2019年11月2日(51号)
連載 第75回 巻の九「仇を討ちたいなんて不純だろ」

 柳龍光を殺すために生きて強くなってきた。
 それが神野仁の人生である。
 父の神野羽矢雄は柳に殺されたも同然であり、そのカタキ討ちが目的だろう。
 柳と同じ武術を学び、わずかな手がかりを手繰って、ついに柳龍光の前に立つ。
 夜の格闘遊技場"ゆうえんち"で、新たな死闘が開始(はじ)まろうとしていた。

 神野仁は「へひい……」と内心で喜悦の声をあげる。
 こりゃ、本気の声だ。
 最強だと思っていた父を倒した男が柳龍光である。
 その強さ、まさに魔王だと神野仁は思っていた。
 魔王なのか!? ちょっと発想が独特だな。
 悪魔とかよりも高貴でリスペクトを感じる。

 神野仁は父・羽矢雄を強いと尊敬していたものの、好きじゃなかった。
 って、前提をひっくり返す意外な告白だ!
 ならば、カタキ討ちしに来たワケじゃないのか?
 でも、柳龍光を殺すと言っていたんだけど。(ゆうえんち25回

「馬鹿で、あんなことしかできなくて、泥臭くて――」

 羽矢雄は強かったけど、生き方がカッコ良くなかった、と。
 たしかに殴られ屋という職業は、あまり良くない。
 人類最強クラスに強いんだったら、ボクシングみたいなプロスポーツをやればよかった。
 反応速度だって早いんだから野球選手でも良い。
 表の世界で地位も名誉も得るだけの強さを持っていたハズだ。
 神野羽矢雄がもっている強さを活かしきれなかったのは、性格に問題があったからだろうか?
 目立つのが苦手だったりして。

 父を泥臭いという神野仁も、ヤクザの客分として用心棒をやっている。
 死ぬ直前の父と似たような仕事だ。
 現在の自分がイヤになったりしないんだろうか?
 神野仁は世界チャンピオンになって名誉と金を手に入れればイイのに。

「おれは、あんたを尊敬している」

「だから、あんたに勝ちたいんだよ」

「仇を討ちたいなんて、あんたにとってもおれにとっても不純だろ」


 神野仁は最強に強い柳龍光を尊敬しているのか!
 そうなると、やっぱり父・羽矢雄を強く尊敬していたっぽい。
 馬鹿で泥臭くても強ければ良いのだろう。
 神野仁が最終的に求めるものは、馬鹿だろうと泥臭かろうと、誰にも負けぬ強さだ!

 強さこそが最大の価値であり、求めるべきものである。
 そう考えると神野仁が柳龍光にこだわる理由もワカるってものだ。
 最強だと思っていた父を倒した、真の最強が柳龍光である。
 だから、自分が最強になるためには、柳龍光を倒さねばならない。
 最強を目指すことが神野仁の動機だろう。

「もう、やろうよ、柳さん……」

「そうだねえ、これは、やるしかないよねえ――」


 まるで男女がベッドに誘い合うように、甘美にエロチックに、死闘へ誘う。
 おっさんずバトルなんだけど、色っぽく開始(はじ)まったぞ!
 挑戦者である神野仁は自分が有利だと考えている。
 神野仁は柳龍光の使う武術・大日本武術空道を学んだ。
 柳龍光がどんな技を使うのか知っている。
 だが、柳龍光は神野仁が空道を学んだことを知らない!

 本当に知らないのか?

 柳龍光は自分の師匠であるマスター国松と敵対している。

 マスター国松が柳龍光を狙っていることも知っているだろう。
 だとしたら柳は大日本武術空道を監視しているかも。
 そこに神野仁と言う優秀な弟子が入門したことも把握している可能性がある。
 なにしろ、柳は松本太山の娘のことまで調べ上げていたのだから。

 今日の柳龍光は右手に手袋をしている。
 神野仁は、そこに気を留めるが、毒手の可能性を考えない。
 毒手の事を知らないのか?
 神野仁は空道のすべてを知らないし、自分が知らないということも知らない。
 こりゃ、情報差の落とし穴に落ちそうだ。

 まずは、柳龍光が鞭打を仕掛ける。
 神野仁は父親譲りの神速でよけた。
 この結果は両者の予想通りだろう。

 あえて予想通りの動きをした柳の狙いは何か?
 神野仁の反応を観察しているのかも。
 やられた事をやり返したくなるのが人情だ。
 つられて神野仁が鞭打を出すように誘った、とか?
 鞭打の質を見れば、空道の力量も理解(わ)かると言うものだ。

 とにかく柳龍光vs神野仁の死闘が開始(はじ)まった。
 まずは探り合いをしているようだ。
 神野仁の狙い通りなら、柳龍光は技を読まれ、空道の技と言う奇襲で不覚をとる。
 そう簡単には行かないと思いますが。
 この勝負は、どちらがより驚愕するかの戦いかもしれない。
 次回につづくのである。

 神野仁は葛城無門と同じような境遇だった。
 だが、柳龍光への思いと動機がずいぶん違う。
 カタキ討ちは不純な動機なのだろうか?

 強くなれるのなら、どんな動機でもいいような気もする。
 以前に、柳龍光を卑怯と言えば成長が止まると言っていた。(ゆうえんち50回
 ならば、柳龍光への憎しみを捨てたほうが純粋に強くなれるのかもしれない。
 葛城無門はどんな感情で柳龍光に立ち向かうのだろうか。
 もっとも、その前に龍金剛と戦って勝つ必要があるような、無いような。
 柳龍光vs神野仁が始まったし、しばらく葛城無門の出番なしか?


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