「お宅で、水漏れしているかもしれませんよ」
 ある日、上下水道サービスという所から電話が入った。使用量が、平月に比べて高いのだそうだ。そう言えば、 今月の水道料金も、いつもの1.5倍くらいだった。
 話を聞くと、点検してくれるのだそうだ。しかも無料で。一にも二にも、すぐに僕はお願いをした。
 が、頼んでしまってから、ふと不安になった。シロアリに喰われていないか只で調査しますと言って業者が縁の下に入り、後から膨大な駆除料金を請求された、なんて話を聞いたような気がするからだ。
 そこで、市役所にある出張窓口に訊きに行った。「本当にそんなサービスってあるんですか?」 対応してくれた女子職員は、にこっと笑って「ありますよ」と答えてくれた。
 さて今日は、その点検の日。僕は朝から大忙しだった。何せ、日頃から整理整頓が苦手な僕にとっては、他人を家の中に招き入れるというのは一大事なのだ。特に、水場を見られるということは、生活の本質を見透かされそうな気がするからだ。
 キッチンのシンク周りを片付けた。食堂のテーブルの上のものも、隣の応接間に移動させた。風呂も洗った。洗面所の床も掃除した・・・。
 午後2時頃、点検の人がやってきた。まず、庭にあるメーターを確認した。僕も覗き込んだが、確かに微量ではあるが水が流れていることを、メーターの横にある機器が示していた。
 そしていよいよ家の中へ。
 水漏れいやぁ、水漏れの点検というから、場合によっては床板を引っ剥がして、水道管をつぶさに見るのかとも思ったら、そうではない。長い棒状のものを蛇口や水抜き栓に押し当てて、かすかな水の音を聴いているようだ。これは熟練の技に違いない。
 そのようにして、トイレ、洗面所兼洗濯場、風呂場、湯沸かし器のボイラー、台所と見て、いや聞いて回った。これという原因は一階では見つからなかった。
 二階へ上がった、そこで、とうとうわかった。何のことはない。二階の洗面所の蛇口から水がちょろちょろと流れ出ていたのだ。つまり、僕がちゃんと締めていなかったのが原因だったようだ。  
 いや、ちゃんと締めたつもりではいた。おそらく、握力が弱くなって、最後まで捻っていなかったということだ。情けない。かつては鉄の爪に憧れて、握力を鍛えていた時期もあったのに・・・。
 そんなわけで今日は、「大山鳴動して鼠一匹」ならぬ「大山鳴動して水一滴」といった一日であった。なにはともあれ、原因がわかって良かった。(4947)