子どもの頃、カルタ遊びは好きだった。得意な方だったと思っている。 多分、本に囲まれて育ってきたので、文字に対する感覚は早熟だったのだろう。
大人に混じって百人一首などでも遊んでいた。もっとも、取れる札は1~2枚程度しかなかったが・・・。

僕は、副委員長としてお手伝いに行った。初めての参加だ。カルタで遊ぶ子どもたちの姿を見たのは何十年ぶりだろう。今でも、カルタという遊びが残っていることすら、あまり認識をしていなかった。
競技は、3人1チームで行なう。対戦するチーム同士が、体育館の上に敷かれたマットの上に向かい合って正座して、互いに礼をするところから準備が始まる。礼に始まり礼で終わる。まるで武道のようだ。
次に、44枚の取り札を、22枚ずつ、文字が自分たちの側から正しく見えるように並べる。あくまでフェアにということなんだろう。
さぁいよいよ競技開始だ。読み手が読み始めるまでは、競技者は手を膝に上に置いていなければならない。あとは通常のカルタと同じ。早く手を付けた方が勝ち。その札を取る。ただしお手つきした場合は、相手の物となる。
こうして取り札が減っていって、残りが5枚となったところで、もう一度中央に並べ直す。今度は」両手を頭に乗せて、読み始めるのを待つ。さらに残りが2枚となったら、それをまた中央に置き最後の闘いを行なう。
1枚残ったところで、そこでゲームは終了。44枚の取り札から1枚残った43枚を、どちらが多く取ったかで勝負は決まる。だから絶対に引き分けはない。
と、ここまで書いてきたことで、もうお気づきだろうと思う。極めて厳格なルールのもとに行なわれている。こうなるともう、遊びの領域を超え,一種のスポーツのようでもある。
僕は審判をやらせていただいた。子どもたちが取った札が間違いないか確認する。お手つきの時の対応。ほぼ同時に両チームの手が触れた時の裁定。全く同じの時はジャンケンで決める・・・といった内容だ。
やっていて、僕まで童心に帰ったような気持になった。僕もゲームに参加したい、むらむらと遊び心が湧いてきた。
でも、68歳になった今、子ども相手にムキになるのも恥ずかしい。それに、正座もできないし、視力も落ちて遠くの札が見えない。きっと、本気を出しても勝てなかっただろう。あれほど得意だったカルタが、とてつもなく難しい物に思えてきた。(3179)