2017年12月

2017年12月31日

HIV/ASIDSを学び直す(イルファー釧路の一年)

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 今年の目標を「HIV/AIDSを学び直す」と掲げて、走り抜けたイルファー釧路。
効果的で飲みやすい抗NIV薬が浸透し、HIVが単なる慢性病と見なされるようになって、なんとなく社会の関心から退けられ忘れ去られようとしている印象がある中で、もう一度HIVを生と性から考え直し、学び直そうという意図でした。HIVは単なる感染症ではない。我々が手を取り合って生きることの教材として捉えて行かなくてはいけないという危機感もありました。
それゆえ、当会のメインイベントとしてのイル活と師走講演会はまさにそこに焦点を当てました。
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 7月29日、30日の鶴居でのサマーキャンプ(イル活)は、川嶋彗大人実行委員長を中心に6人の学生実行委員で企画運営されましたが、HIVを性感染であることを再確認し、他の性感染の体験談を踏まえて学び直し、HIV抗体検査について医学的側面と社会学的側面から学びを深めました。

 12月9日の師走講演会には、10年ぶりに岩室紳也先生をお呼びし、「オトナのための性教育講座」という演題ながら、遠大な人生の話の中で、人間と人間の繋がりの大切さ(絆)を説いていかれました。そこには性感染としてのHIVも、薬物依存も、自殺依存も生きるための教材であることが示されていました。自画自賛かもしれませんが、HIV/AIDSを学び直すというコンセプトに相応しい内容をいただいたと思っています。
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 さて、このふたつのイベントの他に今年のイルファー釧路の動きを振り返って見ます。
 2月には久光製薬株式会社ほっとハート倶楽部様より、我々の社会貢献に対して金一封を頂きました。製薬会社としての寄附が厳しい世情にあって、社員の自発的活動としての寄附は本当に嬉しいものです。

 3月には長年コアメンバーとして、そしてケニア医療キャンプにも2年連続参加してくれた大坪誠治先生が退職、転居され釧路を離れることになりました。とでも残念なことでしたが、これからも遠い?美唄からメンバーとして繋がってくれることを期待しています。

 6月3日には道東HIV拠点病院等連絡協議会講演会で元産経新聞記者の宮田一雄氏をお迎えし、「エイズの流行は終わるのか」と題して講演をいただきましたが、イルファー釧路のメンバーも参加し、まだまだ終わっていない世界のエイズを再確認し、改めてHIV/AIDSを学び直すことの必要性を理解しました。

 10月9日に開催されたくしろ健康まつりでは、労災病院、保健所と協働で恒例となったHIV抗体検査会を行いました。およそ100人の市民が検査に訪れましたが、もちろん陽性者はゼロ。それで良いのです。ただし、検査対象をもっと広げよう、イベント性をもっと出して啓発活動に繋げようという考えから、来年は、霧フェスティバルなどの大きなイベント会場での開催を目論んでいます。

 学生への啓発活動として、今年も別海高校(生と性を考える会;6月23日)、中標津高校(思春期講座;7月22日)での講演をさせていただきましたが、特筆すべきは、12月2日に釧路市の景雲中学校での道徳講演会に呼ばれ、「命の尊さ、大切さ」の中で、HIVをとりあげることが出来たことです。中学生の前で話すのは初めてのことでしたが、一生懸命に聞いてくれました。

 私だけではありません。10月28日には釧根地区放射線技師会学術大会で、須藤隆昭事務局長が「ケニアと釧路におけるHIV状況とボランティアについて」と題して発表しましたし、11月8日には全道高等学校ボランティア研究大会で大道寺梓さんがケニア医療キャンプ報告を行いました。こうやって、コアメンバーのそれぞれがそれぞれの目線で啓発活動としての講演を行なってくれることがまた、イルファー釧路の成長と進化を物語るものだと思います。

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 ケニア医療キャンプには、17回目の私の他に、藤盛歯科医(2回目)、更科内科医、川嶋看護師、大道
寺鍼灸師(いずれも初)が参加。2700人以上の患者の診察とコトレンゴセンター(HIV陽性の孤児院)でのメディカルチェックをしてきました。10月8日にはその現地報告を第二回地平線会議として行いました。藤盛先生の完成度の高い動画作品を交えながら多くの皆様に臨場感あふれる現場を報告出来たと思います。
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 ケニア繋がりでは、7月4日には来道した松下照美さん(ケニア在住でモヨチルドレンセンターを主宰し、ストリートチルドレンや養育拒否児童などを住まわせケアしている)を囲む会を催し親交を深めました。

 出会いの報告としては、5月に大坂で田村隆明さんと再会を果たしました。病気と闘いながらも元気なその笑顔といつも通りの腰の低さ(笑)に乾杯です。
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そして、11月のエイズ学会で、一昨年の師走講演会で講演をご依頼したものの爆弾低気圧に阻まれてついに釧路上陸を果たせなかった川田龍平さんとついに面会出来ました。雪にまみれた釧路労災病院の講堂と川田さんの東京の自宅をFace timeで繋いでウエブ講演したことが懐かしく思い出されました。
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 同じことを地道に繰り返しながら、少しづつ進歩して行く。これがイルファー釧路のスタンスですし、今年もそうやって過ぎていったと思います。でも、過ぎるのが早過ぎる。本当にあっという間の一年でした。

