2020年8月7日(36+37号)
第109回 巻の十三「何も考えなくとも、技が出てくる」

 葛城無門と加奈村狂太、義理の甥と叔父の勝負は最終局面にはいる。
 計算されつくした狂太の攻撃は、無門の肉体にダメージを蓄積し、無門が敗北するのも時間の問題と思われた。
 だが、疲労とダメージで朦朧とした無門が覚醒する!
 師である松本太山が稽古で教えてくれた動きが考えずに出始めたのだ!

『稽古の通り、何も考えなくとも、何を意識しなくても、技が出てくるのである。』

 まさに無我の境地だッ!

 光って飛んだりはしないけど、無我の境地である。
 力まずに打つパンチは予備動作が少ない。
 最速ではないが、反応しにくい攻撃なのだ。
 愚地独歩の菩薩拳なみの完成度かも。

 数学者である加奈村狂太は無門の動きを計算・予測して動く。
 だが与えられる条件がほぼゼロになると計算できない。
 いつも予測で優位に立っているので、予測を失うと不慣れな闘いになる。
 狂太にとって最大の武器である計算力が最悪の弱点となってしまった。

『かつで、武原はんという、舞踊の名人の女性がいた。』

 無の概念の時と同じく、またもや作者降臨で解説だッ!

 葛城無門の覚醒とは関係ないが重要な話なので、ふたたび登場である。
 武原はんは、徹底的に形の稽古を繰り返させられた。
 何十年も繰り返し、形を身体が覚えこみ、50歳を過ぎた武原はんは言う。

「この頃になって、ようやく、形に心が追いついてきたの」
『今は故人だが、筆者はこの言葉に感動した。』


 現在、無門が闘っている最中だが、筆者が感動したのだから仕方がない。
 やっぱり良い言葉を持ってくる。と、こちらも感動した。
 先人たちが完成させ受けついできた形には、心が宿っていたのだ。
 自分が、その心――悲しみや、喜びなど――を経験したとき、この動きこそが心のカタチなのだとワカるようになる。

 武術の型(形)稽古も同じだ。
 先人たちが実戦の中で有効だった技をまとめたものが型である。
 型稽古を重視する流派では、ウェイトトレーニングやランニングを有害無益だという。(達人烈伝 p97)
 完成された型を覚えることが重要なのだ。
 まずは型を覚えこみ、身体が再現できるまでやる。
 そして、無門は型の動きに実戦が追いついてきた。

 松本太山に教えられたとおりに身体が動く。
 意識しないで、身体が型の通りに動き、それが当たる。
 先人たちが完成させてくれた究極の打撃を身体が再現しているのだ。
 狂太は、かろうじて打撃をよけている。
 だが、攻撃の何割かはくらっており、ダメージが蓄積されて行く。
 今度は逆に狂太が追い詰められている!

 狂太の動きが大振りになってきた。
 ダメージで動きが雑になったな。
 合わせるように無門が動き、無寸雷神をあてる!
 すでに見せた技だが、今の狂太は反応できずまともに喰らった。
 ワンパターンの技を喰らうようになったら終わりだ。

 狂太がヒザから崩れ、座りこむ。
 だが、狂太は手を伸ばし無門の両足首をつかんだ。
 そして、逆立ちをしながら右足のカカトで無門のアゴを蹴りあげる。
 当たれば即死するような攻撃だ!
 だが、無門はサーカス仕込みの柔軟性で上体をそらし、回避した。

 最後の反撃が不発となり、今度こそ加奈村狂太は意識を失う。
 だが、御式内(おしきうち)の構えを保ったままだった。
 最後は数学者ではなく、武術者としての意地を見せたか。

 そばで見ていた羽鳥も感動する激闘であった。
 無門も松本太山との稽古がよみがえり、無我の境地を得る。
 大きな成長をすることができた。
 だが、これをいつでも再現できるかどうかが謎だ。
 たぶん大きなダメージを受けると発動するから、最後の切り札になるぞ。

 とりあえず加奈村狂太という強敵に勝つことができた。
 あとは葛城正介の死の真相を無門が告白するだけである。
 でも、狂太は失神中なので話ができないぞ。
 狂太が回復するのを待つのか? それとも先に進むのか?
 のこり時間を考えると先に進んだほうが良さそうなんだけど。


週刊少年チャンピオン2020年36+37号
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