2012年6月7日(NO.2367)
謝男(シャーマン)『第14話 純正座礼』

 今回の土下座はスゴイぞ!
 嵐を呼ぶ土下座だ。
 いや、嵐を沈める土下座と言うべきか。

 治ヶ浦高校三年・浅見多恵が痴漢にあったのが事件の発端だった。
 多恵は痴漢男にゲロを吐きかけ下品な言葉で罵る。
 言葉の暴力で痴漢男は精神的ダメージをうけて通院中らしい。

 言いかたは悪いけど、多恵のほうが被害者なのだ。
 問題にするのは痴漢男の処遇だろう。
 と、思っていたら暴言の内容が良くなかったので多恵を断罪すべきと言う流れの職員会議が始まっていた。
 そっちが問題なのか!?

 みなが多恵の非行や精神疾患を疑うなかで、拝の意見だけがちがった。
 これは憑依だ!
 な、なんだってェ――――ッ!

 いきなり、スゴいところに着地したな。
 エレベーターに乗って、降りたら魔界に通じていましたってぐらいに唐突だ。
 確信をもって憑依ですと言われちゃうと、憑依ですかと認めてしまいそうになってしまう。

 そして、拝が単独で浅見多恵に立ちむかう!
 恐ろしくフリーダムな学校だな。
 憑依判定しちゃうのもスゴいが、それを拝に払ってもらうと言う決断もただ事じゃない。
 なんというチャレンジ精神にあふれた学校だ。
 ノリが良すぎるッッッ!

 拝はいつものように靴を脱いで正座する。
 土下座への構えだな。
 いわば、ストレートを撃つ前のジャブ。超電磁スピンの前の超電磁タツマキだ。

「土下座ではない」
「座礼」

『古来より』
『我々大和民族に』
『連綿と受け継がれた
 純 正座礼!!!』

『心正しからざる者に』
『耐え難し!!!』


 光ったァ――――ッッ!
 土下座から後光がさしている。
 これが聖なる除霊の光なのか?
 スゴイね、土下座。

 純正の座礼。転じて純・正座礼だ。
 理屈なんて吹き飛ばす、ある意味思い込みの力ですね。
 拝一穴ならば土下座でティラノサウルスを泣かすこともできよう。

 そして、浅見多恵に取りついていた悪霊(?)は無事に去っていったのだった。
 拝の土下座力はどこまで高まるんだろうか。
 もしかしたら、範馬勇次郎ですらワガママを通せないかもしれない。


 古来より大和民族が土下座を行っていたのは、いちおう記録にある。
 三国志の倭人の条(俗に言う、魏志倭人伝)を見ると次のように書かれている。
『彼らの会合での立居振舞いには、父子や男女の区別がない。人々は生まれつき酒が好きである。大人(たいじん)や敬うべき人物に会ったときにも、ひざまずいて拝するかわりに拍手をするだけである。』

『下戸の者が道で大人に会うと、後ずさりをして草の中に入り、言葉を伝えたり説明したりするときには、うずくまったりひざまずいたりして、両手を地につき、大人に対する恭敬を表す。答えるときには「噫(あい)」といい、中国で承知しましたというのとよく似ている。』(正史 三国志4

 礼については二箇所に記述がある。
 最初に会合(宴会?)での例があり、次に路上での例だ。
 ヤマト(邪馬臺)の宴会は昔から無礼講があったのかもしれない。

 路上で支配者階級に出会うと、土下座をするようだ。
 これは江戸時代の上士と郷士の身分差に通じるものがある。
 また、日本人は昔から返事に「はい ≒ 噫(あい)」を使っていたらしい。

 ただ、邪馬臺国が本当に日本なのかハッキリしない。
 そして、邪馬臺国が近畿にあったか九州にあったのかで、大和政権の成立がいつになるのか推論が変わってくる。
 だから近畿説と九州説でもめているんですけど。

 まあ、とりあえず大昔から大和民族の純・正座礼は土下座であったと思っておきましょう。
 日本の憑依にはキリスト教のエクソシストよりも伝統的な土下座だ。
 逆に言えば、たぶん欧米の悪魔付きには効かないだろうな。
 いや、拝の光る土下座ならば、あるいはッ!

 光る原理を考えるのは、野暮なんだろうな。
 でも、たぶん、思い込みの力です。
 もしかしたら範馬一族の背に浮かぶ鬼の形面も思い込みで作られていたりして……
(更新 2013/6/18)


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感想書きました。「新・餓狼伝 巻ノ二 拳神皇帝編」感想