんがいました。私が祝島に行くことを、もう知っている人がいたのです。こういうこと、東京に住んでいるとまずありません。そして船が着くと、波止場にみんなのうち何人かが迎えに出ていて、「みっちゃーん、みっちゃーん!」と叫んでいました。あら、船に子どものお客はいたかしら、と思ったら、みんなが飛びついていったのは、私に声をかけてくれたおばさんなのでした。おとなと子どもがこんなに仲のいい友だちだなんて、もう一度言いますが、東京ではあまり考えられないことです。

みんなは当たり前と思っているかも知れないけれど、みんなの島にはすごいことがたくさんあると、私は思います。まずはあのたくさんの小さな舟。一本釣りの舟です。魚をとりすぎず、しかも食べておいしい魚をとるには、一本釣りが最高です。島の漁師さんたちは、それを守り通している。かっこいいなあ、と思います。そして、対岸に原子力発電所ができて魚やひじきがだめになることに反対して、29年間もがんばっている。原発に賛成して漁をやめれば、ものすごいお金がもらえるそうです。でも、そんなお金はいらない、びわ茶をみんなで作って全国に売って、島の暮らしを守るのだと、島のおばさんたちは覚悟を決めています。すごくかっこいい。みんなはかっこいいおとなたちに囲まれて、たいせつにされて、いいよね!

約束の本を送ります。『世界がもし100人の村だったら』は、5年生になって百分率をならったら、読んでください。その4冊めの「子ども篇」という本に、こういうことが書いてあります。ある人が言った、貧しい人が幸せになる5つの条件なのですが、私は、そうじゃない、すべての人が幸せになる条件だ、と思います。私も、これだけあれば、幸せです。

「1つめは、きれいな空気と土と水
2つめは、戦争や災害のためにふるさとをはなれなくてすむこと
3つめは、予防をふくむ基礎的な医療をうけられること
4つめは、基礎的な教育をうけられること、
そして5つめは、伝統文化に誇りをもち、それらを楽しむことができること」

みんなはこの5つをしっかりもっています。最後の伝統文化ですが、祝島は神舞(かんまい)という勇ましくて美しいお祭りで有名ですよね。鎌仲ひとみ監督の『ミツバチの羽音と地球の回転』でますます有名になりました。そうだ、みんなの島を紹介するあの映画、私はこの夏、インド洋の船の上で上映したんですよ。今、全国でたくさんの人びとが見て、それで祝島にやってくる人もいるみたいだけど、海外での上映はあれが最初だと、私はちょっと鎌仲監督にいばっています。

本はあと、ケストナーという人が書いて私が訳した『エーミールと探偵たち』や『ふたりのロッテ』や『飛ぶ教室』や『動物会議』や、『アルプスの少女ハイジ』とか、いろいろ入れましたから、6年生のみさきさんは、上関の中学に行っても、祝島小学校から借りて読んでください。

こんど祝島に行ったら、学校にうかがいます。校長先生にお許しをいただきました。そのときまた、いろんな楽しいお話を聞かせてください。

お昼ご飯がおわったあと、みんなが急にいなくなったのでびっくりしたら、民宿のお風呂場の鏡の前で、先生もいっしょに歯をみがいていましたね。私に気がついて、いっせいにあぶくだらけの口でこちらを向いてくれたとき、私はおかしくて笑いそうになりました。(先生がいちばんかわいい顔をしていました。)

では、さようなら。また会う日まで。

そうそう、「子ども篇」のさっきの続きはこうです。

「この5つがあるところでは、そのまん中に
子どもたちの笑い声があふれているはずです。もちろん、おとなたちの笑顔も」

まるでみんなの祝島のようです!


さっそく山本先生が写真を送ってくださいました。ありがとうございました。左端が民宿はまやのお母さんです。(11:00)

祝島:波止場にて(11/3)



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