 最後になりましたが、これらの活動に賛同した104人の個人会員、法人会員の皆様からの会費としてのご支援に、改めて感謝申し上げ一年の締めにしたいと思います。
本当にありがとうございました。
来るべき年が皆様にとって良い年でありますように。

ilfar946 at 17:52|Permalink

2017年12月23日

プラージュからの贈り物

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 年末の最後のダウンでした。
 全国から釧路に集まったケニア医療チームの仲間たちと楽しい時間を過ごし無事送り出した翌日、なんかお腹の調子が悪くなり、あれ?!牡蠣にでも当たったのかなと思ったのですが、それから全身筋肉痛と発熱。一応インフルエンザは否定した上で、なんとか三日の業務をこなしたものの、発熱と著しい全身倦怠感でついにダウン。これは急性肝炎もありかとも思いましたが、食欲は落ちなかったし、黄疸もないということで、自己判断でそれは否定し検査もせずにそのまま自宅療養させてもらったのが木曜日。
 一日寝ていてかなり楽になり金曜日はよっしゃ、行けると同僚にメールを送ったところ、
駄目です!全て滞りなく業務は進んでいますので、ご心配なく。もう一日きっちりとお休みなさい。内科の総意です!との返信があり、ありがたいとは思いつつも無理にしゃしゃり出るのも迷惑かとなんとも腑に落ちない気持ちで、もう一日引きこもりとなった次第です。
 まあ確かに、今年も突っ走って来た一年でした。土日もほとんどは出張や学会だったし、5月の声を聞いた頃にはケニアの準備が始まり、ケニア終了後は、多くの講演や学会参加で飛び回っていました。11月のシンガポールも想定外の学会参加でした。師走は師走で宴会が目白押し(これは毎年のことですが)。なんか、ホット息ついたときに、私の脱力と免疫力低下を察知した名前不詳のウイルスが待ってましたとばかりに私に取り憑いたのでしょう。起こりうることが起こったと諦観し、今週の3っつの(3っつ!)忘年会をやり過ごしたのでした(宴会を休むなどどはほとんどあり得ないことでしたから)。
 ありがたい休養のおかげですっかり復調したものの、丸二日ずっと寝間着姿で、ヒゲも剃らずにいたものですから、しゃっきりリセットするつもりで、土曜日の朝、真っ先に向かったのは床屋。今年の春に馴染みの床屋の親父が鬼籍に入ったために(ブログご参照ください「いつものように、、」)、床屋ジプシーとなっていてたどり着いたのが、全国展開しているプラージュさん。カット、洗髪、剃り、セットがみんな分業制でクライアントが席を移りながら進むシステムで、ベルトコンベヤーに乗っている間に終了してしまうような感じですが、安くて早い。それに余計な世間話もなくてシンプル。
 ああさっぱりしたと会計をしたらいつもより安い。あれ?と思いながら、帰りがけにレシートをみると、割引200円となってる。しばらく考えて合点がいきました。プラージュでは60歳以上200円割引。
 病み上がりの無精髭男はめでたく60歳以上とご評価いただいたのでした。
 素敵なクリスマスプレゼントでした(;_;)。

ilfar946 at 13:02|Permalink

2017年12月10日

絆(きずな・ほだし)/ 第14回師走講演会

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 12月9日、キリッと冷えた青空の中、岩室紳也先生は釧路に降り立ちました。
 毎年釧路の高校生たちに性と命を語り続けて17年。そのご縁とエイズの縁、そしてイルファーの繋がりでまた実現した岩室先生のご講演。2007年以来の2度目の師走講演会です。
 「オトナのための性教育講座」と題した今回の講演は性という小さな枠組を超えた壮大な行き方講演となりました。性という漢字は、心(りっしんべん)の生と書きます。心とは真ん中。すなわち性を語ることはど真ん中の生を語ることに他なりません。岩室先生はまさに、性をキーワードにど真ん中の生を語り出したのです。
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 性の問題も心の問題も薬物問題もネット問題もみんな根っこは同じだと語ります。全ては依存症。性依存、自分依存、薬物依存、ネット依存。繋がりや居場所がないから、依存症になる。居場所は依存先であり、心休まる依存先がないから、性依存、自分依存、薬物依存、ネット依存に陥る。だからどんどん依存先(居場所)を作りなさいと訴えかけます。東日本大震災後真っ先に陸前高田市に飛び、被災地絆づくりを始めた経験から出た重い言葉でした。
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 今の日本に欠けているのは、人と人との関わり、繋がり、支え合いだと指摘します。震災後各地で囁かれた、絆(きずな)。この言葉のもう一つの呼び方を知っていますかと問いかけられました。それが(ほだし)。ほだしの意味は、手かせ、足かせ、束縛、迷惑。(きずな)は繋がり、結びつきというある意味ポジティブなのに、(ほだし)はむしろネガティブ。でも、この両面が「絆」には必要だと語りかけます。繋がり結びつきが強くなりすぎると息苦しさを伴うこともある。(きずな)というネットワークと(ほだし)というお互い様精神がうまく循環して程よい居場所が生まれる。そういう居場所を作ることが、自分を自立させ、依存症から脱却できるのだと、性暴力、自殺、薬物中毒、SNSがらみの殺人などの社会問題を提示しながら、心に残る言葉を投げかけていきます。
 繋がり・居場所の反対語は依存症。対面による生きた言葉のキャッチボールが私たち現代人を救うのです。簡単にSNSなどで繫ることが出来るようになった現在こそ、生きた言葉のキャッチボールをしなくてはならないのです。SNSはSOSにならない。岩室先生の言葉がずっしりと心に落ちます。対話・関係性・絆(きずな・ほだし)というコミュニケーションが現代人を救うのです。 
 オトナのための性教育講座は、生き残るためのヒントを120人の聴衆の心に残してこうして幕を閉じました。
 イルファー釧路も、きずな・ほだしを大切により多くのみんなと繋がって行きたいと切に思いました。
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ilfar946 at 11:14|Permalink