「今、弘前から国指定重要文化財がひとつ失われようとしています」
 こんなショッキングな書き出しで始まるチラシを見た。まだ素案の段階である。これから直しもあるらしく、ところどころにマーカーでチェックが入っている。いずれ正式に配られるとは思うが、とても切実な問題なので、今日ここで紹介した次第だ。
 岩木山の中腹にある高照神社のことだ。弘前藩中興の祖と言われる、第4代藩津軽信政公を祀った神社で、本殿の更に奥にはご廟所もある。岩木山を借景に立つその佇まいは、近隣の岩木山神社のような派手さはないが、その分神秘性が全体に漂っている感じもする。
 数年前、県外からのお客様を集めて、卍の城見学ツアーというものを実施したことがある。弘前公園はもとより、堀越城址や革秀寺・長勝寺等を、津軽家縁の史跡を巡るという企画だ。ツアー終了後、アンケートをとったところ、最も印象に残ったという回答が多かったのが、この神社の本殿から廟所へ続く参道だったように記憶をしている。
 その高照神社の老朽化が激しい。屋根に穴があいたりしている。
 かといって、何せ国の重要文化財だ。簡単にトタンや木材を張り直して済む問題ではない。修復するとなると億単位の費用が必要となるだろう。
 そこで、代々この神社を守ってきた、地元の高岡町会の人たちが中心となって、新たに「高照神社運営検討委員会」という組織が立ち上がった。いずれ本格的に寄附を募ることになるのだろうが、一般的な寄附集めに使う”奉賛会”や”協賛会”といった名称にしなかったのは、今回の修復だけに終わらず、雪下ろしや清掃等も含めた、将来に渡っての日常的な維持管理も、より多くの人たちと協働で進めていこうという、町会の皆さんの強い決意の表れと認識をしている。
 僕は、昨年暮れから、一般財団法人津軽厚志会の一員として、この会設立のための会議に何度か参加させていただいている。今日も、法人としての会費を納めに、町会長を訪ねた。その時、見せていただいたのが冒頭に紹介したチラシだ。
 キャッチコピーが素晴らしい。「高照神社を守るために」ではなく、「高照神社が無くなる前に」というものだ。これくらい刺激的な文言の方が、見る人に強い印象を与えるに違いない。例えば子育て政策のスローガンも、「子どもたちの未来のために」なんていうより、「子どもたちがいなくなる前に」とすれば、より注目を集めるのではないか、なんてことを考えたりもした。  
 僕個人としては、今の立場上、寄附を行なうことはできない。でも、この「高照神社運営検討委員会」には、一生懸命協力しようと思う。脈々と受け継がれてきた弘前の財産を失うことのないように・・・。(3753)