2022年10月27日(48号)
バキ道外伝 やっぱ猪狩完至は永遠だよネ!

 アントニオ猪木追悼企画で、『バキ道外伝 やっぱ猪狩完至は永遠だよネ!』だッ!
 元気があれば、なんでもできる!
 そう言っていた猪狩だが、本人が元気を無くしてしまった!
 大病で死にそうだ!

 自分で自分の言葉を実践できなくなってしまった。
 そうショックを受けている猪狩である。
 でも、猪狩の事だし、成分の半分はハッタリでできていると思っておいた方がいいかも。
 ただ、思い込みのパワーは偉大なので信じる事も重要だったりするから油断できない。
 猪狩に一番効くのは観客の声援だろうな。
 大声援さえあれば、癌にも勝てるッ!

 猪狩の容体は良くないらしい。
 すごく痩せてしまった。
 久住も困っているようだが、なにか計画があるようだ。

「「猪狩完至死去」フフ…」
「どうってことねえや」

「来週の騒動――――」
「そのまた「後」の騒動に比べりゃ」

 猪狩は死を覚悟してなお、何かを画策しているらしい。
 安易に死ぬよりも、困難な生を選択するッ!
 まさに燃える闘魂だぞ!
 燃え尽きる寸前まで、闘う魂だッッ!

 だが、けっきょく猪狩は亡くなり国技館で葬儀が行われたらしい。
 参列した渋川剛気、愚地独歩、郭海皇は猪狩から言われた言葉を思い出す。
 三人は、同じような言葉を言われていた。

「レスリングには達人が存在しない」
「老いた――――選手が」
「枯れた神技で若き選手を圧倒する」
「そんな あなたのような達人はレスリングには存在しない」

 武術界には渋川や独歩、郭と言った達人がいるのに、レスリングにはいないッ!
 独歩は、アンタはもう達人の域に達しているだろうと言う。
 でも猪狩的には足りないようだ。

 たしかに、プロレスに高齢の達人はいないのか。
 いや、レスリングと言っているな。
 プロレスだけでなく、アマレスや総合格闘技も入っているのか?

 意外な盲点かもしれない。
 技術よりも肉体を競わせる試合形式だと肉体の衰えに勝てないって事なんですかね。
 プロレスに限らず、相撲やスポーツなど試合と引退があるものは高齢の達人は出にくい。
 ゴルフはけっこう高齢でもやれるけど、さすがに白髪の達人がいないか。

 試合ってのは非日常の勝負であり、試合に向けてコンディションを整えるものだ。
 車で言えばF-1レースの世界ですね。
 武術は日常の中にあり、突発的な問題に いつでもどこでも対応できる事が求められる。
 車で言えば普段乗りの運転で、安全運転が基本だけど、事故などの非常時に役立つのが武術だ。
 なので、武術は日常なので車と同じく高齢でも使えないと困る。
 そして、高齢でも強いと達人と呼ばれる。

 試合やレースだと体力の衰えが、もろに成績に響く。
 成績が悪いと引退になるので高齢の達人は生まれにくいのだろう。
 囲碁・将棋ですら老化の衰えと成績不振による引退はあるので、高齢の達人が生まれにくいのだろうな。
 そういう事なのでレスリング世界の達人なんて、むちゃ言わんでくださいって事だ。
 だが、だからこそ、猪狩はレスリングの達人を夢見て死んでいったようだ。

 猪狩は最大トーナメントまで、渋川剛気と面識がなかったようだ。
 だが、死ぬ前に二人きりで食事をして親しくしている。
 郭海皇も同じだ。
 まったく接点がなかったはずなのに、一緒に食事をしている。
 このコミュニケーション能力も、猪狩の強さであり、人間力なのだろう。

 猪狩の死後も世界は回る。
 総合格闘技では期待の若手・至宝 竹野がチャンピオンに秒殺された。
 1分以内に敗北したんだから、至宝は言いすぎだったな。

 頭にタオルをかぶった男がチャンピオンの背後から近づき、事件は起きた。
 突然、謎の男がタオルでチャンピオンの首を絞める不意打ちを仕掛けたのだ。
 いったい、何者だ!?
 って、正体バレバレなんですけど。

『輪郭……!!?』
『顎…!!?』
『このフォーム!!?』

『プロレスラー猪狩完至じゃないか――ッッ!!!』
『どういう事態だ!!?』
『アンタ死んだだろォ――――――ッッ!!!』

アンタ死んだだろォ――――――ッッ!!!

 そうだよ、死んだんじゃなかったのか!?
 二重にも三重にも謎の状況を作り出し、混乱の中で猪狩はコブラツイストを極めて勝利(?)する。
 これこそがレスリングにおける高齢の達人だ!

 年をとっても、元気があれば何でもできる!
 レスリングの達人を生み出した!
 というか自分がレスリングの達人になった!
 でも、試合じゃ無ェ!

 不意打ちだから武術よりだよ。
 F-1レースを終えての帰る途中のドライバーにアオり運転で勝負仕掛けて、首都高バトルで勝ったようなもんですよ。
 でも、この非合法な勝負を公式に見せちゃうのが猪狩なんだな。
 だからこそ、最強幻想を見せてくれるッ!

 最後にドラマを見せるため、自分の死すら利用して偽装した。
 国民全員をダマして不意打ちを仕掛けたわけだ。
 これが猪狩と言う男の死に様である!
 ……いや、まだ生きていますけどね。
 そう、猪狩完至は生きている!


週刊少年チャンピオン2022年47号
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