【メバル(目張) その2】交接、交尾をした初めての硬骨魚
「カサゴ目の終息」ではカサゴ系列はハタ科の魚と共通の祖先であるとした。
温暖なエリアで生息していたハタ科の魚が生息域の拡大や海洋の寒冷化等の何らかの要因によって、冷たい海に進出し、卵を体内受精させる方法を獲得したのだろうか?
生息域の海水温に季節変化が大きく、産卵してからの不都合、海水温の低下により孵化の長期化や死滅、卵を捕食する生物、ミズタコやカニ類の出現などがあり、体内に卵を保持して海水温の低下などの環境変化には浅深移動し保護する方法を獲得したのだろうか?
カサゴ目魚類は気が遠くなるほどの時間を費やして卵胎生へと進化して行ったのだろう。
3年で性成熟した成魚は、北で早く10 月頃から関東では12月頃に交接(交尾)期になり、棲みかにしている、海藻が生えている岩礁斜面エリアで、オスもメスも頭を上にしてゆっくりと浮上しながら腹部を擦り合せ、オスの交接器がメスの生殖器に入り、精子がメスの卵巣腔に入り、卵が成熟するのを1〜2か月程待ってから受精する。
その間、精子はじっとして、受精するタイミングを待っている。受精した卵は卵巣内で孵化して、12 〜2月頃に5mm前後の仔魚を産出する。カサゴは数回の産出をするがメバルは1回しかしない。

卵巣内で孵化した仔魚。
その間、精子はじっとして、受精するタイミングを待っている。受精した卵は卵巣内で孵化して、12 〜2月頃に5mm前後の仔魚を産出する。カサゴは数回の産出をするがメバルは1回しかしない。

卵巣内で孵化した仔魚。
1年で9〜10cm、2年で13〜14cm、3年で15〜16cm、5年で20cm前後に成長する。
3年魚から性成熟し、性成熟後の成魚は自分の棲みかから移動することは少なく、沖合の岩礁域や人工漁礁に定住する。
1年魚では雌雄の割合は50対50だが、年齢が増すにつれて雌の割合が増え、5歳魚では90%以上がメスである。若いオスが何回かの交接をして、オスの少ない分を補っている可能性があるようだ。
メバルも資源減少で種苗生産を試みているが卵胎生なので、産卵魚よりは手間と時間がかかる。コンディションの良い親魚の確保が難しいので稚魚を採捕して海上生簀で育て、産出期になるとお腹の大きなメスを陸上水槽に移し、自然産仔させる。この方法は仔魚の生存率が高く、親魚も死ぬことはない。ただし、時間的に付き切りになり、効率的でない。
もう一つの方法は産出期を見計らい、腹腔を切開して産仔させる切開法がある。この方法の最大のリスクは来年も産仔するであろう親魚を殺してしまう点だ。サケのように、産卵して寿命になる種では良い方法だろうが、メバル属は長生きする種が多く、ベーリング海に生息するヒレグロメヌケは157年間生きて、27kgに成長するが、アカ、クロシロメバル、3種は7〜8年が寿命だろうか?


寿命が200年とも言われているメバル属のヒレグロメヌケ(Sebastes borealis )の27kg、157年生きた鑑定が出た。
最近、湾内の海藻が生えている岩礁帯でスピニングの淡水のトラウトタックルやブラックバスのウルトラライトのタックルを使用し、メバリングと称してメバルを釣る若人が多くなった。ライトリグ、軽いウエイトのジグやジグヘッドでアタックするのだが、メバルはルアーを追い食いするタイプの魚でないので、スローリトリーブのリフト&フォールの繰り返しで、まばらに海藻が生えた岩礁帯を攻めてバイトを拾っていく。
メバルは半夜行性で日中はシェイド、薄暗い、日が当たらない影になる所がポイントで、日が暮れると岩礁帯や堤防の岸壁、テトラ周辺の岩陰から、外側周りに出てくる。大群を作らないが、数匹から数十匹の群れで岩礁帯上方や斜面に沿ってサスペンドして、大きな広角の目で、斜め上方を見て、落ちてくる物や前を横切る物のシルエットを見てバイトしている感じで、新月より月がある時間帯が潮時だ。

