環境

【動画あり】シンポジウム「どうする放射性廃棄物」

「行政のアリバイつくりのシンポジウムや委員会には出席しない」

京都大学原子炉実験所の小出裕章さんの信条です。こういう方がもっと増えるといいのに、と思います。私のばあいは、もちろんそういう場面はご遠慮申し上げていますが、理由は小出さんとは大違いです。お役所の名前が印刷されたおおきな茶封筒がどさっと届くと、まずどきっとして、次に「見なかったことにする」のです。だって、むつかしいことがむつかしいお役所のことばでびっしりと書かれたぶ厚い書類を読破し、もちろん理解し、なにごとかを考える、それを文章にしたためるなんて能力は、からきしないからです。これを読んだお役所のみなさん、もう私を誤解しないでくださいね。

その小出さんが、エネルギー庁主催のシンポジウムに出られたそうです。テーマは、「どうする高レベル放射性廃物」。去年11月20日、岡山での開催でした。参加にあたって小出さんが出した条件はふたつ。ひとつは、1対1での公平な討論を保証する、もうひとつは、シンポジウムはすべて公開する、というもので、これにしたがってエネルギー庁は当日配布物やシンポジウムの一部始終の動画を公開しています。エネルギー庁、快挙です。すべてのお役所のシンポジウムがこうだといいのに、と思いました。小泉政権時代の、広告代理店が入った、お金かけまくり、仕込みしまくりのタウンミーティングと異なり、会場もお金がかかっていなさそうです。

長いので、まだ半分しか見ていませんが、私自身、科学リテラシーや科学的社会的、ひいては歴史的倫理を問われる、中身の濃いシンポジウムです。なぜなら、放射性廃棄物の問題は、科学や政治や経済の、専門性の高い問題でありながら、最終的には私たち市民が意志決定しなければならないことだからです。

下記のサイトから見ることができます。お暇を見てご覧になれば、きっと損はないと思います。私が考えたことは、後日書こうと思います。

http://www.dousuru-hlw.jp/okayama.html

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あと1度の不作で世界はカオスに〜レスター・ブラウンの予測とTPP

きのう、第2次菅内閣が発足しました。消費税率上げとTPP加盟に向けた、盤石の構えだそうです。

そんなことより、自然エネルギーを生かし、リサイクルや再利用で物をたいせつにする経済システムにしないと、もう地球がもたないと説いてきたアメリカの環境学者・行動家のレスター・ブラウンさんが、新しい本を出したことのほうが、私には重要に思えます。『ONE POOR HERVEST AWAY FROM CHAOS』、なんて訳せばいいのでしょうか、とりあえずきょうのタイトルのような意味だとしておきます。

化石エネルギーをじゃぶじゃぶ使い、大量に消費材をつくり、消費しないと回らないいまの経済システムに、早くから警鐘を鳴らしてきたレスター・ブラウンさんは、毎年のように来日して、このくににも独自の処方箋を示し続けてきました。たとえば、このくにの電力はほぼすべて地熱発電でまかなえる、という指摘は、軽い衝撃とともに私の心に刻み込まれています。

ブラウンさんの新著は未見ですが、伝えられるところによると、中国やインドなどの新興国で食糧の消費量が爆発的に増え、国際価格が高騰するなか、あともう一度、世界的な規模の不作の年がくると、各地で政情不安となって、世界は収拾がつかなくなる、と予測しているそうです。すでに、オーストラリアの大洪水とロシアの干魃で、綿花をふくむさまざまな農産物がおおきな打撃をこうむり、アルジェリア、チュニジア、チリなどでは食糧と職を求めて暴動が起きています。ブラウンさんが人騒がせな予言者などではないことは、これを見ても明らかです。

中国では、地下水をくみ上げて農業につかっていますが、その地下水の水位が10年以上、下がり続けています。耕作に適さなくなった土地はどんどん放棄されて砂漠化し、中国は増大し続ける食糧需要を満たすために、必死に海外に農産品はおろか耕地まで求めています。南北アメリカで栽培されるコーンや大豆は、食べるためだけのものではなく、エタノールの原料でもあります。石油価格が値上がりしているので、それにつれて穀物の値段もはね上がる、いまはそんな時代です。世界の
20億人は貧困状態にあり、そのうちの10億人は飢餓に瀕していますが、その人びとが自動車と穀物を争っているのです。人びとに勝ち目はありません。世界市場を握る勢力は、自動車の味方ですから。

これはひとごとではありません。食糧、とくに穀物価格がどんどん上がり続け、しかも世界はあとたった1度の不作で混沌のなかにぶち込まれるほど脆弱な状態になっているとすれば、その時、いくらお金があっても、必要なだけの穀物は買えないでしょう。だいいち、その時わたしたちのくににお金ははたしてあるのか、疑問です。その上、ただでさえ国内の食糧生産は年々減っているのですから、その先のことは、恐ろしすぎて想像したくありません。

そんな時、なぜTPPなのか。きのうから高知の芸西村(人口4000人)にいますが、ここの村議会はいちはやくTPP反対の決議文を国会につきつけたそうです。野菜や花卉栽培の高い技術をもつ、誇り高い村の人たちには、食糧生産を担う気概があります。それを、気概だけではどうにもならないところに追い込むのが、TPPではないのか。人口1億を超える国で、食糧自給率が40%というのは、世界にも珍しい。それをもっと下げてでも得るべきものがあると政府は言いますが、それについて、わたしたちはじゅうぶんな説明を受けたでしょうか。そして納得したでしょうか。

これからの世界をほんとうに見据えるならば、主な食べ物ぐらいはぎりぎり自分たちでまかなおうという合意のもと、あとのすべてを判断すればいいぐらいに腹を据えないと、やっていけないのではないでしょうか。そして、わたしたちは飽食の北半球にいるわけですが、そのことが10億のろくに食べるものもない人びとの現実にどうかかわっているのか、そろそろまじめに考えるべきではないでしょうか。なのに、TPPに入ることはこのくにの農業を立ちゆかなくさせ、私たちの食生活を、まだまだアメリカが影響力をふるう投機筋と穀物メジャーが仕切る国際価格の猛威に、さらに過酷なかたちでさらすことであり、貧しい人びとからなけなしの一皿を奪うことに、ますます加担することにつながります。

わたしたちは豊かさを追い求め、奇跡とも言える達成を見ました。その果てに、豊かにはなったけれど幸せではない現実をつきつけられています。だったら、レスター・ブラウンさんの言うように、食糧とエネルギーをまず自前でまかなって、心安らぐ生存条件をつくりだし、その結果、お金で購うぜいたくからすこしばかり遠ざかったとしても、それを積極的によしとするような価値観への転換をはかる、それができるかどうかが、つまりわたしたちが新しい価値観を子どもたちに納得してもらえるかどうかが、これからの10年を乗り切る鍵だと思います。そうした説得は、ちいさな地域で、ひとりの親として、教師として、そして人間として、おのれの生き方を賭け、子どもたちと真剣に向きあう中でやっていくしかありません。ちいさな地域のおとなたちの真剣の度合いが勝負の分かれ目、だと思います。

そのためには、やはりなんとしてもTPPをやめさせることが前提です。芸西村議会をはじめとする地方自治体が、陸続とTPP反対決議を国会につきつけていることに、私は希望をつなぎます。四国では、ほぼすべての自治体が反対決議をしたそうです。

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禁句3連発のネットの菅サン、資源エネルギー庁前長官を東京電力に天下りさせるとは!

菅首相は、7日にビデオニュース・ドットコムに出演しました(こちらで無料で見られます)。それは、このブログでも10日にお伝えしました(こちら)。その際、感想は控えると書いたら、掲示板阿修羅に、「池田香代子氏・・自分の感想、意見が先だろう! 後だしジャンケンでないのか?」との書き込みがありました。

いえいえ、そうではありません。私が感想なり書いたら、これから見る方に先入見をあたえてしまうので、ご遠慮したのです。かくなるうえは、ざざっと阿修羅の書き込みを読んだうえで、意地でも阿修羅に書いてないことを書こうと思ったのですが、読んだ結果、あの番組を見終わってすぐに書こうと思ったことを変える必要はありませんでした。阿修羅のみなさんと私は関心が重ならないようで*、今から書くことは、どなたも書いていらっしゃらなかったからです。

*すこし補足します。阿修羅では、神保・宮台両キャスターの多弁に批判が集まっていました。たしかに、両キャスターはしゃべりまくっていました。宮台さんは、「こんだけ言ってもわかんないのかぁ!」と、まさに機関銃のようでした。うわ、首相に年下のふたりが政治家論を説いている、とその珍風景を私も楽しみましたが、私は菅サンの言葉に集中していたので、阿修羅のみなさんとは関心の向きが違ったわけです(13:30)。

番組を見て書こうと思ったこと、それは、菅サンは総理として言ってはならないことを3つ言った、ということです。

ひとつ目は、いっしょけんめいにやっているのにメディアがちゃんと伝えてくれない、ということです。だから、この番組にも出るし、カンフルTV(なんというセンスのない命名!)もやっているのだ、と。そうかもしれません。たしかに、今回のネットメディア出演を伝えるテレビ報道もひどかった。85分のうちどこを「抜いた」かというと、ある民放は、「歴代首相が辞めたくなるのがわかった、気持ちが萎えるのだ」でした。そしてスタジオは政局の話題に移る、という段取りです。でも、菅サンはそのあと、そこまでの文脈で言葉を補ってまとめると、「過去の首相たちはそれで辞めていったが、それは家業としての政治家だったからだろう、自分は市民出身の変わり種だから、そういうことでは辞めない」というようなことを、かろうじてつけ加えたのです。かろうじて、と言うのは、声が弱々しかった、決意のほどを感じるような言い方ではなかったからです。それでも、言うだけは言ったのです。

だけど、今回のネット出演で、記者クラブメディアはますます「反菅」を強めたでしょう。米メディアがのっけから敵視して不利な報道を浴びせかけた鳩山さんを、副総理の立場から観察していて、その轍を踏むまいとしたのでしょうか、菅サンはアメリカのつごうを十二分に汲んで行動しているおかげで、米政府のお覚えを反映する米メディアに叩かれることはありませんでした。無視というか、この日本の首相をめぐっては無風状態。でも、国内メディアは就任直後からよそよそしかった。そこへきて「メディアは伝えてくれない」です。メディア戦略としてもまずいというか、自分をどのようにアピールすべきかというメディア戦略をもっていないとしか言いようがありません。ジャーナリストとしていいお仕事をなさってきた下村健一さん、内閣広報官になられたのなら、そこんとこなんとかして!

