『マネーボール』感想を書いたところ、その後の大リーグの動向がワカる本として、『ビッグデータ・ベースボール』を紹介していただきました。
 さっそく読んでみたんですが、大リーグのデータ解析はここまで進んでいたのかと驚愕する。
 今後の大リーグは毎年進化していくだろう。

 『ビッグデータ・ベースボール』の主人公は、20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツだ。
 『マネーボール』のオークランド・アスレチックスもそうなんですが、ピッツバーグ・パイレーツも貧乏球団である。
 誰もが認める優秀な選手は年俸が高いので雇うことができない。
 貧乏球団が生きのこるには知恵を絞って誰も気が付いていない優秀な選手・戦術を捜すしかないのだ。

 『マネーボール』時代の2002年は、まだ選手の守備力を評価しきれていなかった。
 だが、2013年には野手の守備をあるていど評価できるようになっている。
 さらに、2007年からはPITCHf/xと呼ばれる自動投球認識システムが球場に設置され、投手の投げる球を詳細に分析できるようになった。
 これらから得たデータで、ピッツバーグ・パイレーツは守備の強化をはかる。
 打者に合わせた守備シフト、ゴロを打たせる配球、ストライクの判定を有利にするキャッチャーの技術ピッチフレーミングの三本の矢だ。

 崖っぷちの弱小球団ピッツバーグ・パイレーツは守備革命で見事に復活する。
 ただ、『マネーボール』のオークランド・アスレチックスの時とはちがい運良く勝てたと思われていない。
 データ野球はすでに大リーグでの常識となっているのだ。
 どこかの球団が成功したら、そのデータはすぐに解析されてしまう。

 いっぽうで閉鎖的な大リーグ村はまだ健在だ。
 ピッツバーグ・パイレーツのように手段を選ばず勝ちたいという動機が無いと、なかなか選手たちは変わろうとしない。
 もっともデータ野球の大きな流れは止められないのだろうけど。
 また2014年3月に発表された「スタットキャスト」というシステムは野手の守備評価をより詳細に評価できるようになる。
 2015年からメジャーリーグすべての球場で「スタットキャスト」が採用される事になった。

 「スタットキャスト」により、新たな評価が生まれているかもしれない。
 2017年現在では、まだそういう話は聞こえてこないが、どうなんだろう。
 日本語ウキペディアの「スタットキャスト」を見るかぎり、日本にはほとんど情報が流れていない感じですね。

 で、大リーグのデータ野球に対して、日本の野球が遅れているという話も出てくるだろう。
 だが、プロ野球にとって最重要な目的は顧客満足度をあげることだ。
 その結果として、観客動員数や客単価を上げて球団を潤わせる。

 顧客満足度を上げるイチバンの方法は試合に勝つことだ。
 だが、あまり勝ちにこだわると地味でしょっぱい試合になる事が多い。
 少なくとも格闘技の試合はそういう傾向があった。
 もっとも、野球は歴史が長いから勝ちにこだわりつつ派手さも失わない知恵があるのかもしれないが。

 日本の野球はテレビ中継の激減や、ファン離れを経験して、よりファンに楽しんでもらえるイベントになるように改善してきた。
 今は勝ちにこだわる野球よりも、ファンサービスを重視したほうが良いんじゃなかろうか。
 そうは言っても、最下位の球団とかは勝たないとファンが離れていくかもしれない。
 やっぱりデータ野球は弱者の武器なのかも。

 日本の事情はさておき、そのうちに大リーグから評価しにくいんで日本でもスタットキャストなんかを導入せよと外圧がかかるだろう。
 たとえば二刀流の大谷翔平選手は投手としての評価と、打者としての評価が日本の基準だとハッキリしない。
 でも、外国人スター選手を雇うような金持ち球団は切羽詰まっていないんで、もうしばらく現状のままでしょうけど。

 これからしばらくはデータの収集・蓄積と分析で新しい戦略・戦術が生まれるだろう。
 データ野球は今まさに進化中だ。
 来年も新しい要素が発見されるかもしれない。
 日本も最下位の球団とかが導入して躍進するかも。
 具体的に言うと千葉ロッテマリーンズなんだけど、ロッテが活躍すると浦安鉄筋家族でのネタにもなるぞ!

ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法
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