メバルは大きな広角な目で斜め上を見ている。

綺麗な透明度の高い海より、少し濁り気味の海を好む、若魚の大群。

メバルは大きな広角な目で斜め上を見ている。

綺麗な透明度の高い海より、少し濁り気味の海を好む、若魚の大群。
ベタ凪で海中に光が入る時よりは、少し風が吹き、さざ波がある方が、警戒心が抜けるのかバイト率も高く、大型も釣れる。
夕食後の夕涼みに最適な釣りだろう!!
【メバル(目張) その1】110年間の分類、メバル3種
2002年に「カサゴ目の終息」と言う論文が発表された。
カサゴ目の共通祖先は一つの種、単系統であるとしていたのを、カサゴ系列とカジカ系列に分類し直し、カジカ系列はゲンゲ亜目の魚と共通の祖先で、カサゴ系列はハタ科の魚と共通の祖先であるとした。
カサゴ目の共通祖先は一つの種、単系統であるとしていたのを、カサゴ系列とカジカ系列に分類し直し、カジカ系列はゲンゲ亜目の魚と共通の祖先で、カサゴ系列はハタ科の魚と共通の祖先であるとした。
近年、カサゴ類、メバル類、ソイ類、メヌケ類の分類がDNA解析、魚体骨格の分析により明確に分類され再編成され、カサゴ、メバル、ソイ、メヌケの仲間はカサゴ目フサカサゴ科に分類された。
カサゴ目は31科、学者によっては37科290属、1546種に分類されているが、1955年の分類ではメバル属、ソイ属、メヌケ属での分類もあったが、現在ではメバル属にまとめられている。
フサカサゴ科の魚は卵胎生で、メスの体内で卵を孵化させ、仔魚を産出するのが最大特徴だ。
オスもメスも性器に近い器官があり、カサゴの雌の腹部後方の盛り上がった部分に1つの小突起があり、その前方に横スジのように見える箇所に尿管と輸卵管(仔魚を産出する管)がある。

オスのカサゴの交接器。

メスのカサゴの生殖器。
大きい穴は交接して精子を受け入れ、仔魚を産出する穴で、小さい穴は尿道だ。雄は雌より早く成熟し、11〜2月に交尾後、雌は精子を卵巣腔に保存し、卵が熟すのを待って受精させ、母体内で孵化し、15日間隔で1〜3回、産出する。産出期は長く1〜5月まで続く。
標準和名「メバル」は1904年に2種に分けられ、その後、1種に統合され、1985年単1種でないと3種になり、それをまた1種にした。
2002年にメバルの体色で白、黒、赤の3種に分け、徹底的に調べ直し、2003年、ついに3種に分ける論文が発表された。
そして、2008年に「シロメバル」、「クロメバル」、「アカメバル」の標準和名が付いたのである。110年もの間、同定が不安定で右往左往していたが、ついに決着がついたようだ。
シロ、クロ、アカは釣り人が感じるライブリーカラーではなく、デッドカラー、死後色による分け方である。この3種を的確に同定できる部位があり、それを覚えれば簡単に見分けられるのだ。その部位は胸鰭の軟条数で90%は同定できる。

胸鰭を開いて軟条の数を調べると種を同定できる。これはシロメバル17本。
○シロメバル(Sebastes cheni)
釣り人の呼び名は「黒メバル」、関西では「茶」「C型」と呼ばれ、生きている時は茶褐色で、30cmを超すサイズに成長するのは、この種である。「金」と呼ばれることもある。胸鰭の軟条数は16〜17本、通常は17本。

シロメバル、胸鰭の軟条数は17本だ。
○クロメバル(Sebastes ventricosus)
釣り人の呼び名は「アオ」「青地」「B型」。生きている時の、背中の色は青や緑かかっている。やや外洋性で頭が小さく太っている。 胸鰭の軟条数は15〜17本、通常は16本。
○アカメバル(Sebastes inermis)
釣り人の呼び名は「アカ」「A型」。生息する環境や個体により色彩変異がある。体高が低くスマートだ。従来の学名を継続している魚だ。胸鰭の軟条数は14〜16本、通常は15本。