ふたつ目の「それを言っちゃあおしめえよ」は、国民がわかってくれない、みたいなことです。はっきりとではないけれど、むにゃむにゃと言っていました。語尾が消えぎえだったのは、言いながら、まずい、と思われたからかもしれません。まずいです。「メディアが伝えてくれない」と並んで、政権余命いくばくもない総理に典型的な、これはグチです。辞める気がないのなら、歯を食いしばってでも言ってはならない禁句です。これでは、テレビがへんな抜き方をしたくなるのもわかる気がします。

みっつ目、言ってはならないことの極め付けは、「やりたいことではなく、やらねばならないことをやっている」です。ルーティンワークをこなすだけなら、自民党時代の順送りお飾り総理でよかったはずです。政界入りした当初から「総理大臣になる」と宣言していた菅サン、やりたいことを最優先にやらなければ、政権交代を選んだ民意はどうなるのでしょう。そして、やらねばならないことに、たとえばなぜ突然、TPPなどというとっぴなテーマが飛び出すのでしょう(TPPは「トッピッピ」と言うことにします)。政治主導は、官僚機構改革はどうなったのですか。天下り禁止は? 

首相は、しっかりやっている、みたいなことを強調していました。だけど、資源エネルギー庁長官が辞任4カ月で東京電力に天下りなどというニュースに接すると、その言葉を額面どおりには受け取れなくなります。一事が万事で、天下りが横行しているのでは、と思いたくなります。この、エネルギー政策に重大な影響を及ぼす天下り「事件」を伝える河野太郎衆議院議員のメールマガジン(1月7日付。もとはこちら)を、こうなったら「怒りの転載」です。河野サン、ほかの政策には怖いモノがいっぱいあるけれど、こと原子力政策にかんしては頼りになる政治家のひとりで、去年の12月には、原子力政策をめぐるトークもご紹介したところです(こちら)。なぜ頼りになるか、まずは原子力政策のおかしさを授業スタイルで説明する河野サンの
youtubeをご覧ください。きっとご納得いただけると思います。





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......ごまめの歯ぎしり  メールマガジン版......
       衆議院議員 河野太郎の国会日記
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河野太郎のツィッターはこちらから! @konotarogomame

経産省資源エネルギー庁長官を退任したばかりの前長官が東京電力に天下りした。(民主党政権は、斡旋していないから天下りではないと言うが、これが天下りでなくてなんなんだ!)

資源エネルギー庁は、電力産業に大きな影響力を持つ。東京電力はOBをせっせと天下りで受け入れ、経産省はその見返りに、RPSやゆがんだ固定価格買い取りのような再生可能エネルギーをせっせと潰すような政策をやり、原子力利権をせっせと守るエネルギー基本計画をつくり、意味もなく核燃料サイクルをせっせと助長し、そして東京電力の副社長にOBをせっせと天下りさせる。

マスコミは東電や電事連から広告をもらうため、特に批判もせず、温暖化対策などで経産省との関係の強化を図るためなどとおためごかしを書く。

こういう原子力利権が日本のエネルギー政策をおかしくし、世界的に大きな伸びを見せている再生可能エネルギーが日本では全くものにならないという国益を損なう事態になっている。

日本のエネルギー政策をちゃんと議論しよう。

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プルサーマルは高くつく 平均世帯で月240円も

輸入MOX燃料の値段は、ウラン燃料の4〜8倍もするそうです。最終処理の費用も電気料金に上乗せされていて、すべての電力会社を合わせると、年に4000億円、平均世帯で月240円(関電のばあい)負担していることになるのだそうです。ご存じでした? 12月22日付の毎日新聞福井版に出ていました(こちら)。

ずいぶん前、家庭用太陽光発電であまった電気を買い上げる制度が始まった時、それにかかる費用は電気料金に上乗せされ、その分の電気料金が値上げになる、というニュースが流れました。町の人の声を聞くというおなじみの構成で、「太陽光発電の電気を買い取るために、電気料金が上がるんですけど」と尋ねられた人びとは、一様に「困ります」と語気を強めていました。でも、この時の試算では、負担は世帯あたり月100円ほどでした。もしも「電気料金が100円上がるんですけど」と訊かれたら、「自然エネルギーにシフトするためなら、そのくらいいいんじゃないですか?」と答える人もいたのではないかと、いまだにあの時のニュースの報道ぶりは疑問に思っています。

ところが、プルサーマルは100円どころか240円です。世界一高い電気料金が、プルサーマル発電のためにまたしても一気に240円上がる。これ、太陽光発電の時のように、きちんと報道されたでしょうか。テレビカメラが町に出て、「プルサーマル発電のために電気代が月240円値上がりするんですけど」と人びとに尋ねたでしょうか。私はそういうニュース、見ていないのですよね。マスメディアはなぜか自然エネルギー発電を冷遇し、プルサーマルをふくむ原発は厚遇している、そんな気がしてなりません。なぜなんでしょう。そんななか、毎日新聞はきちんと書いてくださっています。座布団1枚、です。

新聞のWEB記事は消えてしまうので、下に貼りつけておきます。電気料金240円どころではない、不合理不条理としか言いようのない情報・見解をぜひお読みください。


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高浜プルサーマル発電:10年越しの始動/4割高な経費、国民にツケ/福井

毎日新聞 2010年12月22日(水)15時32分配信

◇電気料金に上乗せ
 
関西電力高浜原発のプルサーマル発電開始で、電気料金を支払う消費者にとって一番身近なのが、経済性の問題だ。ウラン燃料だけで発電するより割高になることは、関電も認めている。
 
プルサーマル発電が先行実施された九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)。貿易概況から、09年5月に購入されたMOX燃料16体の輸入額は約140億円だった。燃料価格に輸送費なども含まれているとみられるが、ウラン燃料の4〜8倍に相当するという。
 
関電は「発電経費のうち燃料代は1割程度。MOX燃料は、燃料全体の1割程度しか原発に装荷しないため、影響は小さい」としている。だがプルサーマル発電に伴うバックエンドコスト(使用済みウラン燃料の再処理費用や、高レベル放射性廃棄物の処理費用など)も、必要経費として電気料金に上乗せされている。関電は、「バックエンドコストの積み立て法制化を受けた06年2月の電気料金改定時に、料金に織り込まれることを報道発表している」というが、電力会社を選べない消費者は気付いているだろうか。
 
立命館大国際関係学部の大島堅一教授(43)=経済学=は、07年の電気事業者の有価証券報告書から、プルサーマル発電に伴うバックエンドコストの積立額を割り出した。単年度で、関電だけで約994億円、国内の電力事業者を合計すると4000億円を超える。平均的な電力使用量の世帯で、毎月240円の負担になる計算だ。
 
プルサーマル発電を前提とした使用済みウラン燃料の再処理を放棄すると、バックエンドコストはゼロにはならないが、国の試算でも半分〜3分の1程度圧縮できる。大島教授は「国の試算は青森県六ケ所村の再処理施設が100%稼働することなどを前提にしており、再処理路線を放棄すれば、国民の負担は膨らまずに済む」とみている。

12月22日朝刊

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あした21日、原子力委員会は2会議を公開でおこないます

今日の記事は、きのうの補遺めいています。

原子力委員会は、サイト(こちら)によると、あした2つの会議を公開で行います。新大綱策定会議の第1回会議と、原子力委員会本会議です。申込は不要、直接会場に行けばいいそうです。鈴木達治郎さんたち、両方出る委員はたいへんそうです。こうやって、会議は傍聴人の前で行われているのだ、と実感しました。1954年の日本学術会議による原子力三原則、民主・自主・公開が生きているのかな、と思いました。委員会のほうでは、六カ所のことともんじゅのことが話し合われるではありませんか。あしたは無理ですが、いつか傍聴に行ってみたいものです。

策定会議のほうは、立ち見も可とのことですので、事業仕分けのような雰囲気なのでしょうか。策定会議のメンバーには、特定非営利活動法人原子力資料情報室共同代表の伴英幸さんも。詳しくは、委員会サイトをご覧ください。



●新大綱策定会議【第一回】
開催日時: 平成22年12月21日(火)
9:00〜12:00 開催場所: 大手町サンケイプラザホール(地下鉄大手町駅下車すぐ 東京都千代田区大手町1−7−2)
議題:
(1)新大綱策定会議の運営について
(2)新大綱策定会議において議論すべき点について
(3)その他

事前の登録は不要ですので、会議開催時に現地にお越しください(受付 開始は8時30分を予定しています)。ただし、会場の都合(座席数200席程度)上、一定の人数に達した際は、座席が確保できずに立ち見 をお願いする場合や入場を制限させていただく場合がございますので、 あらかじめ御了承ください。

(問い合わせ先) 内閣府 原子力政策担当室 利根川、丸山 
tel.03-3581-6688  fax.03-3581-9828


●第64回原子力委員会
1.開催日時:平成22年12月21日(火)16:30〜
2.開催場所:中央合同庁舎4号館12階1202会議室
3.議題        
(1) 六カ所再処理工場の現状について(日本原燃株式会社)
(2) 高速増殖原型炉もんじゅ炉内中継装置の復旧作業と性能試験工程について(日本原子力研究開発機構)
(3) 独立行政法人日本原子力研究開発機構大洗研究開発センター廃棄物管理事業の変更の許可について(答申)
(4) その他

4.一般傍聴希望者の受付
本会合は、一般に公開する形で行います。
傍聴を希望される一般の方は、開催時刻の15分前までに以下に示す受付にお集まり下さい。ただし、席に限りがありますので、傍聴を希望される方が多数の場合には、15分前までにお集まりいただいた方の中からの抽選とさせていただきます。
なお、施設管理等の観点から、入館時等に身分証明書等の提示が求められる場合がありますので、社員証、運転免許証、その他本人の確認ができるものを持参して下さい。
不明なことがありましたら、以下の問い合わせ先までご連絡下さい。
〔傍聴希望の受付:中央合同庁舎4号館12階1202会議室前〕

5.報道関係者の傍聴
傍聴を希望される報道関係者は、開催前日までに、以下に示す問い合わせ先に氏名、所属及び連絡先を登録して下さい。カメラ撮りを希望される場合には、あらかじめ問い合わせ先にその旨を御連絡ください。
なお、傍聴は1社につき原則1名(撮影のために会議冒頭のみ入場する報道関係者は除く。)とし、会議室への入室の際には、登録された本人であることが確認できるものを提示していただくとともに、社名入り腕章を着用して下さい。

(問い合わせ先) 内閣府 原子力政策担当室  金子、丸山
 tel.03-3581-0265  fax.03-3581-9828

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2010年秋 吉田さんのリンゴ

「2010秋、リンゴのお知らせ(販売休止!)
                                      ゴメンナサイ(-_-;)

例年なら、リンゴの出来不出来は、季節の物語として収穫スタートできるのですが、……今秋は、11月上旬になっても、しゃがみ込んでいる状態です。

今年1月に、無農薬自然栽培を実践している、弘前の木村秋則さんの講演を聴きました。減農薬をもう一歩進めようと、5月6月と殺虫剤、殺菌剤とも2回分止めました。7月初旬までは例年通りの生育状況でしたが、7月中旬から果実表面に病虫害が著しくなり、8月上旬にはお手上げ状態になりました。お盆以降は、例年以上のクマ被害を受け、枝折れ、爪痕による樹の衰弱が重なり、収穫した果実もごくわずか、傷果だらけというありさまでした。10月中旬からクマ被害は減少したものの、病虫害による果実被害で傷果だらけ。リンゴの見極めもままならず……ダウン★

