2016年09月22日

影のなくなる日(9月21日キャンプ4日目)

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日本では秋分の日が近いこの時期、赤道のやや南に位置するナイロビでは、昼の太陽は天の中心にある。影がなくなる日だ。しかし、このころのナイロビは曇っていることが多い。Dry and chill(乾季なのに寒い)、通訳のモハメドはこの時期をこう表現した。赤道に近いとはいえ、標高1700mにあるナイロビゆえである。
想定された渋滞もそれほどでなく、一般外来キャンプ3日目は、9時少し前に開始された。
いきなり踵から下腿後面がえぐられた患者が来た。糖尿病性壊死のためケニアッタホスピタルでデブリ(壊死組織の掻把)を受けたはいいが、そのまま放り出されたらしい。一部はミイラ化し肉芽腫が一部形成されているだけで、今にも感染しそうだ。片方の足はすでに切断されてない。明日は別な病院のアポをとったから今日だけ治療してくれと飛び込んできた。継続性のある治療が出来ない不条理を感じるが、金のない者は放り出される。これがケニアの現状なのだ。それにしても傷の処置はなぜか私のところに回ってくる。
 小児でもマラリアは散発的に見つかっているようだ。マラリアといい昨日のブルセラ症といい、日本ではレアでもこの地ではよくある病気common diseaseとして認識して当たらなくては思わぬしっぺ返しをくらう(もうググってみろとは言われたくない)。治療中断例(お金がないから)、交通事故や喧嘩の外傷もよくあるものとして、平然と対処するくらいにならなくてはならないのだ。
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今年もエコーは威力を発揮している。セクターとリニアのプローブを備えたことで腹部の診察のみならず、表面の腫瘤にも対応可能となった。下顎部腫瘤の精査として歯科からも依頼がきた。
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 限られた資源はもちろん薬剤にもあてはまる。選択枝の少ない薬剤をいかに有効的に処方するか、それを考えるのは処方医よりも薬剤師によるところが大きい。もっと具体的にいえば、青山さんの薬剤管理能力にかかっている。今回で4回目の彼女は、ほぼ確実にそれを遂行している。そしてそれをサポートする柳瀬さん。スワヒリ語が堪能の彼女は服薬説明には欠かせない存在だ。
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 ドクターのニューフェイスたちもこの環境にほぼ馴染みながら診療をこなし始めた。
小児科の大田先生は次々に経験する疾患に高揚しながらも、落ち着いた流暢な英語で対応している。同じく小児科の荒木先生は、その笑顔で子供や親を和ませる。神戸組の海老沢、長田両先生は、次々とやってくる雑多な訴えに戸惑いながらも、感染症に目を光らせるのはさすが専門の力だ。HIV検査に誘導するのも一生懸命で、それゆえ陽性者を拾い上げることが多い。海老沢先生は皮膚のカポジ肉腫をみつけては写真に収めていた。釧路代表の山村先生は、どんな状況でも飄々とこなしていくのはさすがだ。ただやはり日本との診療のギャップは相当感じたようだ。
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このようにモチベーションの高い専門職たちがそれぞれの領域をしっかり守っている。待合室の喧噪のなかにあって、粛々という言葉が似合うのはそのあたりゆえなのかもしれない。
 終わってみれば個人的に95人の患者を診た。全体では423人。うち、抜歯は29人に達した。鍼灸も55人。すごい第三日となった。



ilfar946 at 01:45│