December 19, 2005

近未来・体育の時間<ショートショート>

最近の小学校は近代化されており、出欠はタイムカード方式で管理されている。もっとも、タイムカードといっても紙でできたものをタイムコーダに入れてガチャンガチャンとやるような旧タイプのものではない。
  教室の出入り口にはセンサーがついており、人差し指を触れるだけで指紋を感知し、登下校の時間を記録する。もちろん、登校時間を過ぎていれば遅刻にカウントされ、下校時間よりも前であれば早退扱いとなる。その際はセンサー画面が病気のためとか、怪我のためといった理由を選択する画面に切り替わり、指示に従って軽くタッチしていくだけである。
  ランドセルなどという第二次世界大戦ごろ流行った、学習用具入れ背中に背負うタイプかばんも、今では博物館か骨董品屋さんでしか見られない。というか、骨董品屋さんすら見かけない。第一、本とかノート、シャープペンやボールペンといった学習用具自体がない。生徒の机の上には、モニター画面とキーボードがあるだけだ。
  ここ○×小学校三年一組では三時間目体育の時間である。いくら近代化されたとはいえ、さすがに体育の授業は教室ではできない。生徒は体育館に集まって、前方中央の大きな液晶モニターを見ている。そのモニターには先生らしき人が映し出されており、授業の指示を与えているようだ。
「はい。では、みなさん、授業を始めます。今日は、飛び箱の時間です。まずは、三段から飛んでみましょう。飛び箱は誰にでも飛べます。コツは、助走スピード、踏切り位置、発射角度、手を置く場所、空中姿勢、着地ポーズに気をつけるだけです。何度も練習していれば、目をつぶっていてもできるようになります。では、お手本をお見せします」
  そう言うと巨大液晶モニターは、明らかに体操服らしきものを着用した、いかにもスポーツマン体型の、それでいてどこから見ても無表情な、まるでテレビゲームの主人公のような人物の画面に変わった。
  タッタッタッタ、タタッタタッタ、タタッ。ヒュー、トン、ピタッ。
  その人物は、飛び箱を教科書通りに飛び、ピクリとも動くことなく着地した。
「ウォーッ」
  小学生たちからは、歓喜の声があがった。
「はい。では、みなさんもやってみましょう」
  先生の声に、生徒たちは一斉にボタンをたたき始めた。
  タッタッタッタ、…
  最近の体育館は近代化されており、連打ボタンとレバーのついたパソコンが設置されている………



ikuria at 00:04│Comments(0)TrackBack(0) ショートショートの部屋 

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