春、低温による開花の遅れ、梅雨明け後の猛暑、9月の残暑と、厳しい気候だったのですが、それ以前に行った減防除と、呑気すぎた作業対応の遅れ、蔓延した病虫害やクマ被害に、途中でくじけた自分の結果でした。

☆今年度はリンゴのほとんどが加工果実となり、ジュース販売のみ行います。どうぞ自然の恵みを天然100%果汁でお楽しみください。」

秋田県鹿角市のリンゴ農家、吉田さんのお便りです。私は毎年、吉田さんの「無化学肥料、農薬半分以下、無袋、葉取らず、減防除」のリンゴをいただいています。「果面に多少の色むら、枝ずれ、虫害傷ありますが、太陽の光をいっぱい受け、健康に育ったリンゴ達」(吉田さん)は、味がぎゅっと詰まっていて、噛むと果汁がほとばしります。

吉田さんのお便りは、リンゴ達とともに届きました。林檎貴重な収穫をわけてくださったのです。みごとに大きな、深い赤色のリンゴは、持ち重りがして、皮がぺたっと手にくっついてきます。この皮の粘りけが、果実を保護するビタミンだそうで、吉田さんは、皮も味わってほしい、と毎年のお便りに書いてきます。

こんなに苦労して、研究を欠かさず、挑戦し続け、なのに今年のようなことがある。そうでなくても、農薬を前提に100年以上も品種改良されてきたリンゴを無農薬や減農薬で育てるのは、不可能に近い至難の業だということを、吉田さんが講演をお聞きになったという木村秋則さんのことを書いた『奇跡のリンゴ』で知りました。

吉田さんのお便りは続きます。「いつもリンゴ応援ありがとうございます。今年はベストアップルに至らず、皆さんの期待に応えることができなくて申し訳ありません。しゃがみ込んだ私はともかくとして……リンゴ達は、厳しい気候や、クマの猛威、病虫害進行を、自らの力でくい止め、精一杯奮闘してベストつくしたと想います。ご賞味ください……♪ また来春、新しい気持ちでスタートします!」

悪いことはなにもかも自分のせいにして、リンゴ達の健闘を口いっぱいほめて、リンゴドロボウの動物や鳥たちにも辛抱強く接し、「商品をつくってるんではなくて、食べてよろこんでもらえるものをつくっているんです」と、秋田言葉でおっしゃる吉田さんご夫妻、皮ごといただいた今年のリンゴはこれ以上ないほど味が濃く、噛みしめるうちに涙がこぼれました。



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緊急 祝島があぶない

上関原発工事が強行されようとしています。「祝島島民の会ブログ」、きょうの記事を貼りつけます(もとはこちら)。


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2010.10.15 Friday

緊急報告 中国電力が埋め立て工事再開を強行しようとしています
約1年もの間、上関原発建設予定地の海域の埋め立て工事は、事業者である中国電力自身の責任でストップしてきました
しかし今日、地元住民、特に予定地の目前に住む私たち祝島島民の同意も理解もないまま、中国電力は工事再開を強行しようとしてきています

私たちの「海を壊さないでほしい」という声を、祝島という島の存在を、28年にわたって無視し続ける

豊かな海や自然を礎にした島の暮らしを「あなたたちは農業や漁業では生活していくことはできない」と侮辱する

合意も、同意も、理解も、なにもないままでの工事の強行に抗議した島民に対して、口では「理解を求めていく」と言いながら、実際には裁判や損害賠償で訴え、お金の圧力や大企業の権力で押しつぶそうとする

約11億円もの漁業補償金の受け取りを拒否して、豊かな瀬戸内の海を守る決断をした島の漁師たちに「あなたたちに漁業権はない。この海は私たちのものだ」と言い放つ


すべて、これまで中国電力が祝島にしてきたことです
そして今なお、していることです

祝島は高齢化も進み、漁師も農家も、今では1077回を数える島内デモを28年前に始めた島の女性たちも、体力的にも本当に厳しい状況です
しかし島の生活を守るために、豊かな海を次の世代に残すために、必死に頑張っています

どうか祝島島民の理解もないままの原発建設工事、海の埋め立て工事の強行はしないよう、中国電力に、そして埋め立て免許を出した山口県ヘ伝えてください

そしてこの上関で起きていることを、多くの人へ伝えてください
お願いします

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中国電力
TEL 082- 241-0211
FAX 082- 523-6185
メールフォーム
https://cc-www.energia.co.jp/faq/1024/app/servlet/ext_inquiry_a?linkid=904&linkstr=%8C%B4%8E%71%97%CD%8F%EE%95%F1

中国電力 上関原発準備事務所
TEL 0820- 62-1111

山口県知事への提言
TEL 083- 933-2570
FAX 083- 933-2599
メールフォーム
https://cgi01.pref.yamaguchi.lg.jp/gyosei/koho/chiji-teigen/3teigen.htm
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ほんとにお終い アフリカに子供服を送らないで&反エコキャップ 反響篇

きのうの昼、仕事をしていたらメールの着信音が。ワシントンポスト紙のメールニュースでした。「チリ鉱山事故 1人目救出」。すぐにテレビをつけたら、たった今1人目の方が生還されて沸きかえる現場のようすを報じいました。WP紙は、予定原稿を「それっ!」と配信したのでしょう。テレビをつけていなくても臨時ニュースを知ることができたのは、インターネットのおかげです。救出カプセルの愛称は「不死鳥」。「不死鳥」という名の鳥籠から生身の不死鳥が出てきて、しっかりと地表を踏みしめる姿は感動的でした。


先おとといのアクセス数には驚きました。おとといは恐ろしくなりました。そして、きのうは空恐ろしくなりました。こんなにたくさんの方がたが、ボランティアやリサイクルに関心を寄せていらっしゃる。心強く思い、みなさんのご意見を知りたくて、リンク先をたどってみました。すこしご紹介します。まず「はてなブックマーク」(
こちら)から、アフリカ衣料支援について。

「なるほど、衣類を送るのもよく考えてということか」(kowyoshiさん)……そうなんです!

「短期的にでなく、長期的な視点も持たなくてはならないこと。世界は複雑だ。単純な良心だけじゃ不足ね」(tamekkoさん)……ほんと、そうですね。

服じゃなくて足踏みミシンを送れってことか」(hobblingさん)……はい、魚ではなく釣り針を、というのが開発支援の考え方です。でも、もしもお宅に古い足踏みミシンが眠っているのなら、それはアンテーィク屋さんがよろこんで引き取ってくださるでしょう。それで得たお金をどこかの海外協力NGOに寄付したほうが、よりおおきな効果が望めます。衣類を送るにも費用がかかると書きましたが、ミシンはもっとかかりますし。

「この辺の話は本当に色々ある。アフリカに関して言えば、かの国の貧困はすべて西側諸国が原因で、最近中国が一枚噛んだ。アフリカの自立を望まない人達は多い」(ブログ「島国大和のド畜生」さん、元は
こちら)……そういう見方はなりたつと、私も思います。ヨーロッパの旧宗主国は、元植民地だったアフリカの国々を借款で縛り、弱みにつけこむかたちでだぶついた農産品を買わせて現地の農業を壊滅させ、そのいっぽうで民間レベルで古着を送るなどして「支援」してきました。

ヨーロッパからアフリカへの衣料支援にまつわる、よく知られた都市伝説があります。ヨーロッパ人が、バカンスで訪れたアフリカのとある町のマーケットで、自分が寄付した子供服を見つけた、というものです。シャツの染みでわかった、というディテイルがほぼ共通しています。この伝説が暗に言おうとしているのは、自分たちは衣服を寄付する善意の存在で、それを横流しして商売するアフリカの人びとは、善意を踏みにじる道徳的に劣った人びとだ、ということです。これも衣料支援への異和感ではありますが、先入見に彩られ、私は人が悪いのか、偽善のにおいを感じてしまいます。

次は、エコキャップ運動について。「はてなブックマーク」には1件コメントがありました。

デポジットはシステムを運用するのが大変。つまりデザインの問題?一方その運用しきらないコストを自治体が負担しているという指摘は正しそう。コストオーバーの事業こそ自治体が運用すべきなのも真かとおもうけど」(ijustiHさん)……デポジット・システムは、ドイツやスカンディナビア諸国などですでに順調に運用されています。要は企業にこれを義務化しようという社会のやる気、法制化だと思います。

圧巻はバンビさんのブログ「バンビの独り言」です(
こちら)。私などよりずっと徹底的にエコキャップ運動とたたかっていらっしゃるのですね。勉強になりました。

ツイッターも飛び交っているようです。ソウル・フラワー・ユニオンさんも、ツイッターで紹介してくださいました(こちら。いつも転送ありがとうございます)。

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続々・アフリカに子供服を送らないで エシカルファッション

きのうは、おとといのアクセス数に驚いた、と書きましたが、きょうは、きのうのアクセス数に恐れをなした、と書かざるを得ません。みなさん、こういうこと気にしておられるのですね。きょうは「止め」として、少しだけ補っておきます。

まず、自著『幸せを届けるボランティア 不幸を招くボランティア』のことに触れている田中優さんのブログをご紹介します。まとめて入手する方法も載っています。あれ、デポジットの対象になっているのは、ここでは空き缶です。本ではペットボトルも取り上げられていたのではないかなあ……きのう、本を貸してしまったので、確認ができません。缶もペットボトルもデポジット、ということでお許しください。

「『ボランティアってなに?』田中優のメルマガより〜」 (こちら
「絶望にきく薬はこれだ この本だ。」(こちら

さて、「服をリサイクルしたら、新しい服が売れなくなって、アパレル産業が困る。消費者がどんどん流行のものを買わなければ、産業としてなりたたない」というご意見をいただきました。たしかに一理あります。アパレル産業は、今どこもたいへんですから。

あるイギリスの雑誌に、イギリス人はTシャツを平均30回洗濯したら捨てる、とありました。にわかには信じがたい話ですが、Tシャツは安いので、次から次へと買い換えても惜しくはないのでしょう。でも、その原料と作る手間を考えてみてください。まず、「綿 農薬 児童労働」と検索してみてください。一瞬にして、むごたらしい光景が広がるはずです。綿は、もっとも農薬が使われる農作物のひとつで、受粉には子どものちいさな手による気の遠くなるような作業が必要です。幼い子どもたちは広大な綿花畑で、炎天下、農薬をかぶりながら、もちろん学校がどんなところかも知らずに、来る日も来る日も腰をかがめて働くのです。そうやって生産されるからこそ、綿花は安く供給され、安いTシャツになるのです。

縫製についても、検索してみてください。あなたのTシャツを縫った人がどんな生活をしているか、想像力を働かせるための情報がどっと出てきます。10月5日に、私たちが身につけている服のほとんどは中国製だと書きましたが(「中国から心斎橋へ」は
こちら)、およそ80%だそうです。国内産は10%ほど、あとの10%がベトナム、ミャンマー、カンボジア、バングラデシュ……これらの国々が占める割合が増えています。中国の工賃が上がっているためです。いまや技術をつけた中国は、高級品を多く手がけるようになっています。

メーカーは、価格を低く抑えるために、人件費のより低い国へと生産地を転々と変えているのです。これも、グローバル経済の現代の否定できない現実でしょう。けれど、これでいいのでしょうか。大量の農薬のために不毛の地と化していく綿花畑はどんどん広がり、人の健康と命と人生が失われています。それを知ったうえでなお、あなたは今シーズン何枚目かのTシャツを物色しに、ファッションストアに行きますか? 

生活スタイルを変えることは、おいそれとはできないとは思います。でも、そろそろ立ち止まって考える時が来ているのではないでしょうか。エシカルファッション。去年の11月3日に書いたとおりです(「貧困ビジネスとしての激安ジーンズ エシカルファッションのすすめ」はこちら)。この記事、時どき参照してくださる方が今もあとを絶ちません。うれしいことです。エシカルファッションは、もちろん激安ストアのものに較べたら高いのですが、長持ちしますので、結局安上がりです。いいもの、気に入ったものを長く着る、その時どきに新しいアレンジを楽しんで。それがこれからの流れになるといいな、と思います。そうすれば、綿花を栽培する人びとや洋服を作る人びとが、よりよい労働条件のもと、より高い賃金を手にし、誇りをもって働けるからです。メーカーさんも、高値の服が売れるなら、儲け幅も見込まれると思います。薄利多売ではなく、厚利少売です。

私は今、10年もののワンピースを着ています。素材は綿、国内製です。袖口がすり切れ、近所のお直し屋さんですこし袖を短くしてもらうこと2回、まだ長袖ですが、将来は7分袖、半袖になることでしょう。お直し代はけっこう高いけれど、同じ町に住む職人さんに直接手間賃をお支払いするほうが、同じお金で激安の新品を買うより、私は気持ちが落ち着きます。

そして、このブログの私の写真、着ているのは、去年11月8日の記事(「二人の少年はなにを書いたか&私のエシカルファッション」はこちら)に書いたタイ製のフェアトレード・エシカルファッションです。

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続・アフリカに子供服を送らないで ボランティアの光と影 

きのうの記事に思いの外たくさんのアクセスがあって、正直、驚きました。おとといの「竹島から尖閣を考える 領土とは何か」は満を持して書いたのですが、こちらのアクセスはそれほどでもありませんでした。複雑な心境です。

ともあれ、きのうの記事への付け足しです。「じゃあ、アフリカのお母さんを応援するにはどうすればいいのか」「ちいさくなった子供服をもらってくれる人がいないばあい、それを寄付するのはいいことではないのか」というようなDMを、複数いただいたためです。

子供服はバザーで売って、そのお金をNGOを通じてアフリカなどの開発支援に役立てていただくのがいい、と私は思います。子供服を配るなら、NGOはそのお金で現地生産のものを買い、配るのです。そのほうが、さまざまな意味で効率がいいのです。よりたくさんの衣類を購うことができるし、輸送費がかからないので、お金の使い方として効率がいい。輸送に必要な石油エネルギーも必要ないので、環境にいい。そして、現地経済に貢献できます。

けれど、こうした事業、子供服メーカーさんとしてはなかなか難しいでしょう。新品がその分売れなくならないような工夫が必要となり、ひと手間かかります。それでもやると、メーカーさんが言ってくださるといいのですが。今回、リサイクルした子供服をアフリカに送ることにしたメーカーさんは、たいへんユニークな企業で、センスのいい事業展開をしてきました。洋服屋さんなのに絵本も出版していて、私も1冊、出していただいています。ですから、あともう一声、と応援すれば、またいろいろ考えてくださる可能性はあると思います。

けれどとりあえず、これはやはり私たち生活者がやるのがいいのではないでしょうか。保育園や幼稚園単位で行えば、楽しいと思います。もちろん、お母さん同士、お金のやりとりなしで子供服の交換はなさっているでしょうが、それをバザーとして行い、ほんの少額のお金を介在させれば、アフリカのお母さんと手をつなぐことができるのです。きのう、衣料品を海外に寄付する時は輸送費も添えるのが望ましい、と書きましたが、それはたとえば小包ひとつにつき500円ていどです。もしも100円均一のバザーなら、ひとりが5点買えば500円になります。そして、国によっては、子供服は1枚数十円です。

田中優さんが新著『幸せを届けるボランティア、不幸を招くボランティア』で提唱なさっている、ペットボトルの行政による回収への異論については、「初耳だ」「なるほど」という声をいただきました。これはほんの一例ですので、ぜひこの本を読んでいただきたいと思いますが、ペットボトルにかんしてここに書いていない、書いていただきたかったことをひとつ、付け足しておきます。

ペットボトルのキャップを800個集めると、途上国の子どもひとりにワクチンを投与できる、という「ボランティア」活動についてです。ところが、そうやって回収されたキャップはボトル本体といっしょに破砕され、リサイクルされるので、キャップだけ集めることにはさしたる意味はありません。唯一考えられるのは、キャップを閉じたペットボトルは潰しにくいので、回収の効率が悪くなる、だからペットとキャップを分ける習慣を定着させるために、キャップを集めてワクチンを送ろう、というキャンペーンが考え出されたのではないか、私はそう勘ぐっています。

ひとつでも利点があればいいではないか、というご意見もあるでしょう。でも、ある小学校にうかがった時、衝撃的なものを見てしまいました。ある教室に、「夏休みのしゅくだい ボランティアをしよう」と貼り紙がしてあって、子どもたちが、自分がしようと思うボランティアを書いていました。その中に、「キャップを○○こあつめる」と書いている子どもがいました。100の単位でした。その学校では、子どもたちのボランティア活動の一環として、キャップを集めていたのです。この子は夏の間、自分でもせっせとペットボトルの清涼飲料水を飲むのか、と思いました。これでまたひとつ、キャップが貯まった、自分はいいことをしてるんだ、と思いながら。

本末転倒もいいところです。環境に配慮するなら、ペットボトルの消費を減らすことこそたいせつですし、キャップ800個でまかなえるひとり分のワクチン代は20円です。だったら、清涼飲料水を飲むのを1回がまんして120円を寄付すれば、6人のワクチン代を購えます。800本の清涼飲料水代は、1本120円とすると、4800人分のワクチン代にあたります。おおきなボトルならそれより高いので、実際はもっとたくさんの子どもを救えます。

カラフルな丸いキャップがたくさん集まった光景は、人によっては見た目にも楽しいものなのでしょう。それも、この「環境・国際たすけあい」キャンペーンに人気がある理由のひとつなのでしょう。ボトル本体と違って、キャップなら学校などの集積場所に持って行くにもかさばらないので、その手軽さもうけているのでしょう。ひところ、アルミ缶のプルトップを集めると車椅子になる、という都市伝説じみた「ボランティア」がはやったように。都市伝説じみた、と言うのは、だったらアルミ缶本体も集めたほうがたくさんのアルミをリサイクルできる、なのにプルトップだけというのは、やはり手軽さが歓迎されたためだ、と思うからです。ボランティアのしきいを低くする工夫と言っても、こうしたおかしげなことがあると考えものだ、と思います。

小学校の階段の下に、ドラム缶数個分のキャップが透明プラスティックの袋にびっしり入っているのを目にした時、私は薄暗がりの中の色とりどりを、きれい、とは感じませんでした。いやなものを見た、と思わずにはいられませんでした。

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パキスタン大洪水

先月末から降り続いた大雨が、パキスタンに未曾有の災害を引き起こしています。地震などと異なり、あとからあとから押しよせる大量の水が、じわじわと災害を広げていくタイプのこの大洪水、なかなかニュースになりにくいのかもしれませんが、それにしても、国内の報道は手薄です。国連WFP(世界食料計画)は、南アジアの史上最大最悪の自然災害との見方を示しています。1200万人から1400万人が被災し、推定600万人が食糧支援を必要としているということですから、史上最悪というのもうなずけます。家も農地も、道路も橋も、すべてが壊滅的な被害をうけ、疫病の蔓延がせまっています。WFPのサイトには、現地のようすを伝える動画もあります(こちら)。

日本からも、ようやく自衛隊ヘリが行くそうです。なぜ自衛隊であって国際緊急援助隊(
こちら)ではないのか、ひっかかりはするものの、政府の12億円支援と相俟って、やっと動きだしたか、とひとまずは思います。

パキスタンに30年以上お住まいのオバハンこと督永忠子さんとは、かなり前に雑誌「創」の対談でごいっしょしたことがあります。穏やかでユーモアのセンスが豊かで、そのどこに強靱な精神が隠されているのか、戸惑ったことを憶えています。督永さんは、長年、パキスタンやアフガニスタンの支援をされていますが、今回も、ご自身おっしゃるところでは、「悩みながら蟷螂の斧的支援」を始められたそうです。オバハンのブログ(
こちら)には、そのようすが、焦燥や絶望ともども生々しく綴られています。

オバハンを応援したい方、ぜひ募金をお願いします。WFPも緊急募金を呼びかけています。このところの地球規模の気候変動ないし局地的激甚災害をともなう異常気象は、まずは貧しい地域の弱い立場の人びとを襲うのであって、豊かな地域の人びとは、たとえばたかだか暑すぎる夏に悲鳴をあげるに過ぎません。どうか、オバハンが子どもたちに経口保水剤を1錠でも多く配ることができるよう、私からもよろしくお願いいたします。

督永さんへの募金はこちらです。
郵便振替:00170−3−390569 日パ・ウェルフェアー・アソシエーション

WFPへの募金はこちらです。
▼ゆうちょ銀行 口座番号:00290-8-37418 加入者名:国連WFP協会(通信欄に「パキスタン」とご記入下さい。)
▼手数料無料振込口座 三菱東京UFJ銀行 本店(店番001) 普通預金 口座番号:0887110 口座名:トクヒ)コクレンWFPキヨウカイ

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南の国はキンキンに冷えていた

おとといの夜、ピースボートの旅から帰国しました。シンガポールで乗船し、5日後、インドのコーチンで下船、空路、ふたたびシンガポール経由で成田へ。行きも帰りも、港の町に1泊しました。

そのホテル、観光で乗ったバス、そして空港、どこも冷房が効きすぎて、寒いのなんの。インドでは、毎年、熱波で何百人も死者が出るというのに、外国人や富裕層が利用する施設ではこのありさまです。経済発展いちじるしいインドで、この過剰な冷房が豊かさを実感するものとして普及していったら、と考えると、空恐ろしくなります。これでは、原発をいくらつくっても足りないはずだ、と。ちいさな島嶼国シンガポールも、高層マンションが林立していましたが、風を入れて涼をとることができないその室内はどこもこんな低温にしているとすると、やはり空恐ろしい。

過剰な冷房は、わたしたちも最近ようやく反省するようになったわけですが、固定電話ではなく携帯電話がまず普及した新興国や途上国、環境意識も先行する国々のあやまった段階を飛び越えて、今すぐにでも先進国と肩を並べてくださらないものでしょうか。

わが家はこの夏、老犬のために一度だけ冷房を入れたきりです。きょうの東京は涼しかったこともあり、汗ばんだ肌を外気が心地よくなでていきます。夏はこうでなくちゃ。おまけに、屋根に太陽光発電のパネルを乗せていますが、電力の買い取り値が上がったため、毎月1万円以上、電力会社から入ってきます。うれしくて、ますますエアコンなどつける気になりません。

旅ではいろいろ貴重な体験をしました。おりおりにここにも書いていくつもりです。

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いいことするじゃん石原サン 東京でCO2削減義務化

準備は02年からですから、用意周到に進めてきたものです。

東京都は、1100棟のおおきなオフィスビルと300カ所のおおきな工場に、02年から07年まで毎年、CO2の排出量と削減計画を出すよう求め、このたびそれをふまえて排出枠を割り当てたのです。そして、排出量を20年までに17%削減する義務を課しました。達成できなければ、その分の1.3倍の排出枠を、達成してあまっているところから買わされる、それをしないと罰金50万円を払ったうえに事業所名が満天下に公表されるというきびしい制度が、4月1日、東京でスタートしました。

上限を決める(キャップ)、義務や罰を科す。この2つがそろって初めて、キャップ・アンド・トレードというCO2排出権取引制度は機能します。トレード(取引)、つまりお金で片をつけるだけではだめで、本気でCO2を減らすつもりなら、キャップ(排出枠)が重要なのです。

国もこのあいだ、地球温暖化対策基本法案をまとめましたが、そちらは「総量規制を基本としつつ」と言いながら、「原単位方式」も加味するかも知れないという、いいかげんなものです。総量規制は、事業所ごとに排出枠を割り当てる東京都のやり方で、確実にCO2を減らすことが見込まれます。それにたいし、原単位方式は、たとえば車1台つくることで出るCO2に上限枠を設けるものです。そうすると、生産台数が増えれば、総量としてCO2排出が増えてもかまわないことになり、排出量規制としては大甘なものです。

経営側も労組も、挙げて民主党についているというのは、こういうばあい困ったものだと思います。とくに、経済成長期からCO2を盛大に排出してきた産業分野の大企業では、経営への負担がおおきいとか、雇用や賃金が心配だとか言って、労資どちらも総量規制には大反対なのですから。それを押して、とにもかくにも「総量規制を基本としつつ」と、総量規制に重点を置いた基本法案ができたことには、これではCO2の25%削減なんて夢のまた夢とは思いますが、それでも、やはり旧政権とはひと味もふた味も違う新政権の気概と努力を感じます。

東京の話に戻ります。対象となる施設から出されるCO2は、都全体の排出量の20%ですから、この新制度がうまくいくと、20年には東京から排出されるCO2が3〜4%カットできることになります。

東京は国を尻目に、CO2カットの王道を行くのです。かっこいい! 国の基本法案にちょっともやもやしていたので、すかっとしました。石原サンは、オリンピック誘致やら築地移転やら漫画やアニメのキャラクターの素行監視(!)をもくろむやら、とんでもないことをいろいろやってくれますが、これは快挙です。すなおに拍手です。大きなオフィスビルや工場で働くみなさん、たいへんでしょうが、この世界でも第3番目に導入される制度に、誇りをもってチャレンジしてください。応援しています。

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トロ喰うな! マグロと鯨と環境省

今日のタイトルは、言うまでもなく、町田町蔵さまINU時代の伝説のアルバム「メシ喰うな!」からお借りしました。

大西洋クロマグロにワシントン条約の網がかかり、禁輸になるのでは、とメディアが騒いでいます。たとえば、
YOMIURI ONLINEのリードはこうです。


13日から中東のカタールで開かれるワシントン条約締約国会議で、大西洋クロマグロが「絶滅の恐れがある種」に指定され、輸出入が禁止される可能性が高まっている。

現在の漁獲枠約2万3900トンのうち8割を輸入する日本は強く反対しているが、情勢は厳しい。市場を流通する食用の魚が同条約で禁輸対象となれば初のケースだ。クロマグロは食卓から消えるのか――?


お言葉ですが、クロマグロは食卓から消えません。お金持ちは別として、もともと食卓にはそれほど上(のぼ)っていませんでしたから。なかったものが消えることはできません。スーパーや回転寿司でお目にかかるマグロは、おおかたがキハダやメバチなどの安い魚です。いっぽう、クロマグロはミナミマグロとならんで、最高級品なのです。

キハダはほぼ全身が赤身で、メバチもいわゆるトロの部分は少ない、という特徴があります。あっさり味が好まれる関西では、クロマグロよりもキハダに人気がありました。東京ではトロが珍重される傾向にありますが、その歴史はそう古いものではありません。敗戦後、「進駐軍」が闊歩していた頃、お寿司やさんでもアメリカ兵がはばをきかせていました。それを面白くないと感じたスシ職人が、「トロでもやっとけ!」と、それまでは日本の人びとの嗜好に合わないので安かったトロを出したところ、脂っこい食べ物に慣れているアメリカ人に受けた、それで食べてみたら、なるほどこれもまたいけるじゃないかということになり、トロは食生活の変化とともに、いつのまにか寿司ネタの頂点に君臨するに至った、という次第です。今では、関西でもトロは高いとのことです。「進駐軍」発東京経由の嗜好が津々浦々を席捲しているなんて、なんだかなあ、です。

クロマグロは、トロの部分が多いので、高値で取り引きされるのです。それが食べられなくなったからって、食文化の危機と騒ぐのはどうかと思います。トロはおろか、赤身だって、バブル期以前はそんなに頻繁に食べるものではなかったのではないでしょうか。少なくとも、私はそうです。それが今は、週末だからとか、値引きのちらしが入っていたからとか、家族そろって、ということは子どもまでが回転寿司に行くことが多くなりました。トロなんて、おとなになってからちょっとつまむものだったのに、子どもがトロを好きなだけ食べている。昔人間としては、仰天の光景です。

回転寿司はその安さで、握り寿司を身近なものにしてくれました。でも、あんなに安いのは企業努力と言いますか、からくりがあるからです。ネットで「回転寿司 ネタ」と検索してみれば、その秘密の一端が容易に垣間見られます。まさにギョッとするようなその内幕が。とくにマグロのトロなんて……。それを承知で召し上がるなら、それはそれでいいでしょう。でも私は、回転寿司に3回行くより、なじみのちゃんとしたお寿司屋さんに1回行くことを選びます。そもそも、お寿司なんてそんなにしょっちゅう食べるものではないという考え方は、古いと言われようが、今さら譲れるものではありません。

今年は名古屋で、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開かれます。そのホスト国として、カタール・ドーハの会議で大西洋クロマグロ禁輸を留保するなんて、ちょっとみっともないなあ、という気がします。

クジラの調査捕鯨を、鯨食は伝統的食文化だと言い張ってやめようとしない姿勢も、なんだかなあという気がします。もちろん、古来、鯨やイルカ漁をしてきた地域はありますし、それらごく限られた地域では伝統食でした。でも、今のように冷凍冷蔵保存できるわけでもなく、また生肉で流通させるには運搬手段も限られていた当時のことです。鯨肉なんて食べたことも見たこともない、存在すら知らない人が大多数でした。

全国的に食べられたのは、戦後、豚肉や牛肉はおろか、鶏肉までが圧倒的に不足していた10年足らずのことでした。ほかの肉が出まわると、そっちのほうが圧倒的においしかったので、鯨肉の需要はあっというまに激減しました。私たちが、鯨食を放棄したのです。なのに、それを日本古来の伝統食と喧伝して、「守れ!」と声を荒げるのは、なんらかの魂胆があって問題をすり替えているのだと、勘ぐってしまいます。

マグロと鯨、どちらも環境省が農水省などと対立してでも取り組んでいくべき問題なのに、むしろ外務省も含め、がっちりと守りの姿勢に入っているようなのが気になります。こればかりは、政権交代してもちっとも変わってないじゃない、官僚支配のままで、政治家の意志などまるで反映されていないじゃない、と。もちろん、軋轢を恐れずに官僚機構の中に入り込んで力仕事をしている大臣はたくさんいますが、環境省はそうは見えない、心配な省庁のひとつです。案の定、と思わざるを得ない河野太郎さんのきのうのメルマガを貼りつけておきます。たぶんこれは、おもに排出量取引に関することだと思いますけど、一事が万事なのでしょうね。


......ごまめの歯ぎしり  メールマガジン版......
       衆議院議員 河野太郎の国会日記
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Follow me on twitter! @konotarogomame

小沢環境大臣の記者会見...

(Q)大臣御自身の自己評価というか、御自身の半年間を振り返って
みて点数をつけるとどうでしょうか?
(A)付け辛いですけれども120点。
(Q)その理由は何でしょうか?
(A)よくやったと。

メールを転送してくれた環境省の某氏のコメント
「1000点満点です」。
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わーい、石原さんがカストロさんを見習った! 「首都を耕そう」

また、こんなことも想像してみてください。
もし、都市に住む人が
野菜を自分たちでつくったらどうなるでしょう?
キューバの首都・ハバナは、そんな菜園都市です。
アメリカの経済封鎖とソ連の崩壊で、
たべものが手に入らなくなったキューバでは
ハバナの市民に、土地を貸すことにしました。
人びとは中庭を、バルコニーを、
屋上を、ゴミ捨て場を耕し、
空き缶にも土をいれて、野菜をそだてました。
化学肥料や農薬は、つかいたくても、ありません。
ですから、すべて有機農法です。
学校や家庭から出る生ごみも
家畜の餌や肥料にしました。
ハバナには
新鮮で、安くて、安全な
たべものが出まわるようになりました。

(『世界がもし100人の村だったら3 たべもの編』より)


そんなキューバに行った人たちが、口を揃えて言うことがあります。

「キューバの野菜はまずい!」

大笑いしてしまいますが、キューバでは、きゅうりでもさや豆でも、ぎりぎりまで大きく育てるためだそうです。味は二の次、とにかくおなかを満たすことに主眼を置いているわけです。一般に、日本の人たちは舌が肥えています。ましてや、キューバの農業事情を見に行くほどの人は、常日頃、無農薬・減農薬や地産地消・旬産旬消の野菜を食べたりつくったりしている、食や農業に関心の高い方でしょう。それだけに、野菜の味にはきびしい基準をお持ちなのだろうと思います。

ある若い女性は農園に滞在したのですが、日本のきゅうりほどの大きさのオクラにびっくり。毎日、文句を言っていたのだそうです。最初のうちは、何言ってるの、という感じで相手にされなかったのですが、収穫するオクラの大きさがだんだんちいさくなっていったとのことです。これも、笑えるすてきな話です。

東京都が、つかっていない都有地で農家に野菜をつくってもらい、学校給食でつかうことにするそうです。3月7日付の東京新聞に載っていました。もちろん、減農薬です。今年度は、八王子の8ヘクタールという、まとまった遊休地をそれにあてるそうですが、いいことです。もう一歩進めて、よりちいさな土地も、農家に限らず、希望する近所の市民が耕せるようになったらいいと思います。都有地だけでなく、区有地・市有地も(とっくにやっている区もあります)。もしかしたら、国有地にも可能性はあるかも知れません。

100坪以上の畑のまわりは、真夏の気温がほかより1度低いそうです。葉っぱは水のカーテンなので、そこを通ってくる風は、蒸散効果で冷やされるからです。住宅密集地のところどころにそんな畑があれば、ヒートアイランド現象をすこしでも抑えることができるでしょう。

私有地も有望です。地主さんのつごうで、どうしても数年は更地にしておくしかない土地は、都市部にもけっこうたくさんあります。そういう情報をつかんでいる不動産屋さんが中心になって、野菜や花をつくっている地域もすでにあります。ひと春菜の花が、ひと夏ひまわりが、ひと秋コスモスが一面にそよぐだけでも、すばらしいではありませんか。そしてこれが広まれば、地域にあらたな人のつながりができるのではないでしょうか。

かく言う私も、うちの隣が更地なので、地主さんにお願いして、ちいさな畑をつくらせてもらっています。曲がったきゅうりやアザのある茄子を、ご近所に持っていきます。心は、「いっしょに畑やりませんか?」なのですが、これがなかなか。ある時など、タラバガニを1杯お返しにいただいてしまいました。まさに藁しべ長者生活です。「そうじゃなくって!」と思っているうちに、このあいだ地質調査の人たちがやってきました。そろそろささやかな畑も店じまいかな、と思っています。

石原さん、あるいは石原さんのもとで働く都庁のみなさん、すてきなことをなさいますね。カストロさんを見習われたのでしょうか。いいことは、誰がやったことでもいいことです。ただし、石原さんに申し上げたいと思います。「独裁」ってとこだけは見習わないでくださいというか、やっぱり独裁はいいもんだ、なんて意を強くしたりはしないでください。くれぐれもよろしくお願いします。


世界がもし100人の村だったら
都市で畑を耕す人は
3人です。
でも、来年は
6人になります。
世界の都市や町に
小さな畑がもっとふえます。
そして再来年は……。

(『世界がもし100人の村だったら3 たべもの編』より)

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草の生える煉瓦

留学中の夏目漱石は、イギリス人の悪口ばかり言っていました。

あるとき、招かれた館の庭をそのあるじと散策していて、石垣に地衣類が生えているのを見て、「時代づいていますね」と言うと、相手のイギリス紳士は答えたそうです。「あしたにも剥がしてしまおうと思っています」 自分は褒めたつもりなのに、イギリス人ってやつは風情というものをまるで解さない、と漱石は軽蔑もあらわに書いています。

でも、人工物が自然によって浸食されるさまをよしとする感性は、なにもこのくにだけのものではありません。近代、当のイギリスにも廃墟を愛で、わざわざ廃墟を新築するような趣味も生まれました。けれど、それもまた、人工物が滅びていく一瞬を固定するために手入れを怠らないという体(てい)のもので、滅びるがままにまかせるわけではありません。廃墟趣味はわざとらしくて、わたしはどうもついていけません。

091202煉瓦山に囲まれた町で、苔や草が生える煉瓦を見ました。高速道路の法面(のりめん)をがっちりと保護し、しかもいつしか雑草に覆われるようにするために開発されたのだそうです。材料は、ヒノキの間伐材や製材で出るおがくず。林業の盛んな地元にふんだんにあるものを利用したわけです。持つと、拍子抜けするほど軽い。

「これだけ軽いと、ルーフガーデニングなんかにもいいですね。でも強さは?」
「向こうの駐車場に敷いてますが、5年たってもなんともありません」と、同行の元観光課にいた市の女性職員さんが説明してくれます。

実際に敷かれたその煉瓦は、しっとりと水気を含んでいます。これなら、雨水を地下に浸透させ、また水分を蒸散させることで、ヒートアイランド防止にも効果があるでしょう。歩くと、衝撃を吸収して足にやさしい。物陰の煉瓦には苔が生えていました。ゆっくりと自然に浸食され、実用的な堅牢性をそなえながらも、自然の一部に変身してゆく人工物。美しいと思いました。漱石がののしったイギリス紳士なら、汚らしいと感じるだろうかと思い、やっきになってデッキブラシでこする姿を想像して、おかしくなりました。

「住宅の壁材につかえないかと思ってるんですよ。外断熱が火事で延焼したという話を聞きましたが、これならだいじょうぶだ。課題は、どれだけ断熱性を確保できるものを開発できるかですね。通気性はいい」

草の生える煉瓦は、この会社のちいさなエピソード的製品です。大きなコンクリ構造物が、この会社の主力製品です。コンクリの枠に土を詰めて草が繁茂するプレハブの護岸は、イタチが水辺に降りていけるよう、デザインされていました。魚やオオサンショウウオが暮らし、子孫を残せる川底や、鮎が上れる川底もありました。木が生える擁壁も。

091202煉瓦会社「コンクリの会社なのに、コンクリをなるべく使わないものばかりつくってます。コンクリが少なければ、軽くて運びやすいし、土を詰めるほうが安い」とは社長の弁。

しょせんまがいものの自然だ、と片付ける気にはなれません。人間が暮らすには、どうしても自然に手を加えなければならないことがある。そのとき、できるだけ自然との異和感を減らし、もともとそこに生きているちいさないのちを尊重するこれらの工夫は、自然を尊ぶ人間の謙虚さに発している、と思いました。

けれど、なみたいていの工夫ではありません。試行錯誤を重ね、動植物に学び、東京の巨大な実験施設に試作品を持ち込んでデータをとることを繰り返して、製品はようやくものになる。こんなものをつくろう、という提案は、このやる気満々の社長が出すのだそうです。

「開発にあたる社員のみなさんはたいへんでしょうね」
「悲鳴をあげてますよ。今もアイディアがふたつあるんだが、あまりショックを与えないよう、いつどう伝えようかと思ってる」

おかしそうに笑う頼もしい社長は、きっと社員のみなさんのなにくそ魂に支えられているのでしょう。そんな会社がこの山あいの町で気を吐いている。ダムによらない治水ということが言われていますが、そういう趨勢が強まったら、ここの製品は、これまでに増してあちこちの河川に迎えられるのではないでしょうか。ダムなどつくらなくてすむ技術は、もうとっくに洗練されているのだと知って、うれしくなりました。

岡山・真庭落合の株式会社ランデスさん、社長の大月隆行さん、かっこいいと思いました。突然、飛び込んだ旅人の相手をしてくださって、ありがとうございました。たくさんの元気をいただきました。
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「美味しんぼ」がすごいことに! 漫画と環境問題 

このところ、「スピリッツ」を買っています。毎週、と言いたいところですが、忘れてしまったり売り切れだったりして、欠番がいくつかあります。今週号と言っていいのでしょうか、12月14日号なのですが、犬の散歩のとちゅうで思い出し、コンビニに最後に残っていた1冊をゲットしました。

「美味しんぼ」を追いかけているのです。9月に始まったシリーズは、なんと環境問題、第1回は沖縄の泡瀬干潟埋め立て問題でした。そこで採れるおいしい海藻が、埋め立てでなくなってしまう。「この泡瀬干潟を埋め立てるんですか!」というところで終わっていました。

じつはその直前、政権を奪取した民主連合政権は、いちはやく泡瀬干潟の埋め立てにストップをかけました。不都合な現実を暴き、あるべき未来をさししめすことが使命の表現作品に、現実がようやく追いついた瞬間でした。にわかには信じられないほど喜ばしい瞬間でした。作品はその後、かくなるうえは現実の流れをさらに加速させようという意志すら感じさせつつ、怒濤の勢いで各地の環境問題を追及しています。

築地魚市場移転、長良川河口堰、そして今回は、前回に続いて青森・六ヶ所の原子燃料再処理工場です。隣のページは別の漫画の最後のシーンで、ふぐの刺身の女体盛りといういかにもまずそうな料理(だって、刺身ですよ、お皿代わりが美女だろうが美少年だろうが、あたたまってしまって気持ち悪いじゃありませんか)の絵です。そんなエンタテインメント雑誌で、「美味しんぼ」はこれまでのこのくにの環境政策に真正面に切り込み、科学的な裏付けとともに問題点をわかりやすく示しています。こうしたことにあまり関心のなかった多くの人たちへの訴求力に、おおいに期待しています。

科学的裏付けがしっかりしていると言いましたが、それもそのはずです。原作者の雁屋哲さんとともに全国を取材し、情報を提供し解題したのは田中優さん、環境問題のトップランナーにして、ミスチルの桜井和寿さんたちとAPバンクをつくった方ですから。行動力が並外れているだけでなく、頭の回転も速すぎるので、わたしは田中さんのことを秘かに、いえ、けっこうおおっぴらに「頭脳のスピード狂」と呼んでいます


六ヶ所の問題は来週に続きます。どんな展開になるのか、今から楽しみです。
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人為の果ての核兵器と自然 名古屋で話したこと

世界平和アピール七人委員会はこのたび名古屋で、来年この地で開かれる生物多様性条約会議(COP10)に関連した集まりを、各委員の出前講演をふくめて、9回、もちました。わたしは、きょうの津市立瀬尻小学校での「授業」を最後に、帰京します。

委員会が先週金曜日に発表した「いのちを大切にする世界を目指して 生物多様性条約第10回締約国(2010年)に向けてのアピール」にちなみ、自然と人間のかかわりについて、わたしは名古屋でおよそこのような話をしました。


地名には、人と自然のかかわりが標(しる)されています。

ドイツには、パッサウ、ハーナウ、そしてナチの強制収容所のあったダッハウなど、「アウ」で終わる地名があります。「アウ」は、「川が蛇行して肥沃な土が堆積した場所」です。氷河に削られ、全体に地味(ちみ)が悪いヨーロッパでは、このような場所は貴重で、古くから人が農耕をいとなみ、住みついてきました。

ドイツの中世以来の歴史は、開拓の歴史です。ブーベンロイト、音楽祭がひらかれるバイロイトなどの「ロイト」は、「開墾」という意味です。「ブーベン」は若者という意味なので、ブーベンロイトは「若衆新田」といったところでしょうか。次男坊三男坊が開拓団をつくって村を出ていく情景が目に浮かびます。「バイ」は英語とほぼ同じ意味なので、バイロイト音楽祭は「脇墾田音楽祭」です。

ドイツで目立つのは、「インゲン」で終わる地名です。刃物で有名なゾーリンゲン、大学町のゲッティンゲン、やはり音楽祭がひらかれるシュヴェツィンゲン、ロートリンゲン、テュービンゲンなど、たくさんあります。この「インゲン」は、森が後退する、という意味です。人びとが原生林を切り開いて人間の領域を広げていったことを刻印する地名です。

昔、人間の技術力は、自然と共生するしかない水準でした。けれど、時代が下ると状況は変わります。北ドイツのリューネブルクのそばに、リューネブルガーハイデという場所があります。地平線の彼方まで、見渡すかぎりヒースや灌木しか生えない、ぬかるんだ荒れ地です。ルール地方の石炭が使えるようになるまで、製鉄にはドイツでも木炭を使っていました。ここも豊かな森だったのですが、すべて切り出して炭に焼いてしまいました。ここまで破壊されると、自然は自然の力だけでは復元できません。何百年たっても不毛の地です。その気になれば、植林技術で森の再生も可能なのですが、ドイツでは、この自然破壊という負の遺産を、教訓のためにあえて保全しているのです。観光地になっていますので、もしも北ドイツに行かれる機会があったら、立ち寄ってみてください。

「ハイデ」は、辞書には「原野、荒野」とありますが、このように、人の手が加わっていないという意味での原野ではないのです。「荒野」が適当かと思います。

人間は、行き過ぎた開発だけでなく、戦争によっても自然にダメージをあたえます。この季節、ドイツからアウトバーンでフランス国境を越えると、いきなりみごとな紅葉が広がります。ドイツの紅葉は貧しいのです。第二次世界大戦末期、連合国はドイツの都市だけでなく、森林にも徹底的な空爆を加えました。ドイツの森というと、もみの木が前へならえをしているような印象がありますが、それらはすべて戦後植林されたもので、ドイツの森には、かつては落葉広葉樹がうっそうと生い茂っていました。そうでなければ、そこだけはもともと針葉樹が多かったことから生まれたシュヴァルツヴァルト、「黒の森」という地名はありえなかったはずです。

わたしがドイツに暮らしたのは、30年ほど前ですが、当時は冷戦まっさかり。旧東西ドイツは全土にアメリカとソ連の核ミサイルがびっしりと配備されていました。まるで2匹のハリネズミです。なにかがあれば、それらがいっせいに発射され、ドイツは滅びる、と本気で考えられていました。若者たちはとほうにくれ、捨て鉢になっていました。それから20年もたたないうちにベルリンの壁がなくなり、冷戦体制が終わるなど、当時は想像もできませんでした。

冷戦が終わったいまもなお、世界には27,250発の核兵器があります。オバマさんがなくそうと呼びかけた、このとほうもない数の核兵器が、わたしたちだけでなく、すべての生命と自然を脅かしています。これをなくすことは、すべてのわたしたちの責務だと思います。

このあと、27,250個のBB弾を核兵器に見立てて金属板に落とす、「OVERKILLED」という、橋本公(いさお)さんのDVD作品を上映しました。すさまじい音といつまでも終わらないのではないかとすら思えてくるBB弾の洪水から、ご覧になったみなさんは強烈な印象を持ち帰ってくださったのではないかと思います。
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二人の少年は何を書いたか&わたしのエシカルファッション

10月29日にご紹介した二人の少年の作品が、グリーンピース・ジャパンのサイトにアップされました。「グリーン&ピース賞」のウェブ上発表です。

ここ
をクリックして、ぜひお読みください。二人の写真もあります。

わたしも写っていますが、原稿の読み上げを間違ってはいけないので、老眼鏡をかけています。そして、グリーンピース・ジャパンにふさわしいエシカルファッションです(「こういうときだけかい!」ではありません)。

タイにすむ日本人デザイナーが、伝統的な手織り職人に「春の曙」とか、「夏の夕暮れ」とか、イメージを伝えて、あとは彼女たちの想像力で自由に織ってもらった布でできています。もちろん、伝統的な自然素材と自然染料をつかっています。その布をもちいて、かれが日本人向けにデザインして縫製も現地でおこない、日本でフェアトレードのお店が販売しています。2万円台と、手織りにしてはリーズナブルですし、わたしは、服はすり切れるまで着ることにしているので、長持ちする服は、結局、安あがりです。しかも、この服は村の経済を豊かに支えています。このくにの、フェアトレードをビジネスとして成り立たせようとがんばっている若者たちにとっても、心強い商品です。

服は、女性用と男性用が半々です。写真では、モデルのせいもあってよくわからないとは思いますが、もちろんとてもセンスがいい。フェアトレードのお店に行かれたら、尋ねてみてください。ちょっと宣伝でした。

追記
10月5日の記事、「検証『イラク戦争何だったの!?』を訂正しました。賛同人が増えたためです。10日の院内集会、つごうのつく方、ご参加ください。

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貧困ビジネスとしての激安ジーンズ エシカルファッションのすすめ

ユニクロの990円に始まって、西友の850円、そしてついにドンキの690円。激安ジーンズの話題が続きます。30代の人が言っていました。

「どうかと思うんだよね。そんなに安いの買わなくてもよさそうな人まで、ノリで買ってる」

たしかに、うわっと思う値段です。興に乗って1本買ってみる、ということはおおいにあるでしょう。わたしも、3人の子どもたちがちいさかったころなら、理性を働かせてこの価格の誘惑に勝つことができたかどうか……。

これらは、工賃の安い中国で縫製し、流通のむだを徹底的に省いて、製造から販売までを自社でコントロールすることで実現する価格帯だと言います。一般に商品価格には製品の置き場所、つまり倉庫代がばかにならないそうです。工場からお店へ、その中間の滞留をいかに短くし、しかも店頭での品切れをいかに防ぐかに、各社の担当はエキサイティングな毎日を過ごしているのではないでしょうか。

それでも、です。ジーンズを縫っている人びとは、満足な賃金を払われているのだろうか、健康を害するような環境や労働時間を強いられてはいないだろうか。気になります。原材料の綿花は、もっとも農薬を投入される農産物だそうです。口に入らないものなので、いきおい減農薬の契機も弱く、綿花はまさに大地をあとさき考えずに収奪汚染して得られる工業製品として、超大量生産されているのが現状です。

水も大量に使います。1960年代までは世界で4番目に大きな湖だったアラル海が、おもに綿花栽培のためにいまや消滅の危機にあることは、よく知られています。テレビで見ましたが、砂漠のまん中にうち捨てられた漁船、朽ち果てた巨大なカンヅメ工場、ゴーストタウン、肺結核に苦しむ、取り残された人びと。悪夢のような光景がどこまでも続き、ここにかつて太ったチョウザメの群れが躍り、ペリカンなどの渡り鳥の大群が飛来し、周辺には果樹園がひろがり、威風あたりを払う大型のトラが徘徊していたなど、信じられません。その北岸は、インド・ヨーロッパ語族発祥の地と言われるように、自然がとくべつ豊かな恵みを人類にあたえてくれたと言うのに。

690円のジーパンを素肌に穿くことに、自分の健康を思ってだけでなく、恐れのようなものはないのでしょうか。これを縫った誰かの人生を痛めているかもしれないという、グローバル経済の負の面にたいする、そして綿花農民の健康と大地を蝕んで得られたものだということにたいする恐れはないのでしょうか。

国内の縫製業は、それでなくても壊滅に近く、中国やベトナムなどからのいわゆる研修生の廉価な労働力でようやく命をつないでいます。デニム地も同様で、四国でデニムの糸を作っていた大手の工場も、今年閉鎖されました。その結果、職を失い、あるいはもっと条件の悪い仕事に流れ、ジーンズに690円しか出せない層がますます増える。デフレの典型です。貧しい人びとが、生きようとすればするほど自分の首を絞めることになるのが、野放図に経済合理性だけを追求するグローバル経済の、先進国での姿です。激安ジーンズは貧困ビジネスが100円ショップや格安衣料品チェーンの枠を超えて、いよいよ流通一般にあふれ出したことの象徴かもしれません。それが抵抗なく受け入れられている、それどころかもてはやされている。

ときに、あなたは1本のジーンズを何年ぐらい穿きますか? Tシャツは? イギリスのあるメーカーは、Tシャツは平均30回洗濯したらお払い箱になる、としています。そんなに短命なのかと、驚きましたが、あるイギリス人が、「そんなばかな、自分はもっと着る」と言っていますから、まあ、メーカーの希望的観測の入った数値と受けとめておきましょう。

安い衣料がお店に溢れているのは、ありがたいことです。でも、安いからと言って、気分に任せて買うのは、もうそろそろやめにする時が来ているのではないでしょうか。すこし高くても、ほかでやりくりすれば購(あがな)えるのなら、健康にも環境にもいい、そしてつくる人への気遣いのこもったオーガニックコットン製品を買う、そして長く着る。そのためにも、ほんとうに好きだと思えるものを選ぶ。着終わったあとのことも考えられれば最高です。アウトドア製品で有名なアメリカの「パタゴニア」のように、着なくなった服を持ち込めば、引き取って再生コットンにしてくれるメーカーもあります。

極端に安いジーンズが、その背景への想像力によってシラケられてかっこ悪いということになり、「環境や社会に配慮した工程・流通で製造 された商品を選択する」、エシカルファッションこそがかっこいい、という大きな波が来ることを願ってやみません。ほら、小林武史さんたちがもうとっくに始めているじゃないですか。
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二人の少年

一人は高校生。見上げるほど体格がよく、きちんと詰め襟のホックを留めて、紅潮した顔に汗すら浮かべています。むりもありません。世界各地から来た人びと、国会議員(自民党の丸山和也さん)、有名なロックンローラー(サンプラザ中野くんさん)が満員電車状態でひしめきあう中で、かれはある賞をうけるのです。

「山仕事でたいへんなのは、山は斜面だということです。ぼくは何百回も転げ落ちました」

かれの受賞の言葉の一部です。かれは東京のど真ん中に生まれ育ち、スピーチしているのは原宿のとあるビルの中。若さとはまぶしいものです。ふとしたことから林業に目覚めたかれは、北海道に行き、千葉の山に入り、山仕事の先達たちに導かれながら、植林した山の草刈りをします。そうやってからだを動かす中で考えたことを、鎌を研ぐ音や草いきれや息づかいが迫ってくるような、すばらしいエッセイにまとめた、それが最優秀賞に輝いた。

もう一人は、きゃしゃな中学生。長く日本に住む両親に参政権がないのはおかしいと、作文に書きます。ところが、そのことを母親に言うと、「よけいなことを」と言われてしまう。すると、身の回りの小さな幸せをたいせつに思っている母の立場はわかる、とこの中学生は言うのです。親の意見にすなおになるのがむつかしい、この年頃の少年が。でも、「多数のために少数が犠牲になるわけにはいかない」、自分は政府に参政権を要求し、この社会に参加して、「幸せになるつもりである」。

こんな美しい言葉に、わたしは久方ぶりに出会いました。ほんの短いエッセイですが、美しい心から出た言葉の一つひとつが重く、涙なしには読めませんでした。「受賞してうれしいです」、おおぜいの大人に囲まれて、かれはようやく言いました。

ジュニア対象のアワードではありません。おびただしい応募作の中からもっとも優れた作品を選んだら、たまたま二人の少年が受賞したのです。選考の基準は、「環境・平和・人権について、身近なところで行動する中から構造的な問題を発見し、その解決を見出そうとする作品」。主催団体はグリーンピース・ジャパン。20周年を記念して、この賞が設けられました。受賞作は近々GPのサイトにアップされます。そのときはお知らせします。岡部憲和さんと李珍京(イ・ジンギョン)さんの作品、ぜひ読んでいただきたいと思います。こんな若者がいると思うと、そしてきっと増えていくのだろうと思うと、胸が熱くなることうけあいです。

わたしは、総評と賞状などのプレゼンターをつとめました。二人とも、満面の笑みのやさしそうなご両親がいっしょでした。「親の顔が見たい」と思っていたわたしは、4人の親御さんたちを思い切り祝福して、こちらまでこぼれ幸いをいただきました。
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緊迫する祝島「ちょっとくらいの放射能」補遺と声明

おとといの記事の「ちょっとくらいの放射能」、この発言をした人物は、中国電力本社広報のOさんという方でした。

Oさん、どのような会話の中でおっしゃったかはわかりません。でも、どのようなやりとりにせよ、この発言は電気事業者への信頼を損ねます。こんな心構えで原発をつくり、動かされては、たまったものではありません。

報道を俟つまでもなく、地元の方がたの怒りはなおさらだとは、想像に難くありません。生きる糧である海を奪われるだけでなく、「むきになる」ほどでもない「ちょっとくらいの放射能」にさらされて子々孫々生きていくことを、誰が受け入れるでしょう。Oさん、あなただったら、ご家族とともにそういうところに暮らすことを容認しますか?

鎌仲ひとみ監督が声明を出しました。深い怒りのなかにも冷静さを失わない、肝の据わったことばに、勇気づけられる思いです。まさに、たたかいはこれからです。


今日、中国電力は埋め立て工事に必要な海に浮かべるブイを設置してしまいました。

田名埠頭では朝から台船が出て9基のブイを持ち出す構えを取りながら、実は朝早く他の港から別のブイを運ぶ陽動作戦でした。

9月10日からずっと阻止行動をしてきた祝島の人々、応援に駆けつけた人々は肩すかしを食ってしまいました。

およそ一ヶ月近く続いた阻止行動は、今日、別の局面を迎えました。

ブイは設置されても、地域の理解を得ないままに埋め立てをする理不尽さは変わりません。たとえ、着工が期限内にできたとしてもその課題に中国電力を向き合うべきです。そこを見つめたいと思っています。

取り急ぎ、ご報告させていただきます。

鎌仲 2009/10/7

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緊迫する祝島「ちょっとくらいの放射能」

なま温かい風が小刻みに強まったり弱まったりして、霧吹きで吹きつけたような小雨を揉んでいます。そこに、今年初めての香り。台風が接近するこんな夜、金木犀が匂い始めたのでした。

西日本はだいじょうぶかな、そして夜も明ければ中部も東日本も。果樹園が心配だなあ、と思いながら帰宅して驚きました。この台風の中、祝島でとんでもないことが起こっていました。

祝島のたたかいについては、
以前も書きました。中電が作業をしないよう、連日のようにカヤック隊が海に出ています。強い台風の接近をうけて、中電はきょうの作業中止を伝えてきた、カヤックを出すのは危険と手をこまねいていた人びとがほっと安心、台風に備えて作業していたら、中電が埋め立てを始めたとの急報が(中国新聞のウェブ記事はこちら。山口放送のニュース動画はこちら力のこもったいいニュースです。中国電力上関原発準備事務所の岩畔克典所長のエグイ会見が見られます)。

完璧なだまし討ちです。県の埋め立て免許の着工期限が21日に迫っていたための暴挙です。

ある方が中電に抗議の電話をしたら、こう言われたそうです。鎌仲ひとみ監督に教えていただきました。

「昔、核実験の時、放射能がいっぱいばらまかれたんだから、ちょっとくらいの放射能でむきになることはないではないですか」

中電は、こんな認識なのでしょうか。発言者、出ていらっしゃい。名前と所属と肩書きを名乗りなさい。


追記です。
かっかしながら考えました。まず、中電に電話やFAXをしようと思いました。
電話:082−241−0211
FAX:082−523−6185
http://www.energia.co.jp/

そして来年の参議院選挙です。

民主党は、CO2の25%削減と抱き合わせで、原発建設を推進するでしょう。国民新党は、態度を明らかにしていません。社民党は、原発反対です。

もしも、民主党が単独で参議院の過半数をとれるほどに勝ったら、連立をかなぐり捨てるでしょう。そうでなくても、原発反対の社民党の発言力は弱まるでしょう。民主をあまり勝たせないこと、社民の議席と得票率を増やすこと、それが乾坤一擲、原発をとめられるかどうかの最後のたたかいになる、強まる雨音を聞きながら、そんなことを考えました。


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民主連立政権の原発政策に警戒せよ 広河隆一さん

きのう9月27日付の朝日新聞に、尊敬するフォトジャーナリストで「DAYS JAPAN」誌の編集長、広河隆一さんの投書が掲載されました。短い中に要点を押さえ理を尽くし、気迫がこもっている。文章かくあるべし、と感じ入りました。

その内容ですが、
・民主党は原発推進
・原子力行政はおびただしい不都合な事実を隠してきた。
・原発推進はこの隠蔽体質を容認することになる。
・温室効果ガス25%カットも、原発とセットで語られる以上は単純に喜べない。
祝島の人びとが20年以上反対してきた上関原発建設に、拍車がかかってはならない。
そして広河さんは、民主党連立政権は経産省に、原子力政策にかんするこれまでの記録をすべて出せと言うべきだ、としています。

まさに同感です。開かれた政治運営をめざすなら、原子力政策という伏魔殿に風を入れていただきたい。すべての情報を知ったうえで、原発推進すべきかどうか、わたしたちに決めさせろ、と言いたいと思います。
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ぞくぞくする写真 原発反対の海

漁協という組織は、ときとしてすごい結束と行動力を示します。板子一枚下は地獄と、小舟に命を託して助けあってきた漁師の伝統でしょう。

試験とは名ばかりの大甘の条件で、ミサイル防衛(MD)用迎撃ミサイルの実射実験に成功して思い上がり、たるみきった規律のまま、東京湾に侵入したイージス艦「あたご」が漁船「清徳丸」に衝突し、吉清(きっせい)治夫さんと哲大さん親子が行方不明になったときも、所属の新勝浦漁協は1週間、すべての船を出して捜索しました。それがしきたりだそうです。

原発建設反対の祝島で、漁船がロープで繋がりあって海上にピケを張り、作業船を近づけさせない状況が続いています。
中国新聞のこの記事と写真、見てください。

現地では、鎌仲ひとみ監督の新作映画
「ミツバチの羽音と地球の回転」の撮影が進んでいます。その公式サイトには、島の人びとの声や連絡先があります。漁師のみなさんが海上ピケを張っているいまこのとき、ひとりでも多くの方に関心を持っていただきたくて、できればエールを送っていただきたくて、この記事を書きました。エールの送り方には、署名、電力会社や関係官庁への電話のほか、祝島の海産物などを買うという方法もあります。ひじきは香り高く、絶品です。
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環境にやさしい戦争

何年か前、環境大臣だった小池ゆり子さんが、「自衛隊の二酸化炭素(CO2)排出量は数百万トンだろう。ハイブリッド戦闘機や燃料電池戦車などを考えてはどうか」というようなことを言いました。

場所は確か、防衛庁(当時)。聞いていた人たちは驚いたことでしょう。軍人は装備の効率性しか念頭にありませんから、兵器の重量を増やしたり、兵站(へいたん)に新たな負担をくわえてまで環境に配慮せよと言うのか、と。

わたしもびっくりしました。確かに、戦車のリッター当たり走行距離は200メートルだそうですから、たいへんな石油食らいです。でも、戦闘機や戦車は、建造物を破壊し、自然を破壊するための兵器です。戦争による破壊こそが環境にもっとも悪い。環境にやさしい兵器なんて、聞くだけで胸が悪くなりました。

ところが、日米政府が新たな「安保共同宣言」のための協議を始めたという新聞記事に、まるで小池さんの思いが通じたかのように、「地球温暖化対策」も議題に含まれる、とありました(東京新聞 7月16日付朝刊)。

軍事同盟の「温暖化対策」って、いったいなんのことでしょう。悪い冗談もほどほどにしていただきたいと思います。オバマ大統領が環境対策に積極的だからって、まるで草木もなびくように猫も杓子も「温暖化対策」、それで予算がとれるならと、いつのまにか軍人がこぞって環境派を任じている、という図はぶざまです。

ほんとうに地球環境のことを考えるなら、演習なんかしないこと、自分たちが劣化ウランや化学物質で汚染した沖縄などの基地をどうする気か、正直に誠実に申し開きすること、新たに基地なんかつくらないこと、そして不戦の誓いをすることしかないでしょう。

来年、2010年は、日米安全保障条約を10年ごとに見直す年です。半世紀、50年前の条約ですから、見直しは5回目ということになります。60年安保(1回目)、70年安保(2回目)と、反対闘争は盛り上がりましたが、その後はさっぱりです。

冷戦構造の中で結ばれた日米安全保障条約。いまはテロ対策も目的だなんて、ダムの目的が、何十年も計画が遅れるあいだにころころ変わるのと通じるものがあります。これからこのくには、アメリカともアジアともなかよくしていくべきで、「仮想敵国」なんてないとしないことには生きていけないことぐらい、考えるまでもなくわかるのではないでしょうか。

地位協定の見直しももちろんたいせつだとは思います。なにしろ現行の協定は、イラクがアメリカと結んでいる地位協定よりも、このくにのわたしたちの権利をないがしろにするものだからです。でも、地位協定見直しより、日米安保条約を友好条約に切り替えれば、そもそも外国軍隊のための地位協定なんて必要なくなります。

日米安保、そろそろやめにしませんか。環境にやさしい戦争のための「日米安保共同宣言」なんて茶番を許してないで。

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「引き返す道はもうないのだから」表紙180


「引き返す道は

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(かもがわ出版)

・このブログから抜粋して、信濃毎日新聞に連載したものなども少し加え、一冊の本にまとめました。(経緯はこちらに書きました。